ホームに戻る > スレッド一覧 > 記事閲覧
RSSフィード [21] 即興三語小説 ―第102回― 春になったら頭がお花畑になっていいんですよ
   
日時: 2011/04/09 23:11
名前: RYO ID:wFHL/0ik

4月も10日が過ぎると、ゴールデンウィークが待ち遠しくなります。
皆様の新生活はいかがでしょう? 良いスタートは切れましたでしょうか?
良い一年でありますように。

--------------------------------------------------------------------------------
●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲必須お題:「愚直」「夜桜」「陋劣」
▲縛り:「登場人物が監禁されている(任意)」「足蹴にされて喜ぶ登場人物を出す(任意)」
▲任意お題:「たまゆら」「じゃがりこ」「円形脱毛症」

▲投稿締切:4/17(日)23:59まで
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週土曜日の22時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

--------------------------------------------------------------------------------

○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

--------------------------------------------------------------------------------
 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

メンテ

(指定範囲表示中) もどる スレッド一覧 お気に入り 新規スレッド作成

月を映す ( No.1 )
   
日時: 2011/04/17 22:54
名前: HAL ID:WF8rfg.6
参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/

 湿った夜気を頬に受けて、惣一郎はふと空を仰いだ。先ほどまで冴え渡っていた月に、いつの間にか叢雲がさしている。さあっと音を立てて、桜の花びらが舞った。
 ふるい小さな社がひとつあるばかりの、古い神社だ。それでも氏子が丁寧に清めているのだろう、境内に荒んだようすはなかった。
 夜桜の下、女が立っている。
 朧な月明かりに照らされて、その頬が白い。何を思っているのか、顔を上げて、張り出した枝を凝っと見つめている。結わないままの髪が、風に流れた。
「そうしていると、幽霊画のようだな」
 声をかけると、女――あやめが振り返って、紅をさした唇をつりあげた。
「おぬしのような男でも、冗談をいうのだな」
「なんだ、それは」
 ふふ、と笑って、あやめは髪についた桜の花びらを、指でつまんだ。その爪は長く、鋭い。
「鬼に向かって、幽霊のようだもあるまいに」
 くつくつと喉をならして、あやめは再び桜の枝を仰いだ。
「お前のような鬼女でも、桜は愛でるのだな」
 仕返しのようにそういうと、あやめはふっと真顔になった。
「呑気なことだ。一族の惣領息子ともあろうものが」
 なに、と訝って、惣一郎は懐に手を入れる。その手を引き出したときには、札を握っている。
 風もないのに、桜の影が揺れる。とっさに飛びのくと、音を立てずに、幼児ほどの小さなものが地面へと降り立った。とっさに札を叩きつけようとする惣一郎よりも早く、それは飛びのいて離れた。その場で静止して、それはうずくまった。
 一本角の、小さな鬼だった。醜く引き攣れたような肌は青白く、手足が骨ばっている。黒々とした眼が瞬きもしらずに、凝っと惣一郎を見上げた。
 祓わないでくれと、その目はいっているように見えた。
 惣一郎はたじろいだ。その隙をついて、小鬼は奔っていった。瞬きする間に、闇に溶けて見えなくなる。あやめが、くくっと喉を鳴らした。
「甘いことだ」
 うるさい、とふてくされて、惣一郎は札を懐に仕舞った。
「お前を探していた」
 あやめは手のひらの上の花びらに息を吹きかけて飛ばすと、振り向きもせずに空を見上げた。
 雲に巻かれた月が、その黒い瞳に映りこむのに、惣一郎は見惚れた。鬼の瞳にも、月は映るらしいと、何とはなしに驚きながら。
「赤紙が来た」
 その言葉の意味するところを、そういえばあやめは知っているだろうかと、惣一郎はふと思った。それほど、あやめの表情に変化がなかったからだ。
 だがあやめは、神木にもたせかけていた背をゆっくりと起こして、面白がるように目を細めた。
「それで、いくさ場へ行く気か」
「ああ」
 惣一郎が肯うと、あやめは不思議なほど優しげに微笑んだ。
「何とでも逃れようはあろうに」
 その言葉もあやめの表情も、意外に思えて、惣一郎は眉を吊り上げた。
「鬼らしからぬ言い分だ」
「お前は、いくさは好かぬだろう」
 肯定も否定もせずに、惣一郎は肩をすくめた。風が枝を揺らし、桜吹雪が舞う。それに眩惑されるような思いで、惣一郎は鬼の微笑を眺めた。
「まあ、そういう愚直なところが、お前らしいといえば、お前らしい」
 憮然とする惣一郎の目を、からかうように覗き込んで、あやめは唇を吊り上げる。そこにのぞく鋭い牙が、月明かりを弾く。 
「わたしにとっては好い知らせだ。これで当分は、飢えずに済むだろう」
 楽しげにいって、あやめは惣一郎の肩にもたれる。その長い爪の背で、からかうように惣一郎の首を撫でた。
「ついてくる気か」
「ついてゆかぬ理由が、なにかあるか」
 少し考えて、惣一郎は首を振った。鬼が戦場をきらう理由は、たしかになかった。体重のないようなあやめの腕に、されるがままにしながら、惣一郎は頼み込むような気持ちで口を開いた。
「喰うなら成る可く、敵方の兵隊か将校にしてくれ」
 ふ、と笑って、あやめは体を離した。背を向けて、音を立てずに歩き出す。鬼たちはいつも、滑るように夜を歩く。
「そうしよう。ほかならぬお前の頼みなら」
 その言葉を信じていいものか、心を決めかねながら、惣一郎は頷いた。人を喰らうおそろしい鬼であるはずなのに、ときおり妙に優しげな顔をする、妙な女の背を見つめながら。
「お前はいったい、冷酷なのか、それとも情け深いのか」
「それをわたしに訊くのか」
 あやめは足を止めて、くくっと喉を鳴らした。
 まったく、妙な人間もいたものだ。謡うような調子でそういって、あやめは惣一郎の腕を取った。
 なまなかな鬼よりもよほど陋劣な人間もいるのだから、人より情け深げな鬼がいても、別におかしくはなかろうよ。もっとも、鬼の情けが、人のそれと同じかどうかは、知らぬことだが。
 そういうあやめの声は、春の宵闇を揺らす風のようだった。
 腕を組んで歩く二人の頭上に、桜の花弁が降りしきる。あやめがうるさそうに、花びらを払う、その指が白い。
 どこか遠くで、夜汽車の汽笛が響いた。

----------------------------------------
 遅刻しました!
 75分くらい。前ーーに三語で書いたものの過去話だったりします……初読の方にはわけがわからない気もして、なんていうか、申し訳ないです……(汗)
 途中、いっかい削除していろいろ訂正しました……もし訂正前のをごらんになった方がいらっしゃいましたら、大変失礼いたしました!

メンテ

(指定範囲表示中) もどる スレッド一覧 お気に入り 新規スレッド作成

題名 スレッドをトップへソート
名前
E-Mail 入力すると メールを送信する からメールを受け取れます(アドレス非表示)
URL
パスワード (記事メンテ時に使用)
投稿キー (投稿時 投稿キー を入力してください)
コメント

   クッキー保存