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RSSフィード [264] 即興三語小説 ―「秋風」「盆栽」「保存」―
   
日時: 2015/08/30 22:00
名前: RYO ID:1sYJYKB2

 今週から9月ですね。夏休みも終わって、
 もう少しすると、なんとなく年末を意識し始めるんだろうな。
 秋を感じるのはもう少し先になると思いますが。
 
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。
▲お題:「秋風」「盆栽」「保存」
▲任意お題:なし
▲表現文章テーマ:なし
▲縛り:なし
▲投稿締切:9/6(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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内の裸と外の錦 ( No.5 )
   
日時: 2015/09/06 23:41
名前: ラトリー ID:ikkkEfO6

 池に餌を落としてやると、たちまち水面に錦鯉が集まってきた。
 鮮やかな模様が浮かび上がる身をくねらせながら、我先にと塊に群がって忙しく口を動かしている。野性の力強い本能を間近に見るようで、悪い気はしない。
 食欲旺盛なのがこの魚の持ち味だ。雑食性で、小魚に水草、ミミズにカエル、口に入るものならたいてい何でも食べる。錦の名を冠する美しい外見を手に入れても、その貪欲な性質は変わらない。人間の都合など魚の知るところではない、ということか。
 池から広大な庭へと視線を移し、ため息をつくように深呼吸をする。
 こんな立派な建物が親の持ち物とはとても思えない。だが現実は現実だ。
 俺が都会で苦労している間、祖父母の遺した屋敷を相続していろいろと手を加えたらしい。親父が退職金をかなりつぎこんだのだろう。
 錦鯉の泳ぐ池、瓦をふきなおして長屋が二つ直角に交わるような様式に改築した住居部、縁側沿いにずらりと並んだ盆栽。どれも金に困らない定年世代の贅沢趣味を体現したようなしつらえだ。装飾自体に罪はないが、果たしてその持ち主はどうか……?
 つい数時間前の出来事に思いをはせていると、秋風が頬をなでた。
 昼下がりの穏やかな日差しが、夏の遠くなったことを教えてくれる。夜ともなればなおさらで、ゆうべは心地よく眠ることができた。
 だが、親父はそうもいかなかっただろう。二人いる子供のうち、出来の悪いほうの長男がこうして帰ってきて、気にくわない「将来の夢」の話など持ち出したのだから。
 親父は会社勤めを引退したが、おふくろはラジオのパーソナリティを続けている。六十を超えても若々しい……いや、かん高くて若すぎるとさえ思える声質を生かし、毎回やたらと高いテンションで、悩める少年少女の友達のようにふるまっている。
 バカバカしいとは思うものの、俺だってそんなおふくろの息子だ。声を使う仕事にあこがれた。ルックスや立ち居振る舞いに自信がなかったというのもある。妹のように化粧品を売るなんてことはできない。だが、それに負けない何か「大きな」仕事をしたい。
 人前にはあまり出たくないが、世の中に俺の実力を示したい。すごい奴だと、一人でも多くの人間に思ってほしい。そう夢見て、長く都会に身を置いてきた。
 親父はそんな俺の訪問を冷たくあしらった。自分が公務員として勤め上げた三十八年を栄光ある過去のように振りかざし、いまだ定職に就かない俺を邪険に扱った。
 夜の訪問だったから、おふくろはラジオ局のほうに行っていて不在だった。二人でおふくろの出ている番組を聴いた。現役時代さんざん暴力を振るっていたくせに、さも「できた夫」のように耳を傾けているのが腹立たしくて仕方なかった。
 昔から水と油の関係だと思っていたが、久しぶりの再会でも変わらなかった。むしろ悪化していた。親父はこんなにも醜い男だったのか。老いてますます私腹を肥やし、輝き続けるおふくろと対照的にどこまでも堕ちていく。俺の眼にはそうとしか映らなかった。
 将来の夢を伝えるのとあわせて借金の申しこみをするつもりだったが、その気もなくなった。こんな男に金の問題で頭を下げる必要はない。金を得るならもっとうまいやり方があるだろうと、俺はあらためて自分に言い聞かせたものだった。
 そして今、日の当たる時間にこうして池のほとりに立っている。懐には親父の財布から抜き取った一万円札が十枚。行きがけの駄賃には充分な金額だ。
 おふくろはまた局のほうへ出かけている。ゆうべ遅くに帰ってきて今朝早くの出発で、ろくに会話する機会もなかった。仕事を楽しんでいる身を邪魔したくはない。さっさとやることをすませて帰ろう。そう思い立ってからはすばやく行動できた。
 また秋風が吹いた。身につけたダークスーツに鼻を近づけ、かいでみる。特に匂いはしない。見たところ、黒い見た目のおかげで付着した斑点も目立たないようだ。
 親父には葬式に着ていくみたいな服だと言われたが、別に間違ってはいない。もともと軽い冗談のつもりでコーディネイトしてみた。それがたまたま、ジョークの切れ味を増した上に本当に喪服として機能するようになっただけのことだ。
 息の根を止めるときは、勢いに任せて一瞬で終わらせた。服を脱がせ、風呂場へ運んで解体するのはさすがにくたびれたが、どこかで聞いたか見たかした話を思い出しながらやれば何とかなった。居間のパソコンも、手口の詳細を調べるのに大いに役立った。
 あらためて深呼吸しながら、池を見下ろす。鯉たちはみんなほうぼうに分かれてのんびりと泳ぎ回り、さっき落とした餌は影も形もない。
 ――これはひょっとして、予想以上にうまくいくかもしれないぞ。
 大量の肉をどう処分するか迷っていたところだった。骨は鍋で煮てやわらかくしてから砕けばいいが、肉塊の処分はそうもいかない。保存だって利かないし、さっさと人目につかない形に変えてしまうに越したことはない。
 その点、別の生き物に食べさせるのはてっとり早い。鷹や鳶に何匹かさらわれたとはいえ、広大な池には軽く二十匹以上の鯉が悠々と泳いでいる。好きで池に放した鯉に食われるのだ。親父もきっと悪い気はしないだろう。
 俺はさらなる餌を運ぶべく、親父を置いた風呂場へ戻ることにした。

―――――――――――――――――――――――――

 今回も三時間ほど使ってます。

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