Re: 即興三語小説 ―突然、気持ち悪くなって血の気が引いてました― ( No.3 ) |
- 日時: 2012/09/16 10:20
- 名前: マルメガネ ID:OzG7TydU
小型の携帯コンロにかけた小さな鍋の中で湯が煮えたぎっている。 とうの昔に賞味期限が切れた非常用のアルファー食にその湯を注ぎ、鍋に残った湯にレトルトパックを放り込み温める。 某山中に隕石雨が降り注いだ、隕鉄の夜、と呼ばれる日からすでに何か月も経っている。 隕石雨が降り注いだ山中には大小様々なクレーターが開き、それはさながら爆撃を受けたような様相を呈している。 取るものもとりあえず、科学調査隊が結成され、その一員として私は派遣された。 「賞味期限は美味しく食べられる期限だから、きっと食べても死にません」 某山中に近い、芒野と呼ばれる芒ばかりが生い茂っている野原に設営された仮設テントに届けられた食料はどれも賞味期限が切れたものばかりであり、届けた係員がそう告げたことを思い出す。 いくら予算がないとはいえ、せめてそれはないだろう、という不満が出たことも事実だが、ぜいたくは言ってはいられない。空腹には勝てない。 出来上がった物を食べ終わり、フィールド調査した結果をまとめる。 「見事な結晶構造ですね」 降り注いだ隕石の欠片を分析していた学者に話しかける。 「ウィドマンシュテッテン構造の結晶組織です。この一帯に降り注いだ隕石雨はみな隕鉄ですよ」 サンプル分析をしている学者が言った。 隕石が落下し、衝突する確率は高額宝くじに当選するよりも高い、ともその学者は言っていた。 数百万年、数千万年、私たちからすれば恐ろしく気の遠くなるような時間をかけ、冷えながらはるか宇宙の彼方から飛んできたそれらに思いを馳せている私がいた。
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