Re: 意訳詩 ( No.1 ) |
- 日時: 2011/06/25 21:27
- 名前: うんこ太郎 ID:gB7YmWFU
アイルランドの詩人ヌーラ・二ー・ゴーノルの、「The Language Issue」の訳に挑戦してみました。「言葉(言語)の問題」というタイトルから察するに、アイルランドの歴史について触れた詩なのかもしれません。
ヌーラ・ニー・ゴーノル - 言葉の問題
わたしは わたしの希望を 川に浮かべる この小さな船 言葉の船に乗せて
アイリスの蔦で編み タールを底に塗りこんで 防水したバスケットに 幼子を乗せるようにして
わたしは 小さな言葉の船に わたしの希望を乗せる
川辺に生えた イグサの合間から 言葉の船をそっと流す 小さな船はたゆたい どこに流れ着くのか わたしには分からない
ファラオの娘に拾われた 幼いモーゼのように もしかしたら わたしの希望も いつかファラオの娘の 膝の上へと 辿り着くのかもしれない
※訳しきれなかったのですが、原文にはタールではなく、ビーチェマンとピッチをバスケットの底に塗るとあります。古代エジプトではビーチェマンとビッチをミイラに塗ることで、ミイラを湿度から守っていたようです。
Nuala Ní Dhomhnaill - The Language Issue
I place my hope in the water in this little boat of the language, the way a body might put an infant
in a basket of intertwined iris leaves, its underside proofed with bitumen and pitch
then set the whole thing down amidst the sedge and bullrushes by the edge of a river
only to have it borne hither and thither not knowing where it may end up; in the lap, perhaps, of some Pharaoh's daughter.
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グラニー! ( No.2 ) |
- 日時: 2011/07/02 11:38
- 名前: うんこ太郎 ID:DwEruobo
懲りもせず連続投稿です! ジャマイカ生まれの女性詩人であるValerie Bloomの作品です。 シンプル且つユーモラスな言葉の運びと、最後の「グラニー、ナイス」というフレーズがなんとも良かったりします。
Granny Is by Valerie Bloom
「ジャマイカ人のばあちゃんは」
ジャマイカ人のばあちゃんは 揚げ団子とココナッツの煮こみ料理が得意 ばあちゃんの家に泊まると 朝目が覚めたとき バターとココナッツと 新鮮なコーヒーの香りがする
ジャマイカ人のばあちゃんが ロバをひいてやって来る 漁師が港で釣ってきた 新鮮な鯛を籠いっぱいにつめこんで その籠をロバの背に乗せて 市場からたくましく歩いてくる
ジャマイカ人のばあちゃんは 川で服を洗濯する 石の上でごしごしと がんこな汚れを落とすついでに ザリガニとウナギを 川からたんまり捕ってくる
ジャマイカ人のばあちゃんが 月夜にグアングの木の下で お化けの話をする様子はぞっとする まるで蜘蛛が糸を張って 獲物を狙うみたいで ぼくも動けなくなってしまう
ジャマイカ人のばあちゃんは言う ぼこ、ようく聞け とにかく後ろ指だけさされんように 生きてさえいればいいからな
ジャマイカ人のばあちゃんは とてもナイスで、かっこいい
- - - - - -
by Valerie Bloom Granny Is
Granny is fried dumplin’ an’ run-dung, coconut drops an’ grater cake, fresh ground coffee smell in the mornin’ when we wake.
Granny is loadin’ up the donkey, basket full on market day with fresh snapper the fishermen bring back from the bay.
Granny is clothes washin’ in the river scrubbin’ dirt out on the stone haulin’ crayfish an’ eel from the water on her own.
Granny is stories in the moonlight underneath the guangu tree and a spider web of magic all round we.
Granny say, ‘Only de best fe de gran’children, it don’ matter what de price, don’t want no one pointin’ finger.’
Granny nice.
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Jackie Kay ( No.3 ) |
- 日時: 2011/07/06 13:31
- 名前: うんこ太郎 ID:d54VbbO2
うんこ太郎です。 私が投稿して、私がひとりで楽しいという自己満足企画となっていますが、どうかご容赦くださいませ。さて、前回に続き子供向けの詩です。作者はJackie Kay。スコットランドのグラスゴー生まれ。父親がナイジェリア人で、母親がスコットランド人。この詩は子供の頃の、空想の友人を描いたものだということ。
「ブレンドン・ガラチャー」
彼は七歳で私は六歳だった 彼ってブレンドン・ガラチャーのこと 彼はアイリッシュで私はスコティッシュ 彼の父親は猫泥棒で刑務所暮らし 私の父親は共産党員で労働者 彼は六人兄弟で私は二人兄弟 彼ってブレンドン・ガラチャーのこと
彼はよく私の手をとって川辺に連れて行ってくれた 私たちはそこで貧乏な生活と家族について話した 彼は大人になったら 母親を連れてグラスゴーから逃げ出すって言ってた いつかどこかもっと良いところへ、どこか遠いところへ
ブレンドン・ガラチャーのこと、よく母に話したわ アル中の彼の母親や、猫泥棒の彼の父親のことを 私の母は言った「食事に招待しなさいよ」 駄目、駄目。ズボンに穴が開いているのだから 彼とは川原で会うのが好きなの
友達となってから二年が過ぎたある日 ある大雨の日、母が言ったわ 「モーアさんと話したの あなたがよく話しているブレンドン・ガラチャーのお隣のね ノヴァールの24丁目に住んでるって言っていたわね モーアさんはガラチャーなんて居ないって言っているわ ガラチャーなんていないってね」
それなら彼は死んだのよ、 彼ってブレンドン・ガラチャーのこと 髪の毛つんつんの頭で、ベッドルームをかけまわり、 いたずらっぽく笑いながら、耳をぴくぴくさせていた彼 彼ってブレンドン・ガラチャーのこと
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
Brendon Gallacher
He was seven and I was six, my Brendon Gallacher. He was Irish and I was Scottish, my Brendon Gallacher. His father was in prison; he was a cat burglar. My father was a Communist Party full-time worker. He had six brothers and I had one, my Brendon Gallacher.
He would hold my hand and take me by the river where we’d talk all about his family being poor. He’d get his mum out of Glasgow when he got older. A wee holiday some place nice. Some place far. I’d tell my mum about my Brendon Gallacher.
How his mum drank and his daddy was a cat burglar. And she’d say, ‘Why not have him round to dinner?’ No, no, I’d say, he’s got big holes in his trousers. I like meeting him by the burn in the open air. Then one day after we’d been friends for two years,
one day when it was pouring and I was indoors, my mum says to me, ‘I was talking to Mrs Moir who lives next door to your Brendon Gallacher. Didn’t you say his address was 24 Novar? She says there are no Gallachers at 24 Novar.
There never have been any Gallachers next door.’ And he died then, my Brendon Gallacher, flat out on my bedroom floor, his spiky hair, his impish grin, his funny, flapping ear. Oh Brendon. Oh my Brendon Gallacher.J
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雪 David berman ( No.4 ) |
- 日時: 2011/07/10 08:05
- 名前: うんこ太郎 ID:8yzHkLJw
うんこ太郎です。snow angelという子供の遊びがあります。積もった雪の上に仰向けに寝転び、自分の身体で天使の形の窪みをつくるという遊びです。 さて、今回はDavid Bermanの詩です。snow angelを見かけたときのことを詩にしています。弟がずーっと「どうして?」って問い続けるところが、子供らしくてかわいいです。David Bermanは音楽もやっているので、音楽に詳しい方は名前を聞いたことがあるかも。 ※四連と九連は意味がよく分かっていないです。九連のacousticは多分、acoustic room だと思ったのですが、acousticsと複数形になっているから、音響学とか補聴器のことなんだろうか。よく分からないです(^^;。いろいろと課題の多い訳でした。
「雪」 David Berman
弟のセトと雪原を歩いていたとき
雪の上に天使の形の窪みをみつけた ぼくは何気なくセトに言った この窪みは天使たちが撃たれたて 地上に落ちたときにできた跡だよ
誰が天使たちを撃ったの?セトがきく 農家のおじさんが撃ったんだよ
そしてぼくたちは凍った湖に着いた 湖の氷が写真にとった水みたいに透明だった
どうして?セトがきいた どうして天使を撃ったの?
さてどんな話になるんだろう、ぼくにも話しの結末が見えない
天使たちは農家のおじさんのものだから だから撃ったんだよ、ぼくは答えた
風が吹きつける日には吹雪の壁ができる 吹雪のなかにいると、雪の壁に囲まれた部屋の中にいるみたいだ
今日ぼくは近所に挨拶をしてきた ぼくたちの声は雪の部屋の中でくぐもり 風が弱くなると、雪の部屋の壁は崩れ落ちた
やがてぼくと弟は家にかえり、ふたり並んで静かに雪かきをした
どうして?セトがきいた どうして天使は農家のおじさんのものなの?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
Snow
by David berman
Walking through a field with my little brother Seth
I pointed to a place where kids had made angels in the snow. For some reason, I told him that a troop of angels had been shot and dissolved when they hit the ground.
He asked who had shot them and I said a farmer.
Then we were on the roof of the lake. The ice looked like a photograph of water.
Why he asked. Why did he shoot them.
I didn't know where I was going with this.
They were on his property, I said.
When it's snowing, the outdoors seem like a room.
Today I traded hellos with my neighbor. Our voices hung close in the new acoustics. A room with the walls blasted to shreds and falling.
We returned to our shoveling, working side by side in silence.
But why were they on his property, he asked.
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ラングストン・ヒューズ ( No.5 ) |
- 日時: 2011/07/25 11:01
- 名前: うんこ太郎 ID:wZqsuj.w
うんこ太郎です。これから何回か黒人(アフリカン-アメリカン)の詩の訳に挑戦してみたいと思います。 アフリカン-アメリカンの詩人といえば、最初に思い浮かべるのは、ハーレムルネッサンスの詩人であるLANGSTON HUGEHSでしょうか。 HUGEHSは有名な人なので、今更作品を訳してみる必要もないのですが、書店で日本語訳の詩集を見かけることはないですし、 何より作品が素晴らしいので、この場をお借りして訳に挑戦しちゃいます。
「ニグロが川を語る」(Langston Hughes)
俺は川を知っている 世界と同じくらい古く、まだ人間の血が静脈を巡る以前に流れはじめた川のことを
俺たちのソウルはこの川のように深く育ってきた
俺たちは夜明け間もないユーフラテス川で水を浴びた コンゴ川のほとりに小屋を建て、そこで昼寝をした ナイル川を見つめ、川の向こう側にあるピラミッドを見上げた リンカーン大統領がニューオルレアンに向かった時に、ミシシッピ川の歓喜の歌声を聞き、川の泥色の胸が夕日で黄金色へと変わるのを見た
俺たちは川を知っている 古い、仄暗い川を
俺たちのソウルはこの川のように深く育ってきた
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
The Negro Speaks of Rivers by Langston Hughes I've known rivers: I've known rivers ancient as the world and older than the flow of human blood in human veins.
My soul has grown deep like the rivers.
I bathed in the Euphrates when dawns were young. I built my hut near the Congo and it lulled me to sleep. I looked upon the Nile and raised the pyramids above it. I heard the singing of the Mississippi when Abe Lincoln went down to New Orleans, and I've seen its muddy bosom turn all golden in the sunset.
I've known rivers: Ancient, dusky rivers.
My soul has grown deep like the rivers.
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Re: 意訳詩 ( No.6 ) |
- 日時: 2011/11/20 04:26
- 名前: うんこ太郎 ID:P14OijKI
黒人俳句です。作者はETHEERIDGE KNIGHT(1931-1991)。 題名はそのもの「HAIKU」。
HAIKU 8
八月の芝生の上で 太陽の断末の光線に打たれ ひび割れたティーカップ泣き叫ぶ
In the August grass Struck by the last rays of sun The cracked teacup screams.
HAIKU 7
月の影の下で 背の高い少年がナイフ輝かせ 星の煌く氷をスライスする
Under the moon shadows A tall boy flashes knife and Slices star bright ice.
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黒人の大統領 ( No.7 ) |
- 日時: 2011/08/27 11:12
- 名前: うんこ太郎 ID:ZQnJBvdI
▼突然ですが、アメリカ合衆国連邦議会というものは、議会の形態や名称に関して、 古代ローマの議会制度を参考にしています。これはアメリカの上院(UPPER HOUSE)が、 元老院(SENATE)と呼ばれることからも察しがつきます。下院(LOWER HOUSE)は古代 ローマ時代における民会です。 ▼テレビのニュースでオバマ大統領の雄弁な演説を聴いていると、私はときどき、古代 ローマ時代に思いを馳せてしまいます。今から二千年前にはカエサルが、ホワイトハウス ではなくてポンペイウス劇場で、雄弁に自分の意思を伝えたことでしょう。カエサルは どのような声で、どのように語ったのでしょうか。マルクスアウレリウスは?ハドリアヌス は?
▼長い歴史のなかで数々のリーダーたちが、より良い社会を目指し、議会のなかであらゆる 提案をしてきました。 ▼オバマ大統領の誕生はとても大きな事件でした。古代ローマ時代に、奴隷からリー ダーが生まれると考えた人はいませんでした。そしてほんの最近まで、黒人が大統領にな るということは、まるで木星にでも行くような、夢のような話だと思われていたのです。 ▼前置きがかなり長くなってしまいましたが、今回訳に挑戦する詩は、黒人は大統領には なれないと思われていた時代の詩です。黒人の詩です。
子供の詩(ラングストン・ヒューズ 1902-1967)
白人の子供たちに 贈られるものが ぼくには贈られない 分かってるよ ぼくは大統領にはなれない
白人の子供たちには 悩みにならないようなことが そうだ、ぼくには悩みなのさ 知ってるよ、 みんながみんな自由じゃない
嘘が書かれてる 白人たちにはそうであっても ぼくたちには違うじゃないか 自由と正義を- HuH!-「みんな」に、だなんて!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
Children's Rhymes (Langston Hughes)
By what sends the white kids I ain't sent: I know I can't be President. What don't bug them white kids sure bugs me: We know everybody ain't free.
Lies written down for white folks ain't for us a-tall: Liberty And Justice-- Huh!--For All?
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キッドナップポエム ( No.8 ) |
- 日時: 2011/09/18 08:06
- 名前: うんこ太郎 ID:j/oMI0Sc
うんこ太郎です。今回はNIKKI GIOVANNIの詩の訳に挑戦しました。 NIKKI GIOVANIはテネシー州ノックスビルで生まれました。 黒人であることへの誇りや、家族への想いを多く書いている詩人です。
Kidnap poem Nikki Giovanni (1943年~)
キッドナップポエム(誘拐ポエム)
誘拐されたことある? 詩人に わたしが詩人だったら あなたを誘拐するわ
とびきりのフレーズに 押し込んで 韻律で砂浜につなぎとめる コーニーアイランドや 私の家に監禁するかも
リラの花のなかで あなたに歌(リリック)をそそぎ 雨の水滴のなかへと あなたを打ちつける(ダッシュ) 砂浜では頭韻を踏みつけて 見晴らしをよくするわ
ギリシアの琴をひき あなたへ恋のオードをささぐ あたなを得るために 赤色、黒色、緑色にしばりあげて きっとママに見せるわ
もし私が詩人だったら わたしはあなたを 誘拐するわ
:::::::::::::::::::
kidnap poem by Nikki Giovanni
ever been kidnapped by a poet if i were a poet i'd kidnap you
put you in my phrases and meter you to jones beach or maybe coney island or maybe just to my house
lyric you in lilacs dash you in the rain blend into the beach to complement my see
play the lyre for you ode you with my love song anything to win you wrap you in the red Black green show you off to mama
yeah if i were a poet i'd kid nap you
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RE-ACT FOR ACTION ( No.9 ) |
- 日時: 2011/09/25 13:08
- 名前: うんこ太郎 ID:wcuEY5Z6
今回はDON L LEE (HAKI R. MADHUBUTI)の詩に挑戦です。 DON L LEEは1960年代の黒人運動(公民権運動、反人種差別運動)に絡む、 BAM(BLACK ART MOVEMENT)に影響をあたえた詩人のひとりです。 1960年代という時代はアメリカにとって苦しい時期でした。 1950年代までの安定の時代はおわりを告げ、やがて巨額の財政赤字、 ベトナム戦争という苦しみへと突入していきます。豊かさが失われていく時代において、 虐げられたものたちの言葉は外へ向かい攻撃的となるか、内に向かいみずからを破壊するか、 どちらかに分類できるように思えます。DON L LEEは言葉を攻撃的にしましたが、 同じ時代のプアーホワイトの作家であるレイモンドカーヴァーは、 みずからを破壊してしまったような気がします。
DON L LEE (Haki R. Madhubuti) 1942~
REACT FOR ACTION (for brother H. Rap Brown)
動物に対して反応する: 動物園の檻に入れる
非人間主義に対して反応する: 人間主義的にする
黒人売春婦に対して反応する: 愛と赦しによる精神的いたわりで、 もしくは、力による物理的行為で反応する
自分に対して反応する(re-act to yr/self): または、トニーカーティスや トウィギーにあこがれてお洒落に夢中
白人活動家に対して反応する(re-act to white-te actors:) 活動に対して理解をしめせ; やつらのホモ活動 & 俺たちの夢への挑戦 に対して
兄弟に反応する(re-act to yr/brothers & sisters): 愛
白人活動に対して反応する(re-act to whi-te actions): 本当の黒人のやり方で反応する バン、バン、バン (BAM BAM BAM)
活動家に対して反応する おれたちの活動をとめようとする やつらの豚のような活動に対して反応する 反応する やつらがおれたちの思惑通りに 動くように おれたちの反応は: 人間のための、人間のはたらき
反応しろ いまこそ、二ガーたちよ みずから動き出す必要はない ただし、反応しろ おまえと おまえの子供の墓に対して
※ ※ ※
RE-ACT FOR ACTION (for brother H.Rap Brown)
re-act to animals: cage them in zoos. re-act to inhumanism: make them human. re-eact to nigger toms: with spritual acts of love & forgiveness or with real acts of force. re-act toyr/self: or are u too busy tryen to be cool like tony curtis & twiggy? re-act to whi-te actors: understand their actions; faggot actions & actions against yr/dreams re-act to yr/brothers & sisters: love. re-act to whi-te actions: with real acts of blk/action. BAM BAM BAM
re-act to act against actors who act out pig-actions against your acts & actions that keep you re-acting against thier act & actions stop. act in a way that will cause them to act the way you want them to act in accordance with yr/acts & actions: human acts for human beings
re-act NOW niggers & you won't have to act flase-actions at your/children's graves.
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Michael Harper ( No.10 ) |
- 日時: 2011/09/28 11:14
- 名前: うんこ太郎 ID:Ais5pJvA
うんこ太郎です。現実逃避と自己満足と暇がわたしの原動力です。 書き続けます、勝つまでは。何に? さて、今回の詩では、「THE ALGIERS MOTEL INCIDENT」という 1967年に実際に起きた事件が題材となっています。 事件では3人の黒人が白人警察官に殺されました。
A MOTHER SPEAKS: THE ALGIERS MOTEL INCIDENT, DETROIT by Michael Harper (1938~)
母親の証言: ALGIERS MOTELの事件 (デトロイト)
暗すぎて 黒人の死体は見えない ヴァージニア公園の窓
葬儀屋は ゴムとプラスチックで 死体のかたちを整えようとする しかしうまくいかない
縫い跡や塗り薬 治療のあとを探したが 見つけられないまま その場から連れて行かれた あれは息子の顔ではなかった 造られたプラスチックの顔
ショットガンによって やぶけてしまった 目玉をむすびなおし ちぎれた腕を かたちをとどめる腰へとつなぐ
白い手によって息子は死んだ 「すみません。オフィサー。 あなたの銃を壊してしまった。」 それが息子の最後の言葉
‡月■∴ ‡月■∴ ‡月■∴
A MOTHER SPEAKS: THE ALGIERS MOTEL INCIDENT, DETROIT by Michael Harper
It's too dark to see black in the windows of Woodward or Virginia Park.
The undertaker pushed his body back into place with plastic and gum but it wouldn't hold water.
When I looked for marks or lineament or fine stitching I was led away without seeing this plastic face they'd built that was not my son's.
They tied the eye torn out by shotgun into place and his shattered arm cut away with his buttocks that remained.
My son's gone by white hands though he said to his last word-- "Oh I'm so sorry, officer, I broke your gun."
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ニーナ・シモンのブルース ( No.11 ) |
- 日時: 2011/10/09 06:06
- 名前: うんこ太郎 ID:fWNsVgEw
ニーナ・シモン。この人のファンは日本にも多いのではないでしょうか。まるで銛で突いてくるような重い声。僕は「Ain't Got No...I've Got Life」や「Blues for Mama」 が好きです。 天童よしみの「道頓堀人情」のようなパワーが感じられて、聞くひとの心にずしっと響くんですよね。 失礼しました、ブルースとジャズと演歌が好物です、うんこ太郎です。ニーナ・シモンの歌は Youtube でたくさん聞けるので、興味がある方は聞いてみてください。ビートルズのカバーの「Here Comes The Sun」なんかもいいです! さて、今回訳に挑戦する詩はCornelius Eadyの作品で、Nina's Bluesです。Cornelius Eadyは1954年生まれの詩人です。この詩はニーナへの追悼です。
※私の力不足がはなはだしいので、恥をしのんでこの詩の音読の動画URLをご紹介しておきます。原詩と訳詩のリズムが全く違う!というご指摘はごもっともです…。うう。ごめんなさい。ご興味があれば。 ttp://www.pbs.org/wgbh/poetryeverywhere/uwm/eady.html
Nina's Blues By Cornelius Eady
「ニーナ・シモンのブルース」
あたなのからだ、かたい声 いまは やわらかいドレスのなかで じっとている
夢にも思わなかったでしょう 死んだあとになって ニューヨークシティーの 黒人の詩人たちは全員 深く息をのみ 吐き出す息に あなたの面影を込めた 街角のちいさなクラブの ぽっかりと残ってしまった 静寂のなかに
演奏の真っ最中に あなたは床に寝転がったね まるめられた楽譜が怒りといっしょに キーボードから飛ぶこともあった
もうぼくたちの声は きこえないだろう あなたの目にうかぶもの 喉から湧き上がる声は 想像することしかできない
汗でもなく 甘さでもなく あなたの歌は血をながした ぼくたちの黒い指先から
ぼくたちはドラムを打つ 祈りをこめて ゆっくりしてください
ドラムを打つ ありがとう
ドラムを打つ いつまでも あなたが ここにいられるように
・・・・・・・・・・・・・・・
Nina's Blues By Cornelius Eady b. 1954
Your body, hard vowels In a soft dress, is still.
What you can't know is that after you died All the black poets In New York City Took a deep breath, And breathed you out; Dark corners of small clubs, The silence you left twitching
On the floors of the gigs You turned your back on, The balled-up fists of notes Flung, angry from a keyboard.
You won't be able to hear us Try to etch what rose Off your eyes, from your throat.
Out you bleed, not as sweet, or sweaty, Through our dark fingertips. We drum rest We drum thank you We drum stay.
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いぱねまのおなご ( No.12 ) |
- 日時: 2011/10/15 13:34
- 名前: うんこ太郎 ID:clkllM8I
今回は気晴らしにイパネマを訳してみよう思いましたが、難しいっす。 とてもじゃないけどぼくの日本語能力では、歌えるように訳せない…。 結局「超」適当な訳になってしまいました。 ちなみにイパネマの英訳は存在していて、しかもちゃんと歌えるようになっている(無理もあるけど)! よくよく考えるとすごいなあ …、と思っていたら、もっとすごい日本語訳?の 動画をみつけてしまったのでご紹介しておきます。
ttp://www.youtube.com/watch?v=h1RkFhN-e3E&feature=related
空耳もまた翻訳。
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イパネマのおなご
小麦色の肌 すらっとして わかくて かわいい女の子
イパネマのおなごが 歩いていくよ すれ違うひとが みんな振り返る
あの子が歩くと サンバみたいさ クールなスウィング 優しい揺れ みんなの注目のまと
ぼくは あの子をみつめるだけ どうしたら この想いを 伝えられるだろう
あの子は歩いていく まっすぐ海をみて ぼくはどうしたら この想いを 伝えられるだろう
○ ○ ○ ○
Writer(s): Jobim/Gimbel/DeMoraes
Tall and tan and young and lovely The girl from Ipanema goes walking And when she passes, each one she passes goes - ah
When she walks, she's like a samba That swings so cool and sways so gentle That when she passes, each one she passes goes - ooh
But I watch her so sadly How can I tell her I love her Yes I would give my heart gladly But each day, when she walks to the sea She looks straight ahead, not at me
Tall, (and) tan, (and) young, (and) lovely The girl from Ipanema goes walking And when she passes, I smile - but she doesn't see (doesn't see)
Ooh) But I watch her so sadly Yes I would give my heart gladly But each day, when she walks to the sea She looks straight ahead, not at me
Tall, and tan, and young, and lovely The girl from Ipanema goes walking And when she passes, I smile - but she doesn't see
She just doesn't see She never sees me
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西瓜へ捧げる詩 ( No.13 ) |
- 日時: 2011/11/06 07:41
- 名前: うんこ太郎 ID:nPu1YMN6
闇雅人様、お気遣いをありがとうございます。私は自身の慰めに投稿させていただいているので、孤軍奮闘というよりも楽しませていただいています(^^;。 ばたばたしておりじっくり読むことができなかったのですが、もし良かったら是非またランボーの詩をご投稿ください。 闇雅人様の訳詩は、私のように適当ではなく、大分しっかりとしたもののように感じました。
なんだかとても嬉しかったです。ありがとうございます!
※ ※ ※
今回はせっかくだから私の好きな「西瓜に捧げる詩」(パブロ・ネルーダ)を翻訳してみました。Robert Blyの英訳から。
Ode to the Watermelon 西瓜に捧げる詩
まなざしあおく 夏、 硬く、 木々は 空に繁る 黄色い太陽から こぼれる剣 ハイウェイの上で 靴が焦げる 夏、 街にのしかかるのは 眩しい世界!
瞼を打つ 黄金の打撃は 砂塵 茨のとげと 熱い石が 両足を刺す 乾いてゆく のど、歯 くちびる、舌 飲み干したい 滝を、暗く青い夜を 南極を!
そして 冷たい 惑星が空を横切る それは まるく、雄大で 星のつまった西瓜 乾きの木に 実るくだもの 夏の、 緑いろの鯨 乾いた宇宙 突然 暗い星は 天球に冷たく かがやく
膨らむ果実を 降ろそう まるい半球を開けば みどり、しろ、あか、 スライスされた 色とりどりの 断面が 溶けてまじってゆく ワイルドな川へと、 砂糖の川へと このよろこび!
水の宝石箱、 冷淡な 果物の女王、 深遠の倉庫 地上の月 太陽 なんという純粋さ 豊かな果肉からは ルビーが 零れ落ちる
わたしたちは あなたを噛み あなたに 顔も 髪の毛も なにもかも うずめてしまう 魂すら!
豊かな 果実をうめる 鉱山は しかし われわれの 望みと 歯に砕かれ 冷たい光へと変わり 湧きあがる水になり やがて わたしたちに やさしく触れて歌う
だから あなたは オーブンのように熱い 昼寝の時間には もういない あなたはただ 過ぎ去るだけ あなたの心、冷たい琥珀は 一滴の水へと 変わった
‡‡ ‡‡ ‡‡
The tree of intense summer, hard, is all blue sky, yellow sun, fatigue in drops, a sword above the highways, a scorched shoe in the cities: the brightness and the world weigh us down, hit us in the eyes with clouds of dust, with sudden golden blows, they torture our feet with tiny thorns, with hot stones, and the mouth suffers more than all the toes: the throat becomes thirsty, the teeth, the lips, the tounge: we want to drink waterfalls, the dark blue night, the South Pole, and then the coolest of all the planets crosses the sky, the round, magnificent, star-filled watermelon. It's a fruit from the thirst-tree. It's the green whale of the summer. The dry universe all at once given dark stars by this firmament of coolness lets the swelling fruit come down: its hemispheres open showing a flag green, white, red, that dissolves into wild rivers, sugar, delight! Jewel box of water, phlegmatic queen of the fruitshops, warehouse of profundity, moon on earth! You are pure, rubies fall apart in your abundance, and we want to bite into you, to bury our face in you, and our hair, and the soul! When we're thirsty we glimpse you like a mine or a mountain of fantastic food, but among our longings and our teeth you change simply into cool light that slips in turn into spring water that touched us once singing. And that is why you don't weigh us down in the siesta hour that's like an oven, you don't weigh us down, you just go by and your heart, some cold ember, turned itself into a single drop of water.
(translated by Robert Bly)
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Amiri Baraka ( No.14 ) |
- 日時: 2011/11/13 10:45
- 名前: うんこ太郎 ID:yp8prIZQ
さて、久々に黒人(アフリカン・アメリカン)の詩を訳します。
今回はAmiri Baraka(1934~)の詩です。 この人はラディカルな詩を書いています。 その中から短くて簡単で、緊迫感の漂う作品をひとつとりあげて訳してみましたが、 原文の緊張した雰囲気は表現できていなくて残念です。
SOSの叫びは、そのまま黒人たちの集合の呼びかけです。 なんに対するSOSなのか、わざと文章で明確にしていないところが不穏です。
SOS (エスオーエス) Amiri Baraka
黒人よ集まれ 全員集合だ、男、女、子供たち 誰だっていい黒人ならば、急ぎだ、集まるんだ 黒人たち、どこにいようとも、集まれ、急ぎだ、来るんだ 黒人よ、来るんだ、緊急だ、集まれ、全員集合だ 全員集合だ、集まれ、黒人よ、集まれ
C= C= C= C= C= C= C= C= C= ┌(;・ω・)┘
Calling black people Calling all black people, man woman child Whatever you are, calling you, urgent, come in Black People, come in, wherever you are, urgent, calling you, calling all black people calling all black people, come in, black people, come on in
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Phillis Wheatley ( No.15 ) |
- 日時: 2011/11/20 08:01
- 名前: うんこ太郎 ID:nX.dFaGo
詩の歴史は古く、例えばギルガメッシュ叙事詩は紀元前20世紀頃のものといわれています。 私は詩の誕生はギルガメッシュ叙事詩よりももっと古く、文字が成立するよりもさらに古いものと思います。 とおいむかし、詩は歌であり、歌は詩でした。文字の書けない赤ん坊であっても、歌うことの楽しさを知っています。 同様に、きっと文字のない時代であっても、人は詩と歌うこととを楽しんでいたのではないかと思います。
しかし、これは非常に単純な表現形式の詩の話であって、洗練された詩が成立するまでにはだいぶ時間がかかります。 ホーマーの詩は紀元前10世紀頃。李白が8世紀頃。詩であるとともに、ヨーロッパの最初の小説といわれるデカメロン(ボッカチオ)が14世紀。 イギリスのロマン派は18世紀。アメリカ文学が花開くのはようやく19世紀です。 日本の洗練された詩としては、万葉集が7世紀頃にできあがりました。 万葉集を読むと、詩が成立する背景にある文化的な豊かさを、肌で感じることができます。 石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも 万葉仮名:石激 垂見之上乃左和良妣乃 毛要出春尓 成来鴨
春の到来を発見した喜び!現代の人間にとっても、古い人間にとってもまったくこの喜びに違いはないようです(^^。 精神的にも物理的にも豊かでないと、こういう詩は誕生しないのではないかと思います。 一方で、奴隷貿易でアメリカ大陸につれてこられた黒人たち。かれらはいったどのような詩をつくりあげていったのでしょうか。 1620年にメイフラワー号が到着。南北戦争が終了するのは1865年です。奴隷制度が廃止されるまでの間、たくさんの黒人がアフリカからアメリカに奴隷としてやってきました。 かれらの歴史は奴隷としてはじまります。
Phillis Wheatleyは一番最初のアフリカン-アメリカンの詩人と言われています。 実際にアフリカン-アメリカンで詩を出版したのは、彼女が最初のようです。 1753年に生まれ、1761年にアフリカから奴隷船でアメリカに連れてこられました。以下の作品は1770年のものです。
※ ※ ※
アフリカからアメリカに連れてこられて Phillis Wheatley
主(キリスト教)は慈悲深くも、 私を主のいない国から救い出してくださった 行き暮れたこの魂にも分かるように教えてくださった 主のあるところにこそ、救いがある 知ることでもなく、追い求めることでもなく 贖うことで、ようやくわかった 私たち黒い人種を軽蔑の目でみる人もあった 「アノ肌ノ色ハ悪魔ト死ノ色ダ」 キリスト教徒よ、ニグロたちよ、カインのように黒きものよ 自らを磨け、そして天使の列車に乗ろう
※ ※ ※
On Being Broght from Africa to America
'Twas mercy broght me from my Pagan Land, Taught my benighted soul to understand That there's a God, that there's a Saviour too: Once I redemption neither sought nor knew. Some view our sable race with scornful eye, "Their colour is a diabolic die." Remember, Chirstians, Negroes, black as Cain, May be refin'd, and join th' angelic train. ※ ※ ※
この詩を最初に読んだときは衝撃を受けました。奴隷船に乗ることを、神の慈悲と書く精神の強さに驚きました。 後日この作者は奴隷として奉仕した家で聖書やラテン語やギリシャ語や古典文学を学び、やがては自由の身となったということを知り、 この詩の現実的な意味を納得もしました。しかし、やはり苦難を慈悲と捉える詩として読むほうが、訴えかけるものとしては大きいようです。
このTCの意訳詩のコーナーをお借りして、しばらく黒人の詩の訳に挑戦してきました。 ここに紹介した詩は一部だけではありますが、自分としてはアフリカン-アメリカンの詩のエッセンスに触れることができたのではないかと思います。 したがって、次回からはまた別の種類の詩の翻訳に挑戦していきたいと思います。
闇雅人様、管理人様、TCの皆様には簡単ですが、この場でお礼を申し上げておきます。 ありがとうございました!
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Mark Strand ( No.16 ) |
- 日時: 2011/11/28 11:05
- 名前: うんこ太郎 ID:N.tD2L2g
Mark Strand (1934-)。この人の短編は村上春樹が翻訳してます(犬の人生)。 詩集は日本語には翻訳されていないかな……? 楽しい詩をひとつ訳してみました。詩を食べちゃうぞー。がおー(^^;。
詩を食べる、こと
- Mark Strand
口の端からインクがこぼれ落ちる こんな幸せってあるかい ぼくは詩を食べている
図書館司書の女の子には 詩を食べるぼくが信じられないみたいだ ただ、さびしそうな目をして ドレスに手を入れたまま通り過ぎた
おや詩がなくなった あたりが暗いぞ 犬たちが地下から階段を駆けのぼってくる
ぎょろぎょろと動く犬の目玉 ブラシみたいに光る足 かわいそうに図書館司書の女の子は しゃがみこんで泣き出した
彼女にはわからないんだ ぼくが四つん這いになって 彼女の手を舐めたら 悲鳴をあげちゃった!
ぼくは、あたらしい人間! 彼女にむかって唸ったり吠えたり たくさんの本とくらやみに囲まれて 喜びで跳ね回る!
※ ※ ※
Eating Poetry BY MARK STRAND
Ink runs from the corners of my mouth. There is no happiness like mine. I have been eating poetry.
The librarian does not believe what she sees. Her eyes are sad and she walks with her hands in her dress.
The poems are gone. The light is dim. The dogs are on the basement stairs and coming up.
Their eyeballs roll, their blond legs burn like brush. The poor librarian begins to stamp her feet and weep.
She does not understand. When I get on my knees and lick her hand, she screams.
I am a new man. I snarl at her and bark. I romp with joy in the bookish dark.
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Juan Ramon Jimenez ( No.17 ) |
- 日時: 2011/12/06 13:30
- 名前: うんこ太郎 ID:hQ4wTGdE
作者:Juan Ramón Jiménez 訳者:Robert Bly タイトル:The Ship, Solid and Black
<意訳>
タイトル:船、固く、黒く
船、固く、黒く
進入してゆく すみきった黒い
立派な港へ
静かに そして 冷たく
―― 待っているひとたちは
まだ眠っている、夢をみている
そしてあたたかく、とおく、この夢のなかで まだ 伸びをしているの
だろうか・・・ 時計はまるで本物みたいだ
だれかの、うたがわしい夢の となりにあるというのに
時計は確かにきちんとしている
どこかで だれかが見ている わたしたちの そまつな 夢と比べて
しずけさ、沈黙
上へ、下へ、壊れてゆく沈黙は
ちがった おとを たてるもの
※ ※ ※ ※
“The Ship, Solid and Black”
By Juan Ramón Jiménez 1881–1958 Juan Ramon Jimenez Translated By Robert Bly
The ship, solid and black, enters the clear blackness of the great harbor. Quiet and cold. —The people waiting are still asleep, dreaming, and warm, far away and still stretched out in this dream, perhaps . . .
How real our watch is, beside the dream of doubt the others had! How sure it is, compared to their troubled dream about us! Quiet. Silence. Silence which in breaking up at dawn will speak differently.
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John Updike ( No.18 ) |
- 日時: 2011/12/09 14:08
- 名前: うんこ太郎 ID:hZfFUIH2
作者:John Updike タイトル:Burning Trash
<意訳>
ゴミを燃やす(Burning Trash)
夜-- あかりを消すと 電球のかぼそいフィラメントは
原子まで 食いつくしてしまいそうな電流から 開放された
かれの妻はねむっている 寝息がひくくしずんでいる
沼のような水源にふれそうなほど低く --彼は死ぬことを考える
妻の父親のものである この丘の上の家にいると
自分の未来に 彼という人間の未来の うしろに
「なにもない」が立っているような感覚がある
「なにもない」は 埃ひとつ着いていない ガラスのようだ
彼は 自分には ふたつしか 楽しみがないことを知っている
きっちり ふたつだけ
ひとつめの楽しみは 明るく 満ちたりてくる なにかの姿だ
まるくふくよかな石や雲 ふとりはじめた豆のさや
ひざや手に 伝わってくる 土のふくらみのようなものたち
ふたつめの楽しみは ゴミを二日おきに燃やすことだ
彼は ゴミを燃やすときの 熱が好きだ そして 危険のまねごとも 好きだ
それから 新聞紙を放り投げるたび
糸や、ナプキンや、封筒や、紙コップを ほうり投げるたび
そのすきまに
魔法のように 炎が
ちろちろと舌を出すように はいりこんでゆく様子を ながめることも
C= C= C= C= C= C= C= C= ┌(;・ω・)┘
Burning Trash
BY JOHN UPDIKE
At night—the light turned off, the filament Unburdened of its atom-eating charge, His wife asleep, her breathing dipping low To touch a swampy source—he thought of death. Her father's hilltop home allowed him time To sense the nothing standing like a sheet Of speckless glass behind his human future. He had two comforts he could see, just two.
One was the cheerful fullness of most things: Plump stones and clouds, expectant pods, the soil Offering up pressure to his knees and hands. The other was burning the trash each day. He liked the heat, the imitation danger, And the way, as he tossed in used-up news, String, napkins, envelopes, and paper cups, Hypnotic tongues of order intervened.
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Anna Świrszczyńska ( No.19 ) |
- 日時: 2011/12/19 09:54
- 名前: うんこ太郎 ID:RpWLkMF.
Anna Świrszczyńska (Anna Swire) 1909–1984 はポーランドの女性詩人です。ナチスドイツのポーランド占領時代は従軍看護婦としてレジスタンスを支えました。 SFみたいな詩ですが、キリスト教徒が過去を遡って行けば、人間が土くれからはじまったアダムとイヴの神話にたどりつくところが、なんとなく納得できておもしろいです。 日本人はどこにたどりつくのでしょう。 タイトル:Woman Unborn 作者:Anna Świrszczyńska 英訳者:Czeslaw Milosz、Leonard Nathan
<意訳>
タイトル:まだ生まれていない女
わたしはまだ生まれていない 生まれるまでは五分かかる この世に生まれるまでの時間は もっと遡ってゆける ほら生まれる十分前 ほら生まれる一時間前 逆行してゆく 走ってゆく マイナスの時間を
生まれる前の時間を歩いてゆく ときおり奇妙な景色の見える トンネルの中を歩くようにして 十年前 百五十年前 わたしが歩いてゆくと足音が響く 生まれるずっと前へ 壮大な過去へとゆこう
逆行してゆく時間は どこまでも続く なにもないということは こんなにも、永遠とそっくりだ
ロマンティシズムの時代 わたしは未婚のまま おばさんなったかもしれない ルネッサンスの時代 わたしは気難しい旦那と結婚して 醜くて愛されない女だったかもしれない 中世 わたしはどこかの居酒屋で 水を運んでいたかもしれない
わたしはまだ遠くまで歩いてゆく 足音が響く マイナスの時間をたどりながら 人生を遡ってゆくあいだ 足音が響きつづける わたしはアダムとイヴに追いついた もうなにも見えない ただ暗い わたしの不在すらも ここでは死んでしまう わたしがそれぞれの時代に 生まれていたとして きっと繰り返していたであろう 数々のありふれた死と一緒に
※ ※ ※
Woman Unborn BY ANNA SWIR
I am not born as yet, five minutes before my birth. I can still go back into my unbirth. Now it’s ten minutes before, now, it’s one hour before birth. I go back, I run into my minus life.
I walk through my unbirth as in a tunnel with bizarre perspectives. Ten years before, a hundred and fifty years before, I walk, my steps thump, a fantastic journey through epochs in which there was no me.
How long is my minus life, nonexistence so much resembles immortality.
Here is Romanticism, where I could have been a spinster, Here is the Renaissance, where I would have been an ugly and unloved wife of an evil husband, The Middle Ages, where I would have carried water in a tavern.
I walk still further, what an echo, my steps thump through my minus life, through the reverse of life. I reach Adam and Eve, nothing is seen anymore, it’s dark. Now my nonexistence dies already with the trite death of mathematical fiction. As trite as the death of my existence would have been had I been really born.
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ゴキブリは詩になるか? ( No.20 ) |
- 日時: 2011/12/23 13:04
- 名前: うんこ太郎 ID:bukAMnu6
たとえば日本人同士であっても上司や部下や同僚といった周囲の理解を得ながら仕事を進められるようになるためには、それなりの訓練を必要としますが、外国語で外国人と仕事を進めることは絶望的なくらいに大変な気がします。伝えたいことがきちんと伝わらなければ、単純な仕事であってもいたずらに複雑になってしまいます。 同じように、外国の詩の訳に関しても、しっかりと要点を掴んで訳すことができないと詩はとんでもない方向にいってしまうのかもしれません。ただし、詩の場合は(趣味のうちであれば)とんでもない方向に行ったところでそれは苦しいというより、楽しいものにちがいないと思いますが。 さて、ようやく二十回めの詩になりました。決して諦めないで、根気よく訳し続けることで、何かを得ることができれば良いと思っています。貴重なスペースをいただき、というか勝手に使っているのですけど(^^;、ともかく大変ありがたく思っています。 この意訳詩を開いてくださった皆様、ありがとうございます。まだ少し早いですが、どうぞ良いお年を!
※ ※ ※
今回の詩はVIVIAN SMITHというタスマニアの詩人の作品です。この詩にはゴキブリが登場するのですが、それがうつくしい光景になってるのでこの詩に出会ったときには新鮮なおどろきがありました。そりゃあゴキブリだって命ある生き物なのですから、偏見を極力排除すればうつくしいにちがいない……。 まあ、そうなんでしょうけど、やっぱりゴキブリだからいくら大切な命でもちょっとくらいは嫌ですよね。ほんのすこしくらいはねえ。
タイトル:Night Life 作者:VIVIAN SMITH
<意訳>
夜のいのち
午前二時に目がさめると カラスが窓をこつこつと つついている音がする ふと見ると大きな枝が折れている 私はもういちど眠りにつくことができず あなたを起こさないように ゆっくりベッドから抜けだす
食べ物をとりにゆき、それから静かに 読書をしようと考える ゴキブリがキッチンの床を横切ってゆく うるしを塗ったような背中は素早く そして種のように乾いている
外では百合の花が月の光をたたえ コップのような花冠をもちあげる 百合はみずからの存在を なみなみと満たしてうちふるえ 夜の湿りのしたたりを ちいさな花の匙ですくう
夜のおと すべてが呼吸をしている 鳥は毅然とする木々の間を移り ナメクジやカタツムリは落ち葉をそっと食む 蛾はこわれやすさを運んで飛んでいる
夜のいのち 昼間とはちがういのち 私たちが見つめようと見つめまいと 関係なしに続いてゆく まるで蟻たちがながくながく列をつくり ここからあそこへと 食べ物を運んで行くかのように
※ chalice lily:ただの百合?それともタスマニアの花でしょうか……。 chalice : 聖杯、杯状の花 lily:百合
¶∴ ¶∴ ¶∴ ¶∴ ¶∴
Night Life BY VIVIAN SMITH
Disturbed at 2 a.m. I hear a claw scratching the window, tapping at the pane, and then I realise, a broken branch, and yet I can’t turn back to sleep again. Slowly, not to wake you, I get up, thinking of food, perhaps a quiet read. A cockroach runs across the kitchen floor, its lacquered shell as quick and dry as seed. Outside the chalice lily lifts its cup in adoration to the mirrored moon, full of purpose as it trembles there, collecting drops of moisture on its spoon. Noises of the night, it’s all alive, birds shifting in the steady trees, slugs and snails eating fallen flowers, a moth freighted with fragilities. Nocturnal life, the other side of things, proceeding whether we observe or not, like rows and rows of brown coastal ants transporting food from here to another spot.
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Robert Creeley ( No.21 ) |
- 日時: 2012/01/08 09:07
- 名前: うんこ太郎 ID:mdHsMsTE
Robert Creeley(1926 – 2005)の詩に挑戦しました。 意味をとらえることができず、 最後のspeech is a mouthは訳すことができませんでした。
原詩のニュアンスを感じていただけたらと思いますので、 せめて音読の動画リンクを貼っておきます。 http://www.poetryfoundation.org/features/video/31
The Language BY ROBERT CREELEY
タイトル:言葉 作者:ROBERT CREELEY
わたしは あなたが好き 言葉をおく
どこか 歯と目のなかに やわらかく噛む
傷つけないように そんなにも多くを望み ほとんど望みもしない
言葉はなにもかも 言い尽くしてしまう
わたしは あなたが好き もう一度
この空っぽは なんだろう
埋めろ、埋めろ 言葉が聞こえる
穴の開いた 言葉たちの 痛みの声が
※ ※ ※
The Language BY ROBERT CREELEY
Locate I love you some- where in
teeth and eyes, bite it but
take care not to hurt, you want so
much so little. Words say everything.
I love you again,
then what is emptiness for. To
fill, fill. I heard words and words full
of holes aching. Speech is a mouth.
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Adele〓嘖omeone like you ( No.22 ) |
- 日時: 2012/01/13 12:28
- 名前: うんこ太郎 ID:yp8prIZQ
さて、気晴らしにAdeleのSomeone Like You を訳してみました。 すげーベタな感じのラブソングになりました。 まあラブソングはそんなものか。毎度ながらかなり適当に訳しています。
動画 Adele Someone Like You http://www.youtube.com/watch?v=hLQl3WQQoQ0
おまけにKarminのカバーです。 AmyとNickを見ていると本当に幸せそうな恋人たちだなーと思います。 個人的にはこの曲はAdeleよりもKarminのカバーの方が好きかも……。 http://www.youtube.com/watch?v=fRS6s9g_K7Y
タイトル : あなたのような誰か
聞いたよ 落ちついたって 素敵な人見つけて 結婚したって
聞いたよ 夢をかなえたって 私には届けられなかったなにか あなたの恋人が とどけてくれたんだろうね
もう一度だけ会いたいけど どうしてこんなに 気後れしてしまうのかな 私らしくないね
このままもう会えないなんてつらいよ せめてもう一度だけ 私の顔を見てほしい
あーあ あなたみたいな誰かを探すね あなたもきっと幸せに わたしのこと忘れないで
わたしも忘れないよ
※ ※ ※
I heard That you're settled down That you Found a girl And your Married now
I heard That your dreams came true I guess she gave you things I didn't give to you
Oh friend Why you so shy Ain't like you to hold back Or hide from the light
I hate to turn up out of the blue uninvited But I couldn't stay away I couldn't fight it I hoped you'd see my face and be reminded That for me It isn't over
Nevermind I'll find someone like you I wish nothing but the best For you too Don't forget me I beg I'll remember you still Sometimes it lasts in love But sometimes it hurts instead
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イロコイ族の精霊の祈り ( No.23 ) |
- 日時: 2012/01/25 12:13
- 名前: うんこ太郎 ID:DjPDhL.U
作者不詳。イロコイ族の詩です。
Great Spirit Prayer of the Iroquois イロコイ族の精霊の祈り
精霊よ、あなたの声は風に鳴り その息吹は生命を世界に満たす
私の願いを聞いてください あなたの強さと知恵が必要です 私は多くのあなたの子の一人として来ました 小さく弱い一人として
私にうつくしい道を歩ませてください 赤く、紫に暮れてゆく日をいつまでも見守らせてください
あなたが創り出したすべてに、敬意の手で触れさせてください あなたの声がはっきりときこえるように、私の耳を鋭くしてください
あなたの教えが分かるように賢くしてください 立ち向かってくるものへ、穏やかで強く向き合えるように助けてください
あなたが岩と葉に隠した真実について学ばせてください 汚れのない考えと人を助ける気持ちとを持たせてください
おもねるのではなく、おもいやりを持てるように助けてください 私は強さが欲しい、だれかより強くなるのではなくて 一番の敵である私と闘うために
穢れのない手とまっすぐな目を持たせてください あなたの御許へといつでも行けるように
やがて私の生が終わるとき 夕焼けの空が闇に変わっていくように 私の魂があなたの御許へと 恥じることなく行けますように
※ ※ ※
Oh, Great Spirit, whose voice I hear in the wind, Whose breath gives life to all the world. Hear me; I need your strength and wisdom. I come to you as one of your many children. I am small and weak, Let me walk in beauty, and make my eyes ever behold the red and purple sunset. Make my hands respect the things you have made and my ears sharp to hear your voice Make me wise so that I may understand the things you have taught my people. Help me to remain calm and strong in the face of all that comes towards me. Let me learn the lessons you have hidden in every leaf and rock. Help me seek pure thoughts and act with the intention of helping others. Help me find compassion without empathy overwhelming me. I seek strength, not to be greater than my brother, but to fight my greatest enemy Myself. Make me always ready to come to you with clean hands and straight eyes. So when life fades, as the fading sunset, my spirit may come to you without shame.
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Carl Sandburg ( No.24 ) |
- 日時: 2012/01/31 19:30
- 名前: うんこ太郎 ID:lK0mn.Ek
Carl Sandburg の「霧」です。 霧がやって来る様子を猫のやわらかな歩みに例えている。
The Fog comes on little cat feet
はじまりの音がしなやかでやわらかい。 すごいなあ。
http://www.youtube.com/watch?v=1zK_XUNYG7M&feature=related
タイトル:霧
霧がやって来る ちいさな猫の足つきで
港と街を見渡し 静かにすわっては やがてどこかへ去って行く
***********
Fog THE fog comes on little cat feet. It sits looking over harbor and city on silent haunches and then moves on.
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マヘリアジャクソン ( No.25 ) |
- 日時: 2012/02/06 11:35
- 名前: うんこ太郎 ID:XyuL/5fc
マヘリアジャクソンの歌を聞くと涙がでそうになる。齢だな。 キリスト教なんて信じられないっすけどね。けっ、どうせひねくれ者ですよ、仏教徒っすよ(^^;。
http://www.youtube.com/watch?v=TmR1YvfIGng
WE SHALL OVERCOMEはアメリカ公民権運動の時によく歌われました。 元々は労働者の歌(だったはず)。映画フォレスト・ガンプにも 公民権運動のシーンでこの曲が使われていたような、いなかったような…。
We shall overcome (アメリカ民謡/賛美歌)
いつか乗り越えられる 心の底から信じている いつか乗り越えられる ともに手をとりあい 自由になる 恐れはしない ひとりではないから きっとひろい世界が開ける かならず乗り越えられる
1. We shall overcome We shall overcome We shall overcome some day
CHORUS: Oh, deep in my heart I do believe We shall overcome some day
2. We'll walk hand in hand We'll walk hand in hand We'll walk hand in hand some day
CHORUS
3. We shall all be free We shall all be free We shall all be free some day
CHORUS
4. We are not afraid We are not afraid We are not afraid some day
CHORUS
5. We are not alone We are not alone We are not alone some day
CHORUS
6. The whole wide world around The whole wide world around The whole wide world around some day
CHORUS
7. We shall overcome We shall overcome We shall overcome some day
※開いてくださった皆様ありがとうございます。 しばらく投稿はお休みします。
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日系人たちの詩 ( No.26 ) |
- 日時: 2012/03/04 12:11
- 名前: うんこ太郎 ID:TunnvVAE
ブラジルに住む日本人や日系人向けに、伯国日経新聞(たしかこういう名前の新聞だったと思う)という日本語の新聞があって、そこでは最近の日本の政治や経済、日本で流行となっている芸能ニュースや、ブラジルに進出している日系企業の情報が載っています。その新聞の投稿欄に、詩歌の雑誌が紹介されていたことがありました。それは「ふろんていら」(これは良い名前だと思ったので、しっかり覚えている)という名前の詩の同人誌で、俳句、短歌、自由詩を掲載しているということでした。 思えば国際化などと言われる随分昔から、多くの日本人が外国へと移住しており、取り分け北米、南米には多くの日系人(と日本人移民者)が住んでいます。 彼らはいったいどういう詩を書いているのか、調べられる範囲で調べて、訳していきたいと思います。 最初に紹介するのはJOY KOGAWAです。日系二世。カナダ在住の小説家で詩人です。子供の頃に第二次世界大戦により、日系人強制収用所へ入ったことがあります。
(ジョイコガワWIKIPEDIAリンク) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%82%AC%E3%83%AF
タイトル:壁があるところには 作者:JOY KOGAWA
壁があるところには 道がある 壁のまわりに、壁を越えて、もしくは ゲートを通じて もしかしたら梯子も 扉もあるかもしれない 歩哨は ときどき眠ってしまうし 秘密の暗号を盗み聞きできるかもしれない 拷問という方法だってある 地下の抜け穴の地図のてがかりを 聞き出すのだ 飛行船も ヘリコプターも、ロケットも、爆弾も 槌もあるし、トランペットを持った兵隊もいる トランペットの一斉のひと吹きは 壁の土台を粉々にしてしまう
壁があるところには 言葉がある レンガの隙間で交わす囁きや 口からもれる慟哭と祈り 暗号を打ち鳴らす音 足につけた メッセージを運ぶ鳥 書くべき手紙がある 小説だって
壁のこちら側で 私は雲にまで続いている 壁の頂上を見つめている あなたが生む音がすべて聞こえる だけどあなたの姿は見えない
あらぬ方向に耳をかたむければ ゆめのような かすかな、さけび声が聞こえる 壁の 腹の中から
※ ※ ※ ※
WHERE THERE'S A WALL Joy Kogawa
where there's a wall there's a way around, over, or through there's a gate maybe a ladder a door a sentinel who sometimes sleeps there are secret passwords you can overhear there are methods of torture for extracting clues to maps of underground passageways there are zepplins helicopters, rockets, bombs bettering rams armies with trumpets whose all at once blast shatters the foundations
where there's a wall there are words to whisper by a loose brick wailing prayers to utter special codes to tap birds to carry messages taped to their feet there are letters to be written novels even
on this side of the wall I am standing staring at the top lost in the clouds I hear every sound you make but cannot see you
I incline in the wrong direction a voice cries faint as in a dream from the belly of the wall
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Yone Noguchi ( No.27 ) |
- 日時: 2012/03/12 11:56
- 名前: うんこ太郎 ID:UlbE434g
今回は野口米次郎(Yone Noguchi)の詩を訳してみました。 野口は彫刻家のイサムノグチの父親です。移民ではありませんが、 19歳で渡米し、英語で詩を書いて発表しています。 日本に生まれた詩人としては、世界ではじめて英語で詩を発表した人で、 野口の英詩はエズラパウンドや西脇順三郎にも影響をあたえました。 パウンドによって糊と鋏で編集されたと言われるエリオットの荒地が、 やがては田村隆一や鮎川信夫といった日本の戦後詩人たちに影響をあたえたことを思うと、 詩の歴史というのもなかなかおもしろいなあ、と思います。 野口米次郎はしっかりと詩の歴史に足跡を残したのだと思います。 ちなみにここで訳してみた詩人という作品は不思議な作品だと思いますが、 これが野口の詩人の理想だったのでしょうか…。本人の和訳もあるのかな、気になるところです。
詩人
とびだしてくる、深くて暗く かがやく謎から、かたちが 完全なものが 日の光を掻き回すようにしてやって来る 馥郁の息を吐き 星へつづく道を目に宿して 顔には微風が吹いている 夜空のかがやきを背負い 宙に舞う映像のごとく歩む 永遠の情熱を撒き散らしながら 彼の住処は暁の光だ 夕闇の音楽は彼の演説である 彼の目により世界をのぞき ひとは塵の墓標に背を向け 森へ向かって歩き出す
※ ※ ※
The Poet BY YONE NOGUCHI
Out of the deep and the dark, A sparkling mystery, a shape, Something perfect, Comes like the stir of the day: One whose breath is an odor, Whose eyes show the road to stars, The breeze in his face, The glory of heaven on his back. He steps like a vision hung in air, Diffusing the passion of eternity; His abode is the sunlight of morn, The music of eve his speech: In his sight, One shall turn from the dust of the grave, And move upward to the woodland.
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西條八十 ( No.28 ) |
- 日時: 2012/03/23 12:01
- 名前: うんこ太郎 ID:WpmGdudg
※致命的な誤字がございましたので修正しておきますわあ恥ずかしい。 誤:西篠 正:西條
西條八十(1892-1970)といえば、村田英雄の「王将」や、藤山 一郎の「青い山脈」、島倉千代子の「この世の花」といった歌謡曲の作詞で 有名です。 西條八十はもともと早稲田で英語の講師をしており、やがてフランス文学 者としてボードレールやランボーの研究でも知られました。児童文学の世界 では金子みすずを見出した人でもありました。日系人ではなく、外国語で詩 を書いているわけでもないのですが、今回とりあげてみました。吉本隆明が 西條八十に触れていたことがあって、訃報に触れてなんとなく西條八十のこ とを思い出したからです(別に吉本隆明のファンではないのですが)。 西條の詩は英訳されて、ペンギンブックスの「Japanese Verse」で紹介されています。
The Crow’s Letter Yaso Saijo Translated by Geoffrey Bownasand Anthony Thwaite
I opened and read The small red envelope The mountain crow had brought: ‘On the night of the moon The hills will blaze Savage and red.”
I was going to reply When my eyes opened. Ah, yes, there it was: A single red leaf.
※ ※ ※
からすの手紙 西篠八十
やまのからすがもってきた あかいちいさなじょうぶくろ あけてみたらばつきのよに やまがやけそろ、こわくそろ
へんじかこうとめがさめりゃ なんの、もみじのはがひとつ
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AI ( No.29 ) |
- 日時: 2012/03/23 19:16
- 名前: うんこ太郎 ID:j/97xChI
Florence Anthony (後に小川愛/AIと改名)(1947-2010)は、 テキサスで生まれました。日本人の父親がいたそうですが、生涯顔を知る ことはありませんでした。母親の血筋は複雑で、日本人だけではなく、 アイリッシュ、ネイティブアメリカン、黒人、それぞれの血の混じり合いを 自らのルーツと捉えていました。 愛という名前に改名したのはFlorence Anthonyという名前が嘘のように 感じられていたからのようです。小川愛は日本語の名を名乗ることで、自ら をとりまく血と過去とを、深く受け入れようと試みたのでしょうか。 この人の詩は結構恐いものがあって、今回訳してみた詩もなんだか状況 よく分からないですけどこわいです……(^^;
女から男へ AI
雷が屋根をうった ナイフと闇とを 四方の壁へと深く押し込む 壁は血のようにして あなたと私の上に光を垂らした あなたは顔を扇子みたいに 折りたたんでいる 私と一緒にいることで どのくらい怯えているのか 見ることはできない 最後にたどりつく ベッドのなかでさえも わたしたちが混じることはない 隠す必要はない あなたは雪で、私は炭だ ほらこの傷痕が証拠だ 口をあけてごらん 黒の味を教えてあげるから 決して忘れることのできない味を 少しだけ、いい気にさせてあげる 勇敢な気持ちにしてあげる 後でそっくり 取り返すけれど
※ ※ ※
Woman to Man BY AI
Lightning hits the roof, shoves the knife, darkness, deep in the walls. They bleed light all over us and your face, the fan, folds up, so I won’t see how afraid to be with me you are. We don’t mix, even in bed, where we keep ending up. There’s no need to hide it: you’re snow, I’m coal, I’ve got the scars to prove it. But open your mouth, I’ll give you a taste of black you won’t forget. For a while, I’ll let it make you strong, make your heart lion, then I’ll take it back.
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やっほー30回。 ( No.30 ) |
- 日時: 2012/03/31 17:23
- 名前: うんこ太郎 ID:lK0mn.Ek
ようやく30回目です。下手なりに翻訳をしてみることで、色々なことに 気がつきました。訳の難しさや、自分のダメさ加減を宣伝しても意味がない ばかりか、浅ましさすら感じさせてしまうことは承知しているのですが、 それでも英詩を訳すことで気がついたこととして、1~5までメモ書きをば。
1.リズム リズムをつくりあげる詩の韻律よりも、言語自体が持つアクセントの方が ずっと大きな課題だ。単語一つのなかで母音ひとつだけが強勢を持つ英語と、 複数の母音に強勢がまたがる日本語とでは、根本から言葉のリズムが違う。 英語の方が起伏があり、日本語のほうが平坦になる。詩の音楽性については、 日本語の詩を英語訳で再現することはほとんど不可能だし、その逆もしかり。
2.音 英語の音を音声学に従って分解してゆけば、破裂音、摩擦音、鼻音、閉鎖音…。 そもそも日本語に存在しない音を、どう翻訳で再現するのか。音の違いは物理的 な振動の違いだけではなくて、セクシーな音、まぬけな音、ラフな音など、 意味合いの違いを生み出すこともあるようだ。要は気持ちのいい音、不快な 音があるけど、それって訳せるのかな? 自分にはまずそういう音の差が分からない。
3.視覚効果 詩の視覚効果については英語よりも日本語の方が情報量が多いようだ。SlaughterとLaguhter。 この程度のSlant Rhymeよりも、日本語の赤、紅、赫、緋… といった文字の多様性の方が拡がりへの可能性を感じさせる。 文字の形が担う情報量と、細かいニュアンスまでを追求する視覚機能で、 いかに音のマイナスを補うか。なんかここだけはがんばれそうな気がする。
4.語彙 例えば中島敦の漢文調の文章を英語に訳すことはできるか? 私はできると 思う。英語にも近代英語、中英語、古英語がある。アングロサクソン系の言葉は 大和言葉のようなものだし、ゲルマン系の語彙を豊富に使えば外来語の響きを つくれるはずだ。
5.詩の意味と、トーン(調子、語り口) 詩の音楽性や視覚効果を台無しにしても良いのであれば、翻訳で十分に対応が 可能だと思う。ただし限られた条件(文字数、語彙など)で翻訳するのであれば、 かならず困難がともなう。そして詩を訳すのであれば、どうしても限られた 条件のもとで訳す必要性がある。
こう書いていくと、詩を訳すことなんて不可能なんじゃないの? って 思いますが、そこは分厚い面の皮だけあればなんとか訳せるような……。 翻訳は錦の裏側を見せるようなものとか、翻訳はタペストリーを裏から 見るようなものとか言いますが、私の訳の場合はもっと酷くて、 エロビデオのモザイクを通販の機械で取り除こうとしている感じかな。 良い詩を読んだときの、あの言葉がひとつひとつ立ち上がってくる感じ、 ああいう訳がいつかできたらなあ。あとエロビデオって言い方は古い?
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世界で一番古い歌 ( No.31 ) |
- 日時: 2012/04/12 12:55
- 名前: うんこ太郎 ID:1Lh8prxs
今回も脱線いたしまして……(^^;。
ホメロスの叙事詩は音楽と一緒にうたわれたといいますが、 残念ながら旋律は残っていません。いったいどんな歌だったんだろう!
Seikilos epitaph という歌は これは紀元前二世紀から紀元一世紀頃の間に書かれたとされています。 歌詞も旋律も残っていて、そういう「完全な形で残っている歌」としては、 世界最古のものだと言われています。
http://www.youtube.com/watch?v=xERitvFYpAk (YOUTUBEの動画リンクです)
エルトーハ・ファティスで歌われた歌も、こんな歌だったのかもしれません。
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Seikilos epitaph (セイキロスの墓碑) 作者不詳
Ὅσον ζῇς, φαίνου, Hoson zês, phainou, While you live, shine, 生きているいまを、輝こう
μηδὲν ὅλως σὺ λυποῦ· mêden holôs su lupou; have no grief at all; 悲しんではいけない
πρὸς ὀλίγον ἐστὶ τὸ ζῆν, pros oligon esti to zên, life exists only for a short while, 人生はほんの束の間のものだから
τὸ τέλος ὁ xρόνος ἀπαιτεῖ. to telos ho chronos apaitei. and time demands its toll. 時間は使用料を請求するのだから
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ジャックプレヴエール ( No.32 ) |
- 日時: 2012/05/12 14:31
- 名前: うんこ太郎 ID:1Lh8prxs
ジャックプレヴェール
「枯葉」ですよ、プレヴェールですよ。 訳しちゃったけど、いいのかなあという気もする。 すみません私ごときが。
ジャックプレヴィエールは映画「天井桟敷のひとびと」のシナリオで知られます。 枯葉は有名な歌ですね。気が向きましたらYOUTUBEでお楽しみください。
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枯葉
覚えておいて欲しい わたしたちが友だったときのことを あのすばらしい日々のことを 太陽は今日よりも燃えていた
秋、落ち葉が世界をうずめている わかるだろ、私は忘れはしない
落ち葉が世界をうずめている 思い出も後悔さえも
やがて北風が冷たい夜の向こうへ すべてを連れ去っていく 私は忘れない あなたが歌っていた歌を
この歌はわたしたちだ とても好きだった 一緒に生きてきた それぞれ愛しあったというのに
だけど恋人はいつしか別れるものだから
ゆっくりと、音もなく 波は浜に打ち寄せる 砂浜に残った、 足跡のうえに
孤独な恋人たちが残した 足跡のうえへと
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French Les feuilles mortes
Oh ! je voudrais tant que tu te souviennes Des jours heureux où nous étions amis. En ce temps-là la vie était plus belle, Et le soleil plus brûlant qu'aujourd'hui. Les feuilles mortes se ramassent à la pelle. Tu vois, je n'ai pas oublié... Les feuilles mortes se ramassent à la pelle, Les souvenirs et les regrets aussi Et le vent du nord les emporte Dans la nuit froide de l'oubli. Tu vois, je n'ai pas oublié La chanson que tu me chantais.
{Refrain:} C'est une chanson qui nous ressemble. Toi, tu m'aimais et je t'aimais Et nous vivions tous les deux ensemble, Toi qui m'aimais, moi qui t'aimais. Mais la vie sépare ceux qui s'aiment, Tout doucement, sans faire de bruit Et la mer efface sur le sable les pas des amants désunis.
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English Fallen leaves
Oh I would like you so much to remember The joyful days when we were friends. At that time, life was more beautiful And the sun burned more than it does today. Fallen leaves can be picked up by the shovelful. You see, I have not forgotten... Fallen leaves can be picked up by the shovelful, So can memories and regrets. And the north wind takes them Into the cold night of oblivion. You see, I have not forgotten The song you used to sing me.
(chorus) This song is like us. You used to love me and I used to love you And we used to live together, You loving me, me loving you. But life separates lovers, Pretty slowly, noiselessly, And the sea erases on the sand The separated lovers' footprints.
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万葉集は誰が書いたのか ( No.33 ) |
- 日時: 2012/05/20 11:25
- 名前: うんこ太郎 ID:nX.dFaGo
万葉集は誰が訳したのか?
私はよく知らなかったのですが(今もたいして分かってないのですが)、 元々万葉集は万葉仮名(漢字を仮名のように使った)で書かれていたそうです。 しかし万葉集が編纂されてから二世紀もすると万葉仮名は解読困難となります。 だから現在私たちが読んでいるような漢字仮名まじり、五七五七七の和歌に するためには誰かが翻訳(訓読)を施さなければならなかったそうです。 江戸期の国学者である賀茂真淵や本居宣長をはじめとして、多くの学者の 解読の歴史があったということなのですが、これっておもしろい! 我々が今読んでいる万葉集は、訓読あってのものなのですね。 時代を挟めば(地理的に)同じ国であっても外国みたいなものだという、 あたりまえのことなのかもしれないですが、過去って未来と同じように 未知でいっぱいで楽しいです。
柿本人麻呂 巻1-40
原文(万葉仮名)
鳴呼見乃浦爾 船乗為良武 乙女等之 珠裳乃須十二 四宝三都良武香
1. リービ英雄 の英訳
On Ami Bay, the girls must now be riding in their boats. Does the tide rise to touch the trains of their beautiful robs?
2.うんこ太郎の日本語意訳
今ごろ鳴呼(あみ)の入り江では 女たちが船に乗っていることだろう 艶やかなローブのすそに触れるまで 潮は満ちているだろうか
3.万葉集(訓読)
鳴呼見の浦に 船乗りすらむ 少女(をとめ)らが 玉裳(たまも)のすそに 潮満つらむか
4.意味
鳴呼の浦で今ごろ船に乗って遊んでいるだろう、あのおとめたちの美しい衣裳のすそには、潮が満ちているのだろうか。
※鳴呼は現在の三重県鳥羽近郊の入り江とされる。鳥羽は伊勢の東。志摩半島の北東端で、伊勢湾口に位置している。 志摩(しま)とはすなわち島(しま)である意味のようで、菅島、答志島、神島などの島々が鳥羽から東へと山のように続く。 このあたりはリアス式海岸で、大小の湾をかかえているということ。
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ホセワタナベ(ペルー) ( No.34 ) |
- 日時: 2012/06/17 00:43
- 名前: うんこ太郎 ID:kTy0/CN6
ホセ・ワタナベ(JOSE WATANABE 一九四六-二〇〇七)は、日本人の父親とペルー人の母親を持つ、日系二世のペルーの詩人です。ペルーでの詩人としての評価は高く、一九七一年にAlbum de Famillia(家族のアルバム)でYoung Poet of Peru賞を受賞しました。それから約二十年間詩を発表することもなく沈黙しましたが、一九九四年にHistoria Naturalを出版。二〇〇二年にはコロンビアで、二〇〇四年にはスペインで、詩のアンソロジーが出版されました。 ワタナベはサトウキビ畑で働く家族の、十一人兄弟のなかの五男だったそうです。「いつか家族みんなで日本に戻ろう」そう夢を語る父親自身が、その夢を信じていないように見えたと語っています。
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砂の駅
大きなとかげが 突然、目の前にあらわれた 砂の色に溶け込み、たじろぐこともなく じっと私を観察している 音もなく はやぶさが 太陽のふちをなぞって飛ぶように 音もなく 砂が 突風のなかへと散っていくように
不思議なとまどいで 鼓動が 空気をゆらしてしまいそうだ とかげはきっと逃げてしまうだろう
私はしずけさのなかに 鈴のおとを聞く かんだかく鳴り響く列車の車輪 乗客たちの肩の向こうで めそめそと泣いている羊の群れ
ここはかつて砂漠の駅だった 今では遠くまで続くレールは錆びつき ここに眠るものたちは影もなく つもった落ち葉のようにして かすかにゆれる
この駅の砂は 無花果の実を燃やし 羊の骨にも刺さるような 棘の多い種だけを残した
ここでは砂は 生きているひとつの物質だ この駅のベンチで眠るものたちは だれも 帽子の上の砂を 振り払おうとはしない
私はもうここを離れよう そう思って駅に背を向けたとき 自分のなかにある隙間を意識した この隙間は私が受け継いだもの 母はむかしこの駅で、旅行者たちに 果物を売っていた
母の面影が いま私の背中に ひっそりと 駆け寄ってくるように感じる 情け容赦のない砂が 母が果物を入れていた籠のなかへ さらさら入りこんだようにして
(Historia Naturalより)
――――
Sand Station
The prodigious lizard darts out of my sight. It conceals itself in the color of the sandbank, unflinching, observing me as a falcon flies off the patch of sun and sand falls evenly through the gusts of air upon no one. No sound stirs it. It would run if the air could pulse with my own strange confusion: I make out a ting, the strident blare of a train and the bleat of a sheep on a passenger’s shoulders. This was once a desert station. A stretch of rail is blurred with rust, A sleeper quivers like a pile of leaves without shade: The desert burned off the ficus and seeded its own thorny plants that torment the skeleton of goat. Here sand is the one live substance, no one who sleeps on these splitting platform benches shakes it from his hat. I abandon this place. Turning, I sense my own porosity, my inheritance: My mother used to sell fruit here to travelers. I feel her run up behind me like a relentless body of sand surging and disintegrating with her basket of wares.
※ ※ ※
訳というよりは、自分の汲みとったイメージにそって「作文」してしまいましたが、この詩のなかの死と生のイメージ、喪失感と熱い砂のイメージが伝わってくれればありがたいです…。
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もはや訳してすらいない ( No.35 ) |
- 日時: 2012/07/13 13:23
- 名前: うんこ太郎 ID:yp8prIZQ
雲のやうに 左川ちか
果樹園を昆虫が緑色に貫き 葉裏をはひ たえず繁殖してゐる。 鼻孔から吐きだす粘液、 それは青い霧がふつてゐるやうに思はれる。 時々、彼らは 音もなく羽搏(はばた)きをして空へ消える。 婦人らはいつもただれた目付で 未熟な実を拾つてゆく。 空には無数の瘡痕がついてゐる。 肘のやうにぶらさがつて。 そして私は見る、 果樹園がまん中から裂けてしまふのを。 そこから雲のやうにもえてゐる地肌が現はれる。
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Like a cloud
Insects pierce green through the orchard crawl the undersides of leaves ceaselessly multiplying. Mucous expelled from nostrils may seem like blue mist falling. At times, they without a sound flutter and vanish into the sky. The ladies, always with an irritated look in their eyes gather the unripe fruit. Countless scars are attached to the sky. Hanging like elbows. And then I see, the orchard cleaving from the center. A bare patch emerges there, burning like a cloud.
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広島平和記念式典 ( No.36 ) |
- 日時: 2012/08/17 12:48
- 名前: うんこ太郎 ID:YFJW8wKU
8月6日にはニューヨークでも広島平和記念式典が開催されます。 今年の式典では被災地から震災のいたみを伝える詩も英訳で紹介されたそうです。
ただじっと息をひそめている窓に黒い雨ふるふるさとさびし 美原凍子
震災により、お亡くなりになられました方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に対しまして、心よりお見舞い申し上げます。
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Re: 意訳詩 ( No.37 ) |
- 日時: 2012/09/01 10:47
- 名前: うんこ太郎 ID:mU7135uM
幼病み医師の西語も判じえず辛かりしかの日々遥かなり ‐奥山元女 はるばると大海原を乗り越えてペルーの土地に鋤を打ち込む ‐深沢ひろの
深沢さんは現在九七歳のおばあちゃんで、ここに紹介した詩は、二〇〇二年のペルー日系人協会の短歌コンクールで最優秀賞に選ばれた作品です。 この短歌は日秘文化会館の玄関に、石碑となって飾られています。
南米の国々のなかでもペルーは日本との関係の深い国です。一八七三年、ペルー政府は南アメリカの国としては初めて、日本と修好通商条約を結びました。そして一八八九年には日本からの最初の移民がペルーへと到着しました。 第二十代内閣総理大臣である高橋是清も、まだ総理大臣どころか大蔵大臣となる前の一八九〇年に、銅山開発のためにペルーに滞在しています。高橋はペルーの実業家との合資で、日秘鉱業株式会社(ペルー=秘国)を設立しました。今からすでに百年以上前に、ペルーには日系の企業が存在していたのです。 後日高橋是清は横浜正金銀行(東京銀行前身)の頭取となりますが、東京銀行のながれをくむ三菱東京UFJ銀行が昨年二月にペルーに駐在員事務所を開設したことはおもしろい歴史のめぐりであるといえるかもしれません。旧東京銀行のリマ支店長が銃撃されるという暗い事件を経て、一旦ペルーから撤退した後の、再びのペルー進出です。つくづく日本企業のたくましさを実感してしまうのは私だけではないと思います。日系の銀行では他に、三井住友銀行が二〇一二年の五月十一日付けでペルーに出張所を開設しました。両社とも一番の目的は裾野を広くもち、ペルーに進出する日系企業への融資を行うことだそうです。 昨年のペルーの経済成長率は約七パーセントで、今年も六パーセントの成長が見込まれています。発展途上国の経済成長率の平均が四パーセントですから、これは高い数字といえるでしょう。ウマラ現大統領は自由経済路線をとっており、通商政策ではFTAとTPPを重要視しています。日本で注目されているTPPへの加入も、ペルー政府は積極的に支援するという姿勢をとっています。 繰り返しとなってしまいますがペルーと日本との関係は深く、ペルーにはブラジルに続いて南米では二番目に大きな日系人社会があります。
百年過ぎし苦節の先駆者の蒔きたる種はしかと根を張り- 伊 英雄
一八八九年の日本人のペルーへの最初の移住開始から百年以上が過ぎました。「蒔きたる種がしかと根を張る」、自分のものではない土地に根を張ることはどれだけ困難なことだったでしょうか。今から百年前、夢を求め日本からはるばるペルーへ渡った日系人たち。彼らの苦難は想像を絶するものだっただろうと思います。
※気がついたら最初に投稿してからすでに一年以上が過ぎていました。一年で、これだけかというさびしさもありますが、なによりも身勝手な投稿を閲覧してくださった皆様にお礼をお伝えしたく思います。ありがとうございました。
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エリナリグビー ( No.38 ) |
- 日時: 2012/09/16 09:59
- 名前: うんこ太郎 ID:vKvstO/A
ビートルズのエリナリグビーを意訳しました。
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孤独な人たちが歩いていく さびしい人たちが歩いていく
エリナリグビー、 結婚式が行われている教会で ひとりお米を拾い上げている 夢を見ることだけが楽しみ 戸棚から取り出した顔をまとって 窓際でなにかを待ち続けているだけ
孤独な人たち、いったいどこから来たのだろう さびしい人たち、帰るところはあるのだろうか
マッケンズィー牧師、聞く人のいない説教を書く だれも必要としていないのに 夜中にほころびた靴下を繕っている いったい誰のため?
孤独な人たち、いったいどこから来たのだろう さびしい人たち、帰るところはあるのだろうか
エリナリグビー、教会で亡くなり埋葬された 名前を記した墓だけが残る マッケンズィー牧師、埋葬のあとで土のついた手を拭った だれが救われたというのか
孤独な人たち、いったいどこから来たのだろう さびしい人たち、どこに帰ればいいのだろうか ※ ※ ※
Beatles Eleanor Rigby Lyrics
Ah, look at all the lonely people Ah, look at all the lonely people
Eleanor Rigby picks up the rice in the church where a wedding has been, Lives in a dream Waits at the window, wearing the face that she keeps in a jar by the door Who is it for?
All the lonely people Where do they all come from? All the lonely people Where do they all belong?
Father Mckenzie writing the words of a sermon that no one will hear No one comes near. Look at him working, darning his socks in the night when there's nobody there What does he care?
All the lonely people Where do they all come from? All the lonely people Where do they all belong?
Ah, look at all the lonely people Ah, look at all the lonely people
Eleanor Rigby died in the church and was buried along with her name Nobody came Father Mckenzie wiping the dirt from his hands as he walks from the grave No one was saved
All the lonely people Where do they all come from? All the lonely people Where do they all belong?
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加川文一 ( No.39 ) |
- 日時: 2012/09/23 10:33
- 名前: うんこ太郎 ID:j/97xChI
加川文一の詩の訳に挑戦してみました。
大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した石川好の「ストロベリーロード」にも 記述がありますが、加川は「南加文芸」というロサンゼルスの同人文芸誌の同人でした。 この文芸誌は戦争中に日系人収容所に収容されていた帰米二世によって 刊行されていたようです。 帰米二世というのは米国で生まれ、一度日本に戻って教育を受けてから 再度米国にもどってきた日系人たちのことをいうわけですが、 移民一世、二世、帰米二世とはそれぞれ立場が異なるため 時代の奔流にまきこまれ、それぞれつらい確執もあったようです。
これから年末までは、日系人それぞれの立場、日系人収容所、 当時の文芸誌など、このあたりの事情をもっとよく調べながら、 この時代の詩をもっと訳したり紹介したりしていきたいと思います。
さて、加川文一ですが、この意訳詩のコーナーで以前紹介した野口米二郎のように 日本で生まれ、英語で詩を発表した数少ない日本人のひとりだそうです。 昭和56年に77歳で亡くなりました。
今回訳してみた詩は内容から推測すると収容所に訪れた春に関する詩ではないかと思います。
しかしながら手がかりはなく、実際のところは分かりません。 もしもこの時代の詩に詳しい方や、ご存知の方などいらっっしゃれば、 教えていただけますと助かります。
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村の春
山羊がなき声をあげる、暖かく酔いしれた空気のなかを 春に、チューリップと水曜日とを載せて きいきいと鳴る荷車が、午後の道をゆけば 黄金の平穏が目を覚ます
この平穏は何百年もの間、村を包んだ金色の静けさ 春へと差し込む黄金の日差しを さえずる鳥と蜂とが数え その男は土のなかに喜びや憎しみを感じ入り 磨り減ることのない 自分自身のなかの歳月を噛み締める
その男とは意味ではなく、彼は私だ 私はここにやってきて、そして辿り着いていないもの 地上の夢のように後回しになっている しかし春よ! お前の豊かさで 私の屈辱を覆わないでおくれ 屈辱というものこそは死よりも深いという だが、この豊かな春の前では 死は所詮深い嘘でしかないだろう
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The goats yawn in the warm drunk air. In the spring the tulips and Wednesdays And creaking cart on the afternoon road Wake the gold atomosphere of centuries Settled deep in the village peace. And in the spring where the gold of sunlight Is numbered by hummingbirds and bees, The man attends to his earthly joy, hated Year in and year out by his identity Which no other proof can reduce. The man is not a meaning but he is I, I who came and could not quite arrive, Postponed as an earthly dream. But O spring! out of your contentment Do not praise me overmuch for my humility, For humility is deeper than death, And death at its best is but deepest lie.
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ナバホ族の詩 ( No.40 ) |
- 日時: 2012/10/09 11:26
- 名前: うんこ太郎 ID:hZfFUIH2
風の跡
はじめに命を吹き込んだのは風でした。 命を与えてくれているのは、 今、口から出ていく風なのです。 風が吹くのをやめるとき、私たちは死ぬでしょう。 指先を見てごらんなさい、 風が通った跡が見えるから。 最初の男と最初の女が生まれたときに、 ふたりに吹いた風の跡が見えるから。
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ナバホ族の風の詩、ぬくみちほ訳。 日本人強制収容所のあったマンザナールには、ナバホ族の居留地もあった。 アリゾナの砂漠の土地で、日系人とナバホ族にも接点があったのだろうか。
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John Okada ( No.41 ) |
- 日時: 2012/10/15 04:51
- 名前: うんこ太郎 ID:Pbi4blp2
--僕たちはいわゆる日本人らしい考えをもって暮らしていた。アメリカに住んでいてもそれで許されている時代だったから。それからしばらくして僕は半分だけの日本人になった。アメリカで生まれて、アメリカで育ち、アメリカで教育を受けたから。
--だけど半分だけアメリカ人というのでは十分じゃない。半分だけなんて空っぽみたいなものだ。僕はお母さんの息子じゃない、日本人じゃない、アメリカ人でもない。
"we were Japanese with Japanese feelings and Japanese pride and Japanese thoughts because it was all right then to be Japanese and feel and think all the things that Japanese do even if we lived in America. Then there came a time when I was only half Japanese because one is not born in America and raised in America and taught in America"
"But is is not enough to be only half an American and know that it is an empty half. I am not your son and I am not Japanese and I am not American."
ジョンオカダの「ノーノーボーイ」は邦訳もでていますので、読まれた方もいらっしゃるかもしれません。第二次大戦中、日系人強制収容所内では米国への忠誠を問う調査が行われました。日本への忠誠を捨てて、アメリカへの忠誠を誓うか、という内容の問いに対して日系人はイエスかノーの選択を迫られたのです。答えが「イエス」であればアメリカ兵士として収容所から戦場へ送られました。答えが「ノー」であれば収容所にひき留められました。
「ノーノーボーイの」主人公であるイチローは日本人移民一世である両親を想い、日本への忠誠を捨てきれませんでした。そのため強制収容所に残りますが、戦後収容所から出ると、戦争でアメリカ兵士として戦った日系人たちからは軽蔑されます。日本人としても、アメリカ人としても、生きづらくなってしまったイチローはどのような未来を築いていけばよかったのでしょうか。
ジョンオカダ (WIKIPEDIA):http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%80
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ブレードランナー ( No.42 ) |
- 日時: 2012/10/21 11:54
- 名前: うんこ太郎 ID:nX.dFaGo
寄り道です。映画ブレードランナーのラストシーンのセリフの意訳に挑戦してみました。三年という限られた時間しか生きられない労働用レプリカント。宇宙で過酷な労働に従事したレプリカントがこれまで見てきた光景を語る場面です。ヴァンゲリスの素晴らしい音楽もあって感動的なシーンとなっています。
I've seen things you people wouldn't believe. Attack ships on fire off the shoulder of Orion. I watched C-beams glitter in the dark near the Tannhauser gate. All those moments will be lost in time... like tears in rain...
俺は誰も信じられないようなものを見てきた。オリオン座の近くで燃え尽きていく戦闘機を見た。タンホイザーゲートの闇のなかに超新星の誕生を見た。みんな時間のなかにまぎれて消えてしまう。涙が雨にまぎれてしまうみたいに。
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JAPS KEEP MOVING ( No.43 ) |
- 日時: 2012/11/04 09:18
- 名前: うんこ太郎 ID:aMMcCBuY
JAPS KEEP MOVING THIS IS A WHITE MAN'S NEIGHBORHOOD ― 日本人よでていけ! ここは白人の地だ (アジテーションの広告から)
訳しやすい言葉なんてもしかしたらないのかもしれませんが、強制収容所という言葉も簡単に訳すことはできません。アウシュビッツの強制収容所はCONCENTRATION CAMPですが、日系人強制収容所に関してはアメリカ政府はRELOCATION CENTERという言葉を使っています。 1941年に真珠湾襲撃があり、これが西海岸に住んでいた約12万人といわれる日系人の運命を大きく変えることになりました。1942年にフランクリンDルーズベルト大統領は大統領執行命令に署名し、西海岸地域で米国の軍事活動の妨げとなる人物の排除が可能になります。 INSTRUCTIONS TO ALL JAPANESE (日本人に告ぐ)という貼り紙が掲示され、そこには強制収容所への入所手順が記されていました。日系人は財産の処分を強いられ、スーツケースに必要なものだけをつめこんで、全米10箇所に設けられた強制収用所に収容されていきます。
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石原吉郎 ( No.44 ) |
- 日時: 2012/11/08 10:10
- 名前: うんこ太郎 ID:mdHsMsTE
きついですが、自分なりのかけ足ですすめたいと思います。日系人収容所のひとつの、マンザナールの風景の動画がありましたのでリンクを貼っておきます。大地の姿そのままが残っているような、山のきれいなところです。一方で過酷な生活環境を想像させます。
http://www.youtube.com/watch?v=0gyUGvyjmZI&feature=related
収容所において詩が生まれるということは、不思議なことではないような気がします。フランクルの「夜と霧」を読めば、その悲惨な環境のなかに、胸に迫ってくるような、まさに詩の結晶のような表現が溢れています。 日本にも、九年におよぶシベリア抑留体験のある石原吉郎がいます。石原の詩は極寒のシベリアの原野のように、ぽつり、ぽつり、行それぞれが独立して、訴えかけてくるような気がします。 花であることでしか 拮抗できない外部というものが なければならぬ 花へおしかぶさる重みを 花のかたちのまま おしかえす そのとき花であることは もはや ひとつの宣言である ひとつの花でしか あり得ぬ日々をこえて 花でしかついにあり得ぬために 花の周辺は適確にめざめ 花の輪郭は 鋼鉄のようでなければならぬ (石原吉郎『サンチョ・パンサの帰郷』「花であること」)
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よつば、あんど! ( No.45 ) |
- 日時: 2012/11/10 21:51
- 名前: うんこ太郎 ID:CCxL.cr2
英語訳のYOSTUBA&!(よつばと!)が本屋さんにあったので立ち読みをしていたら、おもしろい表現がありました。
My very excellent mother just send us nine pizzas. 日本で言う水金地火木土天界冥みたいに、惑星の名前を覚えるための語呂あわせです。 「母なる宇宙はとってもすてきなピザを人類におくってくださった」それぞれの単語の頭をとっていくと、惑星の名前が覚えられます。
My:Mercury Very:Vinus Excellent:Earth Mother:Mars Just:Jupiter Sent:Saturn Us:Uranus Pizzas:Pluto こういう初等教育であたりまえのこととか、ぽろっと見落としがち…。 とてもいい覚え方ですよね!大自然がピザをプレゼントしてくれるとか、いいですよね。
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もういちど加川文一 ( No.46 ) |
- 日時: 2012/11/17 07:54
- 名前: うんこ太郎 ID:nq2zv9nM
前に一度加川文一の詩をとりあげましたが、今回は別の詩を。これは加川が日本語で書いた詩です。この詩はロサンジェルスの小東京(リトルトーキョー)で詩碑となっています。 たった149人の日本人がハワイへと移民したのは1868年のことでした。戦争時に強制収用所に入った日系人は約12万人といわれています。1990年のアメリカ国勢調査では、日系人の人口は85万人とされました。 英文に吾れの思ひは綴り得ず子に書く文の焦点あはず
英文で表現できない想い、英文では綴ることのできない想い、そのような想いが、日本語の詩になっていったのでしょうか。
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海は光れり
- 貧しさを時に嘆けど吾が世帯こまごまと物のふえてゆくなり(桐田しづ) 丘より見ゆる海は青し 夏が畑につくりし 胡瓜のごとき色を にがく走らせたり
海はひねもす わが乾ける瞳を刺し
われは此処に住みて はや四年(よとせ)となりし わが生活はまづしけれど まづしさも己のものぞと 一筋にがき海に向かひて 語りきたれる
妻よ 今日も海は光れり 人の住む陸を抱きて するどく海は光れり
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MASAYUKI ARAIさんの英語訳
Seen from the hills, the sea is green A color like the cucumbers we grew in the summer Running to bitterness.
All the day long, the sea stabs at my dry pupils
We have lived here for four years alreday Our life is poor But the poverty, too, belong to me I have come to tell myself Facing straight toward the bitter sea
My wife, The sea shines today also Embracing th land in which man lives The sea shines keenly.
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プエブロ(ネイティブアメリカン)の詩 ( No.47 ) |
- 日時: 2012/11/20 10:16
- 名前: うんこ太郎 ID:iWSnbF8M
タオスプエブロの詩の意訳に挑戦しました(ひさびさに訳したような……)。ネイティブアメリカンの言葉は、キリスト教に根ざした考えよりも、日本人にとって入りやすいのではないか、そういう気がします。ニューメキシコ、アリゾナの厳しく乾いた風土が、こういう詩を生む土壌になったのでしょうか。
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わたしは今日、死んでいきます。 今日は死ぬにはとても良い日です。
生きているものすべてが、寄り添って来るようです。 わたしの心のなかで、あらゆる声が歌っています。 わたしの目のなかに、あらゆる美がやすんでいます。 悪い考えは、立ち去っていきました。 今日は、死ぬにはもってこいの日です。
わたしのまわりの大地は平穏です。 土はすっかりと耕されています。 家には笑い声が満ちています。 子どもたちが、うちに帰って来ました。
そう、今日は死ぬには良い日です。
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Today is a very good day to Die. Every living thing is in harmony with me. Every voice sings a chorus within me. All beauty has come to rest in my eyes. All bad thoughts have departed from me. Today is a very good day to die. My land is peaceful around me. My fields have been turned for the last time. My house is filled with laughter. My children have come home. Yes,today is a very good day to die.
Nancy Wood "Many Winters" より
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感想です ( No.48 ) |
- 日時: 2012/11/23 21:49
- 名前: 楠山歳幸 ID:zQRfmLGs
今更ながらで恐縮ですが、ざっくりですが、読ませていただきました。戦時中の日系人の詩、うんたさんの歴史特集に少し驚いています。
N.39 村の春 >その男は土のなかに ここに国籍の悲劇の思いを込めているのでしょうか。印象としては素朴な人柄で感情をぶつけているように感じました。
N.40 風の跡 風=息でしょうか。古神道だと息=生きとか言いそうですね。居留置としてのつながりはわかりませんが、自然に何かを感じる所は同じかもしれませんね。
N.44 花であること 詩の力を感じさせるような力強い文章ですね。心が折れてはならない、自分を鋼鉄であれという感じの意志を花にたとえたところに、なみならぬ何かを感じます。
N.46 海は光れり >英文で表現できない想い、英文では綴ることのできない想い そして英文で書きたくない想いなんかもあったのでは、と思いました。港のような人の海ではなく水平線まで感じさせる大きな海、そこにははっきり言葉にしがたいであったであろう日本が込められていたんじゃないかなあ、とか思います。
和歌山の日高にアメリカ村という所があります。うら憶えですが、明治期?カナダ?に渡った村人の「こっちでは鮭がたくさんとれる」という情報に乗って後ろの山や大阪などではなく太平洋を越えた人たちだそうです。「村の春」のような詩を読むと、当時の人たちの人柄まで感じそうです。
英語が解れば感性の違いとか印象とか楽しめたかもしれませんが、ごめんなさい、僕には無理です。 なんか適当な感じの感想で、失礼しました。
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ご感想ありがとうございます ( No.49 ) |
- 日時: 2012/11/25 09:26
- 名前: うんこ太郎 ID:w0oQm5X2
>楠山歳幸様
ご感想ありがとうございます! 適当な感想だなんてとんでもない、感じたことをしっかり書いていただいたようで、とても嬉しかったです。もう一年以上投稿しているのですが、一人でも読んでくださる方がいればいいな、くらいに思っていました。まさかご感想をいただけるなんて思っておりませんでした。ありがとうございます。 詩はそれぞれ生まれた土地に育った草木のようなものではないか、そう思うことがあります。だから詩を訳すということは、まるでその詩を手で折ってしまうかのようで、言葉の生命というか、言葉の躍動感や深みが失われてしまって悲しいものがあります。でも、自分のなかにはなにかしら残るものがありますし、そういうものが少しだけであっても楠山さんに伝わったとしたならば、本当に嬉しいです!
日系人の詩にはいろいろと考えさせられることがあって訳しているのですけど、驚かせてしまいましたでしょうか? 移民初期、排日運動期、戦争期、戦後復興期、補償運動期、今日の日系人と、それぞれの時期で価値観が大きく変わっていくのですが、まだほんの一部しか取り上ることができていないのすけれど……。
和歌山の日高のアメリカ村(美浜町)のことは知りませんでした。おもしろそうですね。これはぜひ行かねば! また行ってみたい場所がひとつ増えました。情報をありがとうございます。
英語が分かるというのにもいろいろあって、私も英語のこと大して分かっていません。日本語だってどれだけ分かっているのかあやしいものです。まして詩を読んで、感性や印象の違いを把握するのは困難です。でも、語学の勉強は楽しいですよ! 私は多分死ぬまで語学の勉強は続けるだろうなって思います。無理だなどとはおっしゃらずに、機会がありましたら英語に限らず、ぜひぜひ楠山さんの訳詩もご投稿ください!
本当にありがとうございました。
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少し考えてしまったので ( No.50 ) |
- 日時: 2012/11/26 23:04
- 名前: 楠山歳幸 ID:uFghQA2w
少し考えてしまったのでまた書かせていただきました。
家長制度という発想なのですが、寒村の場合末っ子になるほど生活の場が厳しくなっていくだろうと想像します。そこへ明治から人口増加に加え外国が身近になって食も豊だと知ったわけですね。都会へ出るという発想は貨幣的発想と思いますし、地方の貧しい村はまず食いものを求めたことでしょう。 そんな理由もあって?移民が増えたと思いました。でも帰国できた人はよほど成功した人か、網元の親族の一握りの人たちだったかもしれません。二世あたりになると、移民先の影響のほうが強く、日本は自分たちを捨てた国なんて思うかもしれません。 ということを大大大大前提に一歳未満の脳みそでウケ狙いで、訳を参考にN.41を読んでみます。 私たち(移民一世の)日本人はアメリカに住んでいても日本の感覚と日本の風習(pride)と日本の考え方で全て日本人らしい感覚と考えで生きていても何事も無く問題もなかった。それからしばらくして(二世の代になって、自分は)半分だけ日本人になった。なぜなら「アメリカ」だけ(one)で生まれたのではなく(not)「アメリカ」だけで育ったわけではなく「アメリカ」だけで教育されたわけではないのだから。 しかし(二世の場合は)米人ハーフだけでは(人として?)認められない、それは(人として?)半分空虚だと思い知らされた。私は日本人の息子でもなければアメリカ人の息子でもないのだ。
笑ってください。
http://www.jica.go.jp/kansai/event/report/2011/20111205.html
というサイトになぜ和歌山県から多くの移民がでたのか?という欄があります。若い頃雑賀崎の方に昔の人は小舟で台湾まで漁に行ったと聞いたことがあります。一畳の魚棚を探ることもできたとおっしゃっていましたから当時の人は今より感覚で生活していたかもしれませんし、昔の人は潮や星などを知れば海は田畑より身近な所だったかもしれません。
失礼しました。
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ありがとうございます ( No.51 ) |
- 日時: 2012/11/27 11:23
- 名前: うんこ太郎 ID:H.38F7Fw
> 楠山さん いやあ、ありがとうございます。こういうやりとりは楽しいですね。
家長制度という発想なのですが、寒村の場合末っ子になるほど生活の場が厳しくなっていくだろうと想像します。そこへ明治から人口増加に加え外国が身近になって食も豊だと知ったわけですね。都会へ出るという発想は貨幣的発想と思いますし、地方の貧しい村はまず食いものを求めたことでしょう。 > そうなんですね。明治維新が移民には深く関係していて、地租改正で地租を納められない農民たちは土地を売り払って、それで失業者が増えて、結果として多くの人が他国へ出稼ぎに行った。一方で南米諸国は農業を中心に人手不足だったので、日本と受け入れ先の国での利害が一致した、これが移民の構図ですね。そしてバブル期・円高期には、今度は南米の日系人たちは日本に出稼ぎやって来ました。これは逆方向の移民などとも言われましたが、どうも複雑な心境になってしまいます。
そんな理由もあって?移民が増えたと思いました。でも帰国できた人はよほど成功した人か、網元の親族の一握りの人たちだったかもしれません。二世あたりになると、移民先の影響のほうが強く、日本は自分たちを捨てた国なんて思うかもしれません。
> これはとてもおもしろいポイントで、二世以降やはり移民先の影響が強く、だんだんと言葉も失ってしまうわけですが、それでも日本人というものが残っているんです。ペルーに行ったときに、日系三世の会社経営者と話しをする機会があったのですが、家には仏壇が置いてあると言っていました。彼はアメリカンスクールで教育を受けて、英語でペルーの歴史を学んだと言っていました。日本語はまったくできず、まだ若いのにメルセデスを乗りまわすような、ちょっと日本人が想像する日系人とはかけ離れた印象だったのですが、それでも仏壇には思い入れがあるようで、こういうところに日本人の濃さのようなものを感じてしまいました。
ということを大大大大前提に一歳未満の脳みそでウケ狙いで、訳を参考にN.41を読んでみます。
> 一歳未満というと、脳みそが元気なときですね! ウケ狙いなんてとんでもない、ありがとうございます。そしてお恥ずかしい。自分には誤訳がありました。
私たち(移民一世の)日本人はアメリカに住んでいても日本の感覚と日本の風習(pride)と日本の考え方で全て日本人らしい感覚と考えで生きていても何事も無く問題もなかった。それからしばらくして(二世の代になって、自分は)半分だけ日本人になった。なぜなら「アメリカ」だけ(one)で生まれたのではなく(not)「アメリカ」だけで育ったわけではなく「アメリカ」だけで教育されたわけではないのだから。 しかし(二世の場合は)米人ハーフだけでは(人として?)認められない、それは(人として?)半分空虚だと思い知らされた。私は日本人の息子でもなければアメリカ人の息子でもないのだ。
> 前半部は、私はアメリカで生まれたわけではないけど、アメリカで教育を受け、アメリカで育ったから、それで半分だけの日本人、ということですね。Oneというのはイチローを含むアメリカで生まれなかったひとたち(つまり日系人)のことです。"One is not born, but rather becomes, a woman." といったら、ひとは女に生まれるのではない、女になるのだ、という言葉ですけど、ここでのoneはアメリカで生まれなかった人、ということですね。アメリカで生まれなかった(日本で生まれた)けれど、日系二世は結局日本人としては足りない、という意味になるのだと思います。
> 後半部はかなり端折って引用しちゃったのですけど、今度はアメリカ人としてはどうかというと、結局日本で生まれて日本人の両親を持つ日系二世はアメリカ人としても足りない、ということですね。半分だけアメリカ人であっても、それは全然意味がないのです。そういう時代だったのでしょう。実はこのセリフは母親に向けて語りかけているものなので、このYouはお母さんになります。日系二世は日本人でもない、アメリカ人でもない、日本人のお母さんとは感情も通じず、自分とは分かり合えない、そういうイチローの心情には悲痛なものがあります。
笑ってください。
> 笑いません。本当にありがとうございます。
http://www.jica.go.jp/kansai/event/report/2011/20111205.html
というサイトになぜ和歌山県から多くの移民がでたのか?という欄があります。若い頃雑賀崎の方に昔の人は小舟で台湾まで漁に行ったと聞いたことがあります。一畳の魚棚を探ることもできたとおっしゃっていましたから当時の人は今より感覚で生活していたかもしれませんし、昔の人は潮や星などを知れば海は田畑より身近な所だったかもしれません。
> このサイトおもしろいですね。ご紹介をありがとうございました。移民の人は貧しい地域の方が多いですよね。沖縄からの移民もたくさんいます。メキシコ、キューバ、カリフォルニア、ハワイ、グアテマラ、コロンビア、ペルー、ブラジル、パラグアイ……。貧しいひとたちが、貧しい環境を不屈の闘志で歩き続けて、一体どんな詩を生んだのか、それってすごく興味ありませんか?
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ガブリエルミストラル ( No.52 ) |
- 日時: 2012/12/01 22:07
- 名前: うんこ太郎 ID:Aq8qPOyU
チリには日本人の集団移民はありませんでした。チリにはノーベル賞を受賞した詩人がふたりもいて、ひとりはこの意訳詩でも挑戦してみて玉砕しましたが、パブロネルーダ。もうひとりはガブリエルミストラルです。 幼な児の手よ 欲しがりやの小さな手よ おまえたちは 世界中の谷間の 主人(あるじ) 幼な児の手よ おまえたちが 柘榴の木に触れると おまえたちによって 柘榴の実は 灯りをともす。
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デラメア ( No.53 ) |
- 日時: 2012/12/28 16:29
- 名前: うんこ太郎 ID:vdskCVps
年末だしせっかくだからきれいな詩を訳したいなあ、うきうき。ということで、W. de la Mare の Silver に挑戦です。冬の夜は月の光もきれいですね!
銀 (しろがね)
ゆるやかに、ひっそりと、 月は銀の靴を履いて 夜を歩いてゆく。
ここに、あそこに、顔を出して、 銀いろの木々にぶらさがる 銀の果実を眺めている。
銀いろの藁葺き屋根の下では ちいさな窓が、ひとつずつ、 月の光をつかまえる。
犬小屋のなかで、 丸太のように眠る犬の 銀いろの足。
うす暗い巣から、白い胸が見える。 銀の羽毛につつまれて、 鳩たちが眠っている。
収穫の季節に、 ネズミたちが走りまわる。 銀の爪と、銀いろの目をして。
水のなかでは、魚がじっとしている。 銀の葦のそば、銀いろの川の流れの底で。
* * *
Walter de la Mare "Silver"
Slowly, silently, now the moon Walks the night in her silver shoon; This way, and that, she peers, and sees Silver fruit upon silver trees; One by one the casements catch Her beams beneath the silvery thatch; Couched in his kennel, like a log, With paws of silver sleeps the dog; From their shadowy cote the white breasts peep Of doves in a silver-feathered sleep; A harvest mouse goes scampering by, With silver claws and a silver eye; And moveless fish in the water gleam, By silver reeds in a silver stream.
良いおとしを!!!
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感想です ( No.54 ) |
- 日時: 2012/12/31 21:42
- 名前: 楠山歳幸 ID:2v6Pe/DA
読ませていただきました。 いいっすね。銀まみれ。小さく見える月が回りいっぱいに広がるみたいです。山頂から見た月明かりも思い出しました。ラストの川の底、天の川みたいでかっこいいです。 こういった優しさというか慈愛を感じる作品は旅行先で読むと一層じん、と来ると思います。 うんたさんの紹介する作品はすっと場面をイメージしてしまいます。イラスト化するみたいな。今思うと、これってレベルが高いということですね。
今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いします。 良いお年を。
もう帰国なされたのでしょうか? 突然ですが、1月3日か4日に神奈川へ遠征に行こうと思いつき、小一時間でもお話でもと思ってメールしようと思ったのですが、考えてみれば鯖が外国の鯖でした。機会があればお会いしましょう。それでは。
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Re: 意訳詩 ( No.55 ) |
- 日時: 2013/01/02 16:19
- 名前: うんた ID:68is/8PE
楠山さん、あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いします。返信遅れて申し訳ございません。せっかくお声をかけていただきましたが、1月3日、4日は帰省しておりますのでお会いすることは叶いません。また別の機会にぜひよろしくお願いします。私も関西方面に出張に行くことがあればご連絡いたします。
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本年もよろしくお願いします ( No.56 ) |
- 日時: 2013/01/14 19:28
- 名前: 太郎 ID:O5LUTqUI
>楠山様
ご感想をありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いします。デラメアの詩ですが、場面を想像していただいたようでありがとうございます。決してレベルが高いなどということはないのですが、楽しんでいただけたのであればとても嬉しいです。
私は日本に戻って参りました。新しいメールアドレスはiyakushi@livedoor.comですので、何かございましたらお気軽にご連絡をください。さて、今年は本格的に山登りを再開したいと思い、山岳会に入会することにしました。楠山さんは登山の方はいかがですか? それと4月には静岡の掛川で、フルマラソンを走ってきます。他にも、できればなんらかの活動を通じて地域社会へも貢献したいと考えています。やりたいことがたくさんあります。そういえば昨日の早朝に近所の公園をジョギングしていたら、まだ霜で真っ白な芝のうえに、望遠レンズをつけたカメラを持ったひとたちがたくさんいました。バーダーの方々だと思いますが、ふと楠山さんのことを思い出してしまいました……。
創作面では詩よりも仏教に関心が移ってきていて、まとめて仏教関係の本を読みたいと思っています。小説は短編でいいので、2作品くらい書けたらいいなと思います。仕事では、いただいた環境で一生懸命に励み、心を磨き、人間性を高めていきたいです。仕事でもプライベートでも、あたらしい仲間たちができたらいいと思います。それから恋愛もしたいです…。自分の過ちで失くしてしまった日々を取り返すという意味でも、これからの毎日をこれまでよりも一層大切に、真剣に生きていきたいです。
意訳詩は今後の更新の頻度が減ってしまうかもしれませんが、なんとか100回は2年以内に終わらせたいので、引き続きどうぞよろしくお願いします。
***
今回はWilliam Allinghamの A Memory に挑戦してみました。
思い出 (A Memory)
池に四羽の鴨がいた 向こう側に芝生の堤(つつみ) 春の青い空 ただよう白い雲 本当にとてもささやかなこと 幾年も心にとどまり 涙とともに思い出すには
***
A Memory
Four ducks on a pond, A grass bank beyond, A blue sky of spring, White clouds on the wing; What a little thing To remember for years -- To remember with tears!
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Re: 意訳詩 ( No.57 ) |
- 日時: 2013/01/15 00:01
- 名前: 楠山歳幸 ID:GhkbkoJA
今年もよろしくお願いします。 前向きで活動的ですね。尊敬します。そういう方には素敵な方がきっとついて来ると思います。頑張って下さい。 登山のほうですが、僕は年のせいか、ハイキングコースですらへろへろになってしまい、ロープウェイに頼っている始末であります。10年で、こんなに、変わるものかと。 仏教は、僕の経験としてご利益や奇跡や権威やらの類は避けたほうがいいです。とは言っても、経験が大事とも思いますので納得できるよう頑張ってください。 僕はたぶん文芸のほうは書かないかもしれませんし、書いてもエッセイもどきぐらいかなと思います。TCにも投稿しないかも知れません。といいつつ、またするかも知れません。でも、うんたさんの創作と意訳詩は楽しみにしています。
それでは。
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ワーズワース ( No.58 ) |
- 日時: 2013/01/26 20:37
- 名前: うんこ太郎 ID:g.Qaiyrk
砂漠のなかにぽつんと人が歩いている、夕暮れの空で羊飼いが杖をついて休んでいる、ただ青い海のうえに船がただよっている、人間が広大な自然のなかにいる情景は、自然の雄大さをひきたてるのではないでしょうか。この詩も、ワーズワースがいるということで、水仙の花の広がりが伝わってくるのでは、という気もします。ワーズワースの有名な水仙の意訳に挑戦してみました。
水仙 ワーズワース
谷と丘のずっと上に浮いている あの雲のように さびしくさまよっていたときのことだ 突如として目の前に花の群れがひろがった それは黄金にかがやく水仙の花だった 湖のほとりに、木々の下に そよ風に吹かれては、揺れながら 水仙がダンスしているのだ 天の川をつくっている ちいさな星々のように 水仙の花々は途切れることなく 湖の岸を縁取るようにずっと続いている ゆうに一万もの花が咲いていたのではないだろうか それらがみな顔をあげ、明るいダンスをしていた 水仙の横ではさざ波も一緒に踊るが 陽気な花のダンスにはかなわない 詩人でなくたって嬉しくなるだろう こんなに明るい友が 一緒に居てくれるのであれば! 私はこの情景をただじっとみつめた それがどれだけありがたいことか その時には十分に分かっていなかったのだけれど というのも、あれから、 寂しい思いやむなしい思いで 長椅子に身をあずけていると わたしの孤独な心のなかに、 ときどき突然に この時の情景があざやかに蘇るのだ すると私の心はただ喜びに満たされて あの水仙の群れと 一緒になって踊りだす
***
"Daffodils" (1804)
I WANDER'D lonely as a cloud That floats on high o'er vales and hills, When all at once I saw a crowd, A host, of golden daffodils; Beside the lake, beneath the trees, Fluttering and dancing in the breeze. Continuous as the stars that shine And twinkle on the Milky Way, They stretch'd in never-ending line Along the margin of a bay: Ten thousand saw I at a glance, Tossing their heads in sprightly dance. The waves beside them danced; but they Out-did the sparkling waves in glee: A poet could not but be gay, In such a jocund company: I gazed -- and gazed -- but little thought What wealth the show to me had brought: For oft, when on my couch I lie In vacant or in pensive mood, They flash upon that inward eye Which is the bliss of solitude; And then my heart with pleasure fills, And dances with the daffodils.
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ブレイク ( No.59 ) |
- 日時: 2013/02/01 22:19
- 名前: うんこ太郎 ID:qAVm8F/6
ウイリアムブレイク、はじめて訳してみました。 なんか恐れおおい感じです……。 寿岳文章の訳がいいと教えていただいたことがありますが、残念ながら読み比べたことはございません。 イギリスロマン派の詩人たちの人気は根強いですね。
***
よろこびのジョイちゃん
「ぼくにはなまえがありません うまれてたったのふつかだから」 なんてよんだらいいのかな? 「しあわせだから、よろこび(ジョイ)という なまえはどうでしょう」 そうだね、よろこびのジョイちゃん!
うつくしいジョイちゃん いとしいジョイちゃん、うまれてたったのふつかだけ いとしいジョイちゃんってよぶからね かわいいえがおですね うたいましょう あなたがしあわせでありますように!
***
Infant Joy : William Blake
"I have no name: I am but two days old." What shall I call thee:' "I happy am, Joy is my name." Sweet joy befall thee!
Pretty joy! Sweet joy, but two days old. Sweet joy I call thee: Thou dost smile, I sing the while, Sweet joy befall thee!
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Re: 意訳詩 ( No.60 ) |
- 日時: 2013/02/09 20:58
- 名前: うんこ太郎 ID:MLeVa6Wo
英詩では一番有名な詩と言ってもいいのではないでしょうか。 ブレイクの「虎」。 こういう有名な詩にもびびらずに、がんがん訳していきますよ!
***
虎 (ういりあむ、ぶれいく さん)
虎よ! 虎! 燃える虎! 闇夜の森に燃える虎
いったい誰が 炎のような均整をつくりあげた 海の底の深くからか、空高いところからか どうやってお前の目に火を灯したというのだ
どのような翼をもって、この均整をつくりあげたのか ごつごつの手で、命の火を吹き込んだというのか
硬い肩だったのか? どのような技量で あの心臓の肉を創造したというのか!
びくびくと脈打つ身体に 鋭利な爪と、凶暴な四肢を どうして造りあげた?
どのような槌を使ったというのだ どのような鎖を使ったというのだ おまえの脳を生み出したのは どのような鉄槌だったのだ どのような鋏が この弾けるような命に 鎖をかけることができたのだろう?
星々が槍のように地上に落ち 天国までもが歓喜の涙で濡れるとき 神は燃える虎を見て微笑んだのだろうか?
子羊をつくりあげた神よ あなたはどうして虎を創りあげた?
虎よ、虎よ、燃えあがる虎、 闇夜の森に燃える虎、
一体だれのどのような手が お前のすがたをつくりあげたというのだ
***
Tiger! Tiger! burning bright In the forests of the night,
What immortal hand or eye
Dare frame thy fearful symmetry?
In what distant deeps or skies
Burnt the fire of thine eyes?
On what wings dare he aspire?
What the hand dare seize the fire?
And what shoulder and what art
Could twist the sinews of thy heart?
And when thy heart began to beat,
What dread hand? And what dread feet?
What the hammer? what the chain?
In what furnace was thy brain?
What the anvil? What dread grasp
Dare its deadly terrors clasp?
When the stars threw down their spears,
And watered heaven with their tears,
Did He smile His work to see?
Did He who made the lamb make thee?
Tiger! Tiger! burning bright
In the forests of the night,
What immortal hand or eye
Dare frame thy fearful symmetry?
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Re: 意訳詩 ( No.61 ) |
- 日時: 2013/03/02 19:33
- 名前: うんこ太郎 ID:ANq4Dvyg
楠山さん
これもなにかのお導きなのかもしれませんが、4月から大阪勤務となりました。 梅田近辺の勤務です。今物件を探しています・・・ 住むにはどこがいいんですかね? 香里園とか、淡路や江坂あたりかな、と思っているんですが。
ジョギングや散歩ができるような公園があって、 せっかくですので適度に大阪っぽくて、 京都や奈良にも週末車ででかけやすいところがいいなあ、と思っています。 もしもお勧めがありましたら教えてください。
なんかみんなの掲示板を私用で使ってしまい恐縮ですが。
では、大阪で飲みましょう。
うんこ太郎
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EEカミングス ( No.62 ) |
- 日時: 2013/03/20 20:42
- 名前: うんこ太郎 ID:dyR.qUhU
EEカミングスです。特に若い読者に人気のある詩人ですね。 春になると必ずこの詩を思い出します。
春はもしかしたら手のようなもの
春はもしかしたら手のようなもの (どこからともなく注意深くやってきて) 並べていく手のようなもの みんなが覗く窓のなかに (よくわからないものを向こう側に 知っているものをこちらへと ならべていく)手のようなもの
そして すこしずつ、全てをがらりと変えていく
春はもしかしたら 窓の向こうの手のようなもの (注意深く前後に動いて 新しいものと古いものとを 選んでいく手のようなもの、 みんなが花を飾ったり、空気をいれかえたり している間に)
何も壊さないで 選んでいく手のようなもの
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Spring is like a perhaps hand (which comes carefully out of Nowhere)arranging a window,into which people look(while people stare arranging and changing placing carefully there a strange thing and a known thing here)and
changing everything carefully
spring is like a perhaps Hand in a window (carefully to and fro moving New and Old things,while people stare carefully moving a perhaps fraction of flower here placing an inch of air there)and
without breaking anything.
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万葉集 (垂水) ( No.63 ) |
- 日時: 2013/04/21 16:52
- 名前: うんこ太郎 ID:ss/5XHkM
石走る垂水の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも
2011年の11月の意訳詩で、志貴皇子のこの歌をとりあげました。当時私は米国に住んで おりましたが、今はこの歌の舞台である垂水神社の近くに住んでいます。 ただの偶然とはいえど、私の生活に意味を見ようとすれば、これも何かのご縁だと思えます。 私はてっきりこの歌の「上」を「うえ」と読んでいましたが、正しくは「上」と書いて 「おか」と読むようです。垂水神社の石碑にはそのように書かれています。 神社には水が石を走る滝があり、木々の茂るおかのうえに、志貴皇子はさわらびをみつけたのでしょう。 いまでも垂水の森の空気はかすかに水に湿っており、土のにおいをかいでいると、1000年以上前 に生きていた古代人と、こころが通じあうような気がしてきます。詩はやはり、草や花の ように、土地に根付いて生きてきたものではないかと思います。
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ランボー ( No.64 ) |
- 日時: 2013/04/29 19:49
- 名前: うんこ太郎 ID:O61MdAgQ
家出した子供たち
雪と霧とのなかに浮かび上がる黒い姿 灯りのさす格子の通風窓に向かって 尻を並べ、ひざまずいた五人のちびたち パン屋がずっしりとしたブロンドのパンを 焼いている姿を見つめている
白くて力強い腕が生地をこね 燃えるかまどへと 押し込む様子を見る
おいしそうにパンの焼ける音がきこえ、 パン屋はにやにやとしながら 古い歌など口ずさむ
ちびたちは しゃがみこんだまま身動きもせず 鉄の格子を赤く照らす おっぱいのような熱気を吸い込んでいる
真夜中のパーティーの バターを塗ったタルトのようにこんがりと、 かまどからパンが引き出されると
煙に煤けた梁の下では パンの皮は、ぱりぱりと コオロギと一緒になって歌いだす
あの熱いかまどから、いのちが溢れだすと ぼろ着をまとったちびたちの魂は、 鷲づかみにされ
うっとりと幸福につつまれ このあわれでちいさなイエス達は
赤い鼻面を窓の格子におしつけて 何事かをぶつぶつと呟き いったい馬鹿げたことだろうが お祈りなどをあげている!
天国からやってくるような 明るくうつくしい やさしい光に向かって
必死の祈りにぼろ着は破れて はみでた下着は ひらひらと 冬の風に揺れている
***
The Runaways/ Les Effares
Dark against the snow and fog, At the big lit-up vent, Their butts in a huddle, Five urchins, kneeling - wretched! - Watch the baker making Loaves of heavy blond bread.
They see the strong white arm knead It and shove the raw dough Into the oven's bright hole.
They hear the good bread baking, The baker with a fat smile Growling an old ditty.
They crouch there, not one budging, At the red grating's breath Just as warm as a breast.
When, shaped like buttery tarts For some midnight party, The bread is brought on out,
When, under smoke-stained beams, The fragrant crusts are singing Along with the crickets,
When life breathes out from that warm hole, Their souls are so enraptured Under their ragged clothes,
They feel such lively bliss, those Poor frostbitten Jesuses, That they all gather close
Gluing their pink little snouts To the grating, mumbling Such nonsense round about,
All foolish, at their prayers, Hunkering toward that light From heaven bright and fair,
So hard they split their pants, And their shirt-tails flutter In the winds of winter.
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ウイリアムカルロスウイリアムス ( No.65 ) |
- 日時: 2014/07/06 18:54
- 名前: うんこ太郎 ID:dkbabrUQ
ウイリアム、カルロス、ウイリアムスのTHIS IS JUST TO SAYです。 かわいい詩です。
怒らないでね、(This is just to say)
アイスボックスにあった プラムだけど 食べちゃったんだ
きっと朝ごはんに とっておいたものだろうけど
怒らないでね、 美味しかった
甘くて とても冷たくて
***
This is just to say
I have eaten the plums that were in the icebox
and which you were probably saving for breakfast
Forgive me they were so delicious so sweet and so cold
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失礼致します ( No.66 ) |
- 日時: 2014/08/08 06:58
- 名前: 逃げ腰 ID:aomllNq2
初めまして! 逃げ腰といいます! 失礼があればおっしゃって下さい
過去に闇の吟遊詩人(闇雅人)という方と一緒に意訳をされていたそうですね 現在は個人でやられているのでしょうか。
もし、
>>参加は自由です。ちなみに「外国の詩」を「教科書的に直訳」せず、「意訳して日本語の詩」にする「意訳詩」というジャンルはあります。
が現在も有効なら私も参加したいです!
ご返事お待ちいております。
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Re: 意訳詩 ( No.67 ) |
- 日時: 2014/08/09 07:29
- 名前: うんこ太郎 ID:FcHoR7Zk
逃げ腰様
はじめまして。 みんなの掲示板ですので、どうぞご自由にご投稿ください。
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Tara Betts ( No.68 ) |
- 日時: 2014/08/11 18:04
- 名前: うんこ太郎 ID:uodZRsh6
For Those Who Need a True Story, Tara Betts 本当の話がききたいひとへ
大家はレイモンドのマザーに言った 一匹の鼠を殺したら、12ドル家賃から差し引くと レイモンドはマザーの命令で5ポンドの挽き肉とパンとを買ってきた マザーは金属のボウルのなかで、パンと肉をこね、 流しの下から取り出した毒をまぜる ウエルダン! キッチンの床の真ん中で肉が湯気をたてる すると、キイキイと鋭い声が、ボウルの方にむかってくる
レイモンドは鼠が津波みたいだったという、 鼠は次から次へ、互いを押しのけながら ボウルに向かって飛びかかったのだ
鼠の悲鳴が、レイモンドの耳に響く 仰向けになり、緊張した足裏を見せる鼠たち 一時間も過ぎて、ぐったりと、床に横たわると 静けさが死の足音で部屋を満たしていく マザーの声は少し震えている レイモンド、数えるのを手伝ってちょうだい、 マザーはゴム手袋をして小さな死を数えるのだ プラスチックのバッグに入れるたび、ぼさっという音を聞きながら レイモンドは数えることをやめたかった だけどママはお金を節約しないとならない 最後の一匹まで数え終わると、レイモンドはバッグを大家に渡した
三ヶ月の家賃分に十分な量の鼠だ そしてレイモンドの夢を恐怖に変えてしまうほどの鼠の量だ
他の子供たちに分かるだろうか、レイモンドの鼠への恐怖が 夢のなかで、鼠は腐った毒の匂いを身体から出しながら 壁を必死に引っかくのだ
こういう子供たちは、 子犬とか、子猫とか、ちいさな命をみつけるべきだ 夢のなかで癒しとなるような、ちいさな命を
そして、鼠のことはさっさと忘れてしまうことだ レイモンドが大人になって、 母親のように 自分自身の手で鼠を数える日が来るまでは
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音読のサイト http://www.reverbnation.com/tarabetts/song/675644-for-those-who-need-true-story?fb_og_action=reverbnation_fb%3Aunknown&fb_og_object=reverbnation_fb%3Asong&utm_campaign=a_public_songs&utm_content=reverbnation_fb%3Asong&utm_medium=facebook_og&utm_source=reverbnation_fb%3Aunknown
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Re: 意訳詩 ( No.69 ) |
- 日時: 2014/08/11 22:41
- 名前: 楠山歳幸 ID:C8y39uUQ
うんこ太郎様。お久しぶりです。 仕事に趣味にと勢力的にご活躍なさっているのでしょうね。
紹介していただいた詩、凄まじいですね。 本当に久しぶりにうんこ太郎様とTCの良さを見た気持ちです。 当サイトがあまりに閑散してしまったため「ご」のつくサイトを覗いてみましたが、改めてTCは良かったと再認識した始末です。
よろしければいつかまた詩か小説を投稿してください。
では。
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お久しぶりです ( No.70 ) |
- 日時: 2014/08/17 09:46
- 名前: うんこ太郎 ID:3TUgwrx6
楠山さん、お久しぶりです。返信遅くなりすみません。 なかなかサイトに来る頻度も減ってしまって……。 楠山さんは相変わらず創作欲と鳥への愛情に満ちているようで、脱帽です。 好きなことや表現を続けられるっていうことが、本当にすごいと思います。 意訳詩は根強く続けていきたいので、またちょくちょく投稿させていただきます。どうぞよろしくお願いします。 ご感想をありがとうございました!
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Re: 意訳詩 ( No.71 ) |
- 日時: 2014/10/17 00:35
- 名前: A ID:VTJBCxs6
The KinksのWaterloo Sunsetです。
Dirty old river, must you keep rolling Flowing into the night People so busy, makes me feel dizzy Taxi light shines so bright But I don't need no friends As long as I gaze on Waterloo sunset I am in paradise
Every day I look at the world from my window But chilly, chilly is the evening time Waterloo sunset's fine
Terry meets Julie, Waterloo Station Every Friday night But I am so lazy, don't want to wander I stay at home at night
But I don't feel afraid As long as I gaze on Waterloo sunset I am in paradise
Every day I look at the world from my window But chilly, chilly is the evening time Waterloo sunset's fine
Millions of people swarming like flies 'round Waterloo underground But Terry and Julie cross over the river Where they feel safe and sound And they don't need no friends As long as they gaze on Waterloo sunset They are in paradise
Waterloo sunset's fine
→
昔から汚れてるテムズ川 お前は夜に向かってうねり流れ続ける みんな忙しそうにしていて目眩がするほど タクシーのライトも何だか眩しすぎる 僕は友達なんかいらない ワーテルローの陽が沈むのを眺めているだけで楽園にいるようだから
毎日、窓から外を眺めている でも夕方になると凍えそうだ ワーテルローの夕陽が身に沁みる
毎週金曜の夜、ワーテルローの駅で テリーはジュリーと待ち合わせする 僕はと言えば怠け者で、ぶらつきたくないから 夜には家にいる事にしてる
怖くなんかないさ 陽が沈むのを眺めているだけで 僕は楽園にいられるから
毎日、窓から外を眺めている でも夕方になると凍えそうだ ワーテルローの夕陽が身に沁みる
沢山の人がワーテルローの地下で虫の大群みたくうじゃうじゃしてる だけどテリーとジュリーは川を越える 安らぎと流れの音を感じる川を 二人に友達はいらない 陽が沈むのを眺めていれば 二人は楽園にいられるから
ワーテルローの夕陽がきれいだ
youtubeで歌が聞けます。テリーとジュリーの幸福を願う「僕」の思いやりが美しい。
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Re: 意訳詩 ( No.72 ) |
- 日時: 2014/11/07 10:35
- 名前: kboxing ID:sMF6EUNs
- 参照: http://www.rolexjp888.com/
春はもしかしたら手のようなもの (どこからともなく注意深くやってきて) 並べていく手のようなもの みんなが覗く窓のなかに (よくわからないものを向こう側に 知っているものをこちらへと ならべていく)手のようなもの
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