Re: 即興三語小説 ―梅雨明けにはまだ時間がある― ( No.2 ) |
- 日時: 2012/07/02 00:03
- 名前: 高平 由考 ID:v43Cf6Cg
「熱が何度あろうが出社しろ」という、最近の世間の風習というか、常識と言うか。 何がどうしたら、こんな事が常識としてまかり通ってしまうのだろう? 「……あー」 四十度近い発熱を今朝確認し、会社に今日休む電話を入れた所、冒頭の言葉をそっくりそのまま言われた。 確かに自己管理がなってなかった所為だと言われればそれまでだけど、何故病気になったというのに休む事が出来ないのだろうか?それとも何だ? 風邪如きで休む俺の方がおかしいと言うのだろうか? 「っあー、ったく」 考えたらまた、腹の底からふつふつと苛立ちが襲ってきた。そもそも、俺はなりたかったのはこんな奴隷なんかじゃない。社会の、いや、世界の役に立てる。そんな人になる為に今の会社に入った筈なのに。 入ってみたら何だ。怪我する事は日常茶飯事だし、休日出勤だって当たり前。夜中に呼び出される事もあるし、酷い時には休憩無しで十時間ぶっ続けで働き通しだ。 これが自由と引き換えにしてまで、俺がやりたかった事だったのか? 「――んな訳ねーだろ」 ゆるく首を振ると、電源を落としていた携帯を手に取りONにして、会社に電話を掛ける。 「……あ、もしもし。俺です。はい? 今からでも良いから来いって? あー、それなんですけど……」 俺は意を決して、電話の向こう側にいる相手に告げる。
「俺、もうヒーロー止めますんで。怪物の相手はそっちでどうにかしてください。じゃ」
相手が文句を言ってくる前に、素早く電話を切って、また電源を落とす。 何だろう。今まで心の中にあったもやもやした物が、不思議とすーっと綺麗に無くなった。 「――やっぱり、ヒーローとは言え無理はするモンじゃないな」 なんて、他人事みたいに言ったりしてみたり。
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