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RSSフィード [53] 即興三語小説 ―第118回―三語の秋のはじまりです
   
日時: 2011/10/02 22:27
名前: RYO ID:P1qAPswg

突然涼しくなった気がします。
秋です。
読書の秋、執筆の秋、三語の秋ですよ~
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「秋祭」「双子」 「ハコ」
▲縛り:「作中で天候が変わる」「なにかのハプニングを出す」
▲任意お題:「あえかな」「御幣」「提灯」「アシカの独り立ち」

▲投稿締切:10/9(日)23:59まで
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週土曜日の22時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

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キミハコノナカ ( No.1 )
   
日時: 2011/10/09 22:14
名前: ラトリー ID:SvDKnOMk

 昼すぎから降りだした雨は次第に強さを増し、日が沈むころには土砂降りになっていた。秋雨前線の動きが活発になっているらしく、ラジオではしきりに洪水の注意を呼びかけるアナウンスが続いている。
「秋祭り、延期かな」
 暗闇の中にキミの声がひびく。誰がここにいるのかわかってはいても、姿が見えないので不安になる。だから安心するために独り言を口にしたのだろうか。
 停電した家の中はあまりに静かで、くぐもった雨の音が厚いカーテンのように室内を包みこんでいる。誰にも邪魔されない環境に、ひそかに胸の鼓動が高まる。
「延期だろ。こんな日にやろうとしたら、川に落ちて一巻の終わりさ」
 雨音に負けないように、普段よりも張り上げた声で応える。平均年齢五十代の自称「青年団」が時代の流れに逆らって続けてきた秋祭りも、そろそろ限界に近い。毎年、会場にいる人間の大半が運営側で、御幣や提灯を振り回して必死に盛り上げようとする空回りな姿を見せつけられては、わざわざ参加しようという意欲も失せるというものだ。
 父に母、叔父に伯母、昨年祖母を亡くした祖父たちは、今ごろ会場近くのプレハブ小屋で何を思っているだろう。父の生まれ故郷で数百年続く祭りに何の関心ももたず、築百年を超える家の、つい半年前に新築された区画で留守番したいと言い出した不届きな孫に、ほとほと愛想がつきているだろうか。
「川に落ちるとか……縁起悪いよ」
「ばあちゃんはもういないんだよ。ここにいるのは僕らだけ。罰なんて当たらないさ」
「やめてよ。ねえ、やめてったら」
 キミがすり寄ってくるのがわかる。靴下で畳をこする音がやけに生々しい。ラジオから飛び出すアナウンサーの声が決まり文句を繰り返している。「気をつけてください」「くれぐれも用心してください」わかってるよ、そんなことは。
「お願い。どこにも行かないで。お願い」
「怖いんだろ。安心しなよ。ずっとここにいるから。ほら」
 差し出したキミの手を探り当て、指をからめて握りしめる。冷たい感触が伝わってくる。お互いの姿が見えない中で重ね合わせるのは、ふだん自宅で過ごしている時よりもずっと刺激的で、背徳的で、たまらない。遠いところまで行ってみたくなる。
「僕らは似た者同士だ。同じ日に生まれ、同じ部屋で過ごし、同じ世界を見ている。親しい友達なんか誰もいない。僕らは僕らとだけでつながっている。キミは僕だ。僕の中にキミを感じてごらん? 僕もキミの中に、自分を感じてみるから」
 キミの背中に手を回し、確かめようとする。抱きしめた両腕で、冷えきったキミの身体を暖めたい。そうすれば、残酷な現実を飛び越えられるような気がした。
「あったかい。お兄ちゃん、あったかいよ」
「本当に? キミの身体、まだ冷たいじゃないか」
「そんなことないよ。お兄ちゃんのおかげで、身体ぽっかぽかだよ」
 嘘だった。キミの背中も、触れあった胸元も、畳に下ろされた足も、ずっと冷たいままだった。むしろ、どんどん熱を失っていくように思えた。
 ああ、消えてしまう。去ってしまう。自宅で過ごした無数の日々と同じように、この代えがたい時間はいずれ終わってしまう。他人に見られたくないとか、キミが嫌がっているとか、そんなのは本当の理由ではない。ひとえに、自分の勇気が足りないのだ。
「やめろよ、キミ」
「どうしたの、お兄ちゃん」
「嘘なんてつくな。本当のことを言えよ。でないと――」
 キミの口に触れる。あえかな花のごとき唇に口づける。命の息吹が口を伝って、愛しい双子に流れこんでくれることを願った。今この瞬間、奇跡が起きて、彼女が本物の妹としてこの場に生まれ落ちてくれることを心より祈った。
 けれど、キミは冷たい唇のまま、またしても期待を裏切るばかりだった。

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 ぽーん、とブレーカーのある方向で気の抜けた音がして、電気がついた。
 停電が復旧したのだと知り、我に返る。目の前には大きめの人形。白い靴下には畳から削れた破片がこびりついている。唇をとがらせ、愛嬌たっぷりに微笑んでいる。
 隣には同じくらいの大きさの紙箱が置かれ、『魔女っ子キミちゃん』の名前がファンシーな文字でプリントされていた。
「ばあちゃん、ごめん……」
 部屋の上方に、去年亡くなった祖母の白黒写真がかけられている。人形よりもずっと穏やかで優しさにあふれた微笑みは、深夜の徘徊が始まる直前のものだ。
 今日みたいな大雨の夜、孫の名前を呼びながら出ていった祖母は、本気で連れ戻したいと思っていたのかもしれない。そのころからこんなことをしていた、世間とまっすぐに向き合いたくない愚かな孫――いや、僕のことを。
 ただいま、の声が聞こえる。帰ってきた。僕の裏声なんかじゃない、本物の母の声だ。いつしか雨音は去り、ラジオもニュースから音楽番組に変わっていた。
 人形を箱にしまい、障子を開ける。両親や叔父伯母祖父の姿が見える。さあ、現実に戻る時間だ。最後まで祭りの手伝いをしなかった分、せめて大人しくしていよう。
「さよなら、キミ」
 振り向かず、しばしの別れの言葉を告げた。








「うん、またね」
 わたしはきみのなまえをよんだ。

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