Re: 即興五語小説 ―もう一日休みが欲しいGW明け― ( No.5 ) |
- 日時: 2013/05/09 21:10
- 名前: Azu ID:MipLVKAU
屍蛙
これは、ある男が失敗した話である。
仕事に疲れた休日、雑草あふれる俺の庭。 その庭を縁側に腰掛けながら見つめていると、俺は普段見ないものを見つけた。 カエルのミイラだ。特に特徴はない……はずだった。 「やあ!こんにちは!」 「!?」 場違いな、まるで今、アニメを映しているテレビの画面から出てきたキャラクターのような声がした。 「ここ!ここだよ!」 「え?」 信じられないものを見た。 カエルのミイラがしゃべっていた。 「僕をさわれば、幸運になるよ!」 「え?」 いきなり、カエルのミイラがこんなことを言う。 「はぁ?」 変だと思ったが、まぁ触るだけならと触ってみるとカエルのミイラが腐って消えた。 「なんだったんだ……」 俺は、家の中に戻った。
それから、俺はなんとなくカエルのミイラが言ったことを思い出し宝くじを買ってみた。すると、二等が当たった。仕事は成功。これ以上ない幸運が次々と起きた。 カエルのミイラ、ありがとう。俺の人生は成功したよ。 と心の中で礼を言う。 「もう、死んでもいいかも」 「じゃあ、死ね」 どこかで声がして、俺は振り向こうと思ったが体が動かなかった。 そのまま、俺の意識は途絶えた。 そして、目が覚めたのは病室だった。 「それは病気です!」 「病気なわけないだろ!」 なんていう会話が廊下から聞こえてくる。 その声に、俺は何をしていたか思い出そうとする。 しかし、思い出せない。 素晴らしい未来があったことを、おぼろげに覚えている。 だから、退院したら未来へ走ろう。そう思う。 倒れたのは、単なる過労だろうと医者は言った。 そのまま退院し、起業してみる。 しかし、失敗した。 財布は落とすし痴漢に間違えられたりという些細なことから、 ひどいものでは会社の責任を負わされたりというさんざんな目にあった。 俺は、絶望に打ちひしがれる。 暗い路地を歩いていると…… そこに、カエルが現れた。 「そこのおじさん。幸運になりたくないかい?」 カエルが聞いてきた。過去に会ったあのカエルを思い出す。 だから信じた。 「ああ、幸運になりたい」 「すべてを捨てても?」 「今更捨てるものなんてない。」 「分かった」 といい、カエルは俺の頭の上に乗る。 そこで、俺の意識は途絶える。
男はどうなったのか、これを読んでいたみんなは興味があるだろうか? あるのなら、説明という名のエピローグをどうぞ
エピローグ
男はカエルのミイラとなっていた。 幸運なんて考えられるはずもなく、ただ人間を不幸にするだけの存在に。 そして、さえない人たちに希望を振りまき、絶望にたたき落とした。 そう、このカエルは過去に先代のカエルに触れた人間が、 最高と最低の感情の揺れ幅(絶望)を利用してこのカエルが続いていくのだ。 簡単に言うと、呪いのカエルであり男は触れてしまったことが間違いだったのだ。
――完――
夕闇に包まれた学校の図書室。 俺は、読んでいた短編小説の本を閉じる。 俺は、この本を生かそうとした。 この話の教訓は、甘い話には騙されるな。 その一言に尽きる。甘い話には裏がある。美しいバラには棘がある。 しかし、もう遅かった。なぜなら―― オレンジ色の図書室の中で、何かが朽ち果てる音が響いた――――
ホントウノ『オワリ』
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