Re: 三語は、あなたにとって脳卒中の危険性を高めます。 ( No.2 ) |
- 日時: 2011/07/23 23:22
- 名前: 楠山歳幸 ID:hrYhWGlo
タイトル ; 湯起請
腕を汚す日焼けのはがれた黒皮を見ると、私は遠い昔にあったであろう記憶が脳裏にうかんでしまう。
中世日本らしき風景、千木高く神の社が建つ前に薄汚れた襤褸の着物を着た見物の男女が円陣を組むように私たちを囲む。前には武士らしき者共が一列に並び私を見つめる。円陣の真ん中には私と神官らしき者、その前には火をくべた大きな黒い鍋。 太陽が白く瞬きする真夏の真昼。薪はパチパチと音を立て、時々破裂音を立てた。水はやがて蚊帳のような水泡を自身の中で躍らせ、やがて大きな球となり私を睨む。 見物人の子供たちが無邪気に大声で笑っている中、武士の一人が、皮肉な笑みで私に命令する。 「神明にかけてその湯に腕を浸けよ」 拒むことはできない。拒めば首を掻かれるだろう。 私は一介の武士のようだった。人つきあいのよくわからない私を良く思わない誰かが、どうやら罪を作り地頭に讒言したらしい。 「誠、そなたに嘘偽りなければ、火傷無く、無実は証明されるじゃろう」 「不浄滅却四肢切断無希望菩薩」 私は混乱した頭で訳の分からない経を唱えた。 「えい」 煮えたぎる湯の中、怒涛の刺激が腕を走る。
この記憶を呼び起こすのは誰か。幾百年経ってもなお、私の一族の腕に仄かな光が食らいつく。
失礼しました。
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