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RSSフィード [25] ねじねじ小説。
   
日時: 2011/09/25 00:25
名前: 片桐 ID:uMXlTGA2

今日は「ネジ」にかかわる小説イベントにトライだ。
締め切りはだいたい一時間後だ。
捩じ込むぜい。

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いびつ ( No.1 )
   
日時: 2011/09/25 01:04
名前: ねじ ID:Xfoh2kas

 三年ほど前に結婚したとき、イケアでいくつか家具を買った。チェストとか、ベッドとか、本棚とか。
 組み立てるのは全部、夫がやった。本棚は簡単に組みあがったけれど、それなりに複雑な工程を必要とするチェストにはなかなか苦戦していた。ドライバーで、いくつかねじのねじ山を潰してしまい、出来上がったチェストは、どことなくいびつだった。
 イケアで買うの、やめたほうがよかったね。
 ぐったりとペットボトルの生茶を飲む夫に、でも私はそう言わなかった。何も言わず、歪んだチェストを毎日使う生活を、受け入れた。

 帰宅して、流しを見ると、私が朝使った食器のほかに、内側をべったりと赤い色に染めたマグカップが置いてあった。夫が、朝に野菜ジュースを飲んで、それをそのまま流しに置いたのだろう。
 ぴくり、と、小さく右の唇の端が震える。朝、使った食器を洗ってから出勤しろ、とは言わない。私だってそんなことはしない。けれど、何故水も溜めずにそのまま置いておけるのだろう。多分、夫はそんなこと気にしないのだろう。そのマグカップが私にどういう感情を喚起するのか、夫にはまるでわからないのだ。
 流しの蛇口を動かして水の出る位置を調節して、カランをひねってマグカップに水を溜める。その瞬間、つん、と野菜ジュースの甘い匂いが鼻につく。カランをひねって、水を止める。食器を洗わないと、と思うのに、それが、できない。
 寝室では、今でもチェストが、歪んでいる。

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Re: ねじねじ小説。 ( No.2 )
   
日時: 2011/09/25 01:26
名前: 昼野 ID:cxLGYEn6

 僕の父親は工場でネジを作っていた。僕は父親がネジを作ることに疑問を抱いていて、ある日「なんでネジを作るの?」と聞いたら、「ネジが好きだからだ」と答えた。
 父親はネジを作ってはいるが、売ってなかった。だから家計は母親の売春で凌いでいた。僕はよく、母親が知らない男と性交をしているのを、ドアの隙間から覗き込んで、マスターベーションをした。時には大勢の友達を呼んで、バター色の臀部が犯されるのを見ながら、皆でマスターベーションをした。
 母親はある日、僕があまりにマスターベーションを、それも母親をネタにしてしているのを見咎め、ある美少女を連れてきて、この娘と性交しなさいと言った。僕が美少女の前でオドオドしていると、母親は何をしているのこうやるのよ、と言って美少女の服を脱がせた。しかし、輝かしい美少女の裸体は僕をオドオドさせるばかりで、一向に勃起しなかった。
 僕は走ってその場から去り、父親の工場へ行った。なぜここに来たのか自分でもよく分からなかった。目からは涙が溢れ、息を切らせていた。やがて工場の奥から汗と切子にまみれた父親が出てきて、どうしたんだと聞いた。僕は、僕にもネジを作らせてと言った。父親は怪訝そうな顔をし、お前にはもっと真っ当な道を歩んで欲しいと言った。父さんはどうしてネジを作るの? 売りもしないネジを? そう聞くと父親は、他に道が無かったんだ。仕方ないだろう? と言った。だったら、僕にも道なんてないよ、女の子の身体にすら触れれやしないんだと言った。じゃあ、ネジを作るしかないな、と父親は言った。
 それから僕は父親と一緒にネジを作るようになった。ネジ作りは案外難しく、父親に何度も叱られながらやった。五年もすぎた頃に、僕はようやくまともなネジを作れるようになって、父親の跡をつぐ事になった。自信がついた僕は、以前に母親が連れてきた少女と、もう一度会った。僕はその娘を裸体にした。あれから五年が経っているとはいえ、輝かしい肉体はそのままだった。しかし、僕は怯むことなく勃起し、その娘の膣に挿入し腰を打ち付けた。そして射精感が高まったころ、膣から引き抜いて、顔面に向けて射精をした。少女の顔面が白い粘液まみれになり、言い知れぬ快感を覚えた。
 やがて僕は少女に売春させ、その金で生活しつつネジを作るようになった。

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ねじねじ小説。 ( No.3 )
   
日時: 2011/09/25 01:31
名前: 水樹 ID:rrR7sH62

今日は「ネジ」にかかわる小説イベントにトライです。



 僕は微動だにせず、ここに居続ける。今までそうであったように、想いを馳せるだけで永遠と、ここに居続ける。
 誰もが僕に気が付かず、僕は意識を持ち続ける。
 それでいい、僕はそれでいいんだと、納得していた。それが僕の役目なのだから。


 ある日、世界を震え上がらす出来事が起こった。文字通り、大地は怒り狂ったように震え、この国を絶望に追い込んだ。地面が波打ち僕達を跳ね上がらすトランポリンのようだった。大黒柱さんの歯があったら、砕け散る程くいしばっていただろう。
 大黒柱さんの強い意識が僕にまで伝わる。
「みんな、しっかり俺に繋がれっ! 決して負けるなっ!」
 その想いは僕の全身をも駆け巡り力へと変える。僕は仲間と一緒に心をも鋼鉄化させ身体を硬直させた。決して折れない心を一つに僕達は固まった。
 僅かな時間でいい、せめて、ここの人達が逃げる時間さえあればいい、それまで持ってくれれば僕なんてどうなったっていい。繋がっている仲間達の断末魔が僕の心をも震え上がらせ挫けそうになる。叫ぶように意識を張り上げる。回りから崩れ去って行く仲間達の大合唱、歌が好きだったあの娘も悲哀な叫びで消え行った。
 揺れは収まった。世界は停止し、時間も止まった。
 静寂に包まれる。個々の意識も安堵の息を漏らしていた。
 その突如、轟音と共に、僕は世界へと飛び立った。既に力尽きていた大黒柱さんの声を聞かずに済んだのは幸いだった。今までねじ込まれていた僕は一つきりになった。
石ころよりも軽い僕はどこまでも流される。僕の螺旋の身体は流されるのに適しているのだろうか。海流に乗ってどこまでも進んでいく。しばらくするとそれも終わりを迎えた。音も無い暗闇、僕はここに居続ける。
 僕は役目を果たしたのだろうかと自問する、答えは出ないのでそれもやめる。僕は誰にも見つからない海底で意識を閉ざす。

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「塔」 ( No.4 )
   
日時: 2011/09/25 01:43
名前: 片桐 ID:uMXlTGA2


 街のどこに居ようとも、その「塔」を見失うことはありえなかった。周囲五十メートルを越えるであろう巨大な円柱が、遥か天に向けて屹立している。その灰色がかった石質から判断すれば、切り出した岩を積み重ねていったのかと想像するが、しかしよく観察すれば、どこにも継ぎ目がないとわかる。神話の中にだけ存在する巨人が、大地の基礎となる岩盤からそのままの形で掘り出したように、完璧な造形美をもって、「塔」は今なおそこに聳えている。そして、「塔」にはもう一つ大きな特徴があった。周囲に螺旋状の脈をもっているのだ。「螺旋の塔」と、それを人々は呼んだ。

 東日の眩さに目を覚ます習慣から離れて数年が過ぎていた。それはちょうど街の西部に居を構えた時期に重なる。私はその時、故郷を離れてこの街に訪れ、有り金すべてをはたいてあらたな住処を構えた。なぜこの街に惹かれたのかと問われるなら、ありていに、他の住民と同様に、真理を求めたからだと答えるだろう。明確に何時からとはわからずとも、間違いなく遥か太古から、天に向かって直立しつづける、あの「塔」にただ心から惹かれたのだ。何千年の時を越えても老朽化する気配は露としてなく、何十代、何百代という人の生き死にを見下ろしてきた「塔」にこそ、すべての真理があると硬く信じた。
 幼くして両親を失い、そして数年前に妻を亡くした。天涯孤独の身となった私は、しかし死を実行することなく、だらだらと毎日を過ごし、酒にふやけた思考のなかで、なぜ私は生きる、なぜ「生きる」というものがある。なぜそれは続こうとする。そんな問いを繰り返していた。歴史になお刻むほどの賢人でさえ分からぬ問いの答えが私に悟れるはずもなく、せめてその答えい近づきたいと願ったときには、風のうわさに聞いたこの街を目指していた。
 これまで肉体を酷使することで口に糊してきた私であったが、この街に訪れてからは、小難しい書物を眺めたり、突如ひらめいたように胸に過ったイメージを描いたりして暮らしている。幸いというべきか、それを咎めるものはこの街にはいない。少しばかりの差異はあれども、私と同種の人間ばかりが暮らしているのだ。誰もが、己が信じる方法で真理へ至ることを願い、そして、十年に一度訪れるというある一日を待っている。

 ある日は唐突に訪れる。それは前もっていついつと決まっているわけではなく、十年に一度ほどの割合で、不意にやってくるのだ。「塔」の内部へ続く扉が開かれる日。ほんの一瞬で、毎日塔の前に居続ければいつか訪れるわけでもない。まるで、解けるはずのないパズルの解を突如ひらめいたとでもいうように、ふと塔を見てみると、内部への道が開けている。ある朝、画板に向かって絵具を混ぜていた私は、思わず良い色ができたことに喜んで、そして塔に目を向けたとき、その扉が開かれていると知ったのだ。

 私はそれが夢か現実か分からぬまま、浮足立って「塔」への道を進んだ。他にも多くの人が詰めかけておかしくない状況なのだが、今、「塔」を目指しているのは、見渡す限り私しかいない。
 「塔」の入り口に到った私は、ついにその内部へと足を踏み入れる。そして、上層へと繋がる螺旋階段を一歩一歩と駆け出した。高みへ、遥か高みへ。そこへついに私も到るのだ。真理を得たとき、一体人は何を思い、何を感じるのだろう。有体な聖人となって、人々に世界の救済を解くのか、仙人となって、人知れぬ山の奥深くで、日々の移ろいをただただ待つのか。
 私はのぼる。私をのぼる。
 どれほどの時の果てかなどわかるはずもないが、ついに私は頂上に到った。
 そこにいたのは、他でもない私自身――もう一人の私だった。
「やはりキミも高みを目指してしまったか」
 そいつは言う。
「どういうことだ? 私は知りたい、多くを、すべてを。おまえが教えてくれるのか?」
「残念だがそれはかなわない。キミはなぜ高みを目指した?」
「当然だろう。私はこの「塔」をずっと見上げてきた。その先に、いまいる場所にこそ真理があると信じて」
「残念だよ」
「何がどう残念だというんだ?」
「キミはこれが「塔」だというがね、果たしてそうだろうか。いや、最早焦らしても仕方あるまい。教えよう。これは塔ではない。これは一つのネジなのだ。真理に到るためには、高みを目指すのではなく、むしろどこまでも深く下らねばならなかった。それがたとえ、キミの望む形での「真理」ではなかったとしても」
「ならば今から下ろう!」
「残念だと私はいったはずだ。機会は一度。もうそれは叶わない。今まで数億という人がこの塔に到っては、上層を目指すことしかできなかった。キミもそうした多くの中のひとりなのさ。いつか遠い先、世界の中心へ到るものが信じ、その余生を過ごしてみるがいい」
「待ってくれ!」

 気付けば私は「塔」の外にたたずんでいた。見れば西日が揺れて、私の頬を赤く染める。何かに悔いを残している気がするが、どれだけ考えてみても、その正体がわかることはなかった。

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頭のネジ ( No.5 )
   
日時: 2011/09/26 00:02
名前: 桜井隆弘 ID:xoHTU906

こっちの板にイベントがあったとは!
一日遅れですが、参加します!



「俺はこう見えても昔は弁護士だったんだぜ、息子よ」
 俺は息子に、得意気に言ってやった。息子は怖気づいた目でこっちを見ている。
「本当だって。一流大学を出て、弁護士になったんだ。でもそんな人生がふと空しくなってな、全部投げ出しちまったんだ」
 逃げようとする幼い息子を、そうはいくかと抱え込む。
「どこ行くんだよ、人の話は最後まで聞くってもんだぜ」
 窓の外が何だか騒がしい。夏祭りでもあったのか――そうだとしても、俺の話の方が断然楽しいはずだ。
「そんで、今までやったことが無いことを、たくさんやってみようと思ってな。タバコから始めて、外車で暴走したり、夜の繁華街歩いたり……めちゃくちゃやったんだ。楽しかったぜ、自由を手に入れた気がした」
 俺は左手で息子を抱えながら、右手も何やら塞がっている。だが、そんなことに意識を配るのはどうでもいいと思えた。
「でも、その後に何か大事なモノを失くしちまった気がしたんだ。頭のネジが外れちまったみたいに」
 俺の切なさが伝わったのか、息子が少しこっちを向いた。
「それからの俺は、ネジを探す旅に出た。電車の中で座ってたらババーが乗ってきたから、『お疲れだなババー、座れ』って言って譲ってやったんだ。でもババー、『私ババーじゃないんですけど』とか何とかぬかして、座らねーでやがる。だから俺は『うるせー、黙って座れクソババー!!』と怒鳴りつけてやったんだ。でもそんなことしたって、ネジは見つからなかった」
 息子には、この話が難しかったみたいだ。まあ、お前もいつかわかるさ。
「タバコ屋のジジーも、万札渡してツーカートンくれって言ったのに、二箱しかよこさねーで、おまけに釣りも返さねーんだ。お前がそういうやり方で稼ぐのなら、それでいい。俺は引き下がってやったんだ。でもネジは見つからねー」
 ――ったく、どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがる。今考えるだけでむかついてきたぜ。
「あと、あれだ。イタ飯屋でピザ頼んだら、店員のヤローが皿の上にゲロ乗っけて持ってきやがった。『ごゆっくりどうぞ』とかほざいて帰ってくから、頭に来て皿を床に叩き付けて割ってやったぜ。そしたら何食わぬ顔で『お客様大丈夫ですか』とか、ぬかしやがって」
 くそったれ。弁護士を辞めてから、俺の人生は堕落そのものだ。頭のネジがどっかに転がってんだ。シルバーの、先のとがったアイツを、俺の頭に差し込めば――。
「何だ、これ?」
 俺は右手に持ってるものが、たった今思い浮かんだものだと気付いた。こいつだ、こいつをこめかみから差し込んで――。
「いてっ!!」
 頭に激痛が走る。なめんなよ、代償に元の人生が取り戻せるなら、安いもんだぜ。俺は悶えながら、ヤツをねじり続けた。
 意識が薄らいで、目の前を光が覆う気がした。ああ、これでクソみてーな人生と、おさらばできる。

「次のニュースです。刃物を持った男が、少年を人質に立てこもった事件ですが、犯人の自殺により幕を閉じました。警察の調べによりますと、犯人は重度の麻薬中毒だった疑いがある模様です」

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