Re: 即興三語小説 ―とりあえずしばらく難易度低めでいきましょうか― ( No.5 ) |
- 日時: 2012/02/26 22:12
- 名前: 紀之下 葉 ID:CEC4t/GE
「あ……」 「お……」 目を見合わせて1秒くらい固まった。 「ここ……?」 「そう……そのはず」 と言って太一は自分の受験票と机の右肩に書かれた受験番号とをもう一度じっくりと見て確かめて、うん、と頷いた。 まさか同じ学校の友達と席が隣になるとは。この学部の志望者数は確か500人くらいじゃなかったっけ。奇遇、まさにそれだ。ちなみに受験番号が続きってことは、合否がどうだったか訊ねなくても分かってしまうーーいや今それはどうでもいい。ていうかそんなもの内緒でも何でもないから別に構わない。……うん。 「寒いな、今日」 太一が呟く。 「雨降ってるしね……太一、ズボンの裾、びしょ濡れじゃん」 「まぁそのうち乾くだろ」 そうかな。そういう私もスニーカーが浸水して気持ち悪くて、さっきからずっと半脱ぎ状態だし。私も太一みたくローファー履いてくればよかった。でも私の持ってる私服の中にそんな革靴と合うやつなんて無い。じゃあ太一みたく制服着てくればよかった。そしたらほら、上半身だけでも、紺のおそろいで、二人並んで……え。 待って何今の思考大丈夫かしら私ほっぺた火照ってないかしらいやそうじゃなくてあああだめだめ集中集中勉強に集中隣の人なんか気にしないでこれは私の人生が懸かってるのよえええと最初の科目はえええと 「英語かぁー」 「!?」 「え、何、どうしたの、急にこっち振り向いて……僕何か間違ったこと言った?」 「いや……ねぇ、私、今何か言った?」 「は? さぁ」 たまたまか。 「あぁ、そう、それなら」 「?」 「いやあの別に気にしないで。太一、英語苦手?」 むりやり話題を逸らしてみる。 「苦手意識はあんまり無い。得意でもないけど」 そういえばそう言ってた。ていうかこのやりとりももう何回もした、ととっさに気が付いて、またほっぺたが火照りそうになる。思えば、いつもこういう状況に陥った時同じような手でごまかしてたかも……。 太一の方をちらと横目で見る。別にいつもと変わらない様子で、ふきのとうの形をしたお気に入りの筆箱から鉛筆とか消しゴムを取り出して机に並べている。私の方はというと、手元の単語帳に目を戻しても、全然内容が頭に入ってこない。なんか目に映るもの全てが紺色に見えて仕方がない。あああ私ったらこんな時に何を動揺してるのかしら。 あ、試験監督の先生がマイクを手にして「そろそろ参考書等をカバンの中にしまってください」とか言ってる。カバン? カバンってどれだっけ。あれ、今私何してたんだっけーー 「おい、大丈夫か?」 太一の声で、我に返る。うん、大丈夫。自分に言い聞かせるように小さく声に出す。 「平常心でな」 お願い。こっちだって平常心を保ちたいんだから、もうそれ以上話しかけないで。
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はじめまして。国公立前期試験終えたての現役受験生キノシタです。 飛び入りですがよろしくお願いいたします。
1時間半くらいだと思います。 あと、ちょっとだけ〆切をオーバーしてしまったことに対してお詫び申し上げます。
ちなみに、友人が隣の席だったという部分だけ、事実に基づいております。
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