「眼帯」「震える声」「そこを右に」が今回のお題ダー。 締め切りは11時半ダー。 ダー。
お題は、「眼帯」「震える声」「そこを右に」です。 縛りはホラーです。 眼帯女 眼帯女って知ってるかい? 女は助手席に座っていた。遊園地の帰り道、流れゆく景色、窓に顔を向けていて、男からは表情は読み取れない。寝ているのかもしれない。「眼帯女って知ってる?」 たいした話題でもないのは男も分かっている。運転している自分に少し気を使って欲しいのもあった。「何それ? 面白いの?」 あくびを一つ、顔を向けず、返事だけする彼女、「ちょっと怖い話だね、都市伝説みたいなもんさ、聞く?」 遠慮がちに尋ねる。彼女は興味を示した素振りもなく、「教えて」 と顔を見せず、眠気を噛み殺しているようだった。「眼帯女、文字通り眼帯をしている女性だね、この人はただ眼帯をしているんじゃないんだ」 そうなの? と返事だけで見向きもしない、男は運転しながら、「眼帯、目を隠す物だね、だけどその女の人は、顔中に眼帯を付けているんだ。顔を覆い隠すほどに、顔中に」 なぜ? と彼女の興味は男に向いた。顔は向いていないが。「ネットでの噂だと、顔がグチャグチャとか、両目が無くて眼窩が黒い穴とかだね、眼帯女は一人暮らしで、部屋中に眼球を置くコレクターとも言われているんだ。実際に見た人は、両目を眼帯女にくり抜かれた上、何も覚えて無いって言うんだ、もしくは意識不明、両目は見つからないんだって」「そうなんだ」 彼女はただ景色を眺めていた。男はわき見して彼女の様子を窺うが、怖がっている風には見えない。彼女のアパートまですぐそこまで来ていた。「すぐそこだね」 震える声を男は出していた。頭をよぎる、助手席に座っている彼女の素顔を男は覚えていない、見た記憶などなかった。首から上の彼女は常に顔を隠していた。正面に居ても俯いたり、後頭部を正面に向けていてもなぜか気にならなかった。「そこを右に曲がって」 彼女の指示に従う、ネットでの噂を反芻する男、彼女のアパート付近で噂になっていたからだった。「あなたのも…」 え? っと男は聞き直す。「あなたのも頂戴」 顔を向けた彼女、そこで男は彼女の素顔を初めて見た。ネットでの噂は全部デマだった。彼女の顔は目玉で整形されていた、全てが眼で作られている。大小の眼球が重なり合い、鼻や唇を形どっていた。何万とも言える中心の黒目は全て男に向けられている。 新しい眼を手に入れる喜びからか、彼女の眼球唇の両端は上がり、男が最後に見たのは彼女の笑顔だった。前作のパク…
「桜ヶ丘小学校を知りませんかー!」 多くの人が行きかう路地の片隅で、ランドセルを背負った少女が叫んでいる。 必死なのだろう。頬を赤らめ、眼に涙を浮かべ、震える声で、誰かに問いかけているのだ。 行き交う人々の誰もが同情するように彼女を見るが、その問いかけに答えるものはいなかった。 可哀想にとは私も思うが、だからといってどうすることも出来なしない。ここにいる誰もが、道に迷っている。それは、私も同じことだった。 迷い路、というのだそうだ。 例えば彼女のような子供が、学校に向かう途中、不意にいつもと違う道から行ってみようとしたときそれはあらわれる。馴染みの街の馴染みの通学路を離れ、一本違う道から学校に行こうとすると、どんどんと見慣れぬ光景が眼に入ってくる。こうなるともう遅い。その先にあるのは迷い路から通じる、ひとつの街なのだ。 その街には多くの人がいる。 すべてが、迷い路を通った人々だ。仕事場にいくはずだった社会人。自宅に帰ろうとした老人。近くのスーパーまで買い物に行こうとした主婦。みなが迷いながら、それぞれの道を探している。街を出る道を探すのは容易ではない。雑多な街の中、本当の抜け道を知っている人はただ一人なのだという。そして、その答えを知る人物は、迷った原因によって違うという。 私もまた、かれこれ半日以上、私が向かうべき道を知っている人物を探している。ふと耳にした噂では自分の出口へ続く道を一日かけても見つけられなかったものは、永久にこの街の住人となり、自分と同じ理由でここに迷いこんだ人を待つ役目を果たさねばならない。まるでいわれのない無期懲役を科せられたように。「青葉丘をご存知の方はいらっしゃいませんか!」 私は叫ぶ。半日以上も叫んでいるため、喉はとうにつぶれ、まともな声は出ないが、それでも懸命に声を上げ続けていた。もうすぐ丸一日が過ぎるのではないかという恐怖に、脂汗が滲む。 どこだ、どこにいる。私の行くべき道を知る人物は。 疲労のため、とうとう声が出なくなってくる。相手に聞き取れるのかさえわからないままに、私は叫んだ。その時だ。「兄さん、青葉丘をお探しかね?」 不思議な老人だった。左目に眼帯をしており、白い髭を蓄えている。背を丸めて、杖を片手にゆっくりと私に歩み寄ってきた。 声がでない。返事ができない。私は相手に伝わるように、必死に頷いた。「ああ、ようやく会えた。わしも、青葉丘に向かう途中、迷い路に入ってもうての。一日しても出口に通じる道を見つけられんで、あんたをずっと待っとった」 私は眼に涙を浮かべて、頭を下げ続けた。感謝を、どうしても伝えたかった。「ええ、ええ、気にしなさんな。これでわしもようやく帰ることができるわ。見るに、兄さん、そろそろ一日経ってしまうんじゃないかの? これはいかん。急ぎなされ。わしに出会えても、一日過ぎてしまえば、意味がない」 老人の言葉を聞いて、私の鼓動は速まる。しかし、それを伝えることができない。「わかっとる、わかっとる」老人は頷いて、前方の狭い路地を示した。「この先を右に行きなされ」 ――ありがとう! 私は深く頭を下げると、老人の示す道へ走った。いつか必ずお礼をすると心に誓いながら。 いつもの道を歩いている。青葉丘へ続く道だ。どこからどうやってたどり着いたのかわからない。おそらく迷い路とはそういう道なのだろう。安堵とともに思う。 青葉丘には霊園がある。私の家族が眠る墓がある。 私はあのとき不意に、違う道から行こうと思ったのだ。今の自分では合わす顔がないのではないかと思え仕方なかった。そんな心の迷いが私をあの街へいざなったなら、どうにか抜け出した今、私がすべきことはなんだろう。「正直に、ありのままを報告しよう」 そう呟いて、私は真っ直ぐ青葉丘へ向かう。そこであの老人と再会し、改めて感謝を伝えようと思いながら。
そろそろと夏も暮れ、うすら涼しくなってきた。から。キミは、震える唇をつぐんで、指先をそっと痙攣させながら、ちぎれるようなあえぎと一緒に右の眼窩から目玉を産んだ。生まれた目玉はゆっくりと床を転がり、水気を含んだ音たてて、ソファの脚にぶつかった。までを見届けてから、どちらともなく、ふう。とため息をついた。「今年も無事に済んだね」「ええ、万事滞りなく。今年でもう二〇回目だもの。いい加減慣れちゃった」 ふう。と再度ため息ついて、キミは空いた右目に眼帯をつけた。止めゴムに前髪が巻き込まれて、舌打ちしながらそれを取ると、水滴のようにぽつり、とこぼした。「じゃあ、おいわいしようか」「……うん、そうだね」 言葉に込めた感情がうまく読み取れず、僕は困惑しながらも賛同した。ちょうど栄に新しいレストランが建てられて、一度訪れておきたい、と思っていたところだったのだ。その旨を話すと、キミは、「あなたが行きたいのなら、そこでいい」と頷いた。僕らは目玉の出産(もしくは堕胎)のために使われた器具を綺麗に洗って片付け、それから一緒にシャワーを浴びた。彼女の眼窩は淫らに暗く、まわりが赤く色づいていたので、欲情した僕らは、狭いバス・ルーム内で身体を折り曲げながらセックスした。陰茎を眼窩にいれると、ほどよく湿っていて、よかった。「もうすこしそこを右に」とキミが言ったので、左側をこすってやると、不意だったのに驚いてか、いっそう高く鳴いた。きゅう、と壁が収縮して、僕も内熱を吐き出した。キミの右目のはしとはしから、漫画にでてくる涙のように、つう、と白濁が垂れていった。それからもう一度シャワーを浴び、服を着て、僕らは外に出た。 そうして、がだんだん、だんだん、の音に包まれながら、地下鉄に乗っている。車内にひとけはなく、僕と、キミと、あとは蛍光灯のしらじらしい光と、それに照らされる極彩色の釣り広告と、それだけだった。しばらくの間、ふたり、ずっと無言でいた。がだんだん、だんだん、の音が全てだった。新栄で降りる予定で、今名古屋を越したところだから、あと二駅でついた。伏見、にさしかかるちょっと手前で、ふいに震える声がした。「……あのね、」 とキミが言う。「みぃ子が結婚するんだって」「へえ」「うん、それだけ、なんだけど」 僕は何かを言おうとして、だけど、言葉は見つからなかった。「おいわい、だね。今日は楽しもうね。最近は、目玉のことで手一杯だったから、大変だったね」「ううん、あれくらい、どうってこと」「ごめんね」 キミは、閉じたまぶたに似た静けさで、そう言った。それから、出産(あるいは堕胎)の疲れがたたったのか、ふ、と眠り込んだ。伏見駅につくと、どっと人が乗り込んで騒がしく、それでもキミが起きないので、終点までじっと乗り続けた。息を殺して、じっと乗り続けた。
「そこの通路を。そこを右に曲がってちょうだい」 バタバタと走る足音に加えて、指示する看護師の震える声がどこかうろたえ怯えて聞こえる。 消毒薬の匂いが満ち、白さだけが無機質にまぶしい病室の中にそれが聞こえる。「どう? 落ち着いた?」 マダムがキリトに聞く。「落ち着いたみたい」 しばらくしてベッドの横の椅子に座っていたキリトが答える。「そう。ならいいわ」 マダムがそう言ってベッドを覗き込む。 ベッドに身を横たえた満身創痍のタツキが寝息を立てていた。 マダムは思う。 闇の組織を暴露し摘発すること。無事それは成し遂げられたが、かの組織の力を侮りすぎた。 ベッドの彼に過酷なミッションを与えてしまったことを、彼女は後悔する。 その彼女の表情をキリトは見て心中を察した。「これからどうされるんです?」「今回は上層部に責任を取ってもらいましょう。彼には完全に回復するまでは任務を解きます」 キリトに聞かれたマダムはそう言う。 彼女がいかなる権限を持っているのかは不明だ。しかし、ベッドの彼を見る目は親しい人そのものだった。 表向きは喫茶店を営み、裏では機密情報を握るマスターが病室に来た。「あ、マスター」「おやおや。これはこれは」 そういうマスターの手には何かしら紙製のバッグを提げている。「どうしたのですか?その紙バッグは?」「どうもこうも。こればかりは私もほとほと困ってしまったよ」 と、マスターは渋い顔をする。 手に提げていた紙バッグの中にはたくさん封筒があってどれもタツキ宛てのものばかり。「どこで、どう知ったものかねぇ。転身して郵便局に勤めなおそうか」 マスターが冗談交じりにあきれ果てたような表情をする。「そこからすると、かなりお店では人気が高いようですね。特に若い女性からは」 マダムがくすりと笑う。 一通の封筒に書かれた字からそう推測しているらしいが、外れてもいない。「連日連日、聞かれて困ってしまって。そうこうしていると、なぜかどう情報が流れたかこれなのです」「その情報収集能力侮れませんねぇ」「実にそのとおりです」 マスターはため息をついた。 彼らの話し声に、タツキが目を覚ました。 どうにか助かったらしい、ということが分かるとまた長いため息のような息をついて、残った目を閉じる。 それに感づいてマダムとマスターは話を止めて、あとはキリトに託しそっと病室に出た。「マスターとマダムが来てたんだな」 しばらくしてタツキが呟く。その声はか細く震えていた。「うん。来ていた。しばらくはどっちも仕事休めって言っていたよ」「そうか」 白い眼帯が当たった彼の顔は少し生気が戻ってきたようだった。「痛みは?」「あまり感じないな。でも遠近感がつかめないな」 か細い声で彼は言う。「はい。お店に届いたらしいんだけど」「何が?」「ラブレターの類と思うんだけど」「誰だろうなぁ」「それは、誰からかわからないけどマスターが困って持ってきた」 タツキが目を閉じる。 そのうち、彼はまた軽い寝息を立てて眠り始めた。 それを見届けたキリトはそっと席を立つと、病室を出て行った。
歌姫を襲った暴漢の正体は杳として知れず、事件から一週間が過ぎようとしていた。「大丈夫ですかねえ、彼女」 心配そうな声をあげるマネージャーの横へ、事務所社長がやってくる。「問題ないさ。声をやられたわけじゃない。あいつはそんじょそこらのアイドルとは出来が違うんだ。必ず復帰できる。俺はそれを信じてる」 彼らの話す先には一台のディスプレイがあり、画面上を所狭しと動き回りながら声を披露する歌姫の姿が映っている。熱気が失われて久しい音楽シーンに華々しくデビューしたころの、明るく朗らかな姿がそこにはあった。「ほら、そこを右に走るだろ。それから客席に手を振るんだ。声援にこたえてニッコリと微笑んだら、ステージの奥に戻っていって振付Bが始まる。バックバンドとのシンクロも完璧だ。何せあいつは特別な存在なんだからな」「さすがです。社長じきじきに仕込んだだけのことはありますね」 画面の中で、歌姫は社長の言葉通りに動いていく。録画映像なのだから当たり前だ。それでも彼ら二人にとっては、今この瞬間もわが娘を見守るような緊張感があった。 並みの少女には真似できない、複雑でスピーディな振付を笑顔のままで次々にこなす。飛び散る汗をカメラがとらえたのを見て、社長が目を細めるのをマネージャーは見逃さない。今までの苦労の日々が蘇り、思わずハンカチを取り出して目元をぬぐう。 だが、今やるべきは歌姫の思い出を振り返ることではない。まさにこのステージに立っていた時、彼女は謎の悪意に襲われ、用意に再帰できなくなってしまった。襲撃の瞬間をとらえ、憎き暴漢の正体に少しでも近づくのが第一の目的だった。 あの痛々しい姿を再び見なければならないのは心苦しいが、これも彼女を救うための何らかの手がかりとなるかもしれない。ビブラートを利かせ、震える声でささやくように祈りの言葉を告げる歌姫を見守りながら、映像は次第に問題の場面へと近づいていく。「きついだろうけど、ちゃんと見とくんだぞ。あいつが受けた苦しみは、俺たちも同じように感じなくちゃいけないんだ」「わかってます。私と社長と彼女、みんなで一つなんですから」 歌のクライマックス、天井に取りつけられた照明が激しく瞬く中、歌姫は最後のサビを全力で歌い上げる。決して力強いとはいえない声を懸命に震わせ、自分を支えてくれる世界中のファンに届けたい切なる思いを、今この時だけに集めようとする。 だが、その試みは無残に断ち切られる。明滅を繰り返す照明の下で、歌姫はヒッと短く叫び、声を止める。光と闇が交互に訪れる映像の中で、片目を押さえ、マイクをとり落としてうずくまる歌姫。あまりに激しいフラッシュのため、どちらの目を押さえているかは判別がつかない。さらにそこから流れ出す赤い液体は、本物の血のようにマネージャーの視界に焼きつけられる。ちょうど、ステージ横でこの演奏を見守っていた時のように。 やがてバックバンドの演奏がやむと、うう、ううあああ、という叫びが歌姫の唇からこぼれ出し、静まり返った客席に跳ねかえる。並みのアイドル以上に異様な空気に包まれたステージで、マネージャーは必死に駆け寄ろうとした。あってはならないことが起きた。わずかな間に、彼はその場の誰よりも状況を理解しているつもりになっていた。 そして事態は彼の予想をさらに超えた。映像にマネージャーの姿が見えるか見えないかというところで、歌姫の姿は唐突に消えてしまったのだ。 客席はしばらく静かなままだったが、やがて主催者を責めるブーイング一色となった。彼らの心ない罵声より、歌姫を気づかう声がどこにもなかったのがマネージャーにとっては悲しかった。自分たちの苦労を知らないからにしても、彼は観客に問いかけたかった。 ――お前たちは、彼女の何を愛していたんだ?「復帰したら、あいつの左目に眼帯をつけてやらなくちゃならんな」 ぼそりとつぶやいた社長の声に、マネージャーは歌姫への深い愛情を感じ取った。そうだ。社長は誰よりも歌姫を愛している。誰よりも彼女の不在を悲しみ、彼女を襲った犯人への怒りも深いに違いない。ならば自分が落ちこんでいてどうする。「そうですね。とびっきりのかわいいのをつけてあげて、元気にしてあげましょう」「ああ。デジタルデータにだって心があるんだってこと、もっともっとこの世に知らしめていかなくっちゃな」 電脳世界の歌姫。コンピュータウイルスを流しこまれ、現実世界に立体映像として呼び出せなくなった理想の少女。一日も早く、彼女が復帰できるようにがんばらないと。 邪悪な笑みを浮かべる社長には気づかないまま、マネージャーは一人決意を固めた。
ある日、俺は剣道の試合で彼女に会った。 そして、試合で勝った。 そして、どういうわけか……「師匠! お待ちください、師匠」 うしろからついてくる竹刀を持ったポニーテールの美少女。星原あやめさん。 ただ、俺は周りの視線が痛かった。「師匠、どうして逃げるんですか?」「いや、その大声で師匠と呼ばれると恥ずかしいと言うか、なんというか君の姿が俺の趣味のせいだと誤解されるのがつらいというか」 あの試合の後、彼女は俺の弟子にと志願してきた。断り続けた俺だったが、それでも彼女は俺のあとをついてきて、勝手に師匠と呼んでいる。 こんなに可愛い子に師匠と呼んでもらうのは、恥ずかしいが、それほど悪い気がしないでもない。だが、大通りの中、ラフな姿の“伊達と名のつくような戦国武将を思わせるような眼帯をつけた”美少女が俺のことを師匠と呼ぶ。 まるで俺が彼女にコスプレ&妙な設定をつけさせている痛い男のように誤解されかねない。いや、明らかに周りの視線が俺に集まってきている。「……ねぇ、星原さん。やっぱ、その師匠と呼ぶのはやめてくれない?」「ですが、師匠。弟子が師匠のことを師匠と呼ぶのは当然のことですからっ!」「わわ、声が大きいよ」 俺が慌てて彼女を黙らせてからため息をつく。 そもそも、俺は師匠と呼ばれるような柄じゃない。確かに剣道一筋に生きてきたし、その腕前はそれなりのものだと自負している。それでも、俺の知ってる師匠と呼ばれる人達からしたら全然ダメだ。青二才だ。 本当なら、眼帯をつけるのもやめて欲しいが、こういうものをつけているのは大抵は目の病気か何かであり、彼女の事情もあるだろうから、そこはあえて指摘しない。 ただの戦国武将コスプレ好きだったら心底イヤだなぁとは思うけど。 それにしても、やはり周りの視線がいたい。 俺は、昔から通っている道場(星原さんも今では通っている)に行くには少し遠回りになるが、大通りを避けるために、人通りの少ない道へとそれた。当然、星原さんもあとからついてきた。「師匠、どうしてこの道へ? いえ、すみません、師匠には師匠の考えがあるはず! このあやめ、行き過ぎた発言でした」 心がいたい。彼女から慕われれば慕われるほど、敬われたら敬われるほど、俺の心が痛んでいく。 このまま、人のいないところに行ってしまいたい。そう思った時だった。「お、クズノキくんじゃないか!」 その声がかけられる。「…………ふ……古宮くん」 震える声とともに、俺は後ろを向いた。 そこには、髪こそ黒から金へと色が変わったが、昔の面影を残したクラスメートがいた。「古宮さんとやら、師匠の名前は楠であります」「……ぶっ、お前、師匠とか呼ばれてるの? クズノキのくせに」 俺は星原さんの手を掴み、走り出した。いや、逃げ出した。「師匠! これはロードワークですね! 体力づくりは基礎の基礎、さすがです」「うん、それでいい! それでいいからそこを右に」 一際細い道へと指示を出す。そこを抜けて大通りへ逃げれば…… その淡い希望は一瞬で消えた。「ん? なんだ?」 モヒカンの男、デブの男など、一目見ただけでがり勉優等生などではないとわかる連中が道を占領していた。「おい、お前ら、そいつらを通すなよ」 後ろから声をかけたのは古宮君。「なんだ? 古宮の知り合いか?」「昔のサンドバッグ君だよ」「あぁ? 古宮、お前ボクシングジムなんてとっくに追い出されただろ」 大笑いする不良達。「師匠、これは何の訓練でしょうか?」 状況をつかめないだろう星原さんに、古宮は視線を向ける。「えっと、そこの女の子、君の名前は?」 古宮はほくそ笑んで星原さんに尋ねる。「星原あやめです」 凛とした声で答える。その声には怯えなど微塵もない。「星原はクズノキの弟子なのか?」「楠師匠の弟子です」 訂正を入れる星原さん。「師匠の言うことは絶対か?」「はい」 そして、古宮の笑いはさらに邪悪なものへと変わる。「なら、クズノキ。星原ちゃんに命令しろ。俺に、古宮様に抱かれろ! とな」「え?」 驚いたような声をしたが、想像していないことではなかった。いや、想像通りだった。 俺は昔から古宮にいじめられていた。いじめられてなさけないと言った両親は、俺を剣道場に通わせた。俺は剣道の腕をあげても、いじめは終わることはなかった。 剣道は、俺の心までは強くしてくれなかった。 そして……今も俺の心は古宮に鷲掴みになっている。「星原さん……」 俺は彼女を見た。俺の心は最低の答えを導き出した。「はい、師匠。師匠の命令なら、例えなんでもいたします」 その時だった。俺は彼女のことを最低だと思った。いや、そうじゃない。彼女のように、人の命令を何の疑いもなく聞く以上に、全く信じていない相手のことを聞く俺のことを最低だと思った。「……命令する」「はい」「竹刀をかして。あと、僕の戦いを最後まで見て」 親には口だけでも強くなったように、“俺”と語るようになった似合わない一人称を捨て、竹刀を掴む。。「おい、やるっていうのか? クズノキのくせに」 古宮は近くにおちていた鉄パイプを掴んでかまえる。「いいよ、勝負してやるよ」 古宮は鉄パイプを振り下ろした。 そう、振り下ろしただけで単調な攻撃だった。「がっ」 そんな攻撃は簡単に受け流せるし、その間に竹刀で相手の鳩尾めがけて竹刀をつくことは造作もないことだった。「たった……」 たった、これだけのことだったのか。 倒れる古宮を見て、僕は笑った。「師匠っ!」 星原さんの声が響いた。 何をそんな大声を上げているのか? 振り向いた僕の目に何かが直撃する。そして、激痛が走った「おぉ、命中。やるぅ」 ガラスの割れる音が聞こえた。 ビール瓶か何かだろう。幸い、目に直接あたったわけではないが、視力が一時的に下がったみたいで、おぼろげにしかみえない。「師匠! しっかりしてください!」「……星原さん、お願い、逃げて」「……いえ、師匠の力、しかと見せてもらいました。こんどは私が見せる番です」 星原さんは眼帯を外し、竹刀を握り、両目を大きく見開いた。 直後みた光景は、信じられないものだった。古宮同様鉄パイプを拾って振るう不良達の攻撃をすべていなし、的確に攻撃をくりだす星原さん。剣道の試合のときとは動きが全然違う。 そして、不良達はあっという間にやられていた。「この眼帯をとったとき、私はパワーアップするんです」「いや、眼帯をとったらパワーアップするんじゃなくて、眼帯をとったらよく視えるようになっただけだと思うよ」「それより師匠、目は大丈夫ですか?」「うん、大丈夫だよ。ねぇ、星原さん」「なんでしょう?」「これから、師匠とよばれても恥ずかしくないように頑張るよ」「いえ、師匠は恥ずかしいことなど……いえ、何でもありません」 星原さんは、僕の何かを感じ、口を閉じた。 もしかしたら、今は星原さんのほうが強いのかもしれない。でも、星原さんに師匠と呼ばれても恥ずかしくないようになりたい。 そのために、剣道を始めたのだから。
その日、アリスは眼帯をつけていた。「わるくした?」 と聞くと、首を横にふって、「まあ、聞くなよ」 と微笑んだ。幸せそうに笑うものだから、ぼくはそれ以上なにも言えなくなる。アリスがいま付合っている相手がロクでもないやつだとは聞いているから、顔でも殴られたのではないか、と心配になる。「で、今日はどうするんだ」「お金を稼ぐ」 そういって、ぼくは依頼書を机に置いた。「面白くない依頼だね」 とアリスは内容を読んで、ぽつりと言う。そのとおりで、ダンジョンの地下五階にある地底湖で、薬草を摘んでくるといったものだ。ぼくとアリスとなら、地下の三十階までなら簡単に行ける。それから先も準備すれば問題ないぐらいだ。ただ、いまはそういうことをしている時間がない。短時間で、お金が集める必要がある。「稼ぎは悪くない。収支を考えると、これがベストだ」「冒険者も費用対効果を考えだすとただの人間ね」 まあね、と、ぼくは自嘲して、彼女に行こう、と促した。 * お金が必要だ。 もう半年前の冒険で、ダンジョンの地下五十階まで行ったとき、仲間がグールに食い殺された。ぼくとアリスは辛うじて逃げ帰った、そいつを生き返すのに必要な髪の毛も忘れずに回収して。でも、それは本当にギリギリのところで、財産なんて失ったに近い。 人を蘇生するには、お金がかかる。部分しか残っていない、と、莫大な額になる。また、蘇生には時間制限がある。九ヶ月以上経つと、魂がこの世からあの世にいってしまう。そうなると打つ手はない。ぼくはまだあいつのことを弔いたくない。 * ダンジョンは危険な場所だ。どこまで深くあるのかも分からない。伝説では、最深部は地獄とつながっている、そして、その奥には世界の秘密がある。多くの冒険者はそれを目指している。好奇心に駆り立てられているのだ。ぼくもアリスも、それからあいつもいつかはダンジョンの最後まで行きたい、と願っている。 アリスは額にういた汗を手で拭いながら、「やっぱ昨日の今日だと疲れるね」「その眼帯は、」「気にしないで、私は満足しているんだから」「満足しているって」 無駄口を叩きながらも、周囲に目を配っている。アリスが急に立ちどまり、手のサインで屈むようにいう。前方に何かの影が見える。この階層だから、おそらくコボルトだろう。小さな痩せっぽちな人間の形をした妖精で、好戦的だ。避けてとおるのが得策だ。「迂回するしかないか」 とアリスがいう。 ぼくらは来た道を引き返し始める。戦闘は避けるべきものだ、特にあいつがグールに殺されてからはそう思う。 * アリスがいまの男と付き合い始めたのは、あいつが死んでからだ。その前に恋人はいなかった。たぶん、始めての相手ではないだろうか。 彼女の性格は男勝りなところがあるし、その手のことに興味もなかった。ダンジョンにぼくらは魅入られていた。その理由は、いろいろと考えると、アリスの祖父の物語を聞いて育ったことにあると思う。アリスの祖父も冒険者だった。 ダンジョンの奥には世界の秘密がある。 なぜ春になると花が咲くのか、冬になると雪が降るのか。そういうことの答えがダンジョンの奥には眠っているのだ、と、いつも言っていた。ぼくらはそれが知りたい、と思ったのだ。 特にあいつが、それを一番知りたがっていたように思う。ぼくはあいつが行くところなら、どこまでも付いていきたいと思っていた。 *「そこを右に」 とアリスに言われて、ぼくは我にかえったように立ち止まった。「どうしたの?」「いや、」 と言ってから、ぼくはアリスの言うように右に向かった。そうやって、アリスに先導されながら地下五階におりて、地底湖にたどりついた。 地底湖の周辺は明るい。湖の底がほのかに発光していて、ぼんやりと色んなものの影が浮びあがっている。 今日は他の冒険者の姿も見当たらない。ここは不思議と怪物が近づいてこない場所で、ダンジョンを潜るなら、最初の休憩地点になる。ただ、ここまで来るにもかなりの労力が必要ではある。 湖畔に生えた薬草を必要なだけ詰む。アリスは水辺に寄っていて、じっと湖面を見つめていた。その後姿が疲れきっていて、「どうした?」 と聞いた。すると、アリスは眼帯を押さえながら、「何でもない」 と震える声で返事をした。「何でもないって」 そんな訳ないだろ、と、言おうとしたところで、どろり、と、アリスの手で押さえている眼帯から、黒い液体が垂れた。それは黒く見えるけれど、間違いなく血で、ぼくは反射的にアリスの腕をつかんで、顔から引き離した。 眼帯は赤く染まっていた。眼の形にくっきりと染まっている。血を吸って、内側にくぼんでいた。「眼帯変えるから、向こう向いてくれる?」 とアリスは言う。 * 地底湖で回収した薬草を依頼人に渡して、ぼくとアリスとは別れた。夜はそれぞれの過ごし方がある。とくにアリスが恋人を作ってからは、一緒に食事するもこともなくなった。 ぼくは食事をしてから、宿にもどって、部屋に保管しているあいつの髪の一房を見てから、さっさと眠る準備をする。睡眠をしっかりと取り、明日の依頼をこなさないといけない。計算では、お金が間にあうかどうかは見えていない。一日だって休むことはできない。 ベッドに入りながら、目をつむる。子供のころのアリスとぼくとあいつとの記憶が水面にうかびあがる泡のようによみがえる。夢と現実との境のなかで、ぼくはあいつの横にいながら、アリスの祖父の語る冒険譚に耳を傾けていた。 アリスの祖父が語る歴戦の冒険者は、すべてあいつの姿に置き換わっていく。ぼくは、きっと冒険の話を聞きたいのではなくて、その冒険の話で活躍する主人公をあいつと重ねたかったのだ。 グールに食われていく姿が、ぽん、と浮かぶ。悲鳴と喚き声にぼくは、耳をふさいだ。その隣で、アリスが諦めるように踵をかえしている。 * アリスは両目に眼帯を巻いていた。杖で床の形を確かめながら近づいてきて、ぼくの漏らした声に気づいて、正確に、ぼくの対面の席に座った。「ごめんね、もう何も見えないから、一緒に冒険できない」「どうして」 とぼくが聞くと、アリスは微笑みながら、「いまの男がさ、目のない眼窩をなめるのが好きなんだよね。まあ、異常だとは思うけど、私は彼が喜ぶなら、それでいい」「あいつは、どうする」「死んだら普通は生き返らないんだよ」「でも、そうじゃない方法がある。それで、生き返して、また前みたいに」「もう私は嫌だ」 アリスはそう言うと、立ちあがる。ぼくの傍から離れていった。踵を返して、目が見えないのなんて嘘みたいに颯爽と去っていく。追いかけることもできなかった。ぼくは手に握っている依頼書をじっと見つめて、それをぐちゃぐちゃに破り捨てた。それから、思いっきり机を叩くと、そのまま前に突っ伏した。 疲労感がどっと湧いてきて、足が身体が鉛になったように重くなった。
遅刻したら感想いうタイミング逃しちゃったので、レスでレスでご勘弁を。> 楠山歳幸さん ぞくっとしました。 短いながらに、人間とは違う生き物の残酷さと理解のなさが表現されていて面白かったです。ただ、もうちょっと視覚的な描写があると人魚の異質さが際立ったかも、と思いました。 短いですが、以上です。> 水樹さん おお! この都市伝説はちょう好みです。 落とし方も斜め上をいっていて、楽しめました。欲を出せば、このグロさにあともう一味ほしかったかな、と思ったり。エロさでも、切なさでもほのぼのする感じでもよくて、とか。 短いですが、以上です。> あの場所へ 片桐秀和さん 鉄板だ、と思ったのは内緒です。 設定も物語も好みですし、面白かったのですが、ちょっと語りすぎなのかも、と思いました。道に迷って、異世界にいって、帰ってくるのパターンは、桃源郷というか隠れ里ものというか、それに限らず鉄板のパターンだと思うのです。ですので、説明を密にしなくても伝わるんじゃないのかな、と思ったり。 うん。最初の「桜ヶ丘小学校を知りませんかー!」というセリフが何だかみょうにツボです。片桐さんのオリジナリティが発露していると思いました。> めだま、のはなし 弥田さん ですよね。眼帯つったら、眼球ファックですよね。よく分かります。 さて。 やっぱエロ切ないのはいいですね、何かねっとりした感じというのか、胸に響くものがあって好きです。それと、後半のあざとらしさ、みぃ子が結婚するんだって、と本筋と関係ない話を振ってくるところも好みでした。> 某大病院の一コマ マルメガネさん おー、前回のBLちっくな話と世界観がいっしょなのですね。 多く語られない部分(かの組織だとか、上層部だとか)が気になるところです。このまま三語を続けていけば、物語の全容が分かる? と、気になります。> 『我らのためにこそあれ』 ラトリーさん さすが、きれいに落ちています。 物語の筋を冷静にならべると、かなり唐突な、ミステリでいえばいままで登場さえしなかった双子の弟が犯人です、というぐらいな唐突さがあると思うのですが、通して読んでみるとその違和感がない。それが素直に凄いな、と思うのと、得体のしれないカタルシスがありました。 邪悪な笑みを社長が浮かべるということは、復帰した歌姫はエ(ry とかちょっと期待するのは、ダメでしょうか。 ダメですね(苦笑> 剣道の力 ウィルさん ウィルさんの三語を読むのはすごく久しぶりです。そして、さすがの文章量・・・! と思いつつ、読み終えてとてもほっこりしました。いや、かなり面白かったです。 起承転結がしっかりしていて、半端ない安定感でした。後半がちょっと走り気味なのが残念ではありますが、ていうか、こう、古宮と主人公との悶着をもうちょっと見たかったな、とか、主人公の情けない姿の溜めがもう少しあると、よかったなとか。といってもあの短い時間で、ここまで書きあげるのには脱帽です。> 自作 遅刻だよ(TT 話の内容の見積もり誤ったなー、と、反省です。
>楠山歳幸さん 子供のころ、人魚のイメージは「きれいなおねーさん」だったんですが、年を重ねるごとに不気味な印象が強まってきてます。どうしてでしょう。やっぱり足が魚で、陸を進むとぬるぬるするからでしょうか。そういうところで得体の知れないものを感じて、また一つ不気味方面へのイメージを増やせた気がします。 ふと、最初と最後の「ごめんなさい!」が漁師の内心を吐露した言葉だったりしたら、それはそれで別の面白さが出てくるのでは、なんて思いました。>水樹さん ギャー! ご無沙汰してましたが、水樹さんらしいお話ですね。最後のほう、こっちまでグロさそのものに襲われそうな錯覚をおぼえました。「ない」より「ある」ほうが怖いこともあるもんですね。まさかそう来るとは思わなかったんで、驚きでした。 さらにこう、読んでる人間まで目をえぐり取られるような一文が終わりに挟みこんであると、あとあとまで気持ち悪さが残ってよかったかもです。正直、そういうのがなくてホッとした思いもあるんですが……とりあえず。>片桐秀和さん 自分の住んでるところが桜ヶ丘なんで、まずそこでちょっとドキッとしました。見慣れない光景の場所に迷いこんで出られない恐怖、子供ならなおさらですね。主人公と出会った老人は、彼の亡くなった家族である、という認識で大丈夫でしょうか? 丁寧に描かれているとは思うのですが、小学生の女の子のエピソードはもう少し簡略してあってもよかったかもです。あるいは「私」を女性として、より孤独に追いこまれている寂しさを強めてみるのもアリかもしれません。何となくそんな風に感じました。>弥田さん 目玉を産む、という発想にびっくりしました。あーでも目玉がなければ穴だし、突っこむのもできなくはないし、だとしたらそこから産まれるのは……なんていろいろ考えてると、違和感なくなってくるのがすごいです。実在の地名を出してあるのも、本当にこんなカップルがいそうな空気を醸し出してていいですね。いや、怖くもありますが。 一見グロくて、でも読み返すときれいで。そういうの、憧れます。>マルメガネさん 続きものな雰囲気がありますね。喫茶店のマスターが実は凄腕の裏稼業やってます、な設定にすごく自然なものを感じてしまうのはなぜでしょう。やっぱマスターって言葉が大きいのかなって思います。それに店を支配していて、蝶ネクタイで、多少のことでは動じない悠然としたイメージがそうさせるのかな、と。 人物を絞りこんで、ラブレター関係で何か一本、眼帯を生かしたエピソードとかがあるとよかったかもです……自分では思いつかないですが。>ウィルさん 少年漫画の読みきりでありそうな、バシッとカッコいいところが決まったストーリーでしたね。眼帯をつけていることから目の病気を心配するあたり、主人公のさりげない優しさが伝わってくる感じがあるんですが、途中の一人称の変化でより強まった印象があります。勇気を出して強大な相手に戦おうとする姿勢、やっぱりいいもんですね。 一つだけ希望を書くとすれば、ヒロインが主人公を「師匠」と呼ぶほどに慕うのはどういうところに惹かれたからなのか、最初のほうで軽く触れてあるとさらに読み心地がよくなった気がします。ラスト近くで伏線として昇華されれば、さらに効果大でした。>toriさん RPGのデフォルメキャラがちょこちょこと動きまわっているようなイメージ。でも起こっていることはハードで、こういう世界だからこそ感じる残酷さもあるのかなって思ったり。「ぼく」が報われない思いに打ちひしがれる一方で、「あいつ」の記憶を完全に捨て去ったかに見えるアリスが実際は何を考えているのか、いろいろ想像の余地があって飽きないですね。新しい恋人のために自らの眼球を失うことで、「あいつ」の復活を諦めた自分に罰を与えてるのかな、とか考えたりします。 自分も場面転換をたくさんできるようになりたいな、と思える一作でした。>じぶんの 二重オチのつもりでした。歌姫がサイバーなのと、社長がやばい人なのと。ヒントは「眼帯」。なんて、自分で解説してどうする。 直したい表現がいろいろあるのがむずがゆいです。
拙い感想、失礼します。>水樹さん デートの帰り、車の中で男が女性にご機嫌をとっている、なんだか乾燥した感じが雰囲気が出ていて良かったです。それだけにそのあとの展開、ホラーとわかっていても怖かったです。「黒目は全て男に向けられている」秀逸でした。 >片桐秀和さん 異世界の表現が良かったです。雑踏の雰囲気が出ていたと思います。少女の問いかけから始まる、というところもツボでした。 読解力がないため、ラトリーさんの老人の解釈に「え!」となりました。オチもかっこいいです。欲をいえば(一時間でした。はい。すみません)合わす顔がないのドラマが欲しかったかな、と思いました。 >弥田さん うう。なんだろう。説明できないのですが、魚歌もそうでしたが、弥田さんの文章の不思議な魅力がたまりません。人間世界の中にいる人外の、眼窩Fでさえ、切なさがにじみ出ているように感じました。「止めゴムに前髪が巻き込まれて」ここが色っぽかったです。 >マルメガネさん シュールな作品しか知らなかったので、こんな作品も書くとはちょっと驚きました。映画のシーンみたいで面白かったです。個人的には、マダムがかっこいいと思いました。 >ラトリーさん 凄い緊迫感がありました。電脳と聞いて、そういえば歌姫セリフ無かったなあ、と二度驚きました。小品なのに息をつかせないようなエピソード(?)と描写力(?)、凄くてかっこよかったです。 >ウィルさん ボケ(?)の星原さん、ツッコミ(?)の楠さん、星原さんのキャラ立ちが良かったです。話もしっかりしていて、さらに一時間で、さらに文章量があって、ただ茫然としました。不良に立ち向かうシーンも、ぞく、とするぐらい良かったです。 >toriさん 僕はゲームをやらないので、ガチなファンタジーは苦手なほうですが、この作品は良かったです。人物描写(?)にとてもジン、と来ました。地獄の奥の世界の秘密、想像を掻き立てられます。 >自分の 一人だけ浮いてます。はい。 皆、これが一時間!?っていう、驚きの作品ばかりでした。 わしゃァ見たんじゃー。あれは間違いなく、(一時間)三語じゃった。 失礼しました。