ある日、オレンジが食べれなくなった。「それは病気です!」 看護師の妹が力説した。雑草が食べられなくなったカエルのミイラにそれを言うなら、兄として理解してもいいかもしれないと返してみたら、「どっから湧いて出てきた、このクソ兄貴!」 妹の右回し蹴りが飛んできた。ひとを呼んでおいてそれはないと、二の腕に心地良い痛みを感じながら、その場にあえて倒れてみる。妹のミニスカートから垣間見えて色はピンクだったが、そこはあえて、そうあえて口にしない。「さっさとそこの画面から帰れ。二度と這い出てくるな!」 そんな実の兄をテレビの画面から出てきたキチガイのように言うなんて、立派にオタクへの理解が深まっているではないか? まったく兄のことをよく理解してくれている。 ま、オレがオレンジが食べれなくなったのと、妹の先輩がオレに惚れたという事実はまったく関係もなく、それを病気と評した妹の感覚はまったくコメントする気もなく、とりあえず問題なのは、この場にオレが同席していることでもなく、なんというか、晴天の霹靂という妹の受けた衝撃であって、妹の憧れる先輩の、「でも、好きになったんだから仕方ないじゃない」という言葉が妹の止めを刺したあたりで、とりあえず、先輩が女性で、オレがその手の趣味もなく、妹もレズではなかったことは救いであり、妹の先輩はとりあえず美人であったことが、その事実がこの場ではいかんとも場違いであったことだけが、間違いなかったことだった。--------------------------------------------------------------------------------●基本ルール以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。▲お題:「オレンジ」「雑草」「カエルのミイラ」「画面から出てきた」「それは病気です!」▲縛り:なし▲任意お題:なし▲投稿締切:5/12(日)23:59まで ▲文字数制限:6000字以内程度▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません) しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。●その他の注意事項・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)・お題はそのままの形で本文中に使用してください。・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。●ミーティング 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。●旧・即興三語小説会場跡地 http://novelspace.bbs.fc2.com/ TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。--------------------------------------------------------------------------------○過去にあった縛り・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)・舞台(季節、月面都市など)・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)------------------------------------------------------------------------------
眼を覚ますと、曇りガラスがオレンジ色に光っていた。時計を確認し、もう午後三時なのだとわかった。布団から這い出す。 立体テレビの電源を入れると、画面から出てきたアナウンサーが今日起きたいろいろな出来事を報道していた。『さて皆さんは、ゴールデンウィークをどのように過ごされましたか』 と彼女が言うので、ああ、今日で連休も最後なのかと気がつく。 明日からまた仕事だと思いだし、ついでに今日が月曜日で、燃えるゴミを出しそこねたことにも気がつく。ゴミ箱から溢れているティッシュやらを拾い、スーパーの袋に無理やり詰め込んで口を縛った。金曜日の燃えるゴミの日には、出すのを忘れないようにしなければ。 腹が減ったが恒温庫にはなにも食料が残っていない。近所のハンバーガーショップで昼を兼ねた夕食をとりにでかけることにした。 ここのハンバーガーショップにはカトーさんというアルバイトがいつもいて、キラキラした笑顔で「いらっしゃいませー」と迎えてくれる。もう顔なじみの客ということで、「ども」と頭を下げると「あ、こんにちは!」と元気よく挨拶を返してくれる素敵なカトーさんだ。この笑顔に釣られて足繁く通ううち、注文も「いつものやつ」で通じるくらいの常連客になってしまった。「カエルのミイラバーガーのAセットですね」 カトーさんが注文内容を確認する。頷いて答える。「これ頼むの、お客さんくらいですよ」「ハエとミミズでつくったハンバーガーの方が、気持ち悪いと思うんだけど」「美味しいのになあ」 カトーさんは首をかしげて不思議がりながら、厨房の方に注文を届けに行ってしまった。 店内の平面テレビに、部屋でも見たアナウンサーのお姉さんが写っている。専門家を呼んで、隕石特集なるものをやっているようだ。「五月って、時間の感覚なくなりますよね」 注文の品を持ってきたカトーさんが、向かいの席に座りテレビを見る。カエルのミイラバーガーは、カエルのミイラをパンに挟むだけなのでとても簡単に作れる。美味い早い栄養満点の完璧なファストフードなのである。「ニュースやってましたけど、海外でも、ゴールデンウィークを採用する国が増えているそうですよ」「へえ」 この店はいつも空いていて、暇を持て余したカトーさんがこんなふうに話しかけてくるようになった。「実感わかないけど、外国も五月は夜が来ないんですよねえ」 テレビに映る何かの専門家が『五年前に地球に衝突した隕石により、地軸がずれ、』と、誰もが知っているような事を話している。「もう五年かあ」 と、欠伸をしながらカトーさんが呟いた。「私も歳を取るわけだ」と。 テレビではニュースが終わり次の番組になり、中年のアナウンサーが『奥さん! それは病気です!』とツバを飛ばしてしゃべっていた。 食べ終わったトレイを渡し、レジで精算をして店を出た。相変わらず空はオレンジ色で、たぶん今週いっぱいは二十四時間ずっとこんな感じであろう。 帰宅して玄関のドアを開けると、置いてあったゴミ袋を蹴飛ばしてしまった。次の金曜日が待ち遠しい。
理解者 ――タスケテ! ボクハココニイルヨ! あなたは、そんな声が自分だけに理解できたらどうしますか? 太陽が地平に触れる頃、世界はオレンジ色に包まれる。 この時間は、特別な時間である。 空というものは本来は青い。 太陽が中空にあるときは、鮮やかな青であり、太陽が空から去ると、深い青になる。 この時だけがオレンジという曖昧な色に包まれるのだ。 それは夜という世界と、昼という世界の狭間。 特別な時間なのである。 金石健は、この曖昧な時間に出歩くことは普通はなかった。 学校で文化祭の打ち合わせがあり、どうしても一人だけ抜け出すことはできなかったのだ。 陽が落ちてから帰宅するので、学校のほうが拒否した。 早く家に着きたい。 用事があるわけではない。親に怒られるわけではない。 ただただ、この時間に出歩きたくないのだ。 ――タスケテ ふと、健は立ち止まって、注意深く周りを見回した。 人は、健を避けながら、少し不穏に眺めながらも、流れていく。 助けてほしそうな人物がいる様子はない。 ――タスケテ! 先ほどより、はるかには明確に響く。 健はさらに怯えたように、大きな身振りで辺りを見回すが、声の主は見つからなかった。 その声を理解できている者は、その場には健しかいなかい。 まただ! そう思うと、健は逃げ出すように、走り去った。 いきあってしまったのだ。 金石健は、時折、いきあってしまう。 特に今回のような夕方になると、健の力が増加するのか、それとも声をだすほうの力が増加するのか、その傾向が非常に強くなる。 幼少の頃は、何気なく両親や友人達のその話をしてしまい、気味悪がられてしまった。 そして、他の人はいきあわないことを理解したころには孤独になっていた。 誰にも相談できずに悩み、行き詰まり、インターネットの掲示板に悩みを綴ってしまった。 その匿名性から、そしてその多種多様な人々が見ているということで、なにか糸口が見つかるかと期待してしまったのだ。 それは、失敗だった。 ネットの反応はひどいものである。 釣りだろ? 人に反応して、楽しんでいるんだろ? 厨二病おつwwwww 大方が、こういう冷やかしや、馬鹿にするものだった。 それは病気です! と精神病院を紹介されることもあった。 パソコンの画面からでてきた言葉たちが、健をさらに苛んだ。 それ以後、健は硬い殻に閉じこもり、人と心を通わせなくなった。 次の日、登校途上、健に再び異変が起きた。 頭に霞がかかったように、ぼんやりしている内にいつの間に、昨日の声の場所へと来てしまったのだ。 ――ココダヨ! ココニイルヨ! 頭に大きく響き渡る音に、健は頭を抱えながら、うずくまると、小さな悲鳴をあげた。 息が荒く、嗚咽がまじる。「どうしました? 大丈夫ですか?」 それは同じ歳頃であろう女子高生だった。 身をかがめ、健の顔をのぞきこみ、心配そうにしている。 それ以外の人々は、少し遠巻きで見ていることはあってもやがて立ち去っていく。 健は返事もできずに、うずくまっていると、彼女は体を支え、手を引き、目の前の公園の芝生へと導いてくれた。 芝生で寝転がって少し落ち着いても、彼女はまだ横に座っていた。「ありがとうございます」「いえ、どうして……」 彼女はその先を言いたいのだが、躊躇うように語尾を濁した。「もう大丈夫です、学校いかねばならないのではないですか?」 健のその言葉に生返事をかえすばかりだった。 沈黙のうちに時が経ち、健が身を起こして、お礼をいって立ち去ろうとした時だった。「……助けを求める声を、きいたのではないですか?」 思わぬ不意打ちに、健の顔はこわばり、彼女を見つめた。 健のその沈黙と、表情により、彼女は気付き、喜びとも不安ともみえる不思議な表情で健の顔をみつめかえしてくる。 それから暫く二人は話し合い、別れていった。 次の日の、夜明け前。 空は濃い青から、色を薄めつつあった。 二人は公園で待ち合わせていた。「大丈夫だった?」「ええ、朝練だっていった。あなたは?」「ちょうど、文化祭があるから、それの用事だっていった」 そんな他愛のない会話をして、時を待ち、現場へと歩いていった。 助けを求める場所に着いたのは、それは夜とも昼ともいえない、曖昧なオレンジ色の時間。 地平から太陽がとびだしきっていない、朝焼けの時である。 時折、新聞配達のバイクの音が遠くできこえるだけで、まだ人気はない。 助けを求める声は頭に響くのだが、それは実はさほど不快なものではない。それを拒否している健の気持ちが、彼自身を害していたのだ。 声の大きくなる位置を見てみると、コンクリートに舗装された道から、小さな雑草が顔をだしている場所だと気付く。 何も道具は用意していなかったので、手でその雑草を優しく抜いてみたが、声は止まらない。 さらに雑草のまわりを掘り、その下をさがす。 不思議なことに、素手であるにもかかわらず、コンクリートはスポンジ菓子のように簡単に崩れそれが姿を現した。 彼女の小さな悲鳴とともに現れたのは、カエルだった。 さわってみたが、動くことはなく、生命の鼓動を感じない。「これだね」 彼女も小さく頷いた。 カエルのミイラ。土中で冬眠している内に道が舗装され、出てこれなくなってそのまま死んでしまったのだろう。何年、何十年もの間、地中で放置されたにもかかわらず、腐らず、分解されずに残っていたのだから、何か力があるのだろう。 健がそのカエルを触ったとき、理解した。 ――こいつは、おれと一緒だったんだ。 特別な力があっても、それを誰にも理解されずに生活していて、闇の中に閉じ込められたのだ。そして、その力を使用してしたかったのは、きっと、理解してほしかっただけなのだろう。自分は孤独でここにいる。特別な力があっても、普通に生きて、死んでしまったのだと。 こうして発見され、それを理解してくれた二人が現れただけで満足したようで、もう助けてという言葉は聞こえなくなっていた。 二人はそのカエルを公園の池まで連れて行き、沈めてやった。 今まで土中にいたのだから、土葬されるのは望んでないような気がしたのだ。 手を合わせると、心の中で「ありがとう」と付け加えた。 このカエルのお陰で、同じ力があり、理解しあえる人とあえたのだ。 きっと、彼女もそういう存在がいなかったのだろう。「……助けを求める声を、きいたのではないですか?」 この言葉をいったときの彼女の、切実な表情、そして、仲間だと知った時の彼女の饒舌さがそれを表している。 カエルと健との違いが、彼女の存在になるに違いない。 そして、できるものであれば。彼女にとって健の存在もそうなれれば祈った。 ――タスケテ! ボクハココニイルヨ! それはカエルであり、健であり、彼女であり、誰の声でもあるのです。 もしその声が理解できれば、手を差し伸べてあげてください。もしかすると、それが素晴らしい縁になるかもしれません。――――――――――――笑の大学 という映画をBGMかわりと思い、見ながら書いていたら、笑の大学があまりに面白くて、見終わったあとに、まだ半分も書きあがっていませんでした。書き始めから書き終わりまでの時間はというと、二時間半くらいですかね。
屍蛙 これは、ある男が失敗した話である。 仕事に疲れた休日、雑草あふれる俺の庭。 その庭を縁側に腰掛けながら見つめていると、俺は普段見ないものを見つけた。 カエルのミイラだ。特に特徴はない……はずだった。「やあ!こんにちは!」「!?」 場違いな、まるで今、アニメを映しているテレビの画面から出てきたキャラクターのような声がした。「ここ!ここだよ!」「え?」 信じられないものを見た。 カエルのミイラがしゃべっていた。「僕をさわれば、幸運になるよ!」「え?」 いきなり、カエルのミイラがこんなことを言う。「はぁ?」 変だと思ったが、まぁ触るだけならと触ってみるとカエルのミイラが腐って消えた。「なんだったんだ……」 俺は、家の中に戻った。 それから、俺はなんとなくカエルのミイラが言ったことを思い出し宝くじを買ってみた。すると、二等が当たった。仕事は成功。これ以上ない幸運が次々と起きた。 カエルのミイラ、ありがとう。俺の人生は成功したよ。 と心の中で礼を言う。「もう、死んでもいいかも」「じゃあ、死ね」 どこかで声がして、俺は振り向こうと思ったが体が動かなかった。 そのまま、俺の意識は途絶えた。 そして、目が覚めたのは病室だった。「それは病気です!」「病気なわけないだろ!」 なんていう会話が廊下から聞こえてくる。 その声に、俺は何をしていたか思い出そうとする。 しかし、思い出せない。 素晴らしい未来があったことを、おぼろげに覚えている。 だから、退院したら未来へ走ろう。そう思う。 倒れたのは、単なる過労だろうと医者は言った。 そのまま退院し、起業してみる。 しかし、失敗した。 財布は落とすし痴漢に間違えられたりという些細なことから、 ひどいものでは会社の責任を負わされたりというさんざんな目にあった。 俺は、絶望に打ちひしがれる。 暗い路地を歩いていると…… そこに、カエルが現れた。「そこのおじさん。幸運になりたくないかい?」 カエルが聞いてきた。過去に会ったあのカエルを思い出す。 だから信じた。「ああ、幸運になりたい」「すべてを捨てても?」「今更捨てるものなんてない。」「分かった」 といい、カエルは俺の頭の上に乗る。 そこで、俺の意識は途絶える。 男はどうなったのか、これを読んでいたみんなは興味があるだろうか? あるのなら、説明という名のエピローグをどうぞ エピローグ 男はカエルのミイラとなっていた。 幸運なんて考えられるはずもなく、ただ人間を不幸にするだけの存在に。 そして、さえない人たちに希望を振りまき、絶望にたたき落とした。 そう、このカエルは過去に先代のカエルに触れた人間が、 最高と最低の感情の揺れ幅(絶望)を利用してこのカエルが続いていくのだ。 簡単に言うと、呪いのカエルであり男は触れてしまったことが間違いだったのだ。 ――完―― 夕闇に包まれた学校の図書室。 俺は、読んでいた短編小説の本を閉じる。 俺は、この本を生かそうとした。 この話の教訓は、甘い話には騙されるな。 その一言に尽きる。甘い話には裏がある。美しいバラには棘がある。 しかし、もう遅かった。なぜなら―― オレンジ色の図書室の中で、何かが朽ち果てる音が響いた―――― ホントウノ『オワリ』
感想・星野日さん題名なしオチが全てに近いお話ですね。できれば、オチにいくまでにもっと不思議なことをいくつか書いて、最後のオチをみて、これだからああだったんだ、というのがほしいですかね。キーワードの 「雑草」 「それは病気です!」 が使われていないように見えたのですが、チェックミスでしょうか。・卯月 燐太郎さん秘密正直いわせていただくと、纏まっていないですね。説明不足ですっきりしません。もっとギャグテイストに書くとよかったかもしれません。文章が硬いので余計おかしく見えると思います。多分大幅加筆して、しっかりできると、手塚治虫さんテイストの綺麗なお話ができそうにみえます。・AZUさん屍蛙ちょっとだけ説明不足ですね。病室にいるときに記憶を失っているのかな?最後の部分は、最初にもどるのかな と思って見直しても、別に同じではないので、もう少しわかりやすくなるように、そこらへんを加筆していただけるとよかったとおもいます。――――――――――――今回一方、いつのまにか削除されていますかね?以前のをみると、みなさん期限がすぎると、削除している方が多いようですが、それが慣例なのでかな? 自分も削除したほうがいいのかな?と少し悩みました
残照がオレンジ色の物憂げな夕焼けとなって、画面から出てきたような町の光景を醸し出していた。 そのまま干されてカエルのミイラができそうなむせかえる熱気の立ち込めた国民総合病院の屋上のフェンスに掴まってその光景を見やり、雑草がきれいに抜き去られた中庭に視線を移したタツキは、小さくため息を漏らした。 奇跡の救出劇とさえ言われた事件から一ヶ月が経った。 あまり思い出したくもない極限の状態から生き延びられたことだけは彼も実感している。半分しかない視界にも慣れてきたし、傷も良くなってきている。今のところはリハビリテーションの毎日だ。しかし、彼には復帰できるのかどうかという不安がつきまとっていて、「それは病気です!」と、宣告されそうなほど病んでいた。「あら、ここにいたの?」 あれこれと思い悩み佇んでいると、不意に後ろからマダムの声がした。 日は落ち、すでに薄闇が広がっていた。それでも照り返しで温気がコンクリートから上り、少し息苦しい。 我に返り、振り向くとマダムと看護師が立っていた。 ああ、巡回検診の時間だ、と気づく。 慌ててタツキは病室に戻った。「何してたんですか?」 そっとマダムに似た看護師がさりげなく聞いてきた。「ぼんやりと夕焼けを見ていました」 タツキがありのままに答えた。「そう」 口調までそっくりだ。 そこまで似ると、マダムは一体何者なのか、という疑念が湧いてきた。 一番近しい存在であるのに、一体何を考えているのだろう。「もうじき退院できますよ」 彼女はそう言って病室を出て行った。
「119」「即興五語小説」感想。RYO様読みました。主人公が兄でその妹が看護師をしているわけですが、少し言い合いをしただけで喧嘩になってしまうほど仲が悪い。オレンジやカエルのミイラごときで妹も兄に暴力をふるうのは、いかがなものかと妹に言いたい。ただ、妹は兄のオタクぶりを理解しているらしくて、妹はそのオタクの兄を毛嫌いしているのでしょう。また妹のあこがれる女性の先輩が兄を好きなのが許せないのだが、先輩が美人であるのが兄とつり合いが取れない。兄を好きな先輩とその先輩を何とも思っていない兄。妹は先輩にあこがれている。この三角関係が後半の一文の長い文章でわかりにくく表現されている。短文にいすれば、かなり内容がわかりやすくなると思います。まとめ三角関係にじれて怒り狂う妹。主人公の兄は結構冷静。妹があこがれる女性の先輩がどうしてオタクの兄を好きになったのかを描いておくと、話は分かりやすいです。――――――――――――――――――――――――――霙様、読みました。ゴールデンウィークにどこにもいけなかった呪いと三語(実際は五語)を利用した結構せこい小説が面白い。この作品は主人公が言っているようにエロ部分が結構書き込まれていて、どこまで書く気でいるのだろうかと思うと、それも作者の計算のうちで主人公が「三語主催者様に削除されそうだ、僕は我に返り、取り合えずそいつを引き離した。」とエロ部分をこれからと言うところで終わらせてしまったが、たしかにこれ以上書くと、作品のバランスは崩れてエロ小説になりかねない。画面から出てきたゆかりと名付けられた女性は容姿を作者の好みで主人公によい思いをさせるのはご都合主義だと思ったが「年は29歳、どんだけ若作り、見た目と違いかなりお姉さんだ。」と、一応「ご都合主義」ではないと作者は言いたいのでしょう。でも「年は29歳、」だからなぁ……。一番おいしい年頃ではないか(笑)。>>自覚もなにもないが、オレンジ、雑草、カエルのミイラに姿を変えられ、その三語を検索した僕が呪いを解いたという。<<これだと、十語でもいけるではないか(笑)。オチについては、作品の流れにふさわしいと思いました。あと、この作品の良いところは「ほのぼの」としているところですね。―――――――――――――――――――――――――――――星野日様、読みました。>>眼を覚ますと、曇りガラスがオレンジ色に光っていた。<<と、とりあえず、異常な空を描いておいて、このあと何かがあるなぁと読み手に感じさせる。「立体テレビの電源を入れると、」で、現在すでにある三Dテレビのことらしいが、「画面から出てきたアナウンサーが今日起きたいろいろな出来事を報道していた。」これだけの描写が惜しいですね。もう少し立体感がある雰囲気をだしてもよかったのではないかと思います。あとはゴミ出しの日常の風景になるが「ハンバーガーショップ」では、「カエルのミイラバーガーのAセット」「「ハエとミミズでつくったハンバーガー」と非日常の世界になり、関連があるのかないのかはわかりませんが、五年前に隕石が地球に衝突して地軸がずれて、云々の話題。これで空がオレンジだとの伏線が解消。<<「もう五年かあ」 と、欠伸をしながらカトーさんが呟いた。「私も歳を取るわけだ」と。 テレビではニュースが終わり次の番組になり、中年のアナウンサーが『奥さん! それは病気です!』とツバを飛ばしてしゃべっていた。>>ここは作者が計算して書いているのかなぁ。結構「ウィット」があると思いました。ラストの日常にまで読み終えたところでこの作品はさりげなく「シュール」だと、感じた次第です。――――――――――――――――――――――――――しん様「理解者」読みました。前作に続き、これもうまいですね。というか、前作がうますぎたので、今回も期待して読んだら、案の定、期待に応えてくれました。 >>――タスケテ! ボクハココニイルヨ!<<この導入部から始まり主人公は特別な能力を持っていたので、声を聴くことができた。しかし、声が聴くことができるあまり一般の者からは変人扱いされてしまう。やがて、理解者が現れるが、その彼女も声を聴ける人物だった。声の主を調べてみるとミイラと化したカエルだった。彼もまた、特別な能力を持っていて冬眠中に舗装されて地下から出てこられなくなり、信号を出していたのだった。二人の理解者はミイラ化したカエルを掘り起し、池に埋葬するのだった。そして二人はカエルと違い人間同士なので、互いに支え合える存在になれることを願った。というような内容で、細部にわたり心の動きが描かれていたので、読んでいてよく伝わりました。作者様は人の心を描くのがうまいですね。前作も、すごいと思いましたが、今作も人物の心が伝わる文章でした。===========「秘密」の返信。最初描いた作品を、後半三分の一ほど書き込んだのが間違いだったかな。ちなみにギャグで書いていました。いったんできた作品を書きこんだり削ったりするのは、難しいですね。ありがとうございました。―――――――――――――――――――――――――――――Azu 様「屍蛙」読みました。結構味のある作品でしたね。話はかなり面白かったです。カエルのミイラがしゃべっていた。「僕をさわれば、幸運になるよ!」これがまた、アニメ声というのが、笑わします。一度は幸運を味わうが、そのあとで絶望を味わう。二匹目の幸運を与えるカエルが現れる。これが味噌で、「幸運」になる意味が一度目とは違っていた。相手に希望を与えてから不幸にする。そして自分はそれで幸福を味わう。かなり出来がよいのではありませんか。この作品「文体」が、凝っていたら、もっと怖さが出ると思います。ちなみに「相手に希望を与えてから不幸にする。」これはダニエル・キイスによる「アルジャーノンに花束を」と基本的な流れは同じです。 だけど、「相手に希望を与えてから不幸にする。」という、物語の発想はアイデアの一つなので何の問題もありません。 作品の作りはまったくの別物でした。――――――――――――――――――――――――――――マルメガネ様 「黄昏の刻」読みました。「黄昏の刻」この時間帯は怪しいですからね。心が騒ぐのですよ。おまけに主人公は事件から一ヶ月ということで、傷は癒えた(とりあえず)かもしれませんが、心はまだ癒えていません。そこで自分の妻(マダム)と病院の担当の看護師が似ている物だから、精神状態が安定していない主人公は妻に畏怖を感じたのでしょう。A>>「あら、ここにいたの?」 あれこれと思い悩み佇んでいると、不意に後ろからマダムの声がした。 日は落ち、すでに薄闇が広がっていた。それでも照り返しで温気がコンクリートから上り、少し息苦しい。<<Aを読むと、マダム(妻)が背後から声をかけたのですが、「日は落ち、すでに薄闇が広がっていた。それでも照り返しで温気がコンクリートから上り、少し息苦しい。」と言うことで、怪しさが描かれています。三人称ですが、主人公寄りで描かれているので、彼の精神状態が揺れ動いているのでしょう。B>>「もうじき退院できますよ」 彼女はそう言って病室を出て行った。<<ラストでBがあるので、結局は主人公の思い過ごしと言うように読み手の私はとらえました。====================================5月14日20時00分■星野日様ご感想ありがとうございます^^> 卯月さん> カエルのミイラを見たことがあります。 >>世にも奇妙な物語とか、アウターゾーン的な話で、なんかへんてこりんな怖さというのか、すごく好きなタイプの雰囲気でした。<<●そのへんてこりんなところを狙って書いています(笑)。三語小説は、自分でも思わぬ作品になるところが面白いですね。 >>怖いというには何もなく、不気味というにはひょうきんというか。なんだかよくわからないけど秘密にしなければいけない話があって、子供に話したら友達が聞きに来て、おいおいと思ってたらその親も聞きに来て、ちょっとまずいぞと思ったら、カエルが来てって、なんかこう、ワクワクとかじゃないんですけど、読んでいてニヤニヤしますね。<<●このあたりが三語の面白さでしょうね。普通に作品を書けばなかなかこういった発想は自分ではできないもので。 >>ちと細かいことですが、カエルがPCから出てくるシーンで『アンパンを食べながらインターネットをしていると、突然軍服を着たりりしい顔をしたオレンジ色のカエルがPCの画面に映った』という文章。 ここまで、子供に話した、友達が会いに来た、大人が会いに来た、と来ているので「然軍服を着たりりしい顔をしたオレンジ色のカエルが」くらいまで読むと、先入観で玄関かなんかのチャイムがなってそこにカエルがいたのかというイメージを意外ていたので、PCに写っていたという言葉がちょっと頭に入りずらかったかも。「アンパンを食べながらインターネットをしていると、突然PCの画面が暗転して、軍服のカエルが写った」とかワンクッション「どこに」を置いたら違うかもなとかなんとかおもったりおもわなかったり(どっちだ) いや、面白い面白いというだけなのも芸が無いので言ってみただけなのですが、それはともなく良い作品だったと思います。<< ●>そんなある夜のことです。 アンパンを食べながらインターネットをしていると、突然軍服を着たりりしい顔をしたオレンジ色のカエルがPCの画面に映ったと思うや「こんばんは、カエルのミイラのお話を聞かせてもらえませんか?」と言ってきたのです。 相手は相当の科学力があるようで、勝手に私のパソコンにつないでいる様子でした。<●この文章で読み手のみなさんにわかると思って書いているのですけれど、それまでは相手が家にやって来ているので、星野日様が言わんとしていることはわかります。一応、それだけ人類とは科学力の差があるということになります。ちなみにカエルは地球侵略をたくらんでいるということですが、かなりまぬけなところがあるという話です。楽しんでいただけたようで、よかったです。●のちほど、感想等が付いた場合は、このレスに書くことにします。
いの一番に投稿された作品が消えてしまっているようなので、現在掲載順に。卯月さんの感想を読んで、霙さんの作品読まなかったのはちょっと損した気分になりました。。。。!!> 自作 「金曜日が待ち遠しいよ。でもそれは土日がキラキラしてるからじゃなくて、月曜日のゴミ出しを忘れたからだよ。そんなかんじの積み重ねで5年もたったよ」みたいな話を書きたかった。思いついた時は、これすごく面白いんじゃね!と思ったけど、書いてみたらそんなことなかったという……!! 「雑草」「それは病気です!」は、普通に入れ忘れました……すみません。 > 卯月さん> カエルのミイラを見たことがあります。 世にも奇妙な物語とか、アウターゾーン的な話で、なんかへんてこりんな怖さというのか、すごく好きなタイプの雰囲気でした。 怖いというには何もなく、不気味というにはひょうきんというか。なんだかよくわからないけど秘密にしなければいけない話があって、子供に話したら友達が聞きに来て、おいおいと思ってたらその親も聞きに来て、ちょっとまずいぞと思ったら、カエルが来てって、なんかこう、ワクワクとかじゃないんですけど、読んでいてニヤニヤしますね。 ちと細かいことですが、カエルがPCから出てくるシーンで『アンパンを食べながらインターネットをしていると、突然軍服を着たりりしい顔をしたオレンジ色のカエルがPCの画面に映った』という文章。 ここまで、子供に話した、友達が会いに来た、大人が会いに来た、と来ているので「然軍服を着たりりしい顔をしたオレンジ色のカエルが」くらいまで読むと、先入観で玄関かなんかのチャイムがなってそこにカエルがいたのかというイメージを意外ていたので、PCに写っていたという言葉がちょっと頭に入りずらかったかも。「アンパンを食べながらインターネットをしていると、突然PCの画面が暗転して、軍服のカエルが写った」とかワンクッション「どこに」を置いたら違うかもなとかなんとかおもったりおもわなかったり(どっちだ) いや、面白い面白いというだけなのも芸が無いので言ってみただけなのですが、それはともなく良い作品だったと思います。 > しんさん> ――タスケテ! ボクハココニイルヨ! この時に出会った少年と少女が、この後、「ねえ、学校の裏でまた声を聞いたよ」「言ってみよう」みたいな感じに街のいろいろなところに言って、小さい物語を積み重ねていく……というところまで妄想しました。 ちょっとだけ変わった力を持ってる同士のボーイミーツガールとかいいですよね。子供の頃、児童文学が好きだったんですが、こういう話に出会うとウキウキしながら読んでいた覚えがあります。カエルのミイラみたいな、普通なら「うわ、きたね」とか思いそうなものに対して、「こいつは自分と一緒だったんだな」と互いを重ねあわせて同情するところも、なんか少年の優しさというか、そういうのがあっていいですね。 読んでいて思ったのですが、これくらいの長さの作品は、もっと視点の位置を意識して定めると読みやすくなりそうです。 例えば「そう思うと、健は逃げ出すように、走り去った。」という文章とか。「そう思った」時の視点は建くんの内部に入り込んだ視点なのですが、「逃げ出すように」「走り去った」という表現は、彼を外側から見ている(去るのを見守っている?)ような視点といいますが。立ち位置が退いたり寄ったり立ったり座ったり、みたいな(?)。ところどころ視点があやふやな印象を受けました。 お話の雰囲気的には、主人公に寄り添うような視点を一貫する演出がいいのかなあ、と。 それとなんとなくですが、「それは病気です!」の使い方には苦労したなという気がしました(笑 > Azuさん> これは、ある男が失敗した話である。 世にも奇妙な物語第二弾……自分もこういう方向で攻めればよかったと後悔した……! いきなりカエルのミイラがあって「僕をさわれば、幸運になるよ!」とか言われて「え?え?」ってなってる感じが可笑しいですね。よい引きこみのある冒頭だと思います。 そしてそこからの「ありがとう僕の人生成功したよ。もう死んでもいい」「じゃあ死ね」「眼を覚ますと病院でした」「起業して失敗しました」というなんかハイスピートな展開が、すごくリズムよくて、面白いなあ。 と、ここまでが結構好きなので「男はどうなったのか興味があるだろうか」あたりのメタ演出などは、なんとなくここまでの物語のに入り込んで加速してきた読書感を、がくんと失速させてしまって、ちょっと勿体無い。 途中までのスピートに載ったまま、最後までとばして追われたら、結構すごいのではないでしょうか……!> マルメガネさん> 残照がオレンジ色の物憂げな夕焼けとなって、ー―… この作品冒頭の干からびたカエルで暑さを表現しているところにやられました。ここのところの感想だけで、本気出せば原稿用紙2枚書ける(ぇ。美味い比喩だなあ。カエルのミイラとかいうお題出されて、ぱっとこういう表現に変えられるのはすごい。じりじりした、かげろうが揺らめくようなカンカン照りの日中が脳裏に浮かんで、うおーってなりました。 んで、意図しているかはわからないんですが、そんな中で出てくるマダムと看護婦の、本当に二人なんだか、それともかげろうで二人に錯覚しているのかみたいな感覚になる、ゆらゆらした続きの部分があって、またうおーってなりました。 この作品は、じわじわきますね。良い三語だったと思います。 卯月さんの感想を読んで思ったのですが、何かの続編だったのかな? しかし、前後の文脈関係なく楽しめたと思います。