元旦の願い ( No.5 ) |
- 日時: 2014/01/13 22:13
- 名前: RYO ID:qEtqoFYs
初日の出に願掛けをした。 今年こそ、、今年こそ彼女が欲しい。 それは多分、この年頃の男子高校生のごく当たり前の願望に違いない。その自信だけはあった。もっとも、誰もが抱く願望であるのだから、誰しもが叶うわけではないし、相手がいる話だ。ため息をつく。 「そして、また振られるんだ」 「そうはいっても、その相手だって、同じことを望んでいるわけだろう。可能性は結構あるんじゃないか?」 俺の中の別の俺が同時に耳元でささやく。 とはいえ、そもそも好きな子がいるわけじゃない。 昇っていく朝陽を見ながら、新年二度目のため息をつく。息は白く染まって、すぐに消えていった。 山頂の展望台は風が強く、平地と比べても一段と寒い。手にした缶コーヒーをあけて、一口すする。甘ったるさが舌にまとわりつく。途中のコンビニで買ったおにぎりを開けて、頬張る。梅肉の酸味が口の中にいろがっていく。何だって、コーヒーにおにぎりなんて組み合わせを選んだのか、良くわからない。どっちもお気に入りであるが、組み合わせとしてはあまりよくなかった。 辺りは初日の出を目当てにきた人たちでいっぱいだった。家族連れに、アマチュアらしきカメラマンに、カップルがいる。そうカップルがいる。昨日の夜は一体どう過ごしたというのか。俺と違って家族で紅白を見たわけじゃないだろうよ。初詣はこれからか? それとももう行ってきたのか? 「松本くん?」 突然呼びかけられて、振り向く。そこにはクラスメイトの上村さんがいた。ちょっと気になっている彼女だ。 「松本くんって、初日の出とか見に来るんだね。なんかクラスでもいつも独りで、物静かにいるから、あんまりこういう、人の多いところに来るイメージがなかったからなんか意外で」 彼女はどこか照れくさそうに、はにかんでいた。後ろで彼女の家族が呼ぶ声が聞こえて、「もう行くね」と彼女はきびすを返そうとする。 「あ、上村さん」 「何?」 「あけましておめでとう。今年もよろしくね」 「あ、そうだね。忘れてた。あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」 彼女はそうお辞儀をして、家族のもとに走っていった。 今年はなんとなく良いことがあるようなそんな予感と共に、彼女の背を見送る。 電話が鳴る。親父からだ。 「颯太か。帰りに薬局の胃散を買ってきてくれ。飲みすぎてどうも胃の調子が悪くてな」 「空気読めよ。親父」 せっかくの良い気分が一気に台無しになった。現実に引き戻された気分だ。 「何だ?」 「元日に開いている薬局があると思うか?」 新年三回目の溜め息は風に消えた。 --------------------------------------- なかなかネタが定まらなかったです。 時間は60分くらいですか。 月9を見ながら書いて、松潤が出てたので名前があっさり決まりました(笑
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