Re: 即興三語小説 -秋めいたら、太るんだよな. ( No.2 ) |
- 日時: 2014/10/24 23:08
- 名前: ロム吉 ID:1fqcN0Fg
秋晴れの日曜日。暑くもなく寒くもなく、心地良い風が顔に当たり、太陽も優しく照らしてくれている。もうこれはあれですね、寝ちゃいなさいよーと神様が誘っているようなものじゃないですか。 夢うつつにそんなことを考えていると、ぽたりと頬に水滴が落ちた。 反射的に手で拭おうとしたが、そういえば、今は新築マイホームのささやかな庭で犬小屋に色を塗っている途中だ。手には柿渋がついた軍手をつけている。仕方なく腕で頬をこすると、着ていたベージュのパーカーに柿渋色がじんわり滲んで広がった。 「えっ」 嫌な予感がして見上げると、妻が後ろから僕を覗きこんでいた。恐ろしいことに手には柿渋をつけたであろう刷毛を持っていて、それは、今も僕の頭上に有る。 「おわっ」 慌てて体を避けたが、もう一滴、なんだか頭に当たったような気がした。 「なにすんのさー。これ体についたら何日か取れないんだよ」 「だって、早く終わらさないとムラができちゃうよ。安心して!柿渋は体にもいいんだって」 丈夫になるし、防虫防腐剤にもなるうえに、体にいいなんてすごいよね。妻は自慢気に僕が調べたことを語る。ちなみに、そのまま飲んで体にいいわけではない。 ふふと、無邪気に笑う妻をみると文句を言うのもばかばかしくなる。僕は「そうだねー」と頷いて、続きを急いだ。 「よし、取り敢えず一回目は塗り終わったから、あとは乾いてからもう一度塗るか考えようか」 「うん。やったね!おつかれ!」 「それにしても、ずいぶん大きな犬小屋になったよな」 「ふふ。これは、あなたの部屋だよ。前にね、家を建てるときは秘密基地みたいな部屋が欲しいって言ってたじゃない。柿大好きでしょ?」 「えっ、犬小屋じゃないの?」 「犬、いないじゃない」 柿渋色は文字の通り、柿がオレ渋いだろと言っているような色だ。よくわからないかもしれないが、決して鮮やかなオレンジ色ではない。 いや、そんなことはどうでもいいけど。 「犬、買わないの?」 「私、犬アレルギーだよ」 ふふと妻は無邪気に笑った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー はじめに三語見たときは、戦国時代のシーンが浮かんだのですが、やっぱり調べないと書ききれなそうと断念。 戦国時代とは、全く関係ない犬小屋の話になりました…
感想は後日に書きます。(まだ出るかもかもしれないし…!)
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