熱にうなされると、頭痛の刺激さえ心地よく思えるのかもしれないなんて、きっと脳みそがしゅうまいみたいに蒸されているに違いないんだから、これくらいまだまだ!――熱中症対策の基本は、「自分の感覚を信じるな。気温と湿度を信じよ」と言われているとかいないとか? とりあえず思考が破綻していることは疑いようもなかった。今週の15分くらいの三語--------------------------------------------------------------------------------●基本ルール以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。▲お題:「熱」「刺激」「しゅうまい」▲縛り: なし▲任意お題:なし▲投稿締切:7/29(日)23:59まで ▲文字数制限:6000字以内程度▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません) しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。●その他の注意事項・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)・お題はそのままの形で本文中に使用してください。・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。●ミーティング 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。●旧・即興三語小説会場跡地 http://novelspace.bbs.fc2.com/ TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。--------------------------------------------------------------------------------○過去にあった縛り・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)・舞台(季節、月面都市など)・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)-------------------------------------------------------------------------------- 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ! それでは今週も、楽しい執筆ライフを!
お題は、「熱」「刺激」「しゅうまい」です。縛りはRYO様の三語を使う、です。シュウマイマイ 熱にうなされると、頭痛の刺激さえ心地よく思えるのかもしれないなんて、きっと脳みそがしゅうまいみたいに蒸されているに違いないんだから、これくらいまだまだ! ――熱中症対策の基本は、「自分の感覚を信じるな。気温と湿度を信じよ」と言われているとかいないとか? とりあえず思考が破綻していることは疑いようもなかった。二時間後、ようやく自分を取り戻せた気もする。今になってようやく冷静に自分を見つめてみようと思える、身体が動かない以上僕は考える事しかできない、布団の中、天井をずっと見つめると、見下ろしている錯覚に陥ながら、この不幸な身の上の自分を思い出す。 シュウマイが怖い、恐ろしく怖い、あのシュウマイさえ無かったら、僕は熱中症などに掛らなかった。シュウマイシュウマイシュウマイシュウマイ、頭の中で連呼していると、シュウマイという言葉が独り歩きし、シュウマイ本来の姿形が消えて別物に生まれ変わる。変な所で区切ってみると、シュ美味いだの、臭舞だの宗魔位だのと自分のおかしな発想に感服してしまう、これも熱中症の症状の一つに違いない。「あのお店のシュウマイをたらふく食べたいな」 彼女は誕生日のプレゼントにシュウマイを選んだ。お安いご用さ、庭一面シュウマイを敷き詰める気満々で僕はシュウマイを買いに出掛けた。 が、甘かった。カラシ抜きのシュウマイなど甘いに違いない。 そこは名店、長蛇の列、僕は当然最後尾に着く。 前には千二百二十八人はいるだろう。皆熱中症対策は万全で僕以外、飲み物や、暇潰しの携帯ゲームやら、ラジオやら、僕の前の人などはこの日の為にハリポタ全巻持ってきていた。僕も何かと思ったが、今更だった、すぐに後ろに並ばれ、地味に前進して行った。 ほとんど立ちっぱなしだった。昼の十一時から二時の一番辛い時間帯に脳天から日差しを浴びる僕。それでも待った甲斐もあり、ようやくゴールが、やっとこさの終着駅が、三万円を握りしめている僕に栄光の? あれ? 何を買おうと並んでたんだっけ? 僕はシュウマイを目前に倒れ、救急車で運ばれて、現在に至る。 そのまま三万円は治療費に消えるだろう。病室の白い天井をずっと眺める僕。彼女になんて言い訳しよう、愛する人の願いも叶えてやれないなんて、僕は何て不甲斐ないんだろう。シュウマイの悪夢に取り憑かれ、シュウマイ恐怖症の僕を見て彼女は幻滅するに違いない。色んな想いに更けているとドアが勢い良く開き、シュウマイ人間が入って来た。いや、良く見ると彼女だった。 点滴を打っている僕に諸悪の根源は泣きついた。「もう、馬鹿、馬鹿、馬鹿、アホ、アホ、アホ、へたれ、へたれ、へたれ、このすっとこっどこいのろくでなし! あなたがこんなになってまでシュウマイなんて食べたくないんだからっ! 2chでナメクジやら鼠やらカピパラやら人肉使ってるって噂流して、あなたの仇は必ず取っちゃる」 涙を流しながら恐ろしい事を言うもんだ、シュウマイよりも彼女の方が恐ろしい。 流石にそれは止めてもらった。 後日、通販で買える事を知った僕は、三万円分買い、改めてシュウマイをたらふく彼女に御馳走する。 それでも十個でお腹一杯って、満足そうな彼女の笑みと引き換えに、冷蔵庫はシュウマイでパンパンだ。 シュウマイオソロシヤ。
あなたはとても丁寧にわたしの首を絞める。湿っぽいわたしの皮膚に優しく指をまとわりつかせて、すこしずつ、すこしずつ力をつよめてゆく。あなたの肩越しにわたしはぼんやりと天井を見つめながら、怖いな、と思う。でも抵抗はしない。体中の力を抜いて、あなたにすべてを任せる。あなたのつめたい指の感触や、すこし荒い息遣いや、違和感を伴う淡い刺激や、下腹部に溜まってゆくあまやかな熱を、瞼を閉じて静かに味わう。 すべてが終わったあとあなたは必ず、おいしいものを食べに行こう、と言う。いまから? と午前一時をまわったばかりの時計を見ながらわたしは訊く。いまから、とあなたは余裕をもって答える。 わたしたちはアパートを出て、街に向かって歩き出す。夏の夜。空気は重たい熱を孕んで沈みこみ、ときおり吹く風は素肌にべったりとはりついて剥がれない。わたしはあなたのすこしうしろを歩く。あなたがこちらに向けてそっと手を差し出していることに、わたしは気づいている。でも気づかないふりをする。そうしてほんの少しだけ寂しがるあなたを眺めて、かわいい、と思う。 街は静まりかえっていた。コンビニとチェーンの古本店の灯りだけが煌々とあかるい。あなたは大通りの裏手にひっそりと佇む中華料理屋さんに入る。油でべたべたの床を歩き、カウンターのいちばん端に二人ならんで腰掛ける。店内にほかのお客さんはだれもいない。やっと出てきた店員に、あなたはラーメンと焼き飯と餃子を頼む。あなたに促されてわたしも焼きうどんとしゅうまいを注文した。厨房の奥でコンロに火がつく音、つづけてフライパンの上で油がはぜる音がひびきはじめた。あなたは何も言わない。いつくしむようなまなざしでわたしの首を眺めている。見られていることを意識して、わたしは背筋をぴんと伸ばす。やがてあなたは笑う。満足げに笑う。わたしも笑う。あなたが笑っているから、笑う。料理をはこんできた店員は、笑い合っているわたしたちをまじまじと見ながら奥へ引っ込んでゆく。それを見てまたあなたは笑う。 湯気のたっている熱々の料理を、わたしたちは食べる。油に濡れた餃子を咀嚼し、こってりしたスープがからんだ麺をつるりと嚥下する。食べているあいだ、わたしはあなたのことを考えないようにする。あなたといると、わたしはゆるやかに死んでいくような気がする。ごはんを食べるとまた、生き返る。そしてまたあなたに殺される。生き返る。その繰り返し。果てなどない。わたしは死につづけ、生きつづける。いつまでも。 会計を済ませてから、わたしたちは店を出る。喉が渇いたと言うと、あなたはコンビニでジュースを買ってくれる。あなたはとても優しい。部屋に帰ってすぐわたしはエアコンをつける。空気が整いはじめると、わたしはねむくなる。あなたの膝に頭を置くと、ますますねむくなる。 ――僕のこと好き? わたしの髪をいじりながら、あなたは訊ねる。 ――うん。 まどろみながら、わたしは答える。 ――僕を許してくれる? ――うん。 ――僕から離れない? ――うん。 ――ずっとそばにいてね。 うん、と舌足らずに呟きながらわたしはあなたの頬を撫でる。そのままゆっくりと指先をおろしてゆく。くちびる、おとがい、くびすじ。おやゆびで喉のふくらんだところをかるくつぶすと、あなたはかすかに身じろぎする。こわいんだな、と思った。でも言葉にはしない。首から手をはなして腰に腕をまわす。そのまま抱きしめていると、シャツからあなたの汗のにおいがした。おもいきり吸いこんで、そうしてあなたをみあげて微笑む。あなたも微笑む。わたしたちは微笑みつづける。ふたりきりで、向かい合って。いつまでも。------------------------久しぶりの三語です。ちょうど一時間。読んでくださった方、ありがとうございました。
膝のうえにあった手を持ちあげて、掌をあわせ、いただきますと唱えて箸を取る。 日の入りの時間になってもまだ蝉が鳴いていて、風の凪いだ空には雲がぷくぷくふとった雲が幾つも幾つも浮いている。シウマイが湯気をたてている、茶碗に盛った米とともに。 蝉よりも耳に甲高く響く子どもの声が「そっちはー」「猫のねえー」と途切れ途切れにやってきて、そのたびにそのことばの意味がわからなくなっていく。ずっと以前、私にしょっちゅう随ってこの団地を歩きまわっていた或る歳経た雌犬の痩せさらばえた身体が、その身振りが、なんとなればその擦れた声色が茶色がかったあの眼が子どもたちの声に伴って訪うてくる。それは彼女のことを思い出す私の脳裏に、ではなくて、いまシウマイが湯気をたてている卓の下に眼をやればそのとおりいるのだ。 犬が、ではない。 雨ざらしのままになっていたのだろうすっかり汚れきってしまった毛並み、 歩きだすときくせのようにしていたひょこりと小さく首をさげるうごき、 アスファルトを掻く爪の音、 尾を振るときの息遣いや、健康だったときの舌の色、 そういうものがまったくてんでばらばらに、もはやなんといっているのかもわからない子どもたちの声とともにやってきて、卓の下で私のことを待っている。 手に取ったままの箸をシウマイに突き刺すとふたつに割った片方をたれにつけてから口に運ぶ。 噛んでいる感触がないような気がするのだが、それは聴覚があまりにおかしな音まで拾いはじめているからで、蝉や子どもの声はもとより、遠くで焚かれる枯れ草の爆ぜるのや、蜻蛉の羽音、畦を跳びまわる蛙が揺らす草々の擦れあう音、地面が日中溜め込んだ熱を放りだすときにたてるらしい空気の震えまでもがこの一室のこの私のこの耳にまで飛びこんで五感のおかしくなるような刺激に変換されているのだ。 茶碗の飯に箸をのばそうとするとゆるやかな山型にととのっていた盛りが箸から逃げるように崩れ去り、卓のむこうへこぼれてゆく。 耳にやってくるものの音量は卓上の飯のいなくなってゆくのにあわせていや増してゆき、最後の一粒と思しきものがいってしまうと、ひときわおおきく氷と氷のぶつかる音が響いた。それまでの音はすべて消えた。 音のしたほうをみれば焼酎の注がれたグラスに氷が浮いていて、その氷のおもてにふしあはせの犬の顔したおれが映っている。