Re: 即興三語小説 ―GWはありましたか?― ( No.9 ) |
- 日時: 2013/05/06 22:53
- 名前: マルメガネ ID:jBicHP1M
垂れた青柳の枝が障子に影になって映り、ゆらゆらと揺らめく。 午後の日差しは既に夏の様相をみせ、日もまだ高く懐中時計で時刻を見ると、思いのほか時が経っていることを知らされる。 孫たちが帰ったあとの大きな農家の家は静まり返り、ひとしおの寂しさもやってくる。しかし、家の軒下では燕が子育てに勤しみ、親鳥と雛鳥の声がする。 まだまだ死ねない、とその老人は懐中時計の蓋を閉じて思う。 「おじいさん。燕のヒナが大口開けて、待っとる」 老妻が「青柳」という名の煎茶を入れながら言った。 「知っとる。あとどれくらい見られるかのう」 老人が茶をすすり、呟くように言った。
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