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RSSフィード [25] ねじねじ小説。
   
日時: 2011/09/25 00:25
名前: 片桐 ID:uMXlTGA2

今日は「ネジ」にかかわる小説イベントにトライだ。
締め切りはだいたい一時間後だ。
捩じ込むぜい。

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頭のネジ ( No.5 )
   
日時: 2011/09/26 00:02
名前: 桜井隆弘 ID:xoHTU906

こっちの板にイベントがあったとは!
一日遅れですが、参加します!



「俺はこう見えても昔は弁護士だったんだぜ、息子よ」
 俺は息子に、得意気に言ってやった。息子は怖気づいた目でこっちを見ている。
「本当だって。一流大学を出て、弁護士になったんだ。でもそんな人生がふと空しくなってな、全部投げ出しちまったんだ」
 逃げようとする幼い息子を、そうはいくかと抱え込む。
「どこ行くんだよ、人の話は最後まで聞くってもんだぜ」
 窓の外が何だか騒がしい。夏祭りでもあったのか――そうだとしても、俺の話の方が断然楽しいはずだ。
「そんで、今までやったことが無いことを、たくさんやってみようと思ってな。タバコから始めて、外車で暴走したり、夜の繁華街歩いたり……めちゃくちゃやったんだ。楽しかったぜ、自由を手に入れた気がした」
 俺は左手で息子を抱えながら、右手も何やら塞がっている。だが、そんなことに意識を配るのはどうでもいいと思えた。
「でも、その後に何か大事なモノを失くしちまった気がしたんだ。頭のネジが外れちまったみたいに」
 俺の切なさが伝わったのか、息子が少しこっちを向いた。
「それからの俺は、ネジを探す旅に出た。電車の中で座ってたらババーが乗ってきたから、『お疲れだなババー、座れ』って言って譲ってやったんだ。でもババー、『私ババーじゃないんですけど』とか何とかぬかして、座らねーでやがる。だから俺は『うるせー、黙って座れクソババー!!』と怒鳴りつけてやったんだ。でもそんなことしたって、ネジは見つからなかった」
 息子には、この話が難しかったみたいだ。まあ、お前もいつかわかるさ。
「タバコ屋のジジーも、万札渡してツーカートンくれって言ったのに、二箱しかよこさねーで、おまけに釣りも返さねーんだ。お前がそういうやり方で稼ぐのなら、それでいい。俺は引き下がってやったんだ。でもネジは見つからねー」
 ――ったく、どいつもこいつも俺を馬鹿にしやがる。今考えるだけでむかついてきたぜ。
「あと、あれだ。イタ飯屋でピザ頼んだら、店員のヤローが皿の上にゲロ乗っけて持ってきやがった。『ごゆっくりどうぞ』とかほざいて帰ってくから、頭に来て皿を床に叩き付けて割ってやったぜ。そしたら何食わぬ顔で『お客様大丈夫ですか』とか、ぬかしやがって」
 くそったれ。弁護士を辞めてから、俺の人生は堕落そのものだ。頭のネジがどっかに転がってんだ。シルバーの、先のとがったアイツを、俺の頭に差し込めば――。
「何だ、これ?」
 俺は右手に持ってるものが、たった今思い浮かんだものだと気付いた。こいつだ、こいつをこめかみから差し込んで――。
「いてっ!!」
 頭に激痛が走る。なめんなよ、代償に元の人生が取り戻せるなら、安いもんだぜ。俺は悶えながら、ヤツをねじり続けた。
 意識が薄らいで、目の前を光が覆う気がした。ああ、これでクソみてーな人生と、おさらばできる。

「次のニュースです。刃物を持った男が、少年を人質に立てこもった事件ですが、犯人の自殺により幕を閉じました。警察の調べによりますと、犯人は重度の麻薬中毒だった疑いがある模様です」

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