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RSSフィード [235] 即興三語小説 ―とととんっ、つーつーつー、とととんっ―
   
日時: 2015/01/18 22:27
名前: RYO ID:DWFFW8XA

 万が一のときのために、モールス信号でSOSくらいは送れるようになっていたほうがいいらしい。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 万が一ってどんなときだよ。と、あのときは口元のほくろを触りながら、一笑に付したけれど。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 結局、発信できたって、受け取る相手がSOSってわからないなら意味がないだろう。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 でも何があるかわからない時代だぞ。覚えておいて損はないって。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 そういう意味なら、手旗信号も同じだろう。右あげて、左手下げて、右下げない。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 そう笑いあったのはいつのころだったか?
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 挙げるべき自分の腕の感覚は、もうない。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 顔を動かすこともできない。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 どこからか、一生このままかもしれません。そんな言葉が聞こえたのはいつのことだったか?
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 また意識が深い暗闇の淵に落ちていく。それは羽毛に包まれるように心地よいようで、底でボールがバウンドするように一気に意識が引き上げられて、ぐるぐると意識がらせん状に回っていく。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 ただそれの音だけだが頭の中だけで鳴る。生きているかも死んでいるかもわからない。
 とととんっ、つーつーつー、とととんっ。
 万が一のときのために覚えたSOSは届かない。
 
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。
▲お題:「羽毛」「モールス信号」「ほくろ」
▲任意お題:なし
▲表現文章テーマ:なし
▲縛り:なし
▲投稿締切:1/25(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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Re: 即興三語小説 ―とととんっ、つーつーつー、とととんっ― ( No.3 )
   
日時: 2015/01/21 04:09
名前: No.3 ID:rfywD1dM

 ばべるの塔がくずれおちてから十余年をへた。己れのばびろにあ語はもどらない。
 全地のことばは紊れ最はや嘗ての同朋とわかりあうことは(わかる、という現象も、塔がくずれてから己れだちのあいだで生起したのだった)困難をきわむる……きわむるでいいんだったろうか? きわめる、という音のはうがより実際的につかはれて……つかわれて……いたンのだったか。たしかめる術はどうやらない。たれもおほ勢につうずるばびろにあ語をもたない……そうそう、保持していない! からだ。
 いまや己れたちにできるのは、おの各がいまだもち宇るわずか許りのことば――いぜんはどうやら存在していたらしいと、左うしていぜんのわれ我がパーペキ(という語の意味はなんだろう)に駆使したらしいと、現在のわれ我が仮定しているところの「真のばびろにあ語」の残骸をもちよって、ああでもないこおでもない、ここで伝えんと欲しているのは、きみがそのように解釈(解釈! という語は、ばべるとばびろにあ語が崩落してからのち、より若い己れたちが、新た迩つくったのだ! 解釈! 伝わらないがゆえの)しているやうなことではない、どのやうにちがうかというと……などとながったらしく、まわりくどく、匙を放りたくなるような仕方でたしかめあうことだけだ。モールス信号で会話するよか(よか、というのは、よりも、ということとおぼしい。訊きそびれてしまった)しんどいぜ、とたれかがいっておったっけ。
 あたかも、ばべるの塔の瓦礫を拾ひあつめて、また少しずつつみあげ始めている己れの同朋だちのやうに。あの塔の再建と「真のばびろにあ語」に就いての編纂とは、もしかしておなじことをやっているだけなのかもわからん。
 解釈(このことばを使うとなにやらうずうず?としてくる)のし易いあいてというのがおの各捜してみればおるやうで、皆左ういうばびろにあんと一しょになっていまは暮らしている。あれから生まれた小共も、もちろんいる。
 きりぎしから釣糸をたらして最近おぼえた「ほっ句」というやつに辛吟していたところで、その小共であるそうすけとりさが対岸から海へとび込むのがみえた。羽毛の上っぱりが岸のうえに残されている。そうすけもりさも達者に泳法を修得しているが、放っておけばなにがあるかもわからん。
「小共たち! あまり深みへちかづくな!」
 りさが――肩口にほくろのみっつもある小で、母親が吉兆だと自慢している――こゑに気づいたようすで合図をかえし、水の中に潜ったらしいそうすけのほうへ視線をうつした。
 釣針がひっかからないよう、やや場所をかえることにして腰をあげる。
 小共は己れだち――己れたちの可能性だった。あいつらのつかひはじめている、いうなれば「ばびろにあ語もどきもどき」を「真のばびろにあ語」を目指すやつらは随分とひなんするが、己れは左うはおもわない。よしんばあの塔がかつてのように天を摩さんと矗立したとして、それはいぜんとおなじばべるの塔なんだろうか。ことばだって左うだ。解釈!することを、しあうことをばびろにあ語話者として自明のこととしつつある己れたちが、どうして身に刻まれてしまったことをなしにできるだろう? ばびろにあ語もどきもどきは、己れたちがあいてをより精確に解釈していくために研鑽されなければならない、と己れはおもう。だから、もどきもどき語話者である小共たちは、屹度己れたちの可能性なのだ。新たにいしをつむことそのものでなく、その試行を担うべつの己れたちがおることに、たぶんいまのばびろにあんが手迩すべき何ごとかがひめられている。
 ほっ句、というものを瓦礫のなかから発掘された文字盤にみつけ、研きゅうすることになった己れも、このばびろにあ語もどきもどきの使用による解釈の解像度(解像度、こんなばびろにあ語ははたしてあったろうか?)をあげていくことに資さねばならない。
 引き揚げた釣糸を竿に巻きつけて、辛吟していたほっ句を口に出してまたたしかめてみる。

  ハぜ釣や詩を汀からはなち遣る

 そうすけがみな面から顔をだして、おほきくわらいこゑをあげた。

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