Re: 即興五語小説 ―もう一日休みが欲しいGW明け― ( No.2 ) |
- 日時: 2013/05/07 02:19
- 名前: 星野日 ID:6iPjUQoI
眼を覚ますと、曇りガラスがオレンジ色に光っていた。時計を確認し、もう午後三時なのだとわかった。布団から這い出す。 立体テレビの電源を入れると、画面から出てきたアナウンサーが今日起きたいろいろな出来事を報道していた。 『さて皆さんは、ゴールデンウィークをどのように過ごされましたか』 と彼女が言うので、ああ、今日で連休も最後なのかと気がつく。 明日からまた仕事だと思いだし、ついでに今日が月曜日で、燃えるゴミを出しそこねたことにも気がつく。ゴミ箱から溢れているティッシュやらを拾い、スーパーの袋に無理やり詰め込んで口を縛った。金曜日の燃えるゴミの日には、出すのを忘れないようにしなければ。 腹が減ったが恒温庫にはなにも食料が残っていない。近所のハンバーガーショップで昼を兼ねた夕食をとりにでかけることにした。 ここのハンバーガーショップにはカトーさんというアルバイトがいつもいて、キラキラした笑顔で「いらっしゃいませー」と迎えてくれる。もう顔なじみの客ということで、「ども」と頭を下げると「あ、こんにちは!」と元気よく挨拶を返してくれる素敵なカトーさんだ。この笑顔に釣られて足繁く通ううち、注文も「いつものやつ」で通じるくらいの常連客になってしまった。 「カエルのミイラバーガーのAセットですね」 カトーさんが注文内容を確認する。頷いて答える。 「これ頼むの、お客さんくらいですよ」 「ハエとミミズでつくったハンバーガーの方が、気持ち悪いと思うんだけど」 「美味しいのになあ」 カトーさんは首をかしげて不思議がりながら、厨房の方に注文を届けに行ってしまった。 店内の平面テレビに、部屋でも見たアナウンサーのお姉さんが写っている。専門家を呼んで、隕石特集なるものをやっているようだ。 「五月って、時間の感覚なくなりますよね」 注文の品を持ってきたカトーさんが、向かいの席に座りテレビを見る。カエルのミイラバーガーは、カエルのミイラをパンに挟むだけなのでとても簡単に作れる。美味い早い栄養満点の完璧なファストフードなのである。 「ニュースやってましたけど、海外でも、ゴールデンウィークを採用する国が増えているそうですよ」 「へえ」 この店はいつも空いていて、暇を持て余したカトーさんがこんなふうに話しかけてくるようになった。 「実感わかないけど、外国も五月は夜が来ないんですよねえ」 テレビに映る何かの専門家が『五年前に地球に衝突した隕石により、地軸がずれ、』と、誰もが知っているような事を話している。 「もう五年かあ」 と、欠伸をしながらカトーさんが呟いた。「私も歳を取るわけだ」と。 テレビではニュースが終わり次の番組になり、中年のアナウンサーが『奥さん! それは病気です!』とツバを飛ばしてしゃべっていた。 食べ終わったトレイを渡し、レジで精算をして店を出た。相変わらず空はオレンジ色で、たぶん今週いっぱいは二十四時間ずっとこんな感じであろう。 帰宅して玄関のドアを開けると、置いてあったゴミ袋を蹴飛ばしてしまった。次の金曜日が待ち遠しい。
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