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RSSフィード [45] わしゃァ見たんじゃ。あれは間違いなく、三語じゃった。
   
日時: 2011/08/21 22:26
名前: 片桐秀和 ID:6ioV39hw

「眼帯」「震える声」「そこを右に」が今回のお題ダー。
 締め切りは11時半ダー。
 ダー。

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某大病院の一コマ ( No.5 )
   
日時: 2011/08/21 23:43
名前: マルメガネ ID:MUo/LKRs

「そこの通路を。そこを右に曲がってちょうだい」 
 バタバタと走る足音に加えて、指示する看護師の震える声がどこかうろたえ怯えて聞こえる。
 消毒薬の匂いが満ち、白さだけが無機質にまぶしい病室の中にそれが聞こえる。
「どう? 落ち着いた?」
 マダムがキリトに聞く。
「落ち着いたみたい」
 しばらくしてベッドの横の椅子に座っていたキリトが答える。
「そう。ならいいわ」
 マダムがそう言ってベッドを覗き込む。
 ベッドに身を横たえた満身創痍のタツキが寝息を立てていた。
 マダムは思う。
 闇の組織を暴露し摘発すること。無事それは成し遂げられたが、かの組織の力を侮りすぎた。
 ベッドの彼に過酷なミッションを与えてしまったことを、彼女は後悔する。
 その彼女の表情をキリトは見て心中を察した。
「これからどうされるんです?」
「今回は上層部に責任を取ってもらいましょう。彼には完全に回復するまでは任務を解きます」
 キリトに聞かれたマダムはそう言う。
 彼女がいかなる権限を持っているのかは不明だ。しかし、ベッドの彼を見る目は親しい人そのものだった。
 表向きは喫茶店を営み、裏では機密情報を握るマスターが病室に来た。
「あ、マスター」
「おやおや。これはこれは」
 そういうマスターの手には何かしら紙製のバッグを提げている。
「どうしたのですか?その紙バッグは?」
「どうもこうも。こればかりは私もほとほと困ってしまったよ」
 と、マスターは渋い顔をする。
 手に提げていた紙バッグの中にはたくさん封筒があってどれもタツキ宛てのものばかり。
「どこで、どう知ったものかねぇ。転身して郵便局に勤めなおそうか」
 マスターが冗談交じりにあきれ果てたような表情をする。
「そこからすると、かなりお店では人気が高いようですね。特に若い女性からは」
 マダムがくすりと笑う。
 一通の封筒に書かれた字からそう推測しているらしいが、外れてもいない。
「連日連日、聞かれて困ってしまって。そうこうしていると、なぜかどう情報が流れたかこれなのです」
「その情報収集能力侮れませんねぇ」
「実にそのとおりです」
 マスターはため息をついた。
 彼らの話し声に、タツキが目を覚ました。
 どうにか助かったらしい、ということが分かるとまた長いため息のような息をついて、残った目を閉じる。
 それに感づいてマダムとマスターは話を止めて、あとはキリトに託しそっと病室に出た。
「マスターとマダムが来てたんだな」
 しばらくしてタツキが呟く。その声はか細く震えていた。
「うん。来ていた。しばらくはどっちも仕事休めって言っていたよ」
「そうか」
 白い眼帯が当たった彼の顔は少し生気が戻ってきたようだった。
「痛みは?」
「あまり感じないな。でも遠近感がつかめないな」
 か細い声で彼は言う。
「はい。お店に届いたらしいんだけど」
「何が?」
「ラブレターの類と思うんだけど」
「誰だろうなぁ」
「それは、誰からかわからないけどマスターが困って持ってきた」
 タツキが目を閉じる。
 そのうち、彼はまた軽い寝息を立てて眠り始めた。
 それを見届けたキリトはそっと席を立つと、病室を出て行った。

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