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RSSフィード [48] にぶんのいち時間三語
   
日時: 2011/08/28 23:30
名前: 弥田 ID:XOchiGxA

「爪」「バラバラ」「最終」です。
24時を目安にがんばりましょー。

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つめつめつめ ( No.2 )
   
日時: 2011/08/29 17:30
名前: 弥田 ID:NOrBUZtk

 最終電車に飛び乗った。ホームに人はまばらで、生気のない彼らを後に、赤い車体がゆっくりと発進していった。警笛の残響が夏の夜を舞っていた。
 椅子に座ると、隣の老婆が話しかけてくる。
「こんにちは。どちらまでおいでですか?」
「金山のほうまで出ようと思いまして」
「なるほど。わたしはね、もうちょっと先、名古屋で降りる予定なのです」
「そうなのですか」
「ええ」
 老婆はにっこり、と笑い、それから照れたように額を掻いた。驚くほどに長い爪だった。長く、太く、逞しかった。それは黒ずんだ芋虫を思わせた。
 それきり老婆は黙りこくってしまったので、私もなにも話さなかった。ただ視線だけは老婆の爪に、ちらり、ちらりと移ってしまい、どうしようもなかった。クーラーがききすぎていて、ひどく寒かった。
 ふたたび。老婆が額を掻いた。ほう、と思わず息をついて、あわてて口をつぐんだ。老婆は何も気づいていないのか、顔色ひとつ変えないまま額を掻き続けた。血のにじむまで掻き続けた。
 電車が駅につくと、バラバラと乗客が降りていく。乗りこんでくる人もある。そんな中、私と、老婆と、ふたりだけがじっと動かない。
「へんなつめ」
 と、向かいに座った少女が呟く。
「そうですね」
 老婆は笑い、そっと額を掻いた。

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