Re: 即興三語小説 ―どうでもいいゴシップは平和の証― ( No.6 ) |
- 日時: 2013/06/18 19:39
- 名前: Azu ID:jyBUzXeg
本音が聞きたい
二人しかいない実験室の中。 檻に入った実験用のラットを見ながら長い話を終えた博士を見る。 博士と言うが、とても美少女だったりする。 おっと、どうでもいいことを考えてしまった 「で、まとめるとこのラットが挙動不審なのは飲み薬をえさに混ぜたからなんですね」 「まあ、そうなるかな」 「なら最初からそう言えばいいものを……」 まあ、博士だし仕方がない。とにかく、説明を始めると長い。 しかし、説明は分かりやすいから何とも言えないのである。 「私の実験は、これだ。君の実験は、なんなんだい?」 「遺伝子操作の実験ですけど、説明が難しくて……」 「そうか」 博士は、さらなる質問をぶつけてくる。 「どうして、君は万能細胞の実験をしているんだい?」 「それは……」 俺が、万能細胞を研究している理由は簡単には言えない、というか人に言いたくない。 俺の、ある意味のトラウマだからだ。 「おっと、聞いてはいけなかったかな?」 「ええ、まぁ……」 博士はおもむろに立ち上がると、フラスコに水を入れアルコールランプに火をつける。 お湯が沸きコーヒーのいい匂いがする。 「ほれ」 コーヒーを受け取り、ほっと一息つく。 「もう、君がここにきてから1年か」 ふいに、博士が呟く。もう、そんなにたつのか。 博士と初めて会ったのは、博士が言った通り一年前だ。 入ったばかりの研究所で、俺は道に迷ったのだ。 道をうろついていると、博士に出会ったのだ。 そして、強引に博士の研究所に巻き込まれた。 しかし、俺はとても楽しんでいた。 はじめは、変人だと思った。しかし、それは俺の勘違いだと気付いた。 まず博士はやはりとても頭がいい。そして会話がうまい。 アドバイスもたくさんくれる。そのため俺の研究はとてつもなく進んだ。 あと、博士がとてもかわいかったこともあるのだが。 コーヒーを飲みながら、博士と思い出話をする。 いつも、博士と話すことがとても心地よかった。 俺はなんとなく、もう博士に話していい気がした。 俺が何故万能細胞を研究しているかを。 「博士、さっきの話ですが……」 「さっきの話って?」 「なんで、俺が万能細胞を研究しているかです」 博士は、すぐに耳を傾けた。 俺は、こまごまと、切れ切れに話し始めた。今まで誰にも話したことのないことを。 俺の母が、俺のせいで交通事故に遭い、そのせいで植物状態になってしまったこと。 そして、その植物状態、つまり脳細胞が死んでしまっているのだが、それを回復させるために万能細胞を研究していることを。 俺は、震えながら話した。 あの、母が車に撥ねられた瞬間は思い出すと吐き気が襲ってくる。 やがて、俺の話が終わる。 博士は話を聞き終えると、俺の予想外の行動に出た。 なんと、背中に抱き着いてきたのだ。 俺の凍えた体が、博士の熱でゆっくりとほぐれていく。 「大丈夫だ。あんたの研究は進んでいる。きっとお母さんも救えるさ」 博士の優しい声が頭の中に入る。 とても暖かくて、心地よかった。 「それで、どうして私にそのことを話してくれたんだ?」 「博士が、好きだからです」 口からこんな言葉が出てきた。 「「え?」」 同時に戸惑う、俺と博士。 何分――いや実際は数秒だろうか――たって、突然博士が笑い始めた。 俺は、戸惑ってしかいなかった。 「いやあ、こんなにうまくいくとは」 「え? うまくいくって?」 「私、実はあんたのコーヒーに薬を入れたんだ」 「え? 薬?」 聞いてばっかりである。思考回路がめちゃくちゃだ。 「ああ、薬を。 本音が出てくる薬」 「ええええええええええええ!」 俺の叫びが、研究所に木霊した。 意図せぬ本音? が漏れてしまった。 「何言ってんだ俺……」 絶望していると、博士のつぶやきが耳に入ってきた。 「でも、私は嬉しかったぞ。」 「それって、どういう意味です」 博士は、顔を赤くしながらこう怒鳴った。 「研究者なら、自分で考えてみろ!」 でも、なぜか怒鳴った時の顔は笑顔だった。
エピローグ あのやり取りから十年。 俺の母は、植物状態から回復してくれた。 万能細胞を研究し続け、やっとのことだった。 博士には、感謝してもしきれない。 え? 博士とはどうなったかって? それは…… 「おい! 実験器具を買い足しておけって言っただろ!」 「なにも、家の中まで実験室作って実験しなくてもいいじゃないですか……」 俺は、実験室に続く家の廊下を走るのだった
Fin
親のPC規制で修正が火曜日に まず、お題を入れなおしました。それと、ラジオの下りですが・・・ IフィルターによってR-18の単語が表示されなかったようです。 任意お題だったのでラジオの下りを削除しました。 ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした 6月18日 お題ワード追加/あとがき修正
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