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RSSフィード [3] 新サイト突発一時間三語・斬
   
日時: 2010/12/18 23:02
名前: 片桐 ID:a1xijYQ2

 新サイト一回目の突発三語ということで、少し説明させていただきます。
 突発一時間三語というのは、一時間で三つのお題を含んだ小説を書いて投稿しよう、というミニイベントです。
 三つのお題はチャット上で集められます。スレッドが立ち上げられると執筆開始となり、その後一時間以内にこのスレッドに返信する形で投稿してください。
 別板で行われている一週間内に書き上げて投稿する三語は、構想時間は自由で、書き上げるまでの目標時間を一時間としているのに対し(この制限はあまり守られていませんがw)、こちらは一時間以内に構想執筆をするものだとお考えください。
 もちろん、あくまで楽しむことを目的としたイベントなので、多少の時間オーバーは問題ありません。また、仮に作品が完成していなくても、一時間たった時点の成果として投稿するのもありです。
 とにかく一番重要なことは書くことを楽しむことです。一時間で自分がどこまでできるのか、焦ったり、頭ひねったり、変なテンションになったり、楽しんでみてください。
 
 では今回のお題です。
 「アンティーク」「茜色」「木目金」
 以上の三つのお題を使って作品を書いてください。

 一応の投稿締め切りは十二時。参加は自由なので、興味のある方は是非ご投稿ください。
 

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東京都下は萌えているか ( No.3 )
   
日時: 2010/12/18 23:58
名前: 脳舞 ID:zztwnJFM

 アンティークとしては下等なものだと、一瞥しただけでそう断言してきたのはまだ若い女の店主だった。その言葉に私はいささかムッときた。
「木目金の指輪ですよ? 相当に高価なものだと、生前、母はそう言っていましたが」
 怒気を孕んだ私の言葉を意に介さず、それどころか彼女は鼻で笑いさえしながら、
「形見を売ろうと言うんですか? どれだけお金に困っているのやら」
 それきり視線を別の客から買い入れた品物に移して値札に金額を書き込もうとしていた。それには返す言葉もなかったが、当てにしていた金が入らないのは非常に拙い。
「……恥を忍んで持ち込んだんです。どうしてもお金が必要なんです。お願いします」
「そう言われましても。こういうのはアンティークと呼ぶことさえおこがましい、ラビッシュやジャンクに分類されるものです。本物ならばアンティークにもなるでしょうが、これでは精々がそこの人形と同じくらいの価値でしかありませんよ」
 彼女が指さした先には「セール中」と書かれた札の下がったワゴンがあり、無造作に置かれた陶製の小さな人形の値段は福沢諭吉で樋口一葉か新渡戸稲造が却ってくる程度だった。無意識に奥歯を噛み締めて、その音で私ははっと我に返る。
「……そうですか。残念です」
 溜め息を吐いて、私は木目金の指輪をケースにしまった。そしてそれを小さな信玄袋に入れると、それを懐に忍ばせようとした。そこで彼女の目が心持ち見開かれたように私には思えた。
「……いかほどご必要なのですか?」
「……はい?」
 彼女の態度が明らかに変わっている。私はそれを訝しんだが、喉から手が出るほどの金銭欲が思わず口をついた。
「じゅ、十五万ほどですが」
 とっさに三万円ほど多く金額を言った辺りの自分の性格が、私はそう嫌いではない。
「わかりました。十五万で買い取りましょう」
 彼女が足元にあるだろう金庫を開け始める。なんだかよくわからないが、金になるのならばありがたい。
 私は金と引き替えに袋ごと指輪を渡した。金を数えていると、何故か指輪が突き返されてくる。
「……な、なんですか。今さら間違いだったとか言われても金は返しませんよ」
 慌てて金を懐にねじ込んで逃げるように店を出ようとした私に、彼女は苦笑した。
「違います。私が欲しかったのはこの信玄袋の方です。指輪は結構です」
 何の変哲もない茜色の信玄袋にどのような価値があるのか、素人の私には全くわからないが、文句はなかった。足早に店を出ると、電車に飛び乗って秋葉原へと向かう。
「これでプレミアものの非売品フィギュアが買える……」
 我ながら下衆な物欲だが、欲しいものは仕方がない。犯罪に手を染めないだけ理性的だと言って欲しい。

 翌朝、フィギュアに囲まれた部屋で人生最高の目覚めを迎えた私が、寝ぼけ眼でネットのニュースサイトをチェックしていると、表示された画像に既視感があった。あの信玄袋だ。
 無教養な私は聞いたこともなかったが、なんでもどこかの華族が使っていた貴重な品であるらしい。よく見れば、それらしき家紋が縫い取られている。
 一体、何故そんなものが私の家にあったのか、それは知る由もない。ともすれば、私はその華族の末裔なのかもしれない。だが、そんな事実があったとして、それはフィギュアに変わってくれるとでもいうのだろうか?
 いつだって無垢に微笑んでくれる魔法少女のフィギュアに笑みを返して、これぞWIN―WINというやつだなと、私はアニメのDVDをセットして、オープニングテーマを口ずさみ始めた。

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