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RSSフィード [42] 三語いいとこ一度はおいで
   
日時: 2011/08/06 23:47
名前: 片桐秀和 ID:bAHnLEhE

やります三語。今回のお題は、以下の八つ。

「清純派」「召集令状」「エニグマ暗号文」「スカトロ」「初経」「それはわしのじゃ。返せ」「賞味期限」「硫酸頭からかぶって皮膚がただれて苦痛の中、悲痛な叫びをあげて死んじゃえっ! もう私知らないっ!」

この中から三つ以上使用して、作品を仕上げて下さい。
なお、縛りとして『奇人・変人・変態が出てくる』が今回設けられます。この縛りを踏まえて執筆して下さいね。ま、お題選びによっては、自動的にクリアされるかもしれませんがw。

とりあえずの締め切りは深夜一時。多少遅くなっても問題ありませんので、楽しんで執筆してください。

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月光 ( No.8 )
   
日時: 2011/08/07 20:14
名前: 時雨樹舘 ID:SQjI78zo

「それはわしのじゃ。返せ」
「え、でもこれ賞味期限切れてるわよ」
 それが私たちの最初の会話だった。
 甚平の上にフードつきパーカーを着、狐の面を被った変な子供と、夜の学校に現在進行形で侵入中の私の。
 わし、と自分のことを変な一人称で呼ぶその子供は、この学校の守り神だと名乗った。
「守り神がゼリー欲しいの?」
「欲しいものは欲しいのじゃ」
 ふん、と鼻息を荒くしながら、それでも守り神は私が渡してあげたゼリーをおいしそうに頬張っていた。
「して、お前は何故このような時間にここにおるのじゃ?」
「何でだと思う?」
「質問に質問で返すない」
「飛び降りるつもりだったの。屋上から」
「何じゃと?」
「だってさ、こんな月夜なんだよ?飛び降りるときに月を見て死ねるなんて最高じゃない」
「何故飛び降りたいと思ったのじゃ?」
「何でって……当たり前じゃない。月が見えたからよ」
「お前は生粋の変人じゃのう」
 ため息をつきながら守り神は私のほうを振り返った。
「お前は良い。死ぬのに理由などいらんからな。わしには羨ましくてならん」
「誰が死ぬって言った?」
「誰が……って、お前がじゃ」
「でも私、屋上から飛び降りたぐらいでは死なないわよ?」
「ふぬん?」
「だって私、飛び降りる地点にたくさんマット敷いてきたもの」
「なーんじゃ」
 守り神は落胆したようにため息をついた。そして私の手に空になったゼリーの容器を手渡してくる。
「だめよ。自分で食べたのだから自分で片付けなさい」
「持ち込んできたのはお前ではないか」
「いいえ、それはもともと学校の宿直室にあったもの」
「……ぐぬぅ」
 少し拗ねたように、守り神はゼリーの器を自分の服パーカーのポケットに入れた。
「じゃあ、私は屋上に行くから。守り神も来る?」
「無論じゃい。あとわしのことを守り神と呼ぶな。良いか、わしの名はヒサモリじゃ」
「わかった。じゃあヒサモリ、行こっか」
「うむ」
 私は守り神――ヒサモリと並んで歩き出した。

「硫酸頭からかぶって皮膚がただれて苦痛の中、悲痛な叫びをあげて死んじゃえっ! もう私知らないっ!」
「ま……待ってくれユミ!これは違うんだ!」
 そんな声が聞こえたのは二人並んでゆっくりと、屋上の一歩手前である三階まで来た時だった。
「またどこかのかっぷるが密会をした挙句破綻しよるのう」
 ヒサモリはその声とその声に混じる破壊音、何かが焼け爛れる音やそれの後の断末魔の悲鳴を耳にしても平然と言い放った。慣れているのだろうか。
「そうね。大抵のカップルは自業自得的に関係を破綻させるわ」
 勿論私も気にしない。そんなことをいちいち気にしていたら限りある人生きりがない。
「理科室のほうね」
「そうじゃな」
「私たちはどうしてもその前を通らないといけないのかしら」
「それ以外に道はないぞい」
「……そうね」
 ヒサモリが言った通り、理科室の前を通らないと屋上には行けない。
「まあいいでしょう。焼け爛れた死体一つ見るぐらい、どうってことはないわ」
「その通りじゃ」
 私たちはのんびりと歩いていくことにした。
「あのねヒサモリ」
「何じゃ?」
「廊下に死体が二つ転がっている場合、どうすればいいのかしら」
「そのまま踏み越えるがよかろ」
「実に的確且つ倫理観から限りなく遠い答えね」
「神にヒトと同じ倫理観を期待するない」
「その通りね」
 ヒサモリに言われたとおり、私は死体を踏み越えた。
 しかし片方の白衣を着た先生らしき死体はともかく、片方はまだ初経も迎えていないような幼女だ。
「変態の変死体ね」
「言うてやるない、そいつも最後は愛する者と一緒に逝けて幸せかろ」
「それもそうね。バイバイ、変死態さん」
「お前、漢字が交じっておるぞ」
「いいじゃない別に。的確でしょ?」
「まあそうじゃが」

 私はついに屋上にたどり着いた。そして柵を乗り越える。
「じゃあね、ヒサモリ」
「ああ、さよならじゃ」

 ヒュウ

 私の身体は、月の光を浴びて落下していった。



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