Re: 即興三語小説 ―あけましておめでとうございます― ( No.1 ) |
- 日時: 2014/01/07 19:01
- 名前: マルメガネ ID:4NHBZV7g
帰り道
がらんがらん、と神社の鈴を鳴らし、神道の作法に則って参る二人の若い学生。 受験はもう間近に迫り、合格の願かけのお参りらしい。 元旦から三日の松の内はそれなりに人出で賑わっていたものの、今では目にするのは受験を控えて願かけにやって来る学生がちらほらと。 ひととおり参拝を終えたその若い二人の学生は境内から石段を下りて気晴らしの散歩といった形でコンビニに寄り、梅肉の入った飴を買い、その近くの薬局に梯子をするとそこで「薬局の胃散」を購入していた。 何かと受験勉強などでストレスを感じ、胃がおかしくなっているのだろう。 「君は何を願ったんだい?」 帰り道に、薬局の胃散を手にした学生が梅肉の入った飴をなめ始めた学生に聞いた。 「薬科大学にはいれますように、って」 その学生は答えた。 「君は?」 「特に何も。あっても、大したことは願っていない」 薬局の胃散を手にしたその学生が言う。 「で、買ったその薬局の胃散は?」 飴をしゃぶる学生が後生大事に薬局の胃散を手にしている学生に聞くと 「カレーに入れるんだ」 と、返ってきた。 「ふーん。まぁ、スパイスが若干配合されているからな。都合はいいかもな」 二人の会話はそこで途切れた。 川から吹く風が冷たい。 大きな橋を目の前に、その学生たちは分かれてめいめいに帰宅していった。
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No.1に対する返信 ( No.2 ) |
- 日時: 2014/01/12 01:11
- 名前: 青空 ID:3zFUcI6A
わたしは、神社の初詣で人垣を並んでいる中で、急にお腹が痛くなった。 なぜだか、とてもトイレに行きたいのだが、参拝が迫っていたため、先にお参りを済ませてしまってからトイレに行こうと思った。それほど列が長く続いていた。 賽銭箱の前にたどり着くと、鈴綱を鳴らして願かけをする。 (どうか神様、薬局の胃散を下さい) しまった! 願う内容が必然的に、腹痛に繋がる内容になってしまった。 そのときである。奥から婆さんの巫女がでてきた。彼女は低い身長で、深い皺をどこかしこに刻んでいた。赤い袴と白い羽織り、はちまきでいかにも巫女だった。 「お前さんで千人目。おめでとうございます」 怪しげな婆さんは、そう云うと、わたしに何かを手渡した。 (…………うーん;) わたしの掌には、お猪口に乗った梅肉がしがいわくありげに乗せられていた。 「さ、さあ、お若いの。一気に口に運びなされ」 (あ、あのっ、腹が痛いんですが) 他の参拝者の目があってこっちに集中している。とても、思っていたことを口に出せない。脂汗をかく。目の前がくらくらと渦が回り倒れそうになった。 もう、わけがわからず、やけくそと摩耗した感覚で一気に梅肉を飲み込んだ。 ゴクっという音が辺りに響いた。 「この梅肉は、悪いところを治してくれるのに有名でな。この間も、腹痛の人の病を治してしまったのじゃ……」 パラパラとまばらに歓声と拍手が沸き起こる。 わたしは、婆さんの話を全部聞く前に、トイレを目指して小走りをしていた。 ――すべての事なきを済ませてから思う。 (この神社ってご利益があるのか? ないのか?) 永遠に解決しない疑問が沸き起こった。
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No.2に対する返信 ( No.3 ) |
- 日時: 2014/01/08 23:32
- 名前: 青空 ID:3zFUcI6A
なんか、三語小説を書くと、自分が落研(落語研究会)の組員になっているような気がしてならない。
さて、マルメガネさんへの感想です。受験の苦悩と腹痛がかかっています。そして、薬局の胃散で、薬科大学……(後は、皆さんに思考はお任せするとして)一番の疑問は胃薬とカレー……(--;;疑問が湧きました。
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Re: 即興三語小説 ―あけましておめでとうございます― ( No.4 ) |
- 日時: 2014/01/12 20:34
- 名前: み~君 ID:eKvHgYhY
幸せの幸
「私の幸せの幸は、ペンギン。ペンギンが食べたいの、繁殖期前の一番脂に乗ったペンギンの唐揚げを、梅肉をつけて食べてみたいの」 食事に誘う為の、何が食べたいとの僕の問いに、彼女の答えはこうだった。初詣の願掛けも同じだという。彼女の真っ直ぐで綺麗な瞳は、嘘などなく大真面目だった。今更ながら、海の幸、山の幸、大陸の幸、空の幸、何でもいいさと聞いて後悔だ、後で悔やむと書いての航海だ。グーグルサーチでの航海とも言える。 船酔い防止の薬局の胃散が大活躍の航海。なんやかんやでペンギンの群れに僕はたどり着けた。 ごめんよと僕は涙を流していた。愛する彼女の為に犠牲になってはくれまいか? 一羽ぐらいいいだろ? コクンと頷いた大人しそうなペンギンをリュックに詰めた。そんなこんなで無事に帰国。 「こんな美味しそうなペンギンをありがとう。でも可哀想」 ペンギンはコクンと頷いた。 彼女が付けた名前は「マル」 マルを捌く事も出来ず、飼うのが面倒だった為、水族館に行き、リュックに入れたマルをそのまま置き去る事にした。 後日のペンギンコーナーでは、品種の違う、丸々太った一羽のペンギンが目立つ。 美味しそうに悲しそうに、彼女は幸せの幸をうっとりと眺めている。
パソコンが機能しなくなり、久しぶりにスマホで投稿しましたが、段落下げが出来ませんでした。申し訳ございません。
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元旦の願い ( No.5 ) |
- 日時: 2014/01/13 22:13
- 名前: RYO ID:qEtqoFYs
初日の出に願掛けをした。 今年こそ、、今年こそ彼女が欲しい。 それは多分、この年頃の男子高校生のごく当たり前の願望に違いない。その自信だけはあった。もっとも、誰もが抱く願望であるのだから、誰しもが叶うわけではないし、相手がいる話だ。ため息をつく。 「そして、また振られるんだ」 「そうはいっても、その相手だって、同じことを望んでいるわけだろう。可能性は結構あるんじゃないか?」 俺の中の別の俺が同時に耳元でささやく。 とはいえ、そもそも好きな子がいるわけじゃない。 昇っていく朝陽を見ながら、新年二度目のため息をつく。息は白く染まって、すぐに消えていった。 山頂の展望台は風が強く、平地と比べても一段と寒い。手にした缶コーヒーをあけて、一口すする。甘ったるさが舌にまとわりつく。途中のコンビニで買ったおにぎりを開けて、頬張る。梅肉の酸味が口の中にいろがっていく。何だって、コーヒーにおにぎりなんて組み合わせを選んだのか、良くわからない。どっちもお気に入りであるが、組み合わせとしてはあまりよくなかった。 辺りは初日の出を目当てにきた人たちでいっぱいだった。家族連れに、アマチュアらしきカメラマンに、カップルがいる。そうカップルがいる。昨日の夜は一体どう過ごしたというのか。俺と違って家族で紅白を見たわけじゃないだろうよ。初詣はこれからか? それとももう行ってきたのか? 「松本くん?」 突然呼びかけられて、振り向く。そこにはクラスメイトの上村さんがいた。ちょっと気になっている彼女だ。 「松本くんって、初日の出とか見に来るんだね。なんかクラスでもいつも独りで、物静かにいるから、あんまりこういう、人の多いところに来るイメージがなかったからなんか意外で」 彼女はどこか照れくさそうに、はにかんでいた。後ろで彼女の家族が呼ぶ声が聞こえて、「もう行くね」と彼女はきびすを返そうとする。 「あ、上村さん」 「何?」 「あけましておめでとう。今年もよろしくね」 「あ、そうだね。忘れてた。あけましておめでとう。今年もよろしくお願いします」 彼女はそうお辞儀をして、家族のもとに走っていった。 今年はなんとなく良いことがあるようなそんな予感と共に、彼女の背を見送る。 電話が鳴る。親父からだ。 「颯太か。帰りに薬局の胃散を買ってきてくれ。飲みすぎてどうも胃の調子が悪くてな」 「空気読めよ。親父」 せっかくの良い気分が一気に台無しになった。現実に引き戻された気分だ。 「何だ?」 「元日に開いている薬局があると思うか?」 新年三回目の溜め息は風に消えた。 --------------------------------------- なかなかネタが定まらなかったです。 時間は60分くらいですか。 月9を見ながら書いて、松潤が出てたので名前があっさり決まりました(笑
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