Re: 即興三語小説 ―「秋風」「盆栽」「保存」― ( No.3 ) |
- 日時: 2015/09/04 21:37
- 名前: お ID:M8VvVqD2
二本目、やはり粗筋です。
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ブレーン?ストーミング ・落葉 ・斜陽 ・落ち目、衰え ・カリスマの魅力の衰え ・衰えに抗う ・新旧対立、新旧交代 ・引退勧告 ・追い落とし、策謀、 ・嫉妬 ・見栄 ・円満な引退 ・第二の人生のスタート ・諦めたふりをして、くすぶり続ける情熱 ・才能を保存しておく魔法/アイテム ・他人の才能を奪い保存する ・カリスマコレクター ・老後の趣味 ・老人の手慰み ・盆の上の宇宙 ・盆上宇宙の世界樹 ・コスモパワーに目覚める(笑) ・盆栽サークル ・引退した元カリスマ達の集まり ・衰えたりといえどスペシャリスト揃い ・足りないのは希望と発想力? ・虫の声 ・虫との対話、虫の知らせ、危機の兆候 ・気温が下がる ・乾燥し始める ・食欲、読書、夜長、恋、紅葉、観光、 ・秋雨前線、台風 ・波乱 ・実り、結実、収穫、成果が出る ・苦労が報われる ・センチメンタル ・アンニュイ ・冬の到来の予感 ・質量保存 ・エネルギー転換 ・夏の終わり ・蝉の声が消えていく ・夏休み最終盤、始業式、二学期の始まり ・夏の間に変わったこと ・成長したこと、しなかったとこ ・宿題の残り ・夏の思い出 ・人生のやり残した宿題 ・涙もろくなる、感情的になる ・遺品 ・想定されない(偶然の)/意図されたメッセージ ・盆栽を棲処にするミニマムなナニか ・絶滅に追いやられかけたナニか ・可能な限りあらゆる交配を繰り返す ・惑星一つ飲み込む勢いで適合遺伝子を探す ・倦怠期 ・別れ話 ・別れ話のもつれ ・ストーキング ・離別
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ブレーン?アレンジメント ・夏の終わりと共に訪れる離別 ・若者のために立ち上がる老人達 ・かつてのカリスマ達 ・ある日、盆栽に住み着いたナニか ・ナニかを追うナニか ・濡れ衣? それとも… ・近所の爺さんの遺品の盆栽 ・自称魔法使いの爺さん ・爺さんの語る「与太話し」 ・黒い捕食者 ・他者の幸運を糧に生きるモノたち ・宿主を不幸にしないため一定期間で余所に移る ・爺さんの秘密道具 ・自称爺さんの孫という爺さんの妹 ・そして僕は、魔法使いの弟子になった。
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プロット 序:ウチの盆栽に小人さんが住み着いた!? insert ・近所の爺さんの遺品の盆栽に小人が住み着く → 逃げられる、相手にされない ・猫に襲われそうなところを助ける → 親しくなる turning-point1 ・怪しい男に声をかけられる
破:イヤなヤツ! moving-action ・怪しい男の話を小人にする → 黙っていなくなる turning-point2 ・再び男に遭う
急:才能の開花、そして魔法使いの弟子になる best-peak ・心を覗かれたようなイヤな感じ → 小人さんの身に危険の迫ることを感じる ・爺さんちへ忍び込む → 爺さんの孫を自称する女性に会う → 魔法のスティックを得る ・女性の手引きで小人さんの危機に駆けつける → 目覚めた魔法の才覚で敵を倒す epilogue ・魔法使いの弟子となる → 小人さんとパートナーになる
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粗筋
少年がそのモノに気付いたのは、月の明るい夜。暦の上ではとっくに秋で、けれど昼間には夏の名残りの蝉が鳴く。夜になれば秋虫が鳴き、ひんやりとした秋風が吹く。 庭を眺めながら、縁側に置いたおにぎりに手を伸ばそうとして、ぱっちり目が合う。 小さな子供の掌くらいのソレ。身体があって手足が生え、ちっちゃな頭が乗る。それも、美少女の。 「小人さん?」 声を掛けると、ハッと気付いて一目散に逃げていく。「待って」なんて言う暇もない。月皓りを避けて暗がりの中へ。それでも、逃げて行く先はばっちり見えた。 それから何度か少年は小人の少女を見掛ける。相変わらず気付いた瞬間に逃げられてしまって、言葉を交わす機会を与えては貰えなかったが。 縁側の隅に、一つだけ盆栽の鉢がある。 近所に住む老人が亡くなったのが数日前。遺品の中からこの盆栽が少年の元に届いたのは、老人の妹という人物が少年に届けて欲しいと言ったからだそうだ。少年がよく老人を訪ねて話を聞いていたことを、何かで知ったのだろう。それとしても、十代の少年に盆栽という選択はどんなものだろうか? その盆栽の樹の根元に小さな握り拳くらいのドアが付いていることに気付いたのは、あの月の夜の翌日のことだった。不思議なことにそのドア、少年以外には視えないらしい。 猫の鳴き声を聞いたのは、それから数日後のこと。少年宅に飼われる猫は気侭でふてぶてしく、時々帰ってきて餌をねだる以外はどこにいるのか知れたものではない。 少年がキャットフードの用意をしていると、 「助けて!」 女の子の切羽詰まった声。放り出して声の方へ向かえば、小人さんが猫に押さえつけられている。 「ちょっと、笑ってないで助けてよ」 「ごめん、ごめん」 少年は猫の首根っこをひっ捕まえて持ち上げる。 「レディはもっと丁重に扱うものだぞ」 と、餌のある方へ。 「ありがとう」 はにかんだ少女の礼に、 「どういたしまして」 朗らかに笑って返す少年だった。 ある日、道を歩いていると見知らぬ男に声を掛けられる。見るからに怪しい男。その場で警察に通報しようとしたら、警告めいた言葉を残して去って行く。曰く、「幸運をもたらす座敷童ばかりじゃない。座敷童に見せかけた疫病神に気を付けろ」 あまりの怪しさ、中途半端に格好を付けた素振りの滑稽さが印象的で、帰ってから小人さんに話す。あの一件から、普通に話くらいはしてくれるようになっていた。 知り得たのは、小人さんたちが流浪の民であること。連絡を取りあいながら、基本は一人であること。人とは関わりを持たないようにしているということ。冬になる前には、ここを出て行かないといけないということ。少年のことを嫌っていたわけではないということ。 少年の話を聞く小人さんはいつも好奇心に瞳を輝かせ愉しそうにしている。ところが今日は、 「そう」 素っ気ない返事。妙な胸騒ぎを覚えながらも、その場は分かれるしかなかった。 翌朝、少年は盆栽の樹の幹にドアがなくなっていることに気付く。 「まだ何ヶ月も先だって言ってたのに」 ひどく落胆する少年。 そこに近付く影は、あの怪しい人物。 「正体がばれたから逃げ出したのだ。言ったろう、アレは福をもたらすモノではない。取り憑いた者の持つ幸運を喰らい、幸福を啜って生きる魔性のモノ。アレが去った後には全ての運を奪われ破滅し、生命すら投げ出した亡骸だけが残る。お前が運が良かったのだ。そうなる前に私に会った」 「そんなこと!」 「なら、なぜ逃げた。何も言わずに姿を消したのは疚しいからだ。違うか」 そんなことはない! 心の内で叫ぶも声になって出ない。男の言葉に呑まれる。男の放つ雰囲気、男の眼に引き寄せられる。まるで心の内までを見透かされ、探られるように。 その不快感に、身体ごと捻って目を逸らす。 「もはやお前には関係のないこと。忘れてしまうがいい」 立ち去る男。釈然とせず立ち尽くす少年。 心掻き乱す厭な予感。拭いきれない不安。どうしたら…… ふと思い出すのは、あの老人の言葉。「誰にも相談できないような困ったことが起こったら、ワシを頼れ。誰にも分からないようにこっそりと、そして確実に問題を解決してやろう。何しろワシは、高名な魔法使いじゃからな」 完全に信じていたわけじゃない、けれど本当だったら面白いな、いいのになと思って聞いていた老人の話。魔法を使った数々の冒険。巨大な竜と戦い、神にも匹敵する魔王との死闘、わくわくする昔語り。それは全て自分の体験だという。自分は魔法使いなのだという。 少年の老人の家へ走る。今どうなっているのか、誰かいるのか、そんなことは考えていない。ただ走る。そこに答えがあると信じて。 老人の家に人の気配はない。玄関のと二手を掛けると、鍵はかかっていない。悪いとは思っても、止まるものではない。何を探しているのかも分からず、ただ、家の中を見て回る。まるで、探している物の方から呼びかけられると信じているように。 「何をしている」 声を掛けられたのは、よく話を聞かせてくれた、縁側のある居間に入った時だった。人がいるとは思っていなかったから、飛び上がるほどに驚き、咄嗟にどうしていいのか分からない。怒られるのか、警察に突き出されるのか、そんなことを思った。 「探し物を」 それだけ言うのが精一杯だった。 「見付かったのか、その探し物は」 そこに立っていたのは若い女性。すらりと長身で、長い黒髪を自然に垂らしている。 「いえ、まだ」 「見付かりそうか。もし見付けられないのなら、君は不法侵入の罪に問われることになる」 いかにも可笑しげに口元を歪める。その嗜虐的な表情が美しいと思った。 と、心の中に響く音……なのか、声なのか。じんじんと胸を打つ。温かい。まるであのお爺さんに語り掛けられているように。心を委ねれば身体が導かれて動く。 「あった」 「おめでとう。君は犯罪者になることを免れた。間違いなく、祖父の友人のようだな。それは祖父が友人になった者によく渡していたものだ。杖ほどの威力はないが、簡単な魔法を使う時の補助になる、魔法のスティックだ。使い方を誤らぬよう心して使うが良い」 それは二十センチくらいの、何の変哲もない木の棒。いえば、タクトに似ている。 「使い方は?」 「棒に聞け」 言ったっきり歩き去ろうとする女性。老人の孫娘と言ったか。 「どうした、付いてこないのか。祖父の晩年の相手をしてくれた礼だ。今君が向かうべき場所へ案内してやろう。特別だぞ。普段の私はこんなに親切じゃない」 橋の袂から土手を越えれば河原がある。土手沿いに川上に上がっていくと、川幅は狭まり、河原もなくなって、山の中へ入っていく。しばらく行くと、不思議な窪み。斜面にぽこりと空くが、奥に続く深みはない。ただの窪み。だのに、その先に永遠の闇を見るかのような錯覚に陥る。 そこに例の男がいる。今まさに、地面に倒れる小人さんを掴み取ろうと、 「止めろ」 叫ぶ少年の意志はタクトを通じて迸り、男の手元で弾ける。 「その子に手を触れるな」 不敵に嗤う男。 「来るな。来るんじゃない」 少年の近付こうとするのを制止する小人さん。 「前にも君を助けた。また、助けるよ」 「馬鹿。お前んところの飼い猫じゃないんだ。こいつは本当にヤバいヤツだ。殺されてしまう」 再び男が小人さんを掴もうとするのに、少年が念を飛ばす。しかし、今度はわけもなく弾かれた。 「こいつは人類にとって害をなす害虫だ。私はそれを駆除するだけのこと」 「ごめん。君を騙してた。コイツの言うことは本当なんだ。あたしは、あたしたちはお前たち人間の運を糧として生きている。他に命をつなぐ方法がないんだ」 「そう」 「だから、あたしのことなんて放っといて」 「でも君は、先に出発の日を決めたいた。僕ともなるべく接触しないようにしていた。それはなぜだい。君の種族がどうかしらない。種の保存を図るために人を不幸にするのかも知れない。でも、君は違う。だって、僕は君といてとても愉しかった。僕は君から幸せを貰ったんだよ。君が僕の幸運を少しばかり使ったとしても、それは君から貰った物なんだよ。僕はちっとも、不幸になっていない。君に遭う前より、幸せな気分なんだ」 「馬鹿、そんな恥ずかしいこと」 「僕は、僕のこの幸福感のために、君を取り返す!」 けれど少年の攻撃は男に通じない。どれだけ気持ちを込めても、全て弾き返されてしまう。男が動いた時にも、少年はまるで反応も出来なかった。気付いた時には腹に強烈な痛み。身体が半分川の水に浸っている。 「やめて。止めてくれ。そいつは関係ない。あたしはどうなってもいいから、そいつのことは」 「そうはいかないな。ガキのくせに私に楯突こうなんて、将来のためにもお灸を据えておかないと」 男が足を振り上げ、勢い付けて振り下ろす。 もう駄目かと思いながらも諦めきれず、せめて身体を丸めて耐える姿勢を取る。が、痛みはこない。のろのろと状態を起こすと、唐人の孫娘という女性が、男を派手に蹴り飛ばしていた。 「勘違いするな。お前を助けたわけじゃない。ああいう手合いは生理的に受け付けんのだ」 と平然と言う。ふと溜息を吐き、 「使い方は棒に聞けと言ったろう」 掃き捨てるように言うと、私はいつからこんなに甘くなったんだと独りごちる女性。 タクトに意識を集中する。気配を感じる。歓迎されるような、すこし拗ねているような。心の内で謝り、そして、改めてよろしくと挨拶を交わす。 男が立ち上がる。怒りに震え、平静をかなぐり捨てて。 咆哮を挙げて迫る野獣。 けれど少年は怖れることなく、焦りもなく、タクトの伝える気配のままに心を集中させる。 「凍えろ」 少年の唇から漏れた言葉は、少年のものであり、そうでないモノの発する声。 男の動きが鈍り、男を中心にして急激に温度が下がる。 「雪?」 小人さんの掌にくっきり形の見える氷の結晶。男の周囲一メートルほどだけに、雪が舞う。 「なるほど、お前は私とは逆向きのサディストのようだな」 どこから嬉しそうな女性の声。川底の石を一つ拾い、男に向けて投げつける。 凍り付いた男は、粉々の破片となって砕け散った。 * 「お前のさっき言ったことはただの詭弁だ。そんなことで幸運は増えん。お前の家に世界樹の枝があるだろう。それがわずかずつ幸運を呼び込んでいたのだ。その娘が糧としたのはお前の運ではなく、世界樹の集めた運だったのだよ」 「じゃあ、あそこにいる限りこの子は」 「生きるには困るまいな。ただし、所詮は枝の一本に過ぎん、限界はある」 「やっぱり、あたし旅に出るよ」 「そう短絡するな。方法はある。少年、私の弟子になれ。魔法使いになって世界の深淵に触れれば、ある程度の運をコントロールすることは可能だ。お前の頑張り次第では、その娘を、お前と同じサイズにすることもできるぞ。そうすればつがいになって子を成すことも出来る」 カッカッカ 高笑いする女魔法使い。 「そう照れるな。出来るかどうかは少年の頑張り次第だ。どうするか、今決めろ。次はないぞ」 そうして希代の女魔法使いに初めての弟子が出来た。
(。・_・)ノ
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状況設定
キャラクター 小人さん:他者の幸運を糧として生きる種族 爺さん:かつての魔法使いの大家。引退。死去。 自称爺さんの孫:爺さんの妹。偉大な魔法使い。 黒いの:小人を捕らえ売買するバイヤー。
ステージ
キー?アイテム 盆栽:世界樹的なナニか。ご都合的な御利益。 幸運をため込む作用がある 魔法のスティック:魔法の杖の簡易版 魔法の護符:幸運を呼び寄せ、邪気を寄せ付けない 術式により魔力を幸運に変換し補充する必要あり
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