Re: 即興三語小説 ―今日で最後と羽目を外して、警察の厄介になる成人式― ( No.3 ) |  
- 日時: 2015/01/18 21:06
 - 名前: マルメガネ ID:j72Wobks
 
 丸底フラスコの中で謎の化学反応が起こり、怪しげな煙と異臭が漂う。  塩とおぼしき粉末をその怪しい謎の化学反応を起こしているフラスコにティー教授は投げ入れた。  とたんにその怪しい反応は収まり、代わりにストライプ模様の結晶ができはじめた。  ティー教授の着ている白衣は、薄汚れて実験のたびに起こる謎の破裂で飛び散った薬品のシミがたくさんマーブルのように散らばっている。 「純粋な結晶とはまだ程遠いな」  彼はそう呟く。  彼は次世代の電子回路の半導体を作る研究をしている。  怪しげな煙と異臭を撒き散らしていた謎の化学反応を起こしていた丸底フラスコは、その象徴であり、中身はこれまで投げ込まれた試供体と呼ばれる様々な物質の溶液であった。  それが塩を加えることにより変化し、ストライプ模様の結晶体となったのである。  ティー教授は出来上がったそのストライプ結晶体を詳しく分析し始めた。  構造からそれらに備わる特性などなど、多岐にわたり半導体として有効なものとして扱えるかどうかということであるのだ。  出来上がったその結晶体は数日に渡る分析の結果、半導体としての特性が認められたが、実用には程遠いものだった。  落胆することもなく、淡々と実験を繰り返し、そしてその結果などのレポートなどが蓄積されていく。  それらのデーターをもとに解析を行い、加える薬品を変えながら淡々と実験は続けられていくのだ。  ある日そうしたなか、投げ入れた塩とはまったく別の物質を誤って加えてしまったティー教授はストライプ模様の結晶とはまったく異なる結晶体になることを突き止めた。  しかし、それは半導体ではなくて不導体の純然たる塩の結晶だった。  そしていつもと異なる結晶体とこれまで生成した結晶体を坩堝に入れて溶かし、再度結晶化させてみると、半導体素子に近しい存在となることが判明して、ティー教授は喜んだ。  しかし、あまりにも喜びすぎて強烈な酸の入ったビーカーを倒してしまい、これまでの資料が焼け焦げ、触媒となるものも存在していたために火災になってしまった。  消すまでもなく研究室から飛び出すティー教授。  そしてその火災がもとで、彼は何もかも失い、二度とストライプ模様の結晶体も半導体に近しい存在になった新結晶体も作り出せることはできなくなってしまったのだった。
   
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