決戦 ( No.3 ) |
- 日時: 2016/10/23 20:40
- 名前: みんけあ ID:Zw3k53lY
決戦
▲必須お題:「城塞」「工房」「日曜日」 ▲任意縛り:王様が裸で殺される なミステリー小説にする
日曜日の昼下がり、たまに吹き上がる風が清々しい秋晴れ、洗濯物ならすぐに乾くだろう。どこに行くにも最高の行楽日和になるだろう。結婚を申し込むのにも最高の日になるだろう。 乾燥した大地に対面し、陣取る女王様と王様。雌雄を決する最後の戦いに双方の陣営は固唾を呑んでいた。 不毛な戦いが始まろうとしていた。
女王様。沈着冷静、冷酷無比、その美貌から、氷の智将、スノーホワイト、クールビューティーなどと呼ばれている。 王様。一騎当千で皆の信頼も厚く、親しみを込めて女王の玩具、裸の王様、脳筋馬鹿、水虫などと呼ばれている。 女王様と王様、二人は幼馴染だった。 「私が勝ったら、私の婿になりなさい」 「俺が勝ったら、今後一切俺に構わないでくれ」 「いいわ。私が負けたら、貴方を無傷で殺して、工房で綺麗な剥製にして、裸のまま毎日蹂躙して一生大事にしてあげる。キャッ♪」 「納得してないですよね? 言っている事に照れる要素が全くありませんからっ。怖いって、それ俺が勝つ意味があります? お題無理矢理使ってません?」
『全ては女王の為に! 全ては女王の為に!』 決戦の時間が近づき、女王の陣営からの掛け声が空気を震わす。 『……』 「え? 君達。掛け声とかないの? というか勝つ気あるの? しかもこっちの陣営から向こうの掛け声に賛同したのが聞こえたけど気のせい?」 「こっちが勝った所で別にね。向こうが勝った方が面白くね?」 「あんな綺麗な女王様の好意を嫌がる意味がわからないよね?」 「どうする? 痛いの嫌だし、このまま王様裸にして差し出す?」 「まあ、こんなろくでなしの王様でも俺達の為に頑張ってくれたからな」 「そうだね」 「今回だけだぞ、この糞が」 「あはは、俺の扱い酷くない? 何だか目から汗が止まんないや」 「うわー、王様泣いてるし、引くわー」 「無駄話はそれぐらいにして、そろそろ決着付けない?」 「う、うん」 王様には秘策があった。ポケットに入れてある光り物を再度服の上から触り確かめる。 「目指すは敵将、女王ただ一人。他は蹴散らせ、全軍我に続け!」 双方の雄叫びがぶつかり合い、大地が震える。 一騎当千、馬に乗った王様を先頭にVの字で進撃する。対する女王は二枚の壁で守られた城塞で待ち構える。 「一点集中、壁を崩せ!」
「どうやら貴方だけのようね。ここまで辿り着いたのは流石、私の愛する人と言った所かしら」 王様以外全滅し、王様は無傷で捕らえられていた。 「最後は私の手で終わらせてあげる」 「ま、待ってくれ、せめてちゃんとプロポーズさせてくれ、こんな決着で結婚を決めたくないんだ。実は勝っても負けても結婚を申し込もうとしていたんだ。指輪を用意してある」 あら、いつもなら表情に出ない女王が頬を染めていた。 「いいわ、離しなさい」 ポケットから王様は小箱を出し、女王の前で片膝を着き、箱を開ける。女王の目を真っ直ぐ見据え、 「貴女を一目見た時から、私は心を奪われ、貴女に全てを捧げようと心に誓いました。永久に愛すると皆の前で誓います。どうか受け取って下さい」 女王は目に涙を溜め、 「ふつつかものですが、よろしくお願いします」 王様は指輪を手に取り、女王の左手の薬指に指輪を、 「隙あり!」 女王の頭の白い鉢巻を王様は奪った。 「やったー! ヒャッホー! 赤組の勝利だ! ウヒー! あれ?」 王様の小躍りも束の間、 『うわー、やりやがった。最低。鬼畜。この外道が、カスが、下衆が、クズがろくでなし。水虫。糞虫…etc』 全校生徒にボロクソに言われ、王様の心は裸にされて殺されていた。と言っても過言ではない。 鉢巻を返し、自分の鉢巻と指輪を差し出し、心からの謝罪と改めてプロポーズをする王様。 ここまで全て計算通りと、女王は冷徹な微笑みで承諾した。
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