新サイト一回目の突発三語ということで、少し説明させていただきます。 突発一時間三語というのは、一時間で三つのお題を含んだ小説を書いて投稿しよう、というミニイベントです。 三つのお題はチャット上で集められます。スレッドが立ち上げられると執筆開始となり、その後一時間以内にこのスレッドに返信する形で投稿してください。 別板で行われている一週間内に書き上げて投稿する三語は、構想時間は自由で、書き上げるまでの目標時間を一時間としているのに対し(この制限はあまり守られていませんがw)、こちらは一時間以内に構想執筆をするものだとお考えください。 もちろん、あくまで楽しむことを目的としたイベントなので、多少の時間オーバーは問題ありません。また、仮に作品が完成していなくても、一時間たった時点の成果として投稿するのもありです。 とにかく一番重要なことは書くことを楽しむことです。一時間で自分がどこまでできるのか、焦ったり、頭ひねったり、変なテンションになったり、楽しんでみてください。 では今回のお題です。 「アンティーク」「茜色」「木目金」 以上の三つのお題を使って作品を書いてください。 一応の投稿締め切りは十二時。参加は自由なので、興味のある方は是非ご投稿ください。
アンティークとしては下等なものだと、一瞥しただけでそう断言してきたのはまだ若い女の店主だった。その言葉に私はいささかムッときた。「木目金の指輪ですよ? 相当に高価なものだと、生前、母はそう言っていましたが」 怒気を孕んだ私の言葉を意に介さず、それどころか彼女は鼻で笑いさえしながら、「形見を売ろうと言うんですか? どれだけお金に困っているのやら」 それきり視線を別の客から買い入れた品物に移して値札に金額を書き込もうとしていた。それには返す言葉もなかったが、当てにしていた金が入らないのは非常に拙い。「……恥を忍んで持ち込んだんです。どうしてもお金が必要なんです。お願いします」「そう言われましても。こういうのはアンティークと呼ぶことさえおこがましい、ラビッシュやジャンクに分類されるものです。本物ならばアンティークにもなるでしょうが、これでは精々がそこの人形と同じくらいの価値でしかありませんよ」 彼女が指さした先には「セール中」と書かれた札の下がったワゴンがあり、無造作に置かれた陶製の小さな人形の値段は福沢諭吉で樋口一葉か新渡戸稲造が却ってくる程度だった。無意識に奥歯を噛み締めて、その音で私ははっと我に返る。「……そうですか。残念です」 溜め息を吐いて、私は木目金の指輪をケースにしまった。そしてそれを小さな信玄袋に入れると、それを懐に忍ばせようとした。そこで彼女の目が心持ち見開かれたように私には思えた。「……いかほどご必要なのですか?」「……はい?」 彼女の態度が明らかに変わっている。私はそれを訝しんだが、喉から手が出るほどの金銭欲が思わず口をついた。「じゅ、十五万ほどですが」 とっさに三万円ほど多く金額を言った辺りの自分の性格が、私はそう嫌いではない。「わかりました。十五万で買い取りましょう」 彼女が足元にあるだろう金庫を開け始める。なんだかよくわからないが、金になるのならばありがたい。 私は金と引き替えに袋ごと指輪を渡した。金を数えていると、何故か指輪が突き返されてくる。「……な、なんですか。今さら間違いだったとか言われても金は返しませんよ」 慌てて金を懐にねじ込んで逃げるように店を出ようとした私に、彼女は苦笑した。「違います。私が欲しかったのはこの信玄袋の方です。指輪は結構です」 何の変哲もない茜色の信玄袋にどのような価値があるのか、素人の私には全くわからないが、文句はなかった。足早に店を出ると、電車に飛び乗って秋葉原へと向かう。「これでプレミアものの非売品フィギュアが買える……」 我ながら下衆な物欲だが、欲しいものは仕方がない。犯罪に手を染めないだけ理性的だと言って欲しい。 翌朝、フィギュアに囲まれた部屋で人生最高の目覚めを迎えた私が、寝ぼけ眼でネットのニュースサイトをチェックしていると、表示された画像に既視感があった。あの信玄袋だ。 無教養な私は聞いたこともなかったが、なんでもどこかの華族が使っていた貴重な品であるらしい。よく見れば、それらしき家紋が縫い取られている。 一体、何故そんなものが私の家にあったのか、それは知る由もない。ともすれば、私はその華族の末裔なのかもしれない。だが、そんな事実があったとして、それはフィギュアに変わってくれるとでもいうのだろうか? いつだって無垢に微笑んでくれる魔法少女のフィギュアに笑みを返して、これぞWIN―WINというやつだなと、私はアニメのDVDをセットして、オープニングテーマを口ずさみ始めた。
次の春に私は嫁ぐ頃になりました。八畳の自室には花嫁道具として、着物がたっぷりとつまった桐のタンスと祝言の時に私が纏う白無垢が飾られています。きっと嫁ぐ日には、今は細い枝だけを薄曇りの空に向かって伸ばしている庭の桜が満開になっていることでしょう。それはそれは見事な花を咲かせる木ですから、白無垢を着てその下を通ったら薄紅色に染まってしまうかもしれません。そんな事を考えながら、ぼんやりと庭を見つめていますと「どうしたんだい、何だかうれしそうだね」と父が声をかけてきました。どうやら知らないうちに笑っていたようです。私は今考えていた事を父に話しました。私の明るい口調に比べて父の顔は寂しそうです。私は一人娘ですから、きっと嫁ぐのが寂しいのでしょう。「大丈夫よ、お父さん。嫁ぐといってもすぐ近くだもの。ちょくちょく顔を出すわ」慰めの言葉を口にしても、父は小さくうなずいただでした。ああ、こういう時にかぎってなぜ母がいないのでしょう。買い物だ、町内会だと母は大した用もないのに最近はよく家を空けます。まるで家にいることをいやがるかのように。これも寂しさの表れでしょうか。「そうだ、お父さん。木目金の文箱あれを頂戴」胸の前で両手をパンと打ちあわせて私は話題を変えました。「木目金の……文箱?」首をかしげる父に私は頷きます。「ほら、昔お父さんが手紙入れに使っていた物よ。大切にするから、ね、いいでしょう」木目金とは幾つかの金属を重ね合わせて圧を加えた物を叩いて伸ばし、更に掘ることで模様を浮かび上がらせたものです。まるで木目のような複雑な模様ができるのでそうよばれているとか。指輪のような小さなアクセサリーにされる事が多いのですが、父のもっているそれはA4サイズの封筒ですらすっぽりと入るくらいの大きさがありました。小さい頃は光の加減で変わる模様をいつまでも飽きずに眺めたものです。「ああ、いいよ」父は頷いてやっと小さな笑みを見せました。 ※季節は巡ります。桜の花は芽吹き、蕾を膨らませ、可憐な花を咲かせました。ああ、ついに私は嫁ぐのです。白無垢に袖を通しましょう。髪をくしけずり簪で結いあげましょう。これは隣町のアンティークショップで一目で気に入って買ったものです。サンゴの五分玉。血のようだと父は嫌がりましたが白一色の着物の中で丁度いいアクセントです。それにどうせつの隠しでほとんど隠れてしまいます。白粉も塗りましょう。桜の下をとおっても薄紅色になってしまわないように少し濃いめに。さあ、すっかり支度が整いました。花婿の迎えを待ちます。黒塗りのハイヤーでやってくるはずです。少し照れながら私に向かって逞しい手を伸ばし新しい生活へと連れて行ってくれるでしょう。時計の針が少しづつ進んでいきます。くるり、くるりと長針がまわり、かちり、かちりと短針が進んでいきます。私はだんだんそわそわしてきました。どうしてこんなに遅いのでしょう。いえ、どうしてこんなに家は静かなのでしょう。祝言の日ならば親戚や、近所の人がお祭りのように賑やかにこの家にやってくるはずなのに。そういえば、母はどこに行ったのでしょう。父は向こうの御両親のお相手をしているので、姿が見えなくてもあたりまえですが、母が娘の着つけの手伝いもしないなんて。白無垢の裾を翻し、私は母を探して家の中を歩きまわります。六畳の茶の間と台所、客間と父の書斎、そして寝室、水回り。小さな家ですからかくれる場所もほとんどありません「お母さん、お母さん」しかし何度呼びかけてもかえってくるのはしんとした静寂ばかり。台所には火の気もなく、茶の間の小さなちゃぶ台の上にはお祝いのお菓子ひとつもありません。私はだんだん不安になってきました。なぜ? 今日は私の祝言なのに。「何をしているんだい」玄関を開けて帰って来た父が私の姿を見てなぜかとても悲しそうな顔をしました。私はやっと少し安心して母がいないことを父に告げました。「何の支度もしていないのよ、このままじゃお迎えが来てもはじをかくわ」きりきりと奥歯を噛みしめる私に、父は益々悲しそうな顔をしてポツリとつぶやきました。「もう、やめよう。その子」その子とは母の名です。なぜ、と口を開きかけた私に父は黙って書斎の方を指さしました。そこには茜色の夕日に照らされた鏡が置かれておりました。そこに写っていたのは、顔を真っ白く塗った老婆……。「亜由美は、20年前に死んだじゃないか」カラン、と足元に固い音が響きました。いつのまに手にしていたのでしょう。金木目の文箱が足元に転がり複雑な模様があざ笑うかのように私を見つめておりました。終わり
茜色に染まった空が無性に恋しかった。時折吹く血生臭い風に赤黒く変色した髪が揺れた。「おめでとう。君はここから出る権利を得た」 その風に乗って響いてきたのは低く唸る様な声。「さあ、その体に」 漆黒の闇の中、何かが蠢いた。「我が翼と牙を」 強大なドラゴンがその口を大きく広げ向かってきた。 豊かな大地が広がるその国を人々は永遠の大地―アトピア―と呼んだ。そこには神が住み全ての生物はそこから生まれたとも言われている。面積は世界四位。所属する州(くに)は五十、住まう人々は三十三億人を超える。 その最西端の港に一組の男女が降り立った。「ここが、アトピア。……始まりの謳地(おうち)、生誕の、」「無事に着いたね、アレット」 男が隣の少女に声をかけた。長身で黒い短髪に同じく黒の目、皮製のフロックコートを着た若い男だ。颯爽としていながらもどこか油断ならない雰囲気を漂わせている。「……」「あれ、無視?」「あんたね……、人が感傷に浸ってる時に声かけるなんてどういうつもり?」 少女――アレットはそう言って裏拳を男の鳩尾にぶち込んだ。プラチナブロンドの長髪を高級そうな黒いリボンで後ろでまとめたポニーテール、サファイアに似た瞳、純白のドットチュールブラウスに黒いホットパンツを穿きその腰には拳銃を仕舞う大きなベルト、靴は鈍く銀色に光る軍靴、指には翼を模した彫刻がされた木目金のリングがあった。高貴でありながらどこかわんぱくな雰囲気だ。男より頭一つほど小さいアレットの裏拳は見事に当たった
五分おきになるアラームを何度も叩きつけ、ようやく思い腰を上げて眠気眼で自室のドアを開けると、僕の視界には地平線を境に恐ろしく澄んだ青の空と、果ての見えない砂漠が広がっていた。砂粒を含んだぬるい風が頬を舐めた。僕はどうやら空高くそびえる円筒状の建物のかなり昇ったところのいるのらしい。振り返ると僕が通ってきたドアがある。先ほど僕が間違いなく開けたはずの、しかし見たこともない外観のドア。アンティーク的とでも言うのだろうか、凝ったデザインのドアにはしゃれた木目金の細工がしてあり、少なくとも僕の自室のドアとは似てもにつかぬドアがそこにあった。見上げるとプレートが一枚嵌めこまれていた。そこに書かれているのは21という数字だ。何か思い当たるようで、そんな数字の書かれたドアはやはり僕の記憶のどこにもない。戻るべきだろうか、と僕は自問する。しかし思考は明晰とは程遠く、どういうわけかしらないけれど、ここに来た以上はこの塔らしき建造物を少しばかり探索してみようと眠気の未だ覚めない頭で歩き出した。 僕は歩いている。どこへ? この建造物には階段がない。あるのは緩やかな傾斜だ。建造物の円周には角度があり、左回りに進むと昇っていくことになるようだ。どうやらこの建造物は螺旋状の構造をしている。歩みを進めつつ、外側の世界を眺めても砂漠が広がるばかり。なぜこんなところに、こんな建物が? そもそも僕はなぜこんなところで、わけもなく、わけもわからず歩もうというのだろう。 僕が始めに訪れたドアから、ちょうどひと巻き進むと、そこには案の定ドアがあった。デザインは変わらない。しかしドアの上部に嵌めこまれたプレートの数字がひとつ増えていた。22。ドアを開けてみようか、と僕は思う。しかし僕の手が伸びることはなかった。僕はそのドアを尻目に、さらに建造物を昇り続ける。 23。24。25。26。27。28。 そこまで歩いて僕はあるひらめきを得た。まず21のドアを僕通ったのはなぜだろう? 21――それは僕の年齢ではないのか。 では、もしそのひとつ上の階のドアを開けたのなら、そこに広がる世界とはどういったところなのだろう。僕は半ば確信に近い気分で、そこには22歳の僕があるべき世界が広がっていると思った。僕がそこで存在できるのかはわからない。それでも僕は、22歳の僕のあるべき世界を知る。けれど僕はそのドアを開けようとは思わなかった。僕はもっとこの建造物を登ってていきたいのだ。 僕は再び歩み始める。 ――30。 ――40。 ――50。 まだ僕はドアを開こうとはしない。僕にはある直感があった。ドアを開けられるのは一度きりなのだ。 そこで僕はもうひとつのことに思い当たる。この建造物が僕の一生に通じているならば、その最上階とは一体何階になるのだろう? 僕はこれまで昇ってきた。漠然と、しかし僕の内なる意識が望むべくして進んできた。最上階の僕は果たして笑っているか、泣いているか、感謝しているか、悔いているか、周囲にはどんな人がおり、あるいは、独りで最期を迎えようとしているか。 僕は息を呑み、残りそう長くないだろうという道のりを歩み始める。 一体自分が今何階にいるのかさえわからず、朦朧とした意識で進んでいた時、出会いはあった。 見たこともない男が上方から降りてきたのだ。挨拶らしき挨拶もせず、道を譲ろうという配慮もなく、僕と男は対面した。「どいてくれないか? 僕はどうしてもこの先に進んでいきたいんだ」 それは果たして僕が放った言葉か、男が放った言葉か。 僕と男は、ついにどちらが道を譲るでもなく、周囲の景色が茜色に染まるまで、対峙していた。「そうか、わかったよ」 もう一度呟かれた言葉を聴くにいたり、僕と男はきびすを返して歩き始める。僕は降り、男は昇る。 やがて僕は21の扉まで戻り、残念なような、ほっとしたような気分で、あるべき世界のドアを開けた。
M&Y星間運輸社で働くミレイユの朝は遅い。十時ごろにもそもそと事務所に出社し、プライベートアドレスと会社のオフィシャルなアドレスメールをチェックする。ミレイユ個人宛のメールには広告メールなどばかりだったし、会社への新しく入った注文もないようだ。文通相手から、メールの返信がまだなかったのは少し残念だった。 あくびを噛み殺しながら、コーヒーを入れる。豆挽きは奮発して買った(といっても経費で落とした)、アンティーク物の代物で、ミレイユのお気に入りだ。今日は少し酸味のあるコーヒーが飲みたい。マウンテンシフとよばれる、金星のブランドコーヒー豆がまだ残っていたはずだ。豆の違いがわかる副社長は、あまりこの豆の香りが好きではないらしい。金星の名物コーヒーで、炒れたコーヒーは紅茶のような美しい茜色をしている。社長はインスタントコーヒーしか飲まないし、もう一人の従業員はコーヒーが飲めなかった。 この会社の従業員は社長、副社長、ミレイユ、下っ端の四人。そしていまミレイユ以外の三人は、運輸のために宇宙船にのって木星へと旅立っている。星間旅行なので一回の航海は数カ月に渡る。一年のほとんどの期間、金星のオフィスにいるのはミレイユ一人だけでいることになる。小さい会社故に、扱う仕事の規模も余り大きくはない。事務職と言っても大した仕事はなく、大抵暇だった。弱小企業を狙った詐欺師のような奴らが、会社のサーバーに攻撃を仕掛けてくることもあったが、彼女が構築した防衛壁が突破されたことはまだ数えるほどしかない。 暇つぶしに右隣のオフィスに出向く。詳しくは知らないが、医療関係のサービスを行っている会社だ。ミレイユと同じように、暇を持て余している従業員たちが二人いて、一緒にポーカーをやって午前を潰した。たわいもない話から「宇宙人はいるか」という話題がのぼった。「戦時中、木星の軍人がのった戦闘機のレーダーが壊れて漂流するっていうことがあったんだよ。あ、俺は二枚チェンジ。で、五年くらいたって戦争が終わった後に、その軍人が乗っていた戦闘機が見つかったんだ。ほい、俺はスリーカード。なんと戦闘機の中にその軍人は生きていて、しかも二週間しか経っていないと彼は思い込んでいたらしい。おいおい、ミレイユさんフラッシュかよ! 負けた! で、彼曰く、所属不明の通信が入って、木星基地に戻る方法を教えてもらったんだとさ。彼ののった戦闘機のログを解析してみると、彼はどうやら天王星付近まで行っていたらしい。じゃ、カードくばるよ。戦闘機が木星から土星を超えて天王星まで行くなんて無理にきまっているし、木星よりも外の惑星に人は住んでいない。不思議だよなあ。ああ俺はチェンジなし」 人間の住む金星、地球、月、火星、木星のうち、この金星が一番外宇宙に遠い。宇宙人なんていうロマンに遠いよねという話になって、ポーカーにも区切りがついた。 オフィスに戻り再びメールをチェックする。オフィシャルアドレスに仕事のオファーがなかったが、ミレイユの受信ボックスに広告メールに混じって、木目金という名前からの受信があった。文通相手からの返信だ。 相手のアドレスは文字化けしていて、名前も@の後ろのドメインもめちゃくちゃだ。しかし返信をすれば、たしかに相手に届いているらしい。ミレイユは防衛大学の情報通信学部を第三席で卒業しているが、文通相手がどのようにこのアドレスを解決しているのか全く判らない。彼を凄腕のサイバーテクニックとして尊敬しているし、「私は宇宙人だ」という主張も信じている。それにミレイユのつくったサーバーの防衛壁を突破した唯一の存在であり、いつか追いついてみるぞという気持ちもあったりする。 こういう怪しげな人間と文通していると知られれば、社長は嫌な顔をするだろうな。まあどうせ、彼らはめったに帰ってこないし大丈夫だろう。さあ、コーヒーを入れて、彼のメールを読むとするかと。そんなふうにミレイユの一日は過ぎていく。
>「職人気質」マルメガネオヤヂさん ひとつのものに賭けた人生の切なさとでもいうのでしょうか。こういう生き方って大変だろうな、なんて思いもあるのですが、一方ではこういう生き方に対する憧れも感じました。職人って格好いいですよね。 木目金をお題として出されただけあって、使い方がとても自然でした。ちょっとずるい気もするけどw。三十分ほどで書かれたようですが、いつかある人間の一生を真正面から書いてみるというのも面白いのではないかなと思います。僕もいつかできるかなあ。>「彼女の美しい別荘」 HALさん やるなあ、と唸りました。HALさんは雰囲気を出すのが上手いですね。今更な発言になるけど。アイテムの羅列する文も、下手にやると単調なだけだけど、うまく畳み掛けてくる感じになっていると思います。 で、この耽美(?)な世界。この短さながら、妖しい香りが漂い、それに酔わされた気分です。気持ち悪いと、気持ち良い、がうまくブレンドされて、脳を揺らすような感覚。前から上手かったけど、さらに上手くなってるような。こえー。 ささっと書いてここまで書けるんだから、今絶好調(?)で書いている新作への期待が膨らみました。>「東京都下は萌えているか」 脳舞さん 母親の形見を売ってまでフィギュアが欲しいっていうオタク魂って結構リアルですね。実際それに近いことはありそうな気がする。ちょっと勿体無い気がするのは、金が欲しかった理由を明かすオチにあたる部分は、もうちょっと活かせたのではないかなと思えること。オチという感覚で書かれたわけではないのかもしれませんが、前振りというか伏線というかが、前半であれば、もっと話全体が活きたのではないかな、と。 あと、主人公の性別が分かりにくかったのは気になりました。 脳舞さんの作品を読ませていただいたのはかなり久しぶりな気がします。また機会があれば感想送らせてください。
>杜若さん これは綺麗な話だなあと思いました。作りが綺麗。ラストにうっとり(展開としてはぞっとすべきかもだけど)しました。一応ネタばれは書きませんが、想像すると相当に悲しい話ですね。特に前半のほんわかとした雰囲気の後、真実が分かるので、インパクトも大きかったです。あえて贅沢を言うなら、時間をもう少しかけて文章を練ったなら、前半と後半の対比が増し、さらに完成度が上がったかなと。一時間三語で言うことじゃありませんがw。 良かったです。ごちそうさまでした。>紅月セイルさん 壮大な物語の書き出しといった感はやはりあるのですが、それでも紅月さん、上手くなられてるなあと感じました。最近ほとんど伸びてない僕からすると、なんだかうらやましいです。一時間で書く場合って、書ける場面数がかなり限られるので、これから三語をする場合は、順々に拡がっていくという感じより、狙いをつけてピンポントで攻めるとまとめやすいかも。 ま、一時間でまとめるだけ上手くなっても仕方ないから、自分の目指すところを踏まえつつ、そういうやり方もありってくらいに思っていただけると幸い。 また楽しみましょう!>星野日さん 星野田さん(今は星野日さん?)の文章も久しぶりに読めたので嬉しかったです。前もそうだと思ったのですが、星野田さんの三語って良い意味で三語らしくないというか、しっかりした独自の世界が成り立ったうえで書かれているように感じます。これもセンスなんでしょうね。いくらでも読んでいきたくなります。 また機会があれば作品読ませてください。>自作 文章配置が悪い、なあ。
HALさん>なんとなく妖しい気配がしますねぇ。ゴシックホラーというべきかなんというべきか。新作を期待します。 脳舞さん>久々に読ませていただきました。木目金の指輪に目もくれず、信玄袋に目がいくしたたかな商店の主人ナイス。それにしても、そこまでして手に入れたいもの。それに走る主人公のオタクっぷりに脱帽。 紅月さん>壮大ですねぇ。壮大な物語が始まる気配がしております。でも完成形が見られんのが残念であります。新作期待しています。 杜若さん>おお。ホラーだ。最後までわからなんだ。何と言う結末。ひさびさにぞくりとするできです。 片桐さん>うう〜む。夢オチ? 夢の世界ほどわからんものはない。でもあえて書かれていることに度胸を感じます。でも主人公が未来の扉を開けんでよかったです。 星野日さん>星野田さんですよね。久しぶりに読ませていただきました。SFタッチでナイスです。 自作>なんだかんだで、切ない系に走ってしまった。ちょいと出題したものがズルかったな〜と反省。
> おき様 うわ、悲しい……! あと少し早ければ、念願の色合いが出せたかもしれないのに。 何かに取り付かれたように、たったひとつのものを希求し続けるひと。美しいけれど、悲しいお話でした。なにかの形で救われてほしかったなーと思うわたしはハッピーエンド派です。 おき様の文体って、いつもシンプルなのに、どこか哀愁があっていいですよね。羨ましいです。> 脳舞様 展開が予想の左斜め上くらいのところに着地した! 笑いました。 店主は言い値で買ってましたが、本来であれば十五万以上の価値があったのではなかろうか。「買い叩かれた!」と怒らずにWIN-WINなんていってる主人公の人の良さというか世間知らずさというか、ちょっと切ないです。> 杜若様 キレイな小説でした。シュールなんだけど、切なくて悲しい。苦い余韻がたまりません。 木目金のお題を、すごくきれいに使われていますね。小道具を活かしたり、意外性のある展開をつくることのへたな私は、何から何まですごくうらやましいです。見習いたい。> 紅月セイル様 続きが読みたいです……(笑) キャラ濃い。世界観も壮大っぽいし、良くも悪くも一時間三語の枠にはおさまりきれない感じですね。いつか続きを読める日を楽しみにしています。> 片桐様 眠気眼が邪気眼に見えたのは秘密です。(またそういうどうでもいいことを……) なんでこういう作品世界を瞬時に築き上げることができるのか。引き出しにどれだけ設定しまってあるんですか。ううー、嫉妬せずにはいられません。 期待の膨らむ前半の演出に対して、最後がちょっと小さくまとまった感じがしたのが、もったいなかったような気もします。もうちょっと膨らんでもよかったかも、なんて、一時間三語でしたね。 そんなことをいいつつも、はっきりと明かされなかった関係をあれこれつい想像したくなる、いいラストでした。男=僕なのかなあ。> 星野田様 経費でぜいたくをする、仕事中にポーカーや私用メールをする。凄腕だから許されているというのもあるんでしょうけど、いい仕事だなあというべきか、いい時代だなあというべきか、うらやましい!(本音) 話のスケールの大きさと、なんともいえない平和な日常感のギャップがいいです。なんだろう、星野田様の小説って、いつも読んでてすごくわくわくします。> 反省文 なんだろ、耽美系を目指してみました。たまに、自分の引き出しにないものを獲得したくなって、背伸びします。その分中身が薄……っorz
感想をかこう書こうとしているうちにずいぶん遅れてしまいました。なぜか。クリスマスだからだよ!!(ぁ)>職人気質 マルメガネオヤヂさんこれ、一度読んだときは「長い歳月をかけて茜色の木目金を完成させた男」の話なのかなと思ったんですが。よく読んでみると「なにもかもを犠牲にして茜色の木目金を目指して合金を作りまくっていたら、年老いてから茜色そのものの金属を誰かが発売しちゃった、あららばなし」なんですね……!! そう読むと結構残酷だ! でも苦労して苦労して成し遂げなかったことを、なんの前触れもなく後発の誰かがぽんとやってしまう。人生ってこんなもんなんだろうなあというかんじかもしれませんね。>彼女の美しい別荘 HALさんああ、そうきたかー! ホラーという感じではないんだけども、サイコちっくですね! サイコな彩子(?)。女の子の腕一本で剥製とかを作るのって大変そうだから相棒とかがいるんでしょうか。とかどうでもいいことを考えたり。>東京都下は萌えているか 脳舞さんなんとなくハンターハンターのヨークシン編を思い出しました(?)古本とかツボとか入れ物とか、掘り出しを題材にしたの物語って好きだったりします。それにしてもこの語り手の思考ってちょっとリアルなかんじもするし、でも物語としては「おい、あんなにするんだったら!」とお店に乗り込ませても面白そうだなあとか。とりとめない感想ですが!!>杜若さん悲しい話なんですが、一緒に流れる風景が綺麗ですね。映しだされる風景が静物ではなく、動きとして描写されているのも、静かな雰囲気に一味アクセントを入れていてよかったとおもいます。ころころとなだらかに転がっていく物語と風景が良い感じでした。ですがまとまって入るのですが、なんか終わらせ方を困ったのかなとかちょっと思ったりしました(ぇ。>紅月セイルさんきた!ファンタジー!の出だし……か!! ファンタジーの、しかもドラゴンとかとてもツボだったりします。そのノリで妄想を広げると、……冒頭のドラゴン……物語における悪役の誕生のシーン。しかし彼も、悲しい運命に目をつけられ、真の悪役に利用された哀れな被害者の一人に過ぎないのであった。ポニーテール少女……主役その1。ドラゴンに村を滅ぼされた。そのドラゴンに気まぐれで【印】をつけられて、世界中のドラゴンから「戯れの狩りの標的」として絶賛狙われ中。外国製の強力な銃を持つが射撃の腕は悪い。特技は目にも止まらぬ二段階裏拳と、お裁縫。黒服男……主役その2。実は目覚めたばかりのドラゴン。ドラゴンというものが世界におけるどのようなものかを学ぶために旅をしている。常識を知らない、空気が読めない、味覚がひどい、好奇心旺盛、善悪の区別がつかない。特技は過激なツッコミにも死なない丈夫な身体。と、妄想をムンムンさせてみたり。ごめんなさい。ドラゴンってなんかいいですよね。なんていうか、壮大で、哀愁があって、素敵。>塔 片桐さんよく短い時間でこういうまとまったものを書けますね……すごい!どういうふうに終わるのかなと思いつつ読んだら、ほうこうきたか、みたいな感じにまとまっていて。オチ、というものがあるわけではないんですが、なんかまとまりよく終わっているというか、こう言うの嫌いじゃないです。楽しかったです。>自作面白いとかつまらないとか、そういうんじゃない小説をかけるようになりたい(?ファンタジーに一つ、SFに一つ、現代に一つ、くらいの感じで、固定の世界観を持っておくとこういう小品を作るときに便利ですな。新しいものを作れないとも言うが!!