Re: 即興三語小説 ―GWはありましたか?― ( No.3 ) |
- 日時: 2013/05/02 20:59
- 名前: Azu ID:smrX33.2
お題小説初めてですし、時間制限もオーバー(75分)し、内容むちゃくちゃかもしれません。
ドリーム・タイム・デット・トラベル
俺は、走っている。 暗くなった道、その横で揺れる青柳。 「こっちにいるぞ!」 後ろから、怒号と銃声が聞こえた。 街中で発砲?! ありえない、がそれ以上に俺の命が危ないことを確信した。 だから、このままさらに加速する。足には自信があった。 追いつかれたら殺される。 その核心だけを持って俺の知らない街を疾走していた。 目の前に、ちょうどいい小屋を見つける。 中に入る。真っ暗で、じめじめしていて気持ち悪いがこの際なりふり構っていられない。 十分ぐらいたっただろうか。 「チッ どうやら見逃したようだな」 という話し声が聞こえ、足音が遠ざかる。 小屋の壁にもたれかかりながら安堵の息を漏らしつつ思わずつぶやく 「なんで、なんで俺が追われているのだろうか……」 しかし考えても全く分からない。 なんとなく、ズボンのポケットを探ってみると…… 先代から受け継がれてきた、俺が子供のころからよく使う懐中時計があった。古ぼけた、何の変哲もない懐中時計。 その、懐中時計の針がありえない速度で巻き戻っていく。 驚いて見つめていると、時計が白い光に包まれ…… 俺の意識はそこで途絶えた。
熱風を感じ、目を覚ます。 そこには、ありえない光景が広がっていた。 地獄の光景だった。 あたり一面火の海。川は赤く染まり、防災ずきんをかぶった子供たちが裸足で必死に走り、川に飛び込んでいく。 火の手はどんどん広がっていき、すべてものを焼き尽くす。 俺は、また訳も分からないまま命の危険にさらされた。 「なんなんだよ! くそっ」 毒づきながら、生き延びる方法を考える。 このまま逃げるか? いやだめだ。追われているわけでもないし火災なら逃げても意味はないだろう。 目の前の川に飛び込むのは? それで、いいだろう。 自問自答をして、川に飛び込む。着水する瞬間、俺は白い光に包まれる。 今度は!なんなんだよ! またしても、わけのわからぬ状態で意識は途絶える。
気が付くと、俺は戦闘機に乗っていた。 しかも、体の自由がきかない。 俺が、他人の視界から見ているような、そんな不快感があった。 その戦闘機は、船に向かって攻撃する。 戦争なのか? 思っているそばから激しい戦闘が続く。 機銃のリズミカルな音が鳴り響き、爆発音がどこかしこから聞こえる。 やがて……戦闘機が船に突っ込む。 おいおいおい!死ぬ!死ぬって! と思ったら白い光に包まれる。 なんなんだよ!くそっ!
そのあと、俺は次々と危険な環境に追われた。 狙撃されたり、津波にあったりだ。 しかし、死ぬ! と思った瞬間に白い光に包まれ、気を失うのだ。 しかも、だんだんと包まれるまでの時間が早くなっていく。 目が覚めた瞬間俺にいきなり男が刀で切りかかってくる。 もうむちゃくちゃだ!などと思ったら白い光に包まれていく。 そしてまた目が覚める。 そこは、何もない部屋だった。 その真ん中に、少女が立っている。 少女が話しかけてきた。 「おもしろかった? 怖かった? ちなみにね、今日見た景色はすべて本当にあったことだよ。また、来てね?」 と、少女が言い終わると同時に気を失う。
最後に気が付いたのは、自室のベッドの上だった。 何の変哲のない、本やゲームが置いてある見慣れた俺の部屋。 「夢……だったのか?」
起きた俺は、懐中時計を手に取る。 懐中時計は鈍く白い光を放っていた。 そして、俺の背中に、冷たい鉄が刺される。 血が流れていき、体温が低下していく。 俺は、まだまだ死ねない! 死にたくない。心からそう思った。 そしたら、夢で見た真っ白い光に包まれ……
夢の中で最後に来た真っ白な部屋に来た。 少女がこちらを見る。 「あれ?こっちに来ちゃったんだ。ここに来るって、すごいことなのよ?」 と笑う。 「すごい……?」 「そう、ここは『懐中の部屋』 初めて来た人限定で、懐中時計の秘密を語っちゃおうってずっと待ってたんだけど百年近く誰も来なくて、君が初めての来訪者」 「懐中時計?」 「あら、知らないで来たの?まぁ、それもあり得るか。」 「なーんだ、つまんないの。じゃあ、そのまま返しちゃお。真相を知りたくなったらまた来てね」 「え?」 俺は、気を失った。
目が覚める。俺の部屋のベッドだ。体は健康そのもの。刺されたことが嘘のように。 刺した男はいないか目回してみるが、いなかった。 終わった。そう感じた。懐中時計は引き出しの奥深くに押し込んだ。
この経験の後、俺は懐中時計の真相を調べてみることにした。 しかし、そんなものあるわけもなかった。 だから、夢の中でまたあの少女に会おう。 夜、夢の中で少女に会う。 「また来たってことは、懐中時計の秘密を知りたいってこと?」 「ああ」 「じゃあ、話すね」 と、少女は説明を始めた。 少女の話をまとめると。こんな内容だった。 呪われた懐中時計で、所持者が必ず何かしら危険な目にあい殺される。 そして使用者の死ぬ直前の記憶を、懐中時計が次の使用者に見せる。 その記憶を見終わったら、使用者が殺される。そのループだ。 俺は、強くいきたいと願ったから助かったそうだが、ほかの使用者は 仕方ないと諦めてしまったらしい。 少女の長い話が終わり、俺は、白い光に包まれる。 俺は、それから何もなかった。 懐中時計は、もう出さない。 そう心に誓い、過去の犠牲者に追悼をしつつ、 また、新たな日常を歩いて行こう。 この経験を――役立つときがあるかはわからないが――役立てながら。
fin
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