というわけで、ワンセンテンスでこのお題は消化できるというわけで、体力的にちょっときついので、例示は無しです。なんで連休の合間で、寝付けなかったんだろう。おかげで徹夜……睡眠障害なだけです。 -------------------------------------------------------------------------------- ●基本ルール 以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。 ▲お題:「古い家屋」「雷鳴」「選挙」 ▲縛り:なし ▲任意お題:なし ▲投稿締切:7/21(日)23:59まで ▲文字数制限:6000字以内程度 ▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません) しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。 ●その他の注意事項 ・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要) ・お題はそのままの形で本文中に使用してください。 ・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。 ・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。 ・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。 ●ミーティング 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。 ●旧・即興三語小説会場跡地 http://novelspace.bbs.fc2.com/ TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。 -------------------------------------------------------------------------------- ○過去にあった縛り ・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など) ・舞台(季節、月面都市など) ・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど) ・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど) ・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど) ・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など) ・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など) ------------------------------------------------------------------------------
*************** 雷鳴神社に行って帰ってきた友人が「あれはただの古い家屋じゃ」と言っていた。 その神社は選挙の後に取り壊される予定だ*************** 雨だというのに、選挙カーが雷鳴に負けじとスピーチを垂れ流し、街を走っている。 なにもこんな日にやらなくてもと思い、苦情を言いに立候補者の事務所を尋ねた。 そこは古い家屋で、誰かが住んでいる様子もない。 そう言えばあの選挙カーは、雨の日にしか見掛けない。*************** ばあちゃんの住む古い家屋には、狸が時々遊びに来るそうだ。「次のぽんぽこ選挙じゃ、どんだけ派手な雷鳴に化けられるかを争うみたいよ」 切った西瓜を弟と二人で食べながら、ばあちゃんのはなしを聞く。 午後は、怪我をした天狗が薬を分けて欲しいてやってきた。 *************** 選挙に行こうとする若者の拉致事件が相次いでいる。 俺も今、古い家屋の中で荒縄で縛りつけられ、転がされているところだ。 外で雷鳴がなった。おしっこが漏れそうだ。*************** 私の住む夢が丘荘は、古い家屋であり、うさぎ小屋のように部屋は狭く、すきま風はひどいし、壁が薄く、つまり選挙演説や雷鳴の音に紛らわせてセックスをしなければならない。 ある日、隣の住人のうどんをすする音が聞こえてきて、私はそれにひどく興奮してしまった。 しかし、空は晴天で、選挙は当分先だ。何もかもが憎い。******************* 田中雷鳴は、名前もそうだが、まるで漫画の主人公のようだ。 貧乏で、野球が上手い。母子家庭で、さる大物政治家の隠し子だそうだ。 彼の住む古い家屋に遊びに行くと、儚げな美しさの母親が、手作りのゼリーを出してくれる。 彼女の部屋にはどこからか盗んできた選挙ポスターがズタズタに裂かれて壁に張り付いており、それが田中雷鳴の父なのだろう。****************** 中学生の頃、生徒会選挙に立候補したことがある。 立候補者は三人いて、開票結果では、私の獲得票が一番少なかった。 その夜は大雨で、雷鳴がひどかった。 そんな思い出を話すと、兄は「いや、あの日は晴れだったよ」と答えた。****************** 祖父のつくるうなぎの蒲焼が美味しいです。 古い家屋の庭に七輪を置いて、炭に火をともし、暑い時期にも関わらず、一時間近くうなぎに向き合って五人分のうなぎを焼く祖母が好きです。 夕立はこの時期の風物詩です。 雷鳴がなって、祖父が家に駆け込んできて、豪快に笑って「俺の分のうなぎ、焼けなかったよ」と言ったら私の出番です。 焼いてもらったうなぎを、祖父とはんぶんこで食べる時が、とても好きです。****************** ボクの友達のダイスケ君は運動が苦手なのだけど、魔法が使えるすごいやつだ。 彼が右手をちょいちょいと振ると、ヨシコちゃんのスカートが掻き消え、先生のズラが飛び、雷鳴が鳴り響き、昼がまたたく間に夜となり、選挙で盛り上がる国会も古い家屋とかわり、太陽がピンク色になり、馬が人間の主人となる。「ここまで世界が変われば、明日の運動会もなくなるよね」 と、ダイスケ君は照れ隠しにはにかんだ。 ボクも「ここまで世界が変われば」と言いながら、彼にキスをした。*************** 結婚してから、妻の猟奇趣味に気がついた。 可愛らしい人形の首を吊って部屋に飾り、骨製や血を思わせるアクセサリーを好む。新築の家は、あたかも古い家屋のように飾られ、玄関の傘立てをどかすと血が飛び散ったような後がわざとらしく付けられている。雷鳴の轟く日には、どこかの島でだけで祀られるおぞましい神に祈りを捧げるなど、しょっちゅうだった。 妊娠してからは、その傾向も少し薄れた。 しかし、この嬰児が流れてしまうと、彼女の悪癖が再び戻る。 ある日、夕食に親子丼が出た。 彼女はシャレコウベの丼にそれをよそり、「器も親子なのよ」と二人分のどんぶりを指さす。 彼女流の悲しみ方なのかも知れないし、でも多分ただの趣味なのだろう。*************** 柱にかじりつくと、付着した砂がジャリジャリと口の中で歯にこすれた。古い家屋の味だ。塩辛さも、まろやかさも、ほろ苦さもない。ぼそぼそとした食感に近い。*************** 先生は選挙に落選したショックで、部屋に篭ってしまった。ドアをノックし、「夕飯置いときますね」と声を掛ける。「いらない……」と返事があって、やや安心した。 この日は夕方から雨で、「先生、カビ生えますよ。雨シトシトお化けがでますよ」などとドア越しに話しかけると「お化け、いないもん」と声が帰ってきた。 真夜中に雷鳴がなり始めると、私の寝室のドアから、そろそろと先生が入ってきて、布団の中に潜り込んできた。*************** 雷鳴と共に、閃光が窓から飛び込んできて部屋を白くした。視界が戻ると、ベッドの上に見知らぬ卵があった。リンゴほどの大きさで、茶色い。 姉が育てようと提案して、僕ら家族は協力をした。交代で温めたり、教育に悪いからと、ちり紙交換や選挙の音を聞かせないようにしたり。 とうとう卵が割れた。「当たり」と書いてある紙が入っていた。*********************** 駅から、いつもとは違う道を使って帰る。理由はない。 見知らぬ駄菓子屋の前を通り、珍しい花を売る花屋を見掛け、初顔の選挙ポスターを見つけ、古い家屋ばかりが立ち並ぶ道を歩いた。 家に帰ると、いつもの道で帰ってきた自分が今でお茶を飲んでいた。「おかえり。あの道はどうだった?」と聞くので、出会った猫の話をした。***********************古い家屋の中で壊れかけたテーブルに突っ伏す。酒瓶にはもう一滴もない。雷鳴に溺れる。************* 稲光に遅れて雷鳴が轟くように、刺激に遅れて感情は沸き起こる。怪物博士の父はそんなことを話しながら作業をしている。ガラスの向こうにある部屋には、まだ命の吹きこまれていない怪物が横たわっている。私と弟となる予定だ。 あとはレバーを下ろすだけという時になって、父が「あいつの名前はお前が決めてみろ」と言った。私には何かを決定できる知性はありません、選挙権もないし、と答える。 父は苦笑してレバーを操作した。ガラス室の中に光が溢れ、その光の向こうで怪物が起き上がる影が見えた。「いつ見ても感動的だ」と父はつぶやく。私も眼前の光景に見とれながら、父とその思いを共有し、そしてまた、かつて自分が古い家屋で目覚めた時もこの想いを父に感じさせたのかと誇る。 「名は、ケンとしよう」と父は言った。「名付けのセンスがないのは我慢して欲しい。私にもまた、選挙権はないのだ」と言った。******************
最初の雷が鳴った時、私は思わずフクロウを組み立てる手を止めた。窓の外の夜空は灰色に曇っている。一瞬、強い黄金色の光が工場の中を明るく照らしたかと思うと、次の瞬間、地の底から響いてくるような轟音が建物全体を大きく揺り動かした。「雷鳴って空から降ってくる音なのに、どうして地面が鳴っているように聞こえるんだろう」 隣の女の子が、組み立て終わったフクロウをレーンに戻しながら呟いた。桃色に着色されたプラスチック製の小さなフクロウたちは、レーンの上に規則正しく並んでいる。私もフクロウをひとつ手に取り、胴体の両側に羽のパーツを挿し込みながら言った。「雨、降ってる?」「暗くてよく見えないですけど、たぶん降ってると思います。あー、早く帰りたいな」「何か予定でもあるの?」「今晩、彼氏が泊まりに来るんです」 嬉しそうに言う女の子にふうんと相槌を打ち、私はもう一度窓の外を眺めた。窓ガラスには一面に黒い闇が張りついていて、ときどき遠くの方で黄金色の微かな光が閃くほかは何も見えない。 私もはやく帰りたい。フクロウを次々に作っていきながら、そう思う。はやく、はやく自分の家へ帰りたい。安全な、温かい洞から、外の嵐を眺めたい。 願いが通じたのか、その日はいつもより少し早く仕事が終わった。マスクと手袋を外しながら息をつく私たちの元へ、検査部の男の子が小さな籠を手にやってきた。「どうぞ。今日の分です」 籠の中には、フクロウが何匹か入っている。できたての、真新しいマスコット。けれど一つ一つをよく見てみると、塗料が剥げていたり、パーツが欠けていたり、瞳のプリントがずれていたりする。欠陥品のフクロウたちは、籠の底で沈黙している。私は手を伸ばし、一つ掴んでズボンのポケットに入れた。男の子はしばらくそこに立っていたけれど、他に誰も貰う人がいないことが分かると、次のフロアへ歩いて行った。 外に出ると雨が降っていた。マンションへ帰る途中、駅前のスーパーに寄って食べ物を買い込んだ。エリンギ、茄子、カレールー、わさび、納豆、卵、じゃがいも、アイスクリーム、ほうれん草、プロセスチーズ、バナナ、牛乳。ずっしりと重い買い物袋を提げて、再び雨の道を歩く。 雨は次第に激しさを増し、町の隅々まで濡らしていく。窪地に溜まり、選挙のポスターを剥がし、川の水を増やす。どこか遠くでまた、雷が鳴った。道の両側に立ち並ぶ古い家屋が、びりびりと震えている。私は嬉しくなって、けれどそんな素ぶりはすこしも見せないで、怖くて怖くてたまらないから早く帰りたい、というように、どんどん足を進める。 家に着いたときには、びしょ濡れになっていた。玄関マットで足の裏を乱暴に拭い、水滴のついたスーパーの袋をどさっと机に置く。シャワーを浴びた後、野菜カレーを作って食べて後片付けをし、それからようやく、毛布を引っ張り出した。照明を落とすと、部屋は一気に暗闇に包まれる。目が慣れると、窓から僅かに青い光が差し込んできているのがわかる。私は息を詰めたまま、そのときを待つ。食べ物を詰め込んだお腹の重みを感じながら、じっと。膝を抱くと、先ほど浴びたシャワーの、石鹸の匂いがふわりと立ち昇った。私は満たされていた。お腹はいっぱいだし、体は清潔だし、毛布は温かいし。柔らかな微睡に沈んでいきながら、私は幸福の溜息をついた。 雷が鳴ったとき、私はすぐに目を覚ました。窓ガラスに両手をついて、慌てて目を凝らす。その瞬間、鋭く尖った光が、目の前で一閃した。遅れて鈍い衝撃が、体の芯を激しく揺さぶる。これだ。この、光。地響き。巨大な力。心臓の鼓動が速くなっていく。息が荒くなり、私はますます窓ガラスに顔を近づける。 恋人もいない。友達も少ない。田舎の小さな工場で働く私の唯一の楽しみは、この時期の雷だった。雲上から振りおろされる、金の鎚。その圧倒的な破壊力が、美しさが、私の体を形作る細胞一つ一つを昂らせる。 ふと、部屋の隅に何かが転がっていることに気付いた。フクロウだった。羽の欠けたちっぽけなフクロウを拾い上げる。この部屋はまるで洞だ、と私はぼんやり思う。深い森の奥、古木の幹にひっそりと穿たれた薄暗闇の空間。外は雨が降っている。激しい雨が降っている。けれど洞の中の巣は、柔らかく温かい。 歪なフクロウと共に、私は安全な内側から、危険な嵐の夜空を見つめる。あそこにいかなくていいのだという安心感と、自然の巨大な力に対する畏怖を同時に抱きながら、この両目に、黄金の光を焼き付ける。 作り物のフクロウは、私の手の中で温かくなっていく。
撮影用の機材一式を背負い、避雷傘を片手に、市内バスに乗り込んだ。 僕は乗車口で運転手に軽く会釈をすると、いつものところで降りますから、と小声で告げる。四十過ぎと見える運転手は、こちらに顔を向けることなく頷き、ただフロントガラスの先を見つめていた。 大荷物を座席まで運び、ふうと一息はいて、腰を下ろした。エアコンの送風口を調整して全身に冷風を浴びると、身体に溜まった熱が流されていくようで、文明の利器に毎度感動してしまう。乗客は今日も僕ひとり。いかに公共交通機関といえど、このありさまではそのうち廃線になってしまうのではと心配になってくる。 目指す松原山山頂行きのバスは日に三本。そのうちの二本目となる昼三時過ぎのバスに乗り込むのは、中学二年の夏休みに入ってからの僕の日課になっていた。目的は山頂からこの町の写真を撮ること。ただし、その撮影には普通取られない方法を使う。今の今まで一度も成功していない撮影。しかし、だからこそ僕は今日もこうしてバスに乗り、松原山の山頂を目指しているのだ。 バスに揺られながら、窓の外に目を向ければ、相も変わらずの風景ばかりが流れてくる。 見上げるほどに高い建築物はなく、ひたすらに水田が広がり、その合間に住宅が点在している。一見どこにでもある田舎町。しかし、よく見るほどに、どんな人間だろうと、この町の異常に気づかずにはいられない。たとえばそれは、すべての家屋の屋根の上から垂直に伸びる長い針だ。 いかに田舎町だからといって、今さら地上波を受信しているわけもない。それは、まったく別の事情、十数年前から始まったこの町の特異な気象現象に抗するために、政府や地方自治体が設置を義務付けた避雷針なのだ。古い家屋だろうと、現代建築だろうと関係なくその避雷針が設置させられた様はそうとう不気味に見える。しかし、それは避けようもないことだ。 窓の向こう、遠くの空が曇り始めている。やがてそれは町いっぱいに広がり、黒ずんだ積乱雲へと変わる。そして、この町には今日もまた、雷鳴がとどろくのだ。 山頂に辿りつき、バスを降りた僕は、目当ての方向へと歩き始めた。 まだ昼の三時半だが、暗雲がその深みをまして、ゴロゴロという腹に響くような音が、空気を震わす。風も強まり、鬱蒼としげる木々の枝葉が揺れていた。 僕は、リュックにしまった厚手の全身スーツを取りだし、それを身につける。顔以外は覆れてしまうが、繊維に絶縁体が縫い込まれているらしく、落雷にあっても平気なのだそうだ。四六時中落雷の恐れがあるこの町では、外出する際はかならずこのスーツを携帯させられ、ひとたび空が曇り出せば、ただちにこれを着用しなければならない。通気性に優れているとはお世辞にもいえないため、夏場は猛烈に熱い。落雷の直撃を受けて負傷するより、熱中症で倒れる心配をするべきではないかという声のほうが多いとも聞くが、少なくとも即死の心配はないというのが、専門家といわれる人たちの統一見解らしかった。 一日に数十、年間にして数千の落雷にみまわれるこの特殊な町に生きるための苦肉の策、それが、全家屋に設置された避雷針と、この絶縁体スーツなのだ。 山道を数十メートルも歩けば、下着や肌着が汗にまみれているとわかる。不快感は急上昇し、いっそ裸になりたいとさえ思えてくる。それでも僕は、このスーツを脱ぐわけにはいかず、背にした機材と、手にした特性の傘を手放すわけにもいかない。たんに命が惜しいだけではない。僕がこれからしようとしていることは、これらがなければとうていかなわぬことなのだ。 車道から細い林道に入ると、左右は松林に覆われる。風がさえぎられると、湿った空気のなかに、緑と土の匂いが混じり、その匂いの濃さに一瞬むせ返りそうになる。そして匂いに慣れたころには、胸の内に、言いようもない懐かしさのようなものが湧き上がってくる。この土地に育ったのだから、懐かしさも何もないと思うが、ここに来るたび同じことを感じてしまうのはなぜなのだろう。 林道の果てにある石段を上り、ぱっと視界が開けた平地が、目的の場所だった。特別何があるというわけでもない。低木や雑草がざったに生えているだけで、神社仏閣どころか、ちいさなお地蔵様さえ立ってはいない。それでも高台にあることには違いなく、そこから自分が住む町を見下ろすのが妙に好きだった。 避雷傘と、背にした機材を地面に下ろすと、僕は大福の形をした大岩のうえに登り、世界を見下ろした。僕が生まれてから今日まで暮らした町が、今は小さく遠い。針山の町。呪われた町。見放された町。誰がどんな呼び方をしようと、僕はこの町に生まれ育ち、今日も明日もここに暮らす。言葉にならない切なさを受け入れるような、誇るような――、ここに来るたび、そんな改まった気分が湧いてくる。 よし、と一言気合いを入れて、僕はいつもの準備に取り掛かった。 三脚を地面に固定し、その上にデジタル一眼レフカメラを備え付ける。レンズを覗いてピントを合わす。フレームに切りとられた僕の町は、相も変わらず灰色の雲に覆われ薄暗い。まるで被写体には見合わない町。でも、だからこそ、僕は自由研究にこの町の撮影を選んだ。この町に生きるものが、この町だからできる方法で撮る一枚の写真。出来が良い悪いではなく、僕はたぶん、その行為自体に価値を見出そうとしている。 カメラの設置が終わると、そのかたわらに別の機材を取り付ける準備にかかった。ラジコンの伸び縮みするアンテナに似た形状を持つ避雷針だ。限界まで伸ばすと三メートルに達する。技術屋の親父に頼み、製作を手伝ってもらった。この避雷針は、雷の電流を地面に逃がす一方、電流の一部を特製の電気コード越しにカメラのシャッター部分にまで流し、落雷と同時にシャッターが押される仕組みになっている。雷という自然のフラッシュを利用して、僕はこの町の写真を撮ってやろうと目論んでいるのだ。 時刻は午後四時を過ぎた。空を覆う灰の雲がしだいに黒ずみ始めている。陽の光ははるか遠い。積乱雲のなかで、雷が生まれるまでそう時間はかからないだろう。 僕は撮影の最終調整に入る。動き続けた身体が熱くてたまらない。額に浮かんだ汗の粒が、眼に入る。口が乾く。絶縁体スーツを全身に着込んだ身体は熱を上げ、意識がぼうっとしてくるのを感じる。急げ、急げ。落雷は近い。「ねえ、きみ、なにしてるの?」 それは、まったく不意に聞こえた女の声だった。 まさかと思いつつも振り返ると、そこに僕と同い年ほどと思える少女が確かに立っている。おかしなことがいくつもあった。ここに僕以外の人間がいるはずがないのだ。先ほど乗ってきたバスに乗っていた乗客は僕一人だった。それもそのはず、ここは、この町で最も落雷の可能性が高い場所で、地元の人間はまず寄り付かない。それなのに、どうして、どうやって彼女はここにやってきたのか。そして、その格好だ。いつ落雷があってもおかしくないこの町で、この場所で、絶縁体スーツを身につけずに、白のブラウスと、薄いイエローのパンツをはいて、突っ立っている。まさかハイキングということもないだろう。「ねえ、なにしてるの?」 彼女は僕の目の前までやってきて、顔をぐっと寄せて問う。思わずのけぞりながら僕は答えた。「なにって、撮影を」「撮影? こんな場所で撮影か。変わった人もいるもんだ」 そう、飄々という彼女のほうこそよほど変わっていると思うが、そんなことを気にしている暇はない。「ここ、危ないよ。もういつ雷が落ちてきてもおかしくない。すぐ避難しないと」「そりゃそうよ。だから、撮影なんてやめたほうが良いんじゃない?」 なんだか、心配している自分が情けなくなってきた。「いや、きみこそ、自分の恰好がわかってるの? そんな恰好じゃ、落雷にあったら、死んじゃうかもしれないんだよ」「うん。まあ、それはそうなんだけど」「じゃあなんでこんなところに」「なんでって、雷に打たれてみようかと思って」「死ぬかもしれないんだよ」「うーん、その時はその時かな」 わからない。まるでわからない。この場合はたぶん、女心の機微というわけでもないだろう。根本的な何かがそもそも違っているとしか思えない。「へー、カメラから覗くとこんなふうに見えるんだ」 僕の当惑などつゆ知らず、彼女は僕が設置したカメラのレンズを覗いている。「ともかく、目の前で落雷事故に合う人なんて見たくないんだ。避雷用の傘があるから、まずはその下に避難してよ」 女の子と話すのが苦手な僕ではあるが、今に限ってはそんなことをいってはいられない。「しかたないか。きみに嫌な思いもさせられないもんね」「ちょっと待ってて。今用意するから」 避雷傘を大急ぎで設置する。これも、地面の下に雷を逃がす仕組みで作られた傘だ。万全とはいかないまでも、裸同然でいるよりははるかに安全といえる。「さあ、こっちに。ちょっと狭いけど、そこは勘弁してよ」 僕の手招きで、彼女は傘のなかに入った。「へーえ、準備が良いんだね」「本当は、バス停の近くに避難場所があるから、そこまで行ってもらった方がいいんだけど」「いいよ。ここにいたい。きみともう少し話してもみたいし」 そういわれると、無理に避難場所へ行けともいいにくい。「ねえ、きみはなんで、こんな場所で、あんなへんてこなカメラを使って、撮影しようなんて考えたの?」「へんてこってのはひどいな。まあ、見た目はたしかに変わってるだろうけど」 説明し出すと長くなる。かといって、彼女を放っておくわけにもいかないだろう。僕は小さなため息をついて、自分の目的について話しはじめた。「へえ、すごい。雷の光を利用して撮影するんだ。きみって発明家かなにか?」「そんな大げさなもんじゃないよ。あの装置だって、ほとんど親父に手伝ってもらって作ったんだし」「そうなんだ。でも、そういうことを考えつくってこと自体がすごいってわたしは思うな。それに、思いついても行動に移すのって大変じゃない。すごい人だよ、きみは」 彼女はしきりに、すごい、すごい、と繰り返す。目が合うのがどうも照れくさく、僕は自分が設置しているカメラのほうばかりを向いていた。 その時、一瞬の閃光がはしり、少し遅れて雷鳴が轟いた。間隔は秒数にして8秒。そう遠くない。いつ僕が設置したカメラに雷が落ちてもおかしくないといえた。「雷だね」 彼女がしばらくしていった。「うん、今から避難所にいくのはかえって危険かもしれない。止むまでここでまっていたほうが良いと思う」 こうして、僕と彼女は雷のなか、ひとつの傘のしたで一時を過ごすこととなったのだった。「今まで何回撮影には成功したの?」「一度も」「え? 一度も成功してないの?」「ああ、夏休みに入ってから毎日ここにやってきてるんだけどね。残念なことに今のところは全敗、ボウズつづきだよ」「ボウズって?」「だから……、成果ゼロってこと」「そういうことか」「そういうこと」 空が黒い雲に覆われ、風が強まり、雨が降ってきた。カメラのレンズには一応雨除けをつけているが、本降りになってしまうと、被写体が綺麗に撮れないおそれがある。撮影は、ある種の奇跡待ちとさえいえた。 閃光と雷鳴が幾度と繰り返される。それらの時間差によってある程度雷の位置が推測できるが、こちらから雷の真下に向かっていけるわけもない。ただ、向こうがこちらにやってくるのを、ひたすら待ち構えることしか僕にはできないのだ。「なかなか、落ちないね」「うん。でも、もう慣れっこさ。あとは根気との勝負かな」「根気か。わたしには縁遠い言葉だな」 そういう彼女の横顔を、ちらり横目に見る。じっと、僕が設置したカメラを見つめているようだが、もっと遠くのものを見つめているようにも思えた。人の心をのぞき見しているようで、言い知れない後ろめたさのようなものを感じてしまう。「きみは、本当はここで何をしようとしていたの?」 気づいたときには、そんな質問を口にしていた。いっそ口にした方が、気が楽になると思ったのかもしれない。「雷に打たれてみようと思って」 そういって、彼女は顔をこちらに向けた。あらためて見ると、白い肌と、左目の下にあるほくろが印象的だった。肩まで伸びた髪も、そのまま伸ばしただけといった感じだ。あまり外見に気をつかうタイプではないのだろうかなどと邪推してしまう。「死ぬ気だったの?」「どっちかな。本当はよくわからない」「自分のことなのに?」「うん。自分のことだからわからないことってあるでしょ? そんな感じだよ。わたし、病気なんだよね。だから、一度雷に打たれたら治るんじゃないかなって思って」「リウマチが治った、なんて話は聞いたことがあるけど、眉唾じゃないかなあ」「いわれてみれば。でも、全身がビリビリーッてなれば、なんだかすごいことが起きそうじゃない? そういうのに賭けてみようと思ったの、かな。それで良くなれば生きていけるだろうし、雷のショックで死んじゃったら、それもまた仕方ないって」「そんなに重い病気なんだ」「そう」踏み入り過ぎただろうか。深刻な問題に立ち入るには、僕はあまりに言葉を持たないし、なにより彼女という人を知らない。別の方法を考えたほうが良いといったところで、もし現代の医療ではどうしようもない病気だったなら、むしろ彼女を追い詰めるだけではないのか。「でもさ、今はきみの自由研究の方に興味があるから、わたしのほうは、ちょっと先に延ばしにするよ。最終のバスが来るまではここにいることにする」「なんだ、きみもこの町の人だったのか」「そりゃそうだよ。朝一番のバスでここに来たんだ。なんだと思ってたの?」「なにって、なんだろう……」 僕が返答に困っていると、彼女はアハハと快活に笑った。 どれくらいの時間がたっただろう。遠くのほうで何度となく落ちる雷と、目の前のカメラを見守りながら、たわいもない話をつづけていた。好きな食べ物、映画、本やマンガの話。学校の話に一度もならなかったのは、彼女がその話題を振らなかったからだし、彼女がそうしないかぎりはこちらから聞くのはよそうと僕が思ったからだ。なんとなく、それが良いと思った。「落ちないね、雷」「うん、落ちない」「どうしたら落ちるかな」「どうしたら落ちるだろう」「祈ってみるとか」「誰に?」「そりゃ、雷様によ」「雷様って、あの雷様?」「そう、変な太鼓を担いだ、鬼みたいなの」「まあ、積乱雲のなかにある氷の粒に祈るよりは良いだろうけど」「でしょ? さあ、祈って」「うーん、なんだか、心がこもってない気がする。僕は信心深くないから」「じゃあ、わたしが祈るよ」「どうぞ」「あ、もっといいこと思いついた」「なに?」「お供えものするんだよ」「それは良いけど、なにを供えるの?」「おへそ」「へそ?」「だって、雷様の好物でしょ?」「へそを取られるとは聞いたことあるけど、好物なのかなあ」「そうだって。わたしが出してみようか、おへそ」「それはいいけどさ。きみって――」「わたしって?」「でべそなの?」 彼女は一瞬押し黙ると、手のピンと伸ばし、「なんでやねん」 と僕の頭にチョップを入れた。 その瞬間である。目の前が激しくスパークし、それと同時に空が割れんばかりの轟音が鳴り響いた。彼女のチョップの威力をものがたっているのではない。今視線の先に、僕が設置したカメラに、雷が落ちたのだ。「きた! やった!」 僕は勝ち誇るかのごとく両手を掲げ、大声で叫んだ。「落ちたの? 雷が? 本当に?」 隣にいる彼女も、ようやく事態を飲みこんだのか、声を荒げる。「ああ、やったよ。僕はついにやったんだ」「すごい、すごい!」「ちょっと待ってて、今、カメラを持ってくる」 僕は大急ぎでカメラのもとへと駆けよる。「ん?」 途端によぎる不安。落雷の衝撃のせいか、固定したカメラが三脚や避雷針から伸びるコードから外れて、地面に転がり落ちていた。ランプは点灯しているから、壊れてはいないのだろうが、果たして撮影はできたのだろうか。僕はカメラを拾い、今度はゆっくりと避雷傘のもとへ歩いていく。「どうだった?」 興奮気味の彼女が、僕の横に立ち、カメラの液晶画面を覗きこむ。 僕は緊張気味に撮影済みファイルの欄を開き、最新の写真を画面に開いた。 そこには、この町が普段とはまた違う一面を見せた、素晴らしい一枚の写真があるはずだった。タイトルは撮影する前から決まっていた。雷光の町。僕がこの夏休みのほとんど全てを費やして撮ろうとした青春の一枚だ。 しかしそこには、眩いフラッシュに照らされ、大きな傘のもと、女の子に空手チョップをされている、間抜けな男の写真が写っていた。「ありゃ?」 彼女は、なんじゃこりゃ、という意味を込めていったのだろう。僕も激しく同意する。 そして僕は、その場にただ呆然と立ちつくし、最後の気力をしぼって、そりゃないぜ、とつぶやいた。 僕と彼女は最終バスに乗って、山を降りている。ふたりで一番後ろの席に陣取り、今日の反省会のようなものをしていた。「それにしても、急に笑いだすから怖かったよ」 彼女のいうとおり、僕はあの後その場にうずくまると、わけのわからない可笑しさに、腹を抱えて笑い転げた。彼女は僕がおかしくなったのではないかと、真剣に心配したらしい。「もう、人間あそこまでくると、笑うしかないって今日学習したよ」「でもさ」 そういって、彼女はもう一度カメラを手にし、あの写真を覗きこんだ。「わたしはこの写真好きだよ」「じゃあ、今度プリントしたものを渡すよ」「本当? やった!」「何か連絡先を教えてくれる?」「わたし、携帯持ってないんだ」「へえ、今時珍しいね。でも、実は僕も持ってないんだ」「じゃあ、またあの場所で会えない?」「ああ、あそこで会おう。僕はまだ目的の写真を撮れてないからね。明日も明後日も、この夏休みが終わるまではあそこにいくつもり。ただ、その時はちゃんとした恰好で来てくれよ。それだけは守ってほしい」 僕はそういって、今は畳まれている絶縁体スーツを指さした。「わかった。暑苦しいからそのスーツって嫌いなんだけど、それくらいは守るよ」「あと、できれば雷に打たれようなんていわないでほしい」「うん。そうだね。当分はそんなこと思わないと思う」「病気は大丈夫?」「うん。死に至る病とは、しばらくお別れかな」「なんだか怖そうな病気だね」「でしょ。でも、自分からなにかを始められたなら、それをおそれない気持ちがあるなら、どうってことない病気なのかもしれない」「それはなにより」 僕と彼女は、バス停で別れ、それぞれの帰路についた。 楽しい一日のあとは、自宅に近づくほどに湧いてくる現実感が嫌になる。今年三度目になる市長選の選挙ポスターが破られ、濡れた地面に張り付いている。呪われた町、捨てられた町、針山の町。そう、確かにここはそんな場所だ。でも、だからこそ、ここに生きる僕は、この町の別の一面を切り取りたいのだろう。カメラを手にし、電源を入れて、もう一度あの写真を見てみた。 相も変わらず滑稽な男の間抜け顔が写っている。 雷光の町、ではないけれど、彼女のいうとおり確かにこれはこれで良い写真なのかもしれない。これもまた、この町に生きる者の、人生の一ページには違いないのだ。タイトルをつけるなら、稲妻チョップ、というところか。滑稽なようで、一度つけてみると、これ以外にはないタイトルだと思える。彼女は気に入ってくれるだろうか。そう思って、自分があの子とまた会える瞬間を心待ちにしていると気づく。まだ、互いの名前も知らない仲だけれど、それはこれからまた教えあえばいい。僕たちはまだ出会ったばかりなのだから。 そう、僕と彼女は、確かにこの町で出会った。
:「古い家屋」「雷鳴」「選挙」俺、伊川速人が住む古い家屋の外で、選挙と雷鳴の二重奏が流れている。家の中では、「夏祭り」が流れている。この二重奏。もはや恒例となっているように感じる。この二つを聞くと「ああ、夏が来た、またこの季節がやってきた」と感じるのだ。ちょっと年寄り臭いが。この季節になると、あたりが騒がしくなる。明日、夏祭りが、俺のいるこの町で開催されるのだ。川沿いに店が並ぶ。綿あめ、りんご飴、金魚すくい、射的、お面。このお祭りが、一生の思い出になればいい……俺は、今年でこの町を去るのだ。夏休み終わりで。家庭の事情。分かっていてもショックだ。だから俺は、この夏祭りで告白してから去りたいのだ。ちなみに、告白する相手にはまだ引っ越すことは伝えていない。告白と一緒に伝えたいと思っている。この町に来て五年。俺の今の年齢は十八歳。引っ越してきて、戸惑っていた子供のころの俺に、優しくしてくれた隣の家の女の子。思えば、初めて会ったころから一目惚れしていたのかもしれない。優しくて、どこか抜けていて、お人好しで、笑顔の素敵な女の子。家が隣だから、同じ中学校に通い、同じ高校に通ってきた。最初は、仲のいい友達だった。成長していくにつれ、ちょっとずつ異性としてみていたのだ。向こうは、いまだに友達。いやもしかしたら弟感覚かもしれない。今から、彼女を夏祭りに誘う。俺は、暴れまわる心臓を抑えて、電話に手を伸ばした――私、柳瀬愛実は戸惑っていた。昨日、クラスメイトの男の子から誘われた。それだけなら、ただその男の子と一緒に行けばいいだけかもしれない。だけど、今、速人からも電話がかかってきたのだ。「一緒に夏祭り、回ってくれないか?」二人、クラスメイトと親友のどちらを選ぼうか?部屋のベッゴに寝ころびながら、誘ってくれた二人のことを考える。まず、クラスメイトの、名前は……思い出せない。でも、その人、一生懸命になっていたように見えた。なんでこんな私を誘ったのか分からないけど、一緒に行きたいというなら行ってあげたいと思う。次に、速人。私の友達で、去年も一緒に行った相手。どっちと行こうか?悩んだ末、速人は、また来年行ける。だから、先約のクラスメイトの子と行こうと思う。速人には申し訳ないけど。私は立ち上がって、速人に断りの電話を入れようと思う――電話の返答は、「ちょっと考えさせて」だった。ドキドキしながら待っていた、数十分後。「ごめん、いけない」返答が返ってきた。断りの返答が。俺は――何も考えられない。ショックすぎて。そのまま、俺は意識を失った。目を覚ますと、体のあちこちが痛い。廊下で寝たっけか?思い出した。昨日、断られて、それで……「俺のメンタルってこんなに弱かったっけか?」苦笑い。もう、夏祭りは開催している。想いを伝えられず、この夏は終わってしまった。頭の中に、曲のフレーズが。――君のいた夏は、もう遠い夢の中。空に消えていった打ち上げ花火――苦い恋愛小説かこうとしてまとまらなかったよ;;
星野日さん作 初めは散文詩のような感じなのかなと思いましたが、読んでいくとこれはやっぱり小説だ、と妙に納得しました。 引きのある書き出しの連続のようにも読め、全部とは言えないまでも、好きなセンテンスが多かったです。 まあ、三語になってないのがあるって突っ込みはあるんですがw。 うーんと、後なにが言えるかな。そうだ、引用が長くなるけど、お気に入りを挙げておこう。 ばあちゃんの住む古い家屋には、狸が時々遊びに来るそうだ。「次のぽんぽこ選挙じゃ、どんだけ派手な雷鳴に化けられるかを争うみたいよ」 切った西瓜を弟と二人で食べながら、ばあちゃんのはなしを聞く。 午後は、怪我をした天狗が薬を分けて欲しいてやってきた。 ***************** ボクの友達のダイスケ君は運動が苦手なのだけど、魔法が使えるすごいやつだ。 彼が右手をちょいちょいと振ると、ヨシコちゃんのスカートが掻き消え、先生のズラが飛び、雷鳴が鳴り響き、昼がまたたく間に夜となり、選挙で盛り上がる国会も古い家屋とかわり、太陽がピンク色になり、馬が人間の主人となる。「ここまで世界が変われば、明日の運動会もなくなるよね」 と、ダイスケ君は照れ隠しにはにかんだ。 ボクも「ここまで世界が変われば」と言いながら、彼にキスをした。 僕が好きだったのはこのあたりです。野中さん作 捉えどころがあるようでないようで、という感触の作品でした。 作り物のフクロウを生産する工場というのはどこかメルヘンチックで、でも主人公の生活はとても現実感のあるもの。その流れが僕には不思議でした。 孤独だろうと、雨風さけられる部屋の中から雷を見ることが好きで、温かささえ感じるという心理も、わかるような分からないような。 こう書きながらも、しかし自分はこの作品の雰囲気にどこか惹かれているとも思っています。 羽のとれたフクロウが手の中で温まるというイメージは好きでした。 まとまりがなくてすいません。AZUさん作 主人公の淡い恋心の末路を描いた作品ですね。 祭りやらイベントの時に、勢いにのって告白して失敗した時の切なさを思い出しました。あれって辛いんだよなw。 文章や、構成では気になる点があるものの、作品自体が楽しんで書かれているように感じられたので、色々読みつつ書きつつ、続けていってもらいたいな、などと思いました。自作 読み返すと雑さに驚きます。短時間で書いても、基本が出来ている人のは読める文章になるんですよね。 でも、私は楽しんで書いたので、これはこれで良しと個人的にはします。あー、楽しかった。 読みづらいものを読んで下さった方がいらっしゃれば、感謝と深謝を。
> 自作 興が乗ったので超短編。読み返すと、書き直したくなるものがチラホラと…! 一日二作ペースで一週間続けようと思ったのですが、金土日とお酒がはいったので何も書けませんでした…! 「もっと長く書いても楽しそう」とか「この長さだから視えるに耐える」みたいなのは成功作。 「もっと長く書かないと面白さがわからんな」とか「そもそもつまらん」ってのは失敗作ですね……!> 野中さん> 最初の雷が鳴った時、私は思わずフクロウを組み立てる手を止めた。 雨に打たれて寒くなっているときに、濡れた服を脱いで毛布にくるまるのって気持ちいいですね。 おみやげみたいな物をつくる工場が冒頭の舞台なのでしょうが、このふくろうに対して擬人化というか、あたかも生き物であるかのような比喩がいくつも使われてい、独特の雰囲気を醸し出しているように感じました。 嵐の中で丸まって寝るというようなラストが、その雰囲気に一味添えてました。 カレーのあたりがサラっとかかれているのも、書かれていなかっただろう場合に比べて、この語り手の生活感みたいなのを演出してい、かつこの作品の雰囲気を損なわないかんじで、なるほどなあと。 とても雰囲気の良かった作品でした。面白かったです。> かたぎりさん> 撮影用の機材一式を背負い、避雷傘を片手に、市内バスに乗り込んだ。 力作来た…!? 毎日雷が落ちる町っていう設定が面白いですね。昔住んでいた地域が「雷塚」っていう名前だったんですが、夏によく雷が落ちる地区だったからだそうです。もっと深く掘り下げれば、ちょっとした郷土の伝説とかあったのかなあと今になって想う。 なんとなく、冒頭のバスのシーンが好きで、このシーンというか、バスに乗って町を回想している状況が好きというか、いい冒頭ですね。 中盤はちょっと「どこに着地するんだろう」って感じがしたのですが、最後のほうは綺麗にまとまってよかったと思います。> Azuさん> 俺、伊川速人が住む古い家屋の外で、選挙と雷鳴の二重奏が流れている 意識を失ったところがなんかオーバーで、コメディチックで面白いですね。 「この夏まつりが一生の思い出になればいい」というセリフから、もう二度と参加できなさそうなくらい遠くへ引っ越すのかなという連想していたので、最後に彼女に告白して、それでどうしようという感じなのかがちょっと思い描けませんでした。 逆にそういうふうに読んでいたので、彼女の選択に「この子、勘がするどい・・・!」とか思ってしまったり(笑)