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RSSフィード [42] 三語いいとこ一度はおいで
   
日時: 2011/08/06 23:47
名前: 片桐秀和 ID:bAHnLEhE

やります三語。今回のお題は、以下の八つ。

「清純派」「召集令状」「エニグマ暗号文」「スカトロ」「初経」「それはわしのじゃ。返せ」「賞味期限」「硫酸頭からかぶって皮膚がただれて苦痛の中、悲痛な叫びをあげて死んじゃえっ! もう私知らないっ!」

この中から三つ以上使用して、作品を仕上げて下さい。
なお、縛りとして『奇人・変人・変態が出てくる』が今回設けられます。この縛りを踏まえて執筆して下さいね。ま、お題選びによっては、自動的にクリアされるかもしれませんがw。

とりあえずの締め切りは深夜一時。多少遅くなっても問題ありませんので、楽しんで執筆してください。

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Re: 三語いいとこ一度はおいで ( No.5 )
   
日時: 2011/08/07 01:30
名前: 弥田 ID:DUEu0/u2

「たっちゃん、赤紙が届いたよ」
 と、帰って来るなりの第一声がそれで、僕はやれやれ、とため息をついた。それから、部屋に篭もって、ひとり、こっそりと泣いた。窓は開け放しで、びゅうびゅうと風が吹き込んで、それでも暑い夏の夕暮れのことだった。入道雲がもくもくと大きくて、ふちが朱色に染まっていた。僕のことを「たっちゃん」と呼ぶ少女は、なにもかもを諦めたような眼でにこにこと笑っていた。

  ○

 宇宙人と戦争をしているらしい。ちょうど去年の今頃のことだ。政府の中でも一番偉い人が、何百人もの記者の前で、真剣な顔をしながら重々しい口調で言った。「我々は侵略を受けております」多分、テレビの前で吹き出したのは僕だけじゃないはずだ。そして後々の虐殺を見て、自らの甘さに後悔したのも、また。
 しばらくして、赤紙と呼ばれる召集令状が世界中の女の子のもとへ届くようになった。宇宙人と戦うための兵器は十四歳から十六歳の少女しか動かすことが出来ないらしい。「思春期の多感な脳髄が必要なのだ」と本で読んだ。アメリカの、頭がよくて人もいい、長い肩書きをもった博士が流布したとある告発本に書いてあった。博士はその後死んだ。自殺、らしい。誰もいない部屋でこめかみを撃ち抜いた、らしい。葬式は行われず、遺体は政府が引き取った、らしい。
 少女達は次々と戦いに駆り出され、次々と死んでいった。笑っちゃうくらいにあっけなく、死ぬためだけに死んでいった。宇宙人と戦うための兵器は、宇宙人に勝つことのできる兵器ではなかった。レーザー光線の雨には耐えられなかったから。だから、ただ、戦う。残された人々が、少しでも長生きできるように。一分でも一秒でも、宇宙人の向ける銃口をそらしていく、それが少女の役割だった。
 それはもう、あっけなく死んでいくのだ。
 そんな戦場に、僕の妹が、行かなければならない。八月十四日、つまり一週間後に、彼女は十四歳の誕生日を迎える。

  ○

「たっちゃん、キスしよっか」
 夕食の途中、ぽつりと漏らした。賞味期限ぎりぎりのレトルトカレーが気道にはいって、思わずむせてしまった。父と母も慌てていた。僕らの狼狽を気にもせず、妹は続けて言った。
「もちろん続きもしよね。すっごく変態的なやつがいい。SMとか、スカトロとか、サドとかバタイユとかが描いてるような、すっごくいやらしいやつ」
「……あいにくだけど、僕にそんな趣味はないんだ」
 やっとのことでそう言った。妹は微笑んだ。あの諦めたような目つきがじっと僕をとらえていた。
「初経前の女の子を犯す趣味はあるのに?」
 母がお皿を取り落として、陶器の飛び散る派手な音がした。父は無言だった。さっきから僕はふたりの顔色を伺ってばかりだったが、妹のあの目つきは、僕だけを見つめている。
 筋肉が硬直して、動けないままでいた。震える唇になにか柔らかいものが触れて、遅れて、それが妹の舌なのだと気づいた。
「部屋に行こう?」
 媚びるような上目使いで聞いてくる妹に、僕はうなずくことしか出来なかった。

  ○

 熱を抱擁していた。嬌声をあげる小柄な熱に、ひたすら腰を叩きつけていた。熱は十分に湿っていて、くちゅぽん、と卑猥な音の響きがした。注挿に力をこめると、背中にまわされた熱が爪をたて、僕の皮膚を破った。
「こうして傷をつけるのはね」
 熱は、すなわち妹は、ぜいぜいと荒い呼吸をしながら言った。
「たっちゃんの処女膜を破ってやりたいからなんだ。だって、わたしだけが破られるのなんて、そんなの不公平じゃない」
 爪がより深く食い込み、冷たさにも似た痛みが走った。流れ出る血がわきばらを伝って垂れ、ふとんに赤いしみを作った。
「小学校を思い出すね、えへへ」
 ふたたび嬌声があがる。僕は腰の速度をはやめた。首筋にキスをした。熱い。とても熱い。あまりに熱いのでなんだか涙がこぼれてしまい、困った。
「きみに死んで欲しくない」
「大丈夫だよ」
 そう言って、妹は笑った。
「わたしはたっちゃんのために死ぬんだ。たっちゃんが少しでも生きてくれるなら、それでいいんだ」
「きみを失いたくない」
「……ねえ、そろそろイキそう?」
「うん」
「わたしもなんだ」
 破裂するような感情と共に、彼女の中へ僕の存在を注ぎこんだ。一週間後、妹は十四歳になる。彼女を犯した僕の罪も、それを受け入れた彼女の罪も、すべてレーザー光線の熱にとけて消える。ふとんにしみた血だまりだけがあとに残る。
 一週間後、ピストルを買おう、と思った。こめかみに当てて、ぎりぎりまで引き金をひいて、止めて、それから思いっきり笑おう。そう思った。
 妹の汗が腹におちる。その熱さに、僕は最大限の賛美を送った。

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