すぎゆくもの ( No.1 ) |
- 日時: 2012/08/21 20:13
- 名前: マルメガネ ID:jYM3DOzM
立秋が過ぎた。 そう感じたのは残暑にもめげず洋食屋に行き、その店を出た時に感じた風の心地よさからだろうか。 水の中にたらしこんだ蜜のようにもやもやと熱くやけた路面から立ち上る陽炎でさえもその勢いはなく、うるさく鳴いていた一週間の命の蝉ですらもその鳴き声は変わっている。 秋の空と夏の入道雲。 私はいまだ盛夏を思わせるような厳しい残暑の中、軒下に吊るされた風鈴の音色に耳を傾ける。 プールの帰りなのか真っ黒に日焼けした子供たちの声がする。 強烈な西日の差す扇風機のみがある部屋に居て、悶え焦がれるような暑さに悩みながら、まとまらない物語の執筆をつづける。 気がつけば、夕暮れに近くなっていた。日も短くなってきたようだ。 侘しく去りゆく夏を惜しむかのようにヒグラシが鳴いていた。
|
|