Re: 即興三語小説 ―今年も残すところ11ヶ月― ( No.2 ) |
- 日時: 2014/02/02 18:07
- 名前: マルメガネ ID:8JhQYwJk
結末
ケイ国とアール国の間で勃発した一連の紛争は拡大し、全面戦争へと発展した。 戦況はアール国の圧倒的優位になり、事を打開するためにケイ国は密かに研究を進めて国際社会に隠していた秘匿兵器をミサイルに搭載し、アール国沿岸部の主要都市に向けて発射した。 アール国はそれを察知し、迎撃ミサイルを発射してケイ国のミサイルを撃墜爆破した。そして報復としてケイ国に対して三七五六四作戦が発動し、ケイ国のミサイル基地に向けて報復ミサイルが発射された。 アール国の沿岸部主要都市は守られたが、迎撃撃墜作戦から一か月が過ぎようとした頃、沿岸主要都市周辺にウィルス性の質の悪い病気が発生。 患者はすべてインフルエンザのような症状を訴え、手を施すまでもなく感染が広がり、大変な事態へと発展した。 海老のように背を丸めて咳き込む患者。嘔吐と下痢を繰り返し、やがて衰弱死する者も出た。 「ずどーんだ。ずどーんに違いない」 一般市民はそう口々に言う。しかし、撃墜爆破されたケイ国のミサイルに搭載された秘匿兵器がウィルス兵器という確証は、報道管制等で秘密が封じられ、まったくと言っていいほど詳細が不明でわからずじまい。 アール国に報復ミサイルを撃ち込まれたケイ国も同様だった。 ミサイル攻撃を受けて一か月後に、アール国同様に謎の患者が多発しはじめ、枯野に火がつけられたがごとく蔓延しはじめ、次々と人が倒れてゆく。 その事実はケイ国では秘密にされたが、あまりの患者発生率に戦争どころではなくなってきた。 開戦から半年が瞬く間に過ぎた頃、両陣営は蔓延した患者の対応に迫られ、困窮の極みの中に引きこまれていた。 そして開戦から1年後に停戦調停がなされ、事実上終戦を迎えたが、両国は立ち直る気力さえも無くしていた。 アール国沿岸部に向けて発射されたミサイルにウィルス兵器が搭載されていたことが公に公開されたのは、終戦から三十四年後のことだった。 ケイ国の場合は、ミサイル基地が報復ミサイル攻撃を受けた際に、たまたまウィルス兵器を搭載したミサイルが誤爆したことによる感染であった。 それらの真実が全て解き明かされたのは、終戦から一世紀以上のちのことだった。 その間に両国は革命が起こったり、政変があって全く別の国へとなっていた。
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