今週の例は、体調が整わないので、お休みです。主催者は忙殺されています。ヒューガルンデンホワイトは、白ビール。美味しいよ。岩絵具は、誤変換ってことで、使えないか?娘は、どうとでもなるんじゃない?縛りは異性にこだわるか、ほかに性を作るか、……二次元に突っ走るか、あえて三次元か、道はあるな。人類なんていないなら、それはそれでありでしょう。--------------------------------------------------------------------------------●基本ルール以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。▲お題:「岩絵具」「娘」「白ビール」▲縛り:「異性が作中の現実には登場しない(現実として登場するのは、男性のみ、もしくは女性のみであること)」▲任意お題:なし▲投稿締切:6/9(日)23:59まで ▲文字数制限:6000字以内程度▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません) しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。●その他の注意事項・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)・お題はそのままの形で本文中に使用してください。・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。●ミーティング 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。●旧・即興三語小説会場跡地 http://novelspace.bbs.fc2.com/ TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。--------------------------------------------------------------------------------○過去にあった縛り・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)・舞台(季節、月面都市など)・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)------------------------------------------------------------------------------
公衆トイレに入り、便器に腰を下ろすと、目の前のドアの一部が濡れていた。水? いいえケフィアです。みたいな。いやいや、なんだこれは、ありえないぞ。と混乱する。それはなんて言うか、ケフィア、えっとつまり、ヨーグルトチックな色合いで、ウルルとドロロみたいな感じの質感で。白い……あ、いやうん。岩絵の具で白(びゃく)というと、粉々にすりつぶした顔料の粒度が一番細かい場合を言うのだがつまり、それを水に溶かすと色鮮やか、かつ滑らかな泥のようにうんやめておこう。 冷静になって落ち着ついて冷静になれ。 そうだ。この個室に俺が入る前に、一人の男が入っていた。それは仕方ない。公衆トイレとは誰もに公開されたパブリックな場である。つまり、そんなパブリックな場所でアレ、つまりキングのクラブがクイーンのダイヤにジャックしたときのロイヤルストレートを、仮想の娘を対戦者に一人でプレイしたとかそんな非常識なことを前任者がしたとは到底考えられない。 ヒンドゥー教に伝えられる神酒ソーマは、一説には乳酒であると考えられている。このパブリックスペースで、ヒンドゥーめいた秘儀が行われ、その時この神酒が神なるトイレドーアに捧げられたというのならば、あり得るかも知れない。試しに匂いを嗅いでみよう。臭い。ヨーグルトとかチーズとかそんな次元を通り越して臭い。発酵臭すらする。やはりこれは聖なる神酒ソーマであるのかも知れない。ドアにベチョってくっついた感じがそんなに高尚そうでないし、せいぜいどぶろく……いやいや、変な想像をしてしまった。うん、白ビール。白ビールとかその程度かも知れないね、うん。そうだ、白ビールに違いない。 ペロ……うんやっぱあれだよ。ほんとこの部屋に前に入った人には失望だよ。 ド変態じゃないか。ここ、女子トイレだぞ。===下品ですみません。。。
「あの女、ころしてやる」 山野愛子はそう呟いたが、このとき当該「あの女」――小説家、篠田明美は死んでいる。 既にして。 死体はデスクに突っ伏していた。パソコンの電源がついている。画面には書きかけの文章が。そしてパソコンの近くに立てられた木製のボードには、いくつかの付箋紙が貼りつけられている。 殴り書きの態様でそれぞれ「岩絵具」「娘」「白ビール」「バルザック」「からくり」「インドネシア」 斯くの如き単語群がどのような物語を目指していくはずだったのか、いまとなっては深い闇のなかだ。 篠田の死体は後日彼女の担当編集によって発見された。警察はこれを自死とした。 銀河高原ビールを飲んでいるとき、中学校の級友である近藤ちかから架電があった。「あのさー、篠田、死んだんだってー」 山野愛子は「えっ、うっそ! まじでー!」といいながら「うまっ! ビールうまっ!」と考えていた。 山野愛子は篠田がきらいだった。ずっとそうだった。許したことなど一度もなかった。 だからビールがうまかった。 篠田明美は焼かれて生家の敷居を跨いだ。 葬式中の篠田家の前を、近藤ちかが車で通りかかったとき、降っていた雨が激しさを増した。 彼女の友人である山野愛子が、中学生であった当時、篠田明美を憎んでさえいたということを、ちかはもちろん知っていた。 しかし先日電話で話すまで、まさか二〇年近く憎みつづけていたとは思いもしなかった。ちか自身は、その頃の篠田の仕打ちについて、すでに決着をつけていた。 とうぜん、許したわけではなかった。しかし同時に諦めていた。起こったことはどうしようもなかった。水に流すなんてとんでもない。けれどいまさら責めてみたってなんにもならない。「……でっかい家」 呟いて、眉根がふかく寄っているのを意識した。 そして雨のなかを通りすぎた。 山野愛子は飲んでいた。 行きつけのバーで飲んでいた。 店を出て、タクシーに乗り、そのまま知らない部屋へ招かれ、シャワーを浴びながら、自分の右の乳房をみたとき「あの女ころしてやる……」と口を衝いてでた。「ころしてやると思ってたのに」とあらためて発音したが、舌がまわっていなかった。 数日前にもおなじことを呟いていたのだと思い至ることはなかった。
三題漫才A・B:みなさんこんばんは~A:ちょっとみなさんきいてくださいよB:え? なんやのA:うちに高校生の娘がおるんやけどねB:ああ、あのお前に似たぶっさいくな子ねA:いや、お前ひとの娘にたいして、ぶっさいくってねB:事実やし、ええからなんやのA:最近の高校生はあれやね。大人っていうか、生意気っていうかB:あーたしかにね、最近の子は生意気やねA:で、わたし、学校によばれたんですわB:え? ぶさいくやから?A:うっさい! そこは関係あらへん!B:おっ、ぶさいくなん認めたでA:うっさい! それでな、学校いってみたら、飲酒してたっていうんやB:あー高校生の飲酒はあかんねA:そうや、ビールのんでたのが、教師の目にとまってねB:そら、大変や、のむなら、教師にみつからんようにせなねA:いや、そういうことやないやろ! のむこと自体あかんやろ!B:どうせのむなら、白ビールにせなねA:なんやそれ? それアルコールはいってないんか?B:いや、はいってるでA:んじゃあかんやろB:先生にみつかって「おいこら、お前ら飲酒したらあかんやろ」っていわれたらやねA:ふんふんB:でも、先生わたしは白です!っていうんやA:何も解決してへんやろ! それに白ビールってほんまにあるんか?B:あるでA:それってあれちゃうんか? 岩絵具で白色つけているだけちゃうんか?B:いや、あるってお前がしらんだけやがな、って何で絵の具じゃなくて、岩絵具やねん。色つけるだけなら、岩いらんやろA:絵具っていったら、何はいってるかわからへんやろB:岩絵具かてどんな岩石がはいってるかようわからんやろA:なにいうてんや、岩絵具っていうんやで?B:だから、なんやねんA:『こうぶつ』がはいっているから美味しいにきまってるやんB:そんなわけあるかい!A・B:どうも、ありがとうございました~―――――――――――――――――――――――三題小説の元をたどると、落語の三題噺になるといわれています。そしてこれは三題漫才という風体です。私は落語や漫才のネタまで書くことがあります。これは小説なのかな? と思ったのですが、まぁいいやってなかんじでだしました。あと一個『こうぶつ』は鉱物と好物をかけていると一応書いておきます。
伝えたい 私 河野絵里菜は、美術館に来ていた。 美術館で展示されている絵の作者…… 絵に惹かれてやってきた。作者を知らないのだ。 絵は描いていた。美術大学にも行っていた。 しかし、自分に疑問を持ってしまったのだ。 どうして絵を描いているんだろう? 自分は何をしているんだろう? と。 疑問を持ったままいい絵が描けるはずがなく、結局私は絵の道を諦め社会人になった。 変わったことと言えば、一時やけで飲んだ白ビールが好きになったことぐらいか。 それ以降、絵はもう見なくなった。 そんな私を美術館へと動かしたのは、テレビのコマーシャルで流れた一枚の絵だった。 こんな絵は初めて見た、と思った。 言葉で表せない絵だったのだ。 そしてなぜか、その絵に強く惹かれた。 美術館の入り口で、チケットをもらう。 そこには、作者のプロフィールがあった。 名前は、『イノカ・ノエル』 外人だろうか? 経歴は興味なかったので、飛ばして絵の項目を見る。 そこに、こんな一文があった。『絵具に強いこだわりを持っており、使う絵具は岩絵具だけなのです。』 なんでだろう。と思いながら顔を上げると、そこには特徴的な作品の数々があった。 その中でも特に目を引いたのは、曲がりくねった道が描かれた絵。 その絵を見て、私の心に火がついてしまった。 なぜなら、その絵の、そしてその絵を描いた人物の意識が私の体に流れ込んできたのだ。 優しく諭すような声が聞こえる。『ねえ、絵を諦めたことを後悔してない?』「後悔……しているかもしれない。けど……」『けど、じゃないよ。ほら』 風景が、浮かび上がってきた。 そこには、小さな娘が絵をかいていた。 一心不乱に、でも、どこか楽しそうに。『絵は、楽しむものだよ? 有名な作品を描こうなんて思わなくていいの』「そっか……」 絵は、楽しむもの。 昔は、絵はへたくそだった。けれども、楽しく絵を描いていた。 それが、いつからか「いい絵を描かなきゃ」 と思い始めて、だから自分に疑問に思ってしまったのだろう。 ――――楽しく、思いっきり絵を描きたい!―――― 久しく忘れていた、絵を描きたいと思う渇望。 私は美術館を急いで出た。 『思いっきり、描いてきなよ』 と言う優しい声に後押しされながら。 家に戻って、画材を探す。 画材の保管場所は覚えていたので、すぐさま準備して真っ白なキャンパスに筆を走らせる。 無我夢中で、筆を走らせた。楽しかった。 筆の音、岩絵具の匂い、色、すべてが心地よかった。 完成したころには、日が傾いていた。 完成した絵は、曲がりくねった道の絵。 そう、あの美術館で見た絵とそっくりだったのだ―――― エピローグ 私は、世界的に有名な画家になっていた。 特徴的な画家として。 最近は、近代的な機械の絵も描いている。 きっかけは、ニュースでみたタイムマシンの開発だった。 また、絵を描いていく。様々な絵を。 機械的な近代絵、山を映した風景画。 あの時使った岩絵具を使いながら。 私を導いてくれたあの優しい声の様に、私は絵を通じてメッセージを伝えていく。 ――――絵でも何でも、楽しまなくちゃいいものはできないよ―――― Fin先週は忙しくてかけませんでした。ここまで読んでくれてありがとうございました
ベルリンからミュンヘンまでを鉄道で移動した後、軍用車(フォルクスワーゲン)を借り、クルツの運転で大使館から五百キロ離れた小さな村までやってきた。 黒い森(シュヴァルツヴァルト)の底を流れる広大な青色を背にして、 クルツは両腕をいっぱいに広げる。「どうだ、イシカワ大尉。ここが俺の生まれ故郷さ。こんな素晴らしい風景が日本(ヤーパン)にもあるかい」 と笑みを浮かべるクルツ。ナチス親衛隊(SS)の黒い制服は、鬱蒼とした針葉樹林の中にあっても目立つ。 私は草の上に腰を降ろして首を横に振った。「土地が山がちだから、自然と荒々しい急流が多い。このように女性的な川は、日本では珍しいよ」「女性的か。確かにドナウは俺にとって母のような川だ。ここで生まれ、ここで育てられた」 誇らしげなクルツを尻目に、私は頭陀袋から取り出した群青の瓶を日光にかざす。目前で揺れる水面を瓶と見比べていると、クルツが疑問符を頭に浮かべて覗きこんだ。「それはなんだ。砂利のようだが」「私の名前に入っている漢字の意味を教えたことがあるだろう。覚えているか」「石(シュタイン)の川(フルス)か」「そう。それを今から作る」 膝の上に木板を載せ、そこに和紙を広げた。傍らに置いた小皿に瓶を傾け、岩絵具を一匙分ほど取り出す。膠と水を混ぜ、中指で練る。袖を捲った右腕に筆を取り、鼬の毛先に色を含ませた。目蓋を下ろし、頭の中に風景を思い描く。次に目を開いたとき、筆が和紙の上を稲妻のように走った。腕が左右するたび、無の世界に瑠璃色の流れが一筋二筋と湧き出てくる。 クルツは目を丸くした。「見事なものだ。達者なのは武芸ばかりではないのだな」 大使館で戦勝祝賀会が開かれたときの話だ。中庭で見世物をやることになり、独逸からはクルツが出てヴァイオリンの演奏を、日本からは私が出て居合の演武を披露した。実戦的でない派手な技を幾つか見せただけなのだが、これが案外評判がよかった。「それを言うなら、きみのモーツァルトこそ見事だったよ。あれほど端正に力強く弾ける人間は日本にいなかった。感動したよ。総統だって聞き惚れていたじゃないか」「よしてくれ」とクルツは言う。「私の腕では、党に取り入る道具にするのが精一杯だ。本当に上手い人間なら、今頃ウィーンの劇場にいる」「戦争がなければ、そうしていたんじゃないのか。戦争という状況が、きみを軍人に駆り立てただけだ。私だって、故郷から遠く海を隔てた国の駐在武官でいるよりも、ただこうして自然の中にいて絵を描いているほうが性に合っている」「そうかもしれないな」 クルツは私の隣で草むらに寝そベった。「そのときは俺は音楽家で、君は画家か。だが、こうして二人の軍人が出会うこともなかっただろう」 横になったクルツは眠るように黙った。もの寂しげなカッコウの鳴き声が林の間に響き渡る。 私は水筒に川の水を汲み、筆を洗った。緑青を入れた小皿に筆先を浸し、まだ川しかない世界に木々を生やす作業に取りかかりはじめた。「技術供与の件はどうだ」 クルツは目を閉じたまま答える。「陸軍兵器局(HWA)の技術者たちは乗り気だが、党の連中が首を縦に振らん」「視察団が来るのは二週間後だ。なんとかしてくれないか」「俺だってなんとかしたい。だが奴ら、『未熟な日本軍に技術を与えれば、連合国にまで情報が漏れる恐れがある』と言って聞かない。口では同盟といっても、黄色人種のことを見下している」 黄土の小皿を使い、川の畔に佇む人物を象っていく。「特務機関から、もう間もなくB29による本土空襲が始まるという情報が入っている。なんとしてもその前に、レーダーによる防空整備を進めなければならん」「わかっている。技術者たちが言うには、ヴュルツブルク(地対空レーダー)を潜水艦で輸送することは可能だそうだ。だが、知っての通り、欧州近海は英国海軍の哨戒網が厚い」「鹵獲されそうになったら、自沈するまでだ。日本軍人はきみらに比べたら未熟だろうが、それくらいの覚悟は持っている」「そうか」クルツは上体を起こした。「その確約があれば、党の連中も折れるだろう」「ありがとう、クルツ」 ドナウの風景の写しは、もう仕上がりつつあった。ただひとつ現実と違うのは、私たちの代わりにひとりの女性が佇んでいる点だ。筆が和紙の上に艶紅を落とすたび、絵の世界に生気が満ちていく。「空襲が始まったら、まず狙われるのはトーキョーだろうな。きみのフィアンセもトーキョーにいるのだろう。大丈夫なのか」「広島の方へ疎開したよ。今は呉の工場に勤めている」 クルツは肩越しに、絵の中の娘をまじまじと見た。「妖精(ニクシー)のように美しい乙女だ」「この戦争が終わったら結婚する。前も言ったかな」「戦争が終わる、か」クルツは立ち上がり、小さな欠伸をした。「正直な気持ちを聞かせて欲しい。この戦争はどうなると思う」「負けるさ。彼我で圧倒的な物量の差がある。負けるのが道理だ」 私は絵の仕上がりを確かめる。 きっと今後、この絵を見るたび、ドナウ川のせせらぎや、カッコウのさえずり、そしてクルツと交わした言葉の数々を思い出すことだろう。「だが、道理を引っ込ませて無理を押し通すのが私たちの仕事だよ」 絵が乾き終わるのを待ち、画材と一緒に頭陀袋へ収めた。ふふ、とクルツは笑う。「その通りだ。さて、近くに行きつけだった店があるんだ。そこの白ビール(ヴァイスビア)が最高に美味い。一杯どうだね」「悪くない」 車に戻って運転を始めると、クルツはひとりで歌い始めた。 曲は『美しく青きドナウ』なのだが、歌詞は私が聞いたことのあるものとは異なっていた。彼曰く、初演で使われた歌詞なのだが、あまりに卑近的だったので評判が悪く、後ほどより高尚なものに改められたらしい。だが、初演の歌詞のほうが彼は気に入っているのだという。 私もその歌詞を教えてもらい、黒い森(シュヴァルツヴァルト)を走る車のなかでクルツと一緒に歌った。――今日の幸せは 二度とは来ない喜びの薔薇も 色褪せるものされば踊ろう 休まず踊ろう――
美術室はテレピンの臭いが染みついていた。 油絵がほとんどの中で、彼だけが日本画をやっている。油の絵具とは違うあざやかな岩絵具を白い皿にいくつも並べ、白い紙のうえに儚い娘の絵を描いている。 冬の放課後で、窓の外はすでに暗い。他の美術部の部員はさっさと帰ってしまっていて、美術室には彼とぼくとだけがいる。ぼくは彼のそばに椅子を持ってきて、小説を読むふりをして、彼の絵を描く姿を盗み見ていた。 彼は少し長めの髪を頭の後ろに撫でよせて縛っている。制服が汚れないように青や赤の染みのついたエプロンをつけている。右手に持った筆、下書きのされた紙に向ける眼ざし。研ぎに研いだような、透明に近い顔つき。 帰りのHRが終わったあと、部活にいく彼について美術室に入ったときのことを思いだす。 彼は画材を準備したりしながら、―― 待たなくていいんだぞ。―― べつに、構わないよ。ていうか、駅前に新しいバーガー屋ができたんだよ、そこ行こうぜ。―― 遅くなるぞ。―― そのほうが腹へっていいでしょ。―― そうか。 彼は嬉しさの混じった困り顔をしていた。それと絵を描いているときの顔。どちらもぼくは好きだけれど、嬉しさと困ったのが同居したあの顔は、ぼくだけに向けられた顔で、ぼくしか知らない顔で、と思うと、ぼくが関係しないいまの彼の表情は惚れぼれするのだけど少しだけ、ほんとうに少しだけ恨めしく思う。 じっと見つめすぎた、のか。彼が表情をくずし、筆を絵皿に置いた。「今日はここで切りあげよう。お腹もすいたし」 ぼくのことを見て笑いかけてくれる。ぼくは頬が赤くなるのを感じながら、椅子から立ちあがって彼のそばに寄る。彼の背に抱きつくようにしながら、「いいの?」「横で、そんな顔されていたら描けるものも描けないさ」「ちょっと……それはごめん」「お腹がすいた、それはほんとうだよ」 ぼくは彼の肩に顎をのせながら、少しずつ完成にむかっている娘の絵に目をむける。下町の平屋のならんでいるようなところの舗装されていない道、そこに家々が小さな台をだして涼んでいる。軒先からつるされた電球をたよりに将棋に興じている中年の男が二人、彼らにグラスに入った白ビールを渡している娘がいる。その娘が絵の中心だ。 湿気の多い夜の光景。肌寒さを感じる冬の美術室のなかにあって、彼の描いている絵のなかには夏が息づいている。「あいかわらず、すごいね」「まだまだ届かないよ」「モデルいるの?」 ぼくは絵の女を指さす。「おばあちゃんだよ」「そうなんだ」「おばあちゃんの昔話とおばあちゃんの昔の写真から描いているんだ」「その写真は? どこにも見当たらないけれど」「頭の中にだけ」「いいの?」「なんというか、目の前の光景を筆で描きなおすことが絵じゃないと思うんだ」「そういうもの?」「俺にとってはね」 彼はそういって立ちあがり、後片付けを始める。それを手伝って、美術室を出る。そのあとは予定どおり、駅前に新しくできたバーガー屋に行った。 バーガー屋は、ダイナー風の作りをしていて、夜はお酒をだしている。高校生の二人では少し入りにくい雰囲気だった。彼と顔を見合わせてから、まあ、と彼がさきにお店のなかに入った。 少し高めのハンバーガーは、思ったよりも美味しかった。ハンバーグは肉の旨味があったし、ソースも食欲を刺激した。濃い味つけで、きっとお酒に合うんだろう、と思った。 ハンバーガーを食べながら、彼と来年の話をした。受験がある。気の早い同級生はもう受験勉強を始めている。芸大にいくのか、と彼に聞くと、彼は分からないと答える。あんなに絵がかけるのに? ―― ぜんぜんだよ、もっとうまい人はいっぱいいる。―― 自信もってよ、ぼくはすごく好きだよ。―― 俺の絵は自分の知り合いしか喜ばすことができない、それが自分の限界なんだと思うんだ。 そういった彼にぼくはあとを続けられなかった。 彼は彼の描いている絵の中の娘と同じように儚い雰囲気で、ハンバーガーの付け合せのフライドポテトを口に運んだ。----白ビールがキレイに入らなかった・・・orz
えもいわれぬ ドアフォンを鳴らすと「はいって」とスピーカー越しに声がきこえてくる。 誰がきたかなど確認はしていないのだろう。 なんせ呼び出されたのは私のほうなのだから。 ドアノブをまわすと、施錠もされておらず、簡単にひらく。 玄関に入ると、見やすい場所に一服の絵が飾られている。 それは訪問者に見せびらかせるように、いや実際見せびらかせるためなのだろう。 一人の女性の絵である。看板娘は、虹の袂で輝く笑顔にやわらかい幸せをふりまいていた。 施錠して、声をかけながら、奥へとすすむと、予想通りに絵の主役である女性が、同一人物とは思えない暗い表情で、缶ビール片手に、机に突っ伏している。 できあがっている。 思わず嘆息するけれど、なれたもので、勝手に冷蔵庫のビールをとりにいく。 アルコールを摂取したいわけではないけど、ビールくらいしかない。「あ、わたしのも」 はいはい、と答えて。アサヒ、キリンのビールをそれぞれ手に取る。 アサヒは彼女の分。キリンは本来、彼女の彼氏の分なのだけど、それが消費されることがほとんどないので、私ができるだけ消費する。 ビールには、女と一緒で賞味期限というものがあるので、ずっと置いておくと味がおちる。 アサヒをあけて彼女の前に置くと、お礼もいわずにぐびぐびと飲み下す。 キリンをあけて、義理とばかりに口をつける。「で、どうしたの?」 大体呼ばれた理由はわかっているのだけれど、きいてあげないといけない。 彼女はちょっと面倒な友人。「あのね、ちょっときいてよ彼ったら……」 いつも、彼のことで呼ばれる。「うんうん」 彼女は何故かいいよどむ、次に何を言えばいいのかわからないのかもしれない。「わからない。」「なにが?」 彼女のビールをもっていないほうの指が部屋の片隅を指し示す。 そこには、一枚の額縁が立て掛けれらている。 絵の部分は逆向きで、見えない。 彼女の彼氏は画家である。玄関においてある絵は、彼が彼女に告白するときに贈られた物で、あの表情の彼女をみたことがなかったので、私は最初彼女だと気付かなかった。彼にとって、彼女はああ見えているのか、それとも彼の前ではああいう表情をしているのか少しきになる。 そしてそれから、彼が彼女に絵を贈ったのは、これが二枚目ということになる。 今回も何かの意思表示ではないかと思われる。 絵の向きを変えて、眺めるとなんともいえない。「これ……なに?」「わかんない。」 なるほど。もらったけれどわからないのね。 そこに人は描かれておらず、ただ床に牛乳がぶちまけられたような絵が描かれている。「なにか、いってなかったの?」「なんかね。白の岩絵具の材料は貝だとかなんか、ハマグリがどうのって貝の話してた」 謎である。「ねぇ、これってつきあいを白紙にもどすって意味じゃないよね? わかれようって意味じゃないよね?」 私に必死にすがりついてくる。「それ……きいたの?」「きくわけないじゃん! いやだよ! 絶対わかれない!」 泣きだした。 正直、なだめてすかして、慰めて、希望的観測を言わせる為に呼ばれたのだから、悪いことはいえない。「大丈夫、大丈夫だよ」 気休めをいう。 絵の謎を解こうと、角度をかえたり、目の前まで近づいてみたりしてみるけれど、何も発見はなかった。 本当にこの絵が悪い意味ならば、うまく動いてあげなければならない。 面倒くさい友人だけれども、大事な友人なのだ。 白紙にもどす、という意味なら何も描かれていない白いキャンパスを渡せばいいのだから、そんなはずはない。床のような絵に白い絵具を塗る意味はなにかあるに違いないのだ。 わざわざ絵具の材料の話までするのだから、そこに何か意味があるはず。 絵に少し、さわると、彼女が小さな声で「汚さないで」と言ってきた。 彼女にとって、この意味不明な絵はとても大事なものなのだ。 突然、綺麗な音楽が、一瞬流れた。 一瞬だけしか流れなかったのは、その音源が彼女の携帯電話で、鳴った瞬間彼女が携帯電話をとったからだ。 ぐだぐだ愚痴をいいながら欝にはいっていた彼女が、人がかわったように明るくなり、声音もかえて、しおらしく話しているところをみると、彼氏からの電話らしい。 話し方の雰囲気的にラブラブなのが伝わってくるように思える。 電話との会話がとぎれると、彼女は名残惜しそうに、切なそうな顔をしている。「なにかいってた?」「わかんない」「……え?」「わかんないよおおおお」 よしよしと頭を撫でる。 電話の声音をきくかぎり、修羅場ではないようだけど。「なにを喋ってたの?」「絵のこと……」「あれ?」 そこに立て掛けてある謎絵を指さすと、彼女はこくりと頷いた。「なにっていってたの?」「あのね……あの絵は****を描いたんだって」「****? なにそれ……」 それは意味不明だった。聞いたが故に余計意味がわからない絵となってしまった。「そんなはずないよね。わかんない。わかんないよおおおおおおお」 と叫ぶとまたがぶがぶとビールを飲みだした。 そういえば玄関にある絵のときも、意味ありげに渡されて、相談されてひどく悩んだ。悩まされた。最終的に詰め寄って、交際してくださいという意味だと彼氏の口から説明させたのだ。 ふと、あの絵のときの難解な説明を思い出し、もう一度、白い絵をみる。 そして貝の話。 ふっと、頭に一つのことが思いついた。 絶対にこれ、とはいえないものの、あの彼氏なら、そうかもしれない。 いや、そうにちがいない。 一気に馬鹿らしくなった。「ねぇ、なにかほしいものある?」「……ビール」 冷蔵庫からあたらしいアサヒビールをとりだして、彼女に渡してやった。 家に帰ると、パソコンの前に座る。 本当にばからしい相談にのってしまった。 どうせまた詰め寄って、彼氏に説明させないといけないのだけど、今回はしっかり、雰囲気なども考えてやらなければならない。 今回は放置してやろうか、と半ばやけくそ気味に思わないでもないが、そうすると、また何度も彼女を慰めに呼ばれることになるので面倒だ。 半ば冗談で探していたモノが、ネット検索みつかった。 あるものだ、と一人ごちる。 嘆息する。 あの絵がまさか、血の跡だとは思わない。 だって白いのだから。 そして、貝の話はきっと前置きで、本命はきっとハマグリの話。 ハマグリは、二枚の殻が綺麗に重なりあい、世界中のハマグリを探しても他に綺麗に重なるものはないということで、夫婦の象徴である。 血の跡が、白いのは、きっと、血痕が白いのだ。 なんていうプロポーズだろうか。わかるはずがない。 彼女の絵を描いて、題名を光彩といいはなった、彼なのだから仕方ない。 そして注文完了の画面を見た。 まぁこれでいいでしょう。 赤いはずの血を白く描いた彼への皮肉もあるのだが、わからないだろう。 赤ビールと白ビールの詰め合わせを、お祝いに贈り物として注文しおえた。 紅白でおめでたい。 めでたいことはいいことだ。―――――――――――――――――――――――今回二つださせていただきました。というか、前にUPしたやつが、漫才のネタで、小説っぽくなかったので、小説をあげないとと思ってもう一つ描かせていただきました。今回は難しかったです。ビール、絵具 なら簡単ですが、白ビール、岩絵具 は非常に限定的なもので自然にだす というのがちょっと難しいです。男性は、話の上ででているだけだから、これでもいいのかな?では。
感想・星野日さん題名なし何か軸をつくって話を書いてほしいですね。謎があり、それを最後にその謎の答えを匂わせておわるというのは一つの定番ですけど、途中に書かれているのが、白い液体についてですが、ああでもない、こうでもないというとりとめのない思考が突飛で読みにくいです。例えば長編で主人公が突飛な人間であるとなっていて、異常性を強調しつつ、この文章がはいれば、主人公は変人なんだなあ、と印象付けれますけど、短編だとちょっとわかりません。短いものは、その短いものの中で完成されている小説であってほしいです。・ひさん題名なし短く書かねばならない、ということからでしょうか。物語には少々の謎を残した方が良いと思うのですが、これは大事な部分が抜け落ちている感じです。ちょっと三題の遣い方が個人的にあまり印象がよろしくありません。タグにダイイングメッセージをのこしていて、タグの一部がそうであるということなのでしょうか。この方法だと三題がどんなものでも簡単に消費できるので、この使い方は三題で書く必要性がなさすぎるからです。・卯月 燐太郎題名:人工島の猫軍艦島の話なのかな? でもあそこは人住んでいるときいたきもしますが。話はまとまっているのですが、何故か少し読みにくかったです。多分個人的に主人公(もしくは話自体)の目的意識みたいなのが序盤に書かれていないせいかもしれません。私も長編を書いていて、知り合いに見てもらったとき、この話はどこにむかっているの? 何を書きたいの? それがわからないと読みにくいといわれたことがあります。例えば推理小説で、最初に死体を書き、それを読むひとは、それが誰に、何故、どうやって、殺されたのか、それをどうやって推理して犯人にたどり着くのかを、読みたいのだと思います。だから最初に読みたい理由の根源にある死体をまず序盤で転がすわけです。これを読むと、主人公が何をしたくて、ここに来たのかが最後に書かれています。序盤に書いて、少しだけほっこりする締めを用意できれば読みやすくなるのではないかと思います。・Azuさん題名:伝えたい纏まっていて、いいお話です。今までここの三題を読ませていただいて、一番好きな話だと感じました。タイムマシンが開発されて、すぐそんな載れるわけがない とかのつっこみは、この話には野暮ですね。思わず書いてしまいましたけど、私も野暮ですね。『イノカ・ノエル』 主人公の名前を少し入れ替えてつくっているのでしょうか。なんとなくわかりましたが、ちゃんと確認していません。こういう遊び心も大事ですね。こういうタイムマシンものは、卵が先か、鶏か先かの問題が発生するという矛盾があるのは知っていますが、好きです。・Φさん題名なし。少しもったいないですね。本のようにルビふりであれば、もっと雰囲気がでましたね。ルビのかわりに()で書いても、書かないよりかは雰囲気は出ているのですが。ひとときの休息。もう少し二人の関係性について書いてほしかったです。・toriさん題名なし雰囲気がでていますね。綺麗にまとまっています。▲縛り:「異性が作中の現実には登場しない(現実として登場するのは、男性のみ、もしくは女性のみであること)」↑がなければぼくっ娘と絵描き男子の話として脳内を信じ込ませて読めるのですが。腐耐性がない私には少ししんどいです。白ビールは難しかったですね。岩絵具とセットで考えると私も非常にしんどかったです。―――――――――――――――――――――――感想に対するレスはここで書き足させていただきます。読んでいただき、さらに感想までいただきありがとうございます。・卯月 燐太郎さん読んで感想をいただきありがとうございます。「三題漫才」読みました。漫才になっていました。型どおりですね。先生が「飲酒したらあかんやろ」に対して「先生、わたし白です」は決まりましたね。岩絵の具=「こうぶつ」はよかったのですが、そこに至るまでの「A:それってあれちゃうんか? 岩絵具で白色つけているだけちゃうんか?」これが少し苦しいかな。ちなみにこれだと「淫行」も行けますね、疑われたときに「うち白やで」とスカートをまくりあげる。「パンツ降ろしんかい」と言われたら、黒になるけれど(これを二段オチと言う)。ちょっと不自然な部分はありましたかね。漫才のネタをかいて、ちゃんと漫才のネタによめたようで、少し安心しました。ぶっさいくなので淫行はあr……Zzz「えもいわれぬ」読みました。主人公が呼ばれた彼女の彼は抽象画でも描くのですかね?そしてその意味を謎解きにする。御作では主人公と彼女のやり取りの細部が描かれていました。だから内容はよく伝わりましたが、主人公と彼女とはどういった関係なのでしょうね?「困った友人」と言うだけでは、もうひとつわかりませんでした。何しろ異性ですから。>>そこに人は描かれておらず、ただ床に牛乳がぶちまけられたような絵が描かれている。「なにか、いってなかったの?」「なんかね。白の岩絵具の材料は貝だとかなんか、ハマグリがどうのって貝の話してた」<<床=子宮牛乳=精子ハマグリ=女性器と私は解釈しました。子供を作ろうという事ではないですかね?結局はプロポーズと言うことになりますけれど。二作品投稿お疲れ様でした(笑)。私の実力不足で、しっかりとわかるように書けなかったようです。頑張ります。チャットルームで他の方にもいっていただいたのですが、ハマグリが少し女性のイメージで固まってしまったのかな。アワビでないので、いい気もしたのですが。主人公は女性なのですが、どっかで書くべきでしたかね。地の文章を女性言葉を基本に書いたつもりなのですが、私の実力不足ですね。謎解きもさらっと書きすぎたようで、全然伝えれていなかったようです。さらっと書いて、気付いてもらえると、インパクトが強いと思っているのですが、今回はあまりよくなかったようです。ネタばらしになりますが書かせていただきます。彼女の絵=題名『光彩(希望)』 光り輝き、希望にあふれている 交際希望ということです。牛乳(本当は血)の絵=題名『血痕(白)』 血痕が白い 結婚しろ。(プロポーズ)ハマグリ=文中そのまま、二枚貝で、必ず二枚セットの貝殻で中身をまもり、その二枚は必ず綺麗にかさなり、他の貝だと絶対にはまらないので、無二の一対ということで夫婦の象徴であり、結婚のときにお祝いで使ったりすることもあるようです。・toriさん>出鼻でいじって、そのあとネタ出しして。漫才は詳しくないけれど、笑点なんかでときどき見る漫才がたしかにこんな感じでした。話芸が加わるとすごく化けそうですね、うん。漫才っぽくなったようでよかったです。ありがとうございます。>なんていうか、爆ぜろ、ですね。通じあっているのに信じられないというのは、切ないというかもどかしいというか、爆ぜろ、です。うらやましくなんかない。あと100%好みの問題ですが、文章のテンションのON/OFFの振れ幅がきつめかなと思いました。その緩急がいいっていうひともいれば、もっとなめらかなほうがいいというひともいると思うのだけど。後半の文章のオンオフについて、ちょっと詳しくかいてほしかったです。ちょっと私本人にはいまいちつかめません。短文のあとに、長い文章がきたりすることかな?・φさん>漫才に関しては作法というものはさっぱりわからないのですが、とにかく後半の単語の消化の仕方がちゃんとネタに繋がってて「おおっ」と思いました。ただ、前半のネタ密度が薄いかな、とも。ブサイクでいじるよりもちょっと捻りが欲しかったです。最初は引き込みなので、わかりやすくぱっと笑える部分をもってこようとしたのですが、よく考えたこのネタは本人がいてブサイクな映像がないといまいち笑えないですよね。そして結局ネタといっても文字なのでそちらを重視すべきだったかもしれません。一応後半部分がメインなのでそっちがうけたようでよかったです。>ううむ、ちょっとわかりにくかったです。****=ケッコンで、「血痕」と思ったら「結婚」、つまりプロポーズだったということですか?彼氏の意図としては、ハマグリが夫婦の象徴という意味で、プロポーズをしているものだと私は受け取りました。ただ、そうすると>血の跡が、白いのは、きっと、血痕が白いのだ。>赤いはずの血を白く描いたこのへんがよくわからず…解説が欲しいところです。****は本当は 血の跡 です。書いてしまうと一瞬でネタバレするので、最後にだけちょろっとかいたのですよね。ネタバレはもうすこししっかりしなければならなかったようです。反省します。解説がほしいといっていただけるなら、卯月さんへの感想のお礼の部分をよんでくださるとうれしいです。・ひさん>三語の扱いがむりなくかつコンパクトで「おっ」と膝を打ちました。(えもいわれぬ)面倒な友人とはいいますが、この話、男のほうがそれに輪をかけて面倒ですよね……。だじゃれがわかると読んでる側も馬鹿らしくなるというかなんというか。「私」もなかなか奇特な方です。漫才になっていたようでよかったです。似たもの夫婦みたいなかんじです。類が友をよんだかんじです。感想ありがとうございました。
――[123] 即興三語小説―― 七作品、感想。星野日さん>>ペロ……うんやっぱあれだよ。ほんとこの部屋に前に入った人には失望だよ。 ド変態じゃないか。ここ、女子トイレだぞ。<<●で、このトイレに入って一人称で語っているのは「俺」なのですよね。その俺が入る前にも男が入っている。俺が入るとドアに汚れ物がついていた。それで俺はいろいろと試行錯誤をする。そして俺の前の男は変態ではないかと結論づける。だったら、主人公は「俺」だからたぶん男であり、変態に他ならない。●これが、小説なんですよね。女子が女子トイレに入りその前に男が入っていたのを見て汚れ物を知り、「不愉快だわ」とトイレから出てしまうと小説にならない。ひ、さん●この内容では、作品の意図するところがわかりづらいですね。>>行きつけのバーで飲んでいた。 店を出て、タクシーに乗り、そのまま知らない部屋へ招かれ、シャワーを浴びながら、自分の右の乳房をみたとき「あの女ころしてやる……」と口を衝いてでた。<<どうも、この辺りに謎解きがあるようですが、「山野愛子」は売春でもしているのですかね。「右の乳房」になにやら過去(中学時代)からの意味がありそうで。それに篠田明美が関わっていた。下記Aを読む限りでは篠田明美も、過去を引きづっていて、それを小説にしようと思っていたのですかね?まあ、自殺と言うことで、自ら決着をつけたということになりますけれど。A>>死体はデスクに突っ伏していた。パソコンの電源がついている。画面には書きかけの文章が。そしてパソコンの近くに立てられた木製のボードには、いくつかの付箋紙が貼りつけられている。 殴り書きの態様でそれぞれ「岩絵具」「娘」「白ビール」「バルザック」「からくり」「インドネシア」 斯くの如き単語群がどのような物語を目指していくはずだったのか、いまとなっては深い闇のなかだ。<<しんさん「三題漫才」読みました。漫才になっていました。型どおりですね。先生が「飲酒したらあかんやろ」に対して「先生、わたし白です」は決まりましたね。岩絵の具=「こうぶつ」はよかったのですが、そこに至るまでの「A:それってあれちゃうんか? 岩絵具で白色つけているだけちゃうんか?」これが少し苦しいかな。ちなみにこれだと「淫行」も行けますね、疑われたときに「うち白やで」とスカートをまくりあげる。「パンツ降ろしんかい」と言われたら、黒になるけれど(これを二段オチと言う)。しん さん「えもいわれぬ」読みました。主人公が呼ばれた彼女の彼は抽象画でも描くのですかね?そしてその意味を謎解きにする。御作では主人公と彼女のやり取りの細部が描かれていました。だから内容はよく伝わりましたが、主人公と彼女とはどういった関係なのでしょうね?「困った友人」と言うだけでは、もうひとつわかりませんでした。何しろ異性ですから。>>そこに人は描かれておらず、ただ床に牛乳がぶちまけられたような絵が描かれている。「なにか、いってなかったの?」「なんかね。白の岩絵具の材料は貝だとかなんか、ハマグリがどうのって貝の話してた」<<床=子宮牛乳=精子ハマグリ=女性器と私は解釈しました。子供を作ろうという事ではないですかね?結局はプロポーズと言うことになりますけれど。二作品投稿お疲れ様でした(笑)。Azu さん「伝えたい」読みました。>>『絵は、楽しむものだよ? 有名な作品を描こうなんて思わなくていいの』<<●結局芸術というか創作に関するものは、「楽しむ」ことだと思います。それがなければ、長続きしないし、積極的に行動が出来ない。私がここで「感想を書いているのも楽しんでいるからです。作品を書くだけではありません」。●御作ですが、絵を描く意味を忘れた主人公にテレビのCMで流れた絵画展の絵に魅せられて美術館に行き、作品を観て作者と心の対話をして自分を取り戻すという作品だと思います。●この作品を面白くするには、主人公が絵を魅力的だと思わなくなった理由を具体的に描くことですね。たとえば、当時彼がいて、そちらに引っ張られて、絵から離れたとか。案外人間は弱いものだし、簡単に他人に協調してしまうことがあります。好きな人ならなおさらです。彼の都合で絵から去ったとか。ところが、彼と別れて、違う世界で人生を過ごしているときに再び絵と接する機会があった。これらも具体的に描くことです。それにより、作品(自分の書いている小説)は命を与えられます。Φさん「1941年、ドナウエッシンゲンにて」読みました。歴史(時代)の一コマを感じる、作品ですね。二人の軍人の運命を変えた戦争(歴史)が描かれていると思いました。また、エピソードで綴られているので、内容もわかりよかったです。タイトルが「1941年、ドナウエッシンゲンにて」ということで、B29の空襲が特務機関より情報が持たされたのは疑問を持ちましたが。>>*1944年11月以降はマリアナ諸島のサイパン島、テニアン島およびグアム島から日本本土のほぼ全域に対する戦略爆撃を開始した。<<と言う事なので、「1941年」にB29の空襲が特務機関より情報というのは、早すぎるような気がします。主人公のフィアンセ(婚約者)が東京から「広島の方へ疎開したよ。今は呉の工場に勤めている」というのは、東京も広島も地獄と言ったところでしょうか。東京は大空襲があり、広島は原爆ですからね。toriさん「二人」読みました。作品の長さに合った内容でした。これは「二人」というタイトル通りに、エピソードを描いているからでしょう。だけど、男どうしで友情以上の気持ちを持っているみたいですね。任侠道などの男が男に惚れる、または敵と友情が芽生えるようなハリウッド映画などもありますが、そういったものとは、だいぶ質が違うようです。人間って面白い生き物ですね。異性って、いったいなんでしょう。御作の場合は二人の間に異性に近いコミュニケーションがあることが微妙なタッチで描かれていました。「白ビールがキレイに入らなかった」たしかに、そうですね。絵の中に白ビールが出て来るのですから、話題をそちらに降ってみると、白ビールのことを印象付ける(いくらでも白ビールのことを書けます)ことができます。================================「人工島の猫」返信●しんさんご感想、ありがとうございました。そうです、「軍艦島」の話を書きました。作品として書かれたのはだいぶ前です。年数のずれを直していないので、今の状態とでは少し内容におかしな点があるかもしれません。現在では軍艦島の一部(安全なところ)には観光客が入れるようになっています。それ以前は、上陸の許可は出ていないようでした。危険なので。この話はその当時の話ですから、人間は住んでいません。作品の目的は主人公が子供時代を過ごした故郷の訪問とそこに居ついていた猫の話です。主人公は絵がうまかったので、父親が将来はそちらの方に進めてやると思っていたところ、炭鉱が閉山になり、軍艦島から人がいなくなりました。猫は野良だったので、その後も住み続けて、本来なら15年ほどで寿命をまっとうするところですが、なぜか生きていた。という話です。実はこの話は長さが倍あったのですが、内容を知らせるにはすべて書く必要がなかったので、半分にしました。全容を掲載すると明らかになるのですが、この猫は島が200年前に人間が開発し始めた当時から石炭を運ぶ船頭と一緒に島に来ていた猫で、ある日のこと、海が荒れて、軍艦島の岸壁に叩きつけられて、主人ともども亡くなったという設定になっています。そのときに猫は脚を痛めたわけです。●Toriさん「人工島の猫」ご感想、ありがとうございます。>>いいですね。厚塗りな描写が読み応えにつながっていたと思います。それによって現実なのか幻想なのか分からないケンケンの味につながっていました。そしてやっぱネックは岩絵具と白ビールですね・・・扱いが難しい。<<「岩絵具と白ビール」簡単に済まそうと思ったのですが、もっと、書き込まなければだめかな。だけど、あんまり書き込むと逆に「岩絵具と白ビール」が、浮いてしまうような気もするし。と言ったところでしょうか。●Φさん「人工島の猫」ご感想、ありがとうございます。Φさんは、軍艦島にいった事があるのですか、それはいいですね。私は、ネットと、写真集で以前見ました。最初は海から浅瀬が見えていたようなところで、島と言うよりも岩場といった感じだったらしいですね。石炭が取れるということがわかり、その後、発展したということを知りました。>>私は「人工島」というと、後者の方のイメージが強く、SF的な雰囲気を嗅ぎとってしまいます。<<たしかに「人工島」というと、SF的な雰囲気が無きにしも非ずですね。改作するときはタイトルを変えようと思います。●ひ、さんご感想、ありがとうございます。>>卯月燐太郎さん美大進学、ときくとついつい「美大ぃ? 行くな行くな」みたいな話を連想しがちだったのですが、いいお父さんでほっこりしました。詳しくなくて岩絵具を買ってくるというのが効いてるなと思います。――――――――――――――――――――――――――●これはお題で「岩絵の具」があった物ですから、このエピソードを書きました。作品自体はかなり以前に別サイトの三語即興文で書いたもので、そのときは「岩絵の具」の話とかコンクールの話はありませんでした。「詳しくなくて岩絵具を買ってくる」こういったエピソードは親ばかですね(笑)。しかし、小説のエピソードにはそういった人間性のあるものが必要なのでしょう。=============================以後の感想の返信等はここに書きます。ありがとうございました。
> 星野日さんへんたいだ! へんたいがいる!ちょっとへんたい過ぎて、おまいうなオチの威力が削がれているのがもったいない。短いながらにオチてるのは凄いというか、さすがというか、これこそ掌編だよね! という感じなのに。とりあえず、ペロはやり過ぎじゃないかなと思いました。へんたい><> ひさん情念が濃いですね。恐い。以前も思いましたが、硬質な文章と狂気とがほんとうによくマッチしているというか、お互いを助長しあっているのが惚れぼれとします。しかし、と、篠田明美の描写がすごくいいですね。彼女が小説家であること資産家の娘であること中学時代に同性の二人の女に恨まれたこと、そして山野愛子がバーで行きずりの男(もしくは女?)と一夜を過ごそうとしているとか、すべてが無駄なく篠田明美というひとを描いていました。よかったです。> 『人工島の猫』卯月さんいいですね。厚塗りな描写が読み応えにつながっていたと思います。それによって現実なのか幻想なのか分からないケンケンの味につながっていました。そしてやっぱネックは岩絵具と白ビールですね・・・扱いが難しい。> 『三題漫才』しんさん出鼻でいじって、そのあとネタ出しして。漫才は詳しくないけれど、笑点なんかでときどき見る漫才がたしかにこんな感じでした。話芸が加わるとすごく化けそうですね、うん。> 『伝えたい』Azuさんやさしいお話ですね。さりげなく「タイムマシンの開発」というキーワードがあってするりと物語を読み解けました。欲をいえば、それなら美術館の雰囲気をもっと出したほうがよかったかも、と思いました。未来の絵を展示していたのか、そうでないにしてもキーポイントなわけですし。ほっこりしました。> 『1941年、ドナウエッシンゲンにて』Φさんよい雰囲気でした。それだけに、ちょっと物足りないかなとも思いました。何か目に見えないものに引っぱられている感じがして、それが分からないぐらいにお話が展開するとよかったのかもとか。なにか大事なことを秘めて、伝えないというか、ちょっとしたもどかしさがありました。ラストの「黒い森(シュヴァルツシルト)」の歌詞引用はキザだけど、カッコ良かったです。> 自分ダイナーで白ビールとか考えたけど、入れ込んだからタイムオーバーしそうだったので諦めました。くそー、ですね。いや、そもそも高校生を登場人物に選んだのが間違いな気がしないでもない。計画性のなさが目立つぜ・・・orz> 『えもいわれぬ』しんさんなんていうか、爆ぜろ、ですね。通じあっているのに信じられないというのは、切ないというかもどかしいというか、爆ぜろ、です。うらやましくなんかない。あと100%好みの問題ですが、文章のテンションのON/OFFの振れ幅がきつめかなと思いました。その緩急がいいっていうひともいれば、もっとなめらかなほうがいいというひともいると思うのだけど。
---感想--->星野日さんの作品「ヨーグルトや白ビールだと思っても、トイレのドアに付着しているものを舐めるかフツー!?」とツッコミを入れてしまいました。ショートコント的で面白かったです。>ひさんの作品短さの割に登場人物が多いせいかわかりづらかったですが、雰囲気は伝わりました。「復讐を願っていた女性が、復讐を果たす前に相手が死んでしまい、行き場のない怒りだけが残った」という感じでしょうか。単語の消化の仕方が、荒い! と思いました。一瞬、ダイイング・メッセージかな?とも思いましたが、もしそうなら解説がほしいところです。>卯月燐太郎さんの作品たいへん面白く読ませて頂きました。技巧的なところで私がすぐ言えることは何もないです。廃墟、いいですね。私は廃墟マニアです。軍艦島にも行きました。最近では007スカイフォールにも軍艦島が出ていて驚きました。ただ、軍艦島ってもともとある端島を拡張したものなので、ポートアイランドや六甲アイランドのような完全な人工島は違いますよね。どうも私は「人工島」というと、後者の方のイメージが強く、SF的な雰囲気を嗅ぎとってしまいます。ので、作品の雰囲気と「人工島」という単語の雰囲気があってないかな、と思ったり。他の方はどう感じるかわかりませんが。>しんさんの作品(一作目)漫才に関しては作法というものはさっぱりわからないのですが、とにかく後半の単語の消化の仕方がちゃんとネタに繋がってて「おおっ」と思いました。ただ、前半のネタ密度が薄いかな、とも。ブサイクでいじるよりもちょっと捻りが欲しかったです。>Azuさん話の筋は面白かったのですが、なにぶん短いので、あっさり感というか、プロットを読んでるが拭えませんでした。これを下敷きにしてもう少し長くしたら、もっと面白くなるのではないかと感じます。inoka noeru⇔kouno erinaですかね。>toriさん上手い。しかしどうも、芸術が出てくるとどうしても才能がテーマになりがちですね。今回は私含め三作品が。仕方ないのかなw私もしんさんと同意見で、「これ片方が女の子だったら普通に萌えるのに…!」と思いながら読みました。>しんさんの作品(二作目)ううむ、ちょっとわかりにくかったです。****=ケッコンで、「血痕」と思ったら「結婚」、つまりプロポーズだったということですか?彼氏の意図としては、ハマグリが夫婦の象徴という意味で、プロポーズをしているものだと私は受け取りました。ただ、そうすると>血の跡が、白いのは、きっと、血痕が白いのだ。>赤いはずの血を白く描いたこのへんがよくわからず…解説が欲しいところです。---感想への返信--->しんさん本当はルビをつけれるサイトに投稿するべきですねえ。読みにくくてすいません。二人の関係性は、確かにもう少し掘り下げないと物足りないですね。>卯月 燐太郎さん米軍による初の日本本土空襲は、1942年のB-25による東京空襲(ドーリットル空襲)です。B-29については、当時はまだ初飛行すらしていませんが、発注自体は1940年に既になされています。よって、1941年時点で特務機関がアメリカの次の一年の戦略を把握していれば、「米軍が本格的な日本本土空襲を最新爆撃機B-29によって行う」というのは予想しうる事態だろうと考えた次第です。広島は、おっしゃるとおり、悲劇を予感させる要素として出しました。>toriさんストーリーのテンポが早かったということですかね?しんさんにも言われたとおり、キャラクターが生きていないというのがあるのかなと反省してます。
>>星野日さんペロ!(だつぼー!)です。でした。>>卯月燐太郎さん美大進学、ときくとついつい「美大ぃ? 行くな行くな」みたいな話を連想しがちだったのですが、いいお父さんでほっこりしました。詳しくなくて岩絵具を買ってくるというのが効いてるなと思います。>>しんさん(三題漫才)三語の扱いがむりなくかつコンパクトで「おっ」と膝を打ちました。(えもいわれぬ)面倒な友人とはいいますが、この話、男のほうがそれに輪をかけて面倒ですよね……。だじゃれがわかると読んでる側も馬鹿らしくなるというかなんというか。「私」もなかなか奇特な方です。>>Azuさん話の中身(メッセージ?)とはぜんぜんべつのところで、美術館へ赴くきっかけが「テレビのコマーシャル」で、機械の絵を描いてみたきっかけが「ニュース」なのがなんだかおもしろく感じました。>>Φさんかっこよすぎです。>>toriさんおばあちゃん!を描く男の子! 萌え!でした。かといっておばあちゃんっ子かどうかはわからないので、それもまた萌え、みたいな。