発熱と痛みと大病院 ( No.3 ) |
- 日時: 2012/07/02 00:50
- 名前: マルメガネ ID:wYmAkXJc
発熱してぐったりしているタツキをシンが肩を貸し、色町の診療所に向かう。 カフェスタジオ『アロジムロジ』から色町の診療所まで三つ先の街区の外れにあり、そう遠くはない。 「悪いな。突然で」 タツキが自分の腕の傷の痛みと、自由と引き換えに失い義足となったシンの左足がきしんでいるのを気にしながら言った。 「なに。お互い様さ」 タツキに肩を貸したシンがそう答える。 こじんまりした診療所には医師が二人いて、そのうちの一人は往診に出かけているのが常であり、風習になっている。 待合室もそのためかかなり混みあっていることがあるが、タツキが行った時は珍しく空いていた。 「切りつけられて救急病院で手当てをしてもらった、ということなんだが、それからどれくらい経つかね?」 タツキの診察をしたタオ医師が、赤黒く腫れ上がっている縫合された傷口を見て聞いた。 「一週間、いや二週間ぐらいですかね」 と、タツキがタオ医師に答えた。 「それはよくないね。傷口の状態と発熱しているところから、大病院で検査してもらったほうがいい。感染症の疑いがあるけどこちらでは正確に検査ができないからね」 タオ医師がそう言って、何かしらの痛い注射を打ち、赤黒く腫れ上がっている縫合された傷口に新しいガーゼを当ててテープで留め、診断書と紹介状を書いてタツキに渡した。 手渡された診断書と紹介状を持って大病院に行くと、タツキがあっけにとられるまでもなくすぐさま検査室に行くように指示がありそこで検査を受けた。 結果は細菌に感染し傷口が化膿していた。その後の処置もあって、熱が下がったのは三日のちのことだった。 その間、タツキは何もすることもできず、仕事を休まざるを得なかった。
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