あーなんか言いたいことはいろいろあったけど、とりあえず4月の残業がこのままいくとやばいらしいから、5月は残業を控えたいらしい主催者です。懐中時計はもうそろそろ日付が変わります。GWなんてないなら、残業しなくていいらしい。え? 違う? 今年は休みが少ないから、まだまだ死ねないって。それはまだまだ殺せないってことじゃ……川縁の青柳は静かに揺れるだけ。締切り、ミーティングも5/6です。注意願います。 -------------------------------------------------------------------------------- ●基本ルール 以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。 ▲お題:「懐中時計」「青柳」「まだまだ死ねない」 ▲縛り:なし ▲任意お題:なし ▲投稿締切:5/6(月)23:59まで ▲文字数制限:6000字以内程度 ▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません) しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。 ●その他の注意事項 ・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要) ・お題はそのままの形で本文中に使用してください。 ・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。 ・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。 ・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。 ●ミーティング 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。 ●旧・即興三語小説会場跡地 http://novelspace.bbs.fc2.com/ TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。 -------------------------------------------------------------------------------- ○過去にあった縛り ・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など) ・舞台(季節、月面都市など) ・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど) ・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど) ・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど) ・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など) ・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など) ------------------------------------------------------------------------------
とある老人の日常 老人はロッキングチェアーに揺られ、ぼんやりと眺めている。テーブルの上には半分まで空けたグラス、懐中時計が開かれて置かれている。午後の心地よい風に青柳が靡く。時間を忘れそのまま眠気に誘われて…… 老人は既に止まっていた。どんな夢を見たのだろう。または過去の回想。苦痛のないその表情は安らかともいえる。繰り返しロッキングチェアーに揺らされると、腕は垂れていた。 日も落ち、部屋も暗くなる。 老人の額から補助灯が照らすと、老人は起動し体を起こす。溜息一つ。 まだ、まだ死ねないのか…… 機械化した体の自分を呪う。長生きしてねと老人に勧めた家族にも恨みが込み上げてくる。懐中時計を口の中にしまい、家族から送られてくる映像を頭で処理し、スリープモードに切り替える。 味気ないオイルの残りを流し込むと、留守番を頼まれた老人はまた、ロッキングチェアー型充電器に座り、一人揺られる。
死刑執行 過疎の町の山里に建てられた刑務所には三千人に及ぶ犯罪者が収容されている。 年ごとに犯罪者の数が増えるのは時代の流れか。 刑務所の近くに河川があり土手には柳が植えられているが、夏にもなると葉が青くなり青柳が風にゆらゆらと揺れて、のどかな風景で見る者の心を穏やかにさせる。 野沢はバスに揺られ土手を幾度もなく通った。 野沢がその日、刑務所に来たのは、死刑執行が間近に迫った受刑者Aに静穏な死を迎えてもらうためだった。 Aは三人の者を殺していたが、物的証拠などから、正当防衛ではないかと思えるようになった。 だが、A自身がそれを否定して、判決通りの死刑を望んだのだ。 野沢は、弁護士として最善の努力は尽くした。 妻と娘を亡くしている野沢はコンビニで買った弁当をバスの車内で食べた。青柳の葉が窓からひらひらと落ちてきて、白米の上に青いコントラストを作った。野沢は青柳の葉ごと白米を口に含んだ。少し苦い味がしたが、それは今回の弁護活動の結果を意味しているのかもしれない。 Aと話し合い事実確認をして弁護に何を望んでいるかわかるにつけ、野沢は、自分の無能力ぶりを思い知らされた。 三人の者を殺しはしたが、正当防衛に他ならないと野沢は考えていたからだ。 だからその方向で弁護したかったが、A自身が死刑を望み、自分に不利な発言をした。 以前、面会した時に野沢は尋ねた。「どうしてあんな発言をしたのですか?」「生きていても、仕方がないからさ……」「このままだと、判決通り死刑になってしまいます。Aさん、上告しましょうよ」「私は、死刑を望んでいる」「どうしてなのですか? たしかにあなたは三人を殺したかもしれない。しかし、あれは正当防衛でしょう。彼らが、あなたを殺そうと、車や刃物で襲ってきたから、あなたは対応しただけだ。その結果、彼らが死ぬ羽目になった」「どちらにしろ、私が存在していたから、彼らは亡くなった。だから、私は死刑になっても異存はありません」 死刑三日前の面会室で、Aは穏やかな表情だった。「何か、伝えたいことはありますか? 親族の方でもよいし、知り合いの方でもよいですよ。もちろん私にでもよいです」 Aは微笑を浮かべると「せんせい……」と呟いただけで、面会室を後にした。 当日午前十時前に懐中時計をスーツの懐から出した野沢は、時計が十時を三十分ほど過ぎるまで見ていた。 終わったか……。 野沢が弁護士事務所を出たのは夜遅くになってからだった。 駅前の屋台でおでんをあてにコップ酒を飲んでいた。「お客さん、あんまり飲んだら体に悪いですよ」 屋台のおやじが身体を気遣って声をかけてくれた。 野沢は酔っていたのだろう、屋台のおやじにAのことを話した。「そうですかい」そういいながらおやじは蛸(タコ)を出した。 蛸は生きていて、のらりくらりとおやじから逃れようとしている。 おやじはまな板の上で包丁を使い、蛸の脚を切り取った。 一本、二本、そして三本。 だが蛸は「まだまだ死ねない」とばかりにまな板からするりと路上に落ちた。そのまま路上をするすると動いていく。 おやじはそれを見て捕まえようともせずに「生きようとする生命力があるのですね」と言った。 切り取った脚を串に刺しておでんのタネにした。「おやじさん蛸を捕まえないのですか? 川に逃げちゃいますよ。もう橋の袂まで近づいています」「ああ、いいのですよ。その方に何があったのか知りませんが、本当は生きたかったのでしょう。しかし事情があったのでしょうね」「事情か……。もしあるとすれば何なのかな」「あの蛸は生きるために他の命を自分の物にしています。その命は三匹ではないでしょう。数えきれないほどの命を自分が生きるために食ったのでしょう。しかし、まだ食い足らないらしい」 野沢はお金を支払うと屋台を後にした。「仮説としては可能だな……。三人以外にも殺しをしていたかもしれない」 野沢は自宅に帰ると、仏壇の前に座り、妻と娘の仏さんに線香をあげながら、「きっと犯人を捕まえて償いをさせてやるからな……」と誓った。―― 了 ――お題:「懐中時計」「青柳」「まだまだ死ねない」
お題小説初めてですし、時間制限もオーバー(75分)し、内容むちゃくちゃかもしれません。ドリーム・タイム・デット・トラベル 俺は、走っている。 暗くなった道、その横で揺れる青柳。「こっちにいるぞ!」 後ろから、怒号と銃声が聞こえた。 街中で発砲?! ありえない、がそれ以上に俺の命が危ないことを確信した。 だから、このままさらに加速する。足には自信があった。 追いつかれたら殺される。 その核心だけを持って俺の知らない街を疾走していた。 目の前に、ちょうどいい小屋を見つける。 中に入る。真っ暗で、じめじめしていて気持ち悪いがこの際なりふり構っていられない。十分ぐらいたっただろうか。「チッ どうやら見逃したようだな」 という話し声が聞こえ、足音が遠ざかる。 小屋の壁にもたれかかりながら安堵の息を漏らしつつ思わずつぶやく「なんで、なんで俺が追われているのだろうか……」 しかし考えても全く分からない。 なんとなく、ズボンのポケットを探ってみると…… 先代から受け継がれてきた、俺が子供のころからよく使う懐中時計があった。古ぼけた、何の変哲もない懐中時計。 その、懐中時計の針がありえない速度で巻き戻っていく。 驚いて見つめていると、時計が白い光に包まれ…… 俺の意識はそこで途絶えた。 熱風を感じ、目を覚ます。 そこには、ありえない光景が広がっていた。 地獄の光景だった。 あたり一面火の海。川は赤く染まり、防災ずきんをかぶった子供たちが裸足で必死に走り、川に飛び込んでいく。 火の手はどんどん広がっていき、すべてものを焼き尽くす。 俺は、また訳も分からないまま命の危険にさらされた。「なんなんだよ! くそっ」 毒づきながら、生き延びる方法を考える。 このまま逃げるか? いやだめだ。追われているわけでもないし火災なら逃げても意味はないだろう。 目の前の川に飛び込むのは? それで、いいだろう。 自問自答をして、川に飛び込む。着水する瞬間、俺は白い光に包まれる。 今度は!なんなんだよ! またしても、わけのわからぬ状態で意識は途絶える。 気が付くと、俺は戦闘機に乗っていた。 しかも、体の自由がきかない。 俺が、他人の視界から見ているような、そんな不快感があった。 その戦闘機は、船に向かって攻撃する。 戦争なのか? 思っているそばから激しい戦闘が続く。 機銃のリズミカルな音が鳴り響き、爆発音がどこかしこから聞こえる。 やがて……戦闘機が船に突っ込む。 おいおいおい!死ぬ!死ぬって! と思ったら白い光に包まれる。 なんなんだよ!くそっ! そのあと、俺は次々と危険な環境に追われた。 狙撃されたり、津波にあったりだ。 しかし、死ぬ! と思った瞬間に白い光に包まれ、気を失うのだ。 しかも、だんだんと包まれるまでの時間が早くなっていく。 目が覚めた瞬間俺にいきなり男が刀で切りかかってくる。 もうむちゃくちゃだ!などと思ったら白い光に包まれていく。 そしてまた目が覚める。 そこは、何もない部屋だった。 その真ん中に、少女が立っている。 少女が話しかけてきた。「おもしろかった? 怖かった? ちなみにね、今日見た景色はすべて本当にあったことだよ。また、来てね?」 と、少女が言い終わると同時に気を失う。 最後に気が付いたのは、自室のベッドの上だった。 何の変哲のない、本やゲームが置いてある見慣れた俺の部屋。「夢……だったのか?」 起きた俺は、懐中時計を手に取る。 懐中時計は鈍く白い光を放っていた。 そして、俺の背中に、冷たい鉄が刺される。 血が流れていき、体温が低下していく。 俺は、まだまだ死ねない! 死にたくない。心からそう思った。 そしたら、夢で見た真っ白い光に包まれ…… 夢の中で最後に来た真っ白な部屋に来た。 少女がこちらを見る。「あれ?こっちに来ちゃったんだ。ここに来るって、すごいことなのよ?」と笑う。「すごい……?」「そう、ここは『懐中の部屋』 初めて来た人限定で、懐中時計の秘密を語っちゃおうってずっと待ってたんだけど百年近く誰も来なくて、君が初めての来訪者」「懐中時計?」「あら、知らないで来たの?まぁ、それもあり得るか。」「なーんだ、つまんないの。じゃあ、そのまま返しちゃお。真相を知りたくなったらまた来てね」「え?」 俺は、気を失った。 目が覚める。俺の部屋のベッドだ。体は健康そのもの。刺されたことが嘘のように。 刺した男はいないか目回してみるが、いなかった。 終わった。そう感じた。懐中時計は引き出しの奥深くに押し込んだ。 この経験の後、俺は懐中時計の真相を調べてみることにした。 しかし、そんなものあるわけもなかった。 だから、夢の中でまたあの少女に会おう。 夜、夢の中で少女に会う。「また来たってことは、懐中時計の秘密を知りたいってこと?」「ああ」「じゃあ、話すね」 と、少女は説明を始めた。 少女の話をまとめると。こんな内容だった。 呪われた懐中時計で、所持者が必ず何かしら危険な目にあい殺される。 そして使用者の死ぬ直前の記憶を、懐中時計が次の使用者に見せる。 その記憶を見終わったら、使用者が殺される。そのループだ。 俺は、強くいきたいと願ったから助かったそうだが、ほかの使用者は 仕方ないと諦めてしまったらしい。 少女の長い話が終わり、俺は、白い光に包まれる。 俺は、それから何もなかった。 懐中時計は、もう出さない。 そう心に誓い、過去の犠牲者に追悼をしつつ、 また、新たな日常を歩いて行こう。 この経験を――役立つときがあるかはわからないが――役立てながら。 fin
カーショ、カーショ、カーショ、カーショ。柔らかい金属を軽く叩くような音が、静寂の中で響く。ステップを踏むみたいに軽快だ。寸分のくるいもなく、一定のリズムを踏んでいく。カーショ、カーショ、カーショ、カーショ。 そう、時を刻む懐中時計の音は、常に同じリズムを保っている。彼が幼い子供だった時分から、ずっと。 彼は音を聞きながら、布団の中で寝返りを打つ。どうも床の中の体勢が定まらず、心地が悪い。そんな時に、頭が止むことのない柔らかな金属の音を捕まえてしまった。薄く、脳味噌の周りに漂っていた睡魔が、煙のようにふっと消えた。眠気の霧を突き抜けたその音は、一定のリズムで、鋭く頭に響き続ける。 眠れそうになく、気付かぬうちに、彼の意識は音の後を追いかけていた。ただひたすら、聞こえた音を、頭の中でなぞっていく。一定のリズムを。しばらくそうしていると、ふと、妙な感覚が脳裏をよぎる。 時計が刻む「時」は、こんな風に一定だったろうか。 その考えに当たってすぐ、彼の頭に別の言葉が浮かんでくる。まるで、二つの言葉が紐か何かで繋がっているみたいに。 時間は、禿げで老いぼれの詐欺師なんだ。 この妙な喩をしたのは誰だったか? たぶんイギリスかどこかの、昔の詩人だろう。そいつが誰であれ、どうでもいいことだ。しかし―― この喩を知ったのは、おそらく大学時代だ。何十年も昔。彼は英文学科の学生だった。当時は、言葉の真意が分からず、それでも――いや、それだから、魅力的に思った。ちょうど、卵と鶏のどちらが先か、という答えようのない問いが、不思議な吸引力を持つように、魅惑に満ちていた。 しかし、今はその言葉の正体がはっきり分かった。イギリスの詩人がどういう意図で言ったかなど、関係ない。一瞬にして、彼の脳はその言葉を、咀嚼し、呑み込んだ。そして彼の内奥にある醜も美もぐちゃぐちゃに混ざり合った魂に、すっと溶け込んできた。 詐欺師は「時」がたっぷりあると見せかける。少年期、無数の輝かしい「時」が彼を囲んでいた。彼はその一つ一つを捕まえるように、飛び回り、それでも「時」は溢れていた。青年期には、彼を囲む輝きは、ぐる、と暗く、重く、じめりとしたものに姿を変え、前途に影を落とした。永遠に苦しみが続くものと思わせた。心に痛みを感じながら、それでも暗闇から飛び出そうと遮二無二なった。しかし、どうあがいても少年時代のような輝きは、取り戻せなかった。働き始めた時は、その苦から抜け出したようなそうでないような、中途半端な状態だった。それからは、忙しさにかまけて、青年期に感じた精神の痛みなど、忘れてしまった。ただ、ただ、仕事をした。働いて、働いて、働いた。そして、ふっと気が付いた。自分が禿げた老いぼれであることに。たっぷりあったはずの、永遠に続くはずの「時」は、まるで手品のように、布をさっとまくり上げた時には、なくなっていた。 懐中時計の裏側には、子供の頃母が書いてくれた「青柳」という彼の姓が、はっきり残っている。その時から、変わらぬてらてらとした光沢を湛えて、同じリズムでステップを踏むように、「時」を刻む。様変わりしたその周囲のことなど、気にも留めないように。そして、この詐欺師はまだ何か企んでいる。そう彼は思った。時がたっぷりあると見せかけ、奪い去った後、その残された僅かの時間を、スローモーションで進めていく気だ。彼には、もう分かってしまった。 カーショ、カーショ、カーショ、カーショ。 彼は、まだまだ死ねない。----------------------------------------久々の三語です。大体一時間くらいで書きました。よろしくお願いします。
優しい柳 それは、ちょっと昔。 まだ、人と自然が共存して、お互いがお互いを大事にしているそんな時代。 あるひとつの町のお話です。 その町は、人が行き交う要所とし、大きくなったのですけど、結局は通り道です。そこそこという程度でした。とりたてて名物があるわけでもなく、特殊な技術が受け継がれているわけでもない。とりたてて珍しい物はありません。どうしてもと一つあげれば、そこには立派な青柳があるくらいでしょうか。 何も特徴のないこの村に何か一つ、と誰かが植えて、それを町の人々で大事に大事に育てていつの間にやら、他ではみないほどの立派な青柳となっていったのです。 ある日のことでした。 青柳に異変が起こりました。 村の人々が口々に噂にしています。 おい、柳のこときいたか? おお、きいたぞきいたぞ。枝、おれちゃったらしいな。 そうです、非常に雄雄しい柳は、枝も太く、おいそれと折れるものではありません。それがぼきりと折れているのが見つかったのです。 しかも、あれだろ、太い枝がぼっきりと。 そうだよ、あんなの折ろうったって折れないよ。 折れた枝は、柳の根元においておかれていたのです。同じくらいの枝、近くの枝を揺すっても微動だにしません。その枝が何故かぼっきり折れているのをみて、みな不思議がっていました。 しっかし、なんでおれたんだろうな。 さぁな。 それを聞いていた男が一人、ぼそっとつぶやくように言いました。『優しいからだよ』 そういうと、きらきら光る懐中時計を手に、その場を去りました。 しばらく噂話はされたものの、原因ははっきりせずに、偶然なにかの拍子の折れたんだと、誰も理由を解明しようとは思いません。 そして噂が消えた頃、また枝が折れたのであります。 やはり、前と同じく噂だけが氾濫します。 けれども、犯人はわかりません。そもそもどうして折れるのかわからない。ためしに力自慢が数人集まって、いくつかの枝に縄をかけて引っ張ってみたのですが、全くといって動きません。まだこの時代重機などもありませんので、自然に折れたのではないか、としか結論がでませんでした。 それから、時折、不思議なことに同様の事件が起きるようになりました。 その度に色々試してみるのですが、何故折れるのか全く判明しませんでした。 最初の一本が折れてから、三十年ほど過ぎた頃、とうとう、最後の一本が折れてしまいます。 町の人々は嘆きながらも、原因がわからないので、これが寿命なのかもしれない。と半ば諦めていました。 そこに一人の紳士が現れます。身なりがよく、付き人をつれていたので、一角の人物であることは一目でわかりました。 裸になり、今にも死に絶えそうとしている柳を見て、老人は苦渋の表情を浮かべ、今にも崩れそうにしています。 そして、意を決すると、紳士は動きました。 役所へ行き、直談判を行い、柳を土地ごと買取り、保護のためにまわりに柵を設けるための工事を開始しました。 不思議なことでしたが、全て順調にすすみました。 ある役所の役員はいいました。「あの柳には、恩があるんだ」 工事を依頼しにいった業者はいいました。「うちがやらずしてどこがやるんだ」 柳の保護するために、各所へ働きかけると、不思議とみな、柳に恩があるという口ぶりで手伝ってくれるのでした。 そして紳士が工事の進捗状況を確認したときでした。 一人の身なりの貧しい男が近づいてきます。体格が細く、頬もこけていて、満足に食事もできない立場であることがわかります。 そして男は紳士の前に行くと、「すみません。私も手伝わせていただけないでしょうか」 と覚悟を決めたような目で訴えてきます。「お前さんは……なんで、」 とここで紳士は少し考えてから、さらに聞きました。「枝が折れたと思うかね?」 本当な何故手伝いたいのか、と聞くつもりだったのですが、心に響くものがあったのでかえたのです。「この柳が、優しいからです」 男は答えます。 紳士は目を細めて、懐から懐中時計をとりだしました。「これは、年代物になっちまったが、それゆえいい値段がつくだろう。これをやるから、質屋にもっていくなりして、それを元でにもう一回頑張ってみるがいい」 男は紳士の言葉に、はっと顔をあげ、驚きました。何故そんなことをしてくれるのかわかりません。「わしは、最初の一本だったんだよ。きみが最後の一本なんだろ? わしもそれでここまでこれたのだ、きみだって、まだ大丈夫だよ」 そういって懐中時計を男におしやって、紳士は去っていきました。 それから、柳は死の淵からは快復たのですが中々枝が増え緑を戻すにはいたりません。 紳士は全力をもって、栄養を与え、災害から守り、大事に保護してきたのですが、元の青柳に戻すことはできていません。 それでも、現状維持で十年経ちました。 柳が快復する前に、紳士が床へ臥せってしまったのです。 紳士は、うわ言でいいます。「恩返しはすんでいない」「まだまだ死ねないのじゃ」 そのようなことを何度も何度も言います。 柳の快復を見届けないと死ねないと。 そこへ、一人の男が訪れました。 紳士が寝込む床の横にくると、懐から、懐中時計を取り出します。「ありがとうございました。貴方と、そして柳のお陰でこうやって生きています」 男の身なりは、以前と全く違い、きっちりしていて、その懐中時計に見合う男になっていました。「貴方に、そして柳に、恩返しをするためにやってきました」 それからしばらくすると、紳士は安心したような安らかな顔で息を引き取りました。 そして懐中時計をもってきた男により、柳の保護は続き、とうとう枝ぶりが快復して、元の立派な青柳へと快復しました。 そして側に神社が建てられ、御神体、御神木として祀られます。 もうこの青柳に縄をかけて首を吊ろうという人はいません。 今、青柳にかけられるのは、願をのせた札であります。 人々の願いをかけられた枝は二度と折れることはありませんでした。 だってこの青柳は優しいのですから。
懐中時計は思う スマホにアイフォンにテレビにパソコン、その他もろもろ。今は多機能が当たり前の時代。 ただ時間を進めるだけの私達の需要は低い。とは言え、それほど悲観しているわけでもない。毎日がそれなりに楽しいから。チッチッチと私達は小さな声で会話する。 黄色と黒の縞が鮮やかな、早口な彼が買われて行った。みんな元気でねと、ケースから出され、リボンを着けた包装紙に包まれて、外の世界へと出て行った。羨ましくも皮肉交じりに、誕生日に時計なんて、せいぜいデート三回がいい所ね、別れたら二度と使って貰えないわと。この店で、一番豪華な宝飾で綺麗なアンナさんは、自慢の鼻を震わせ笑っていた。私達の鼻と言えば短針。そんなアンナさんが売れ残りのお局様だなんて、秒針が折れても決して言ってはいけない。安くてそれなりのデザインのは入れ替わりが激しい。彼らを何個見送ったのか、そんな機能は私に付いていないので分からない。 飽きられて、どこかに仕舞われたら、二度と出してはもらえないだろう。闇の中で他に追いやられた小物に時間を教えるだけだろう。それならまだしも、止まったら、私達は無口になる。この思考も失うのだろうか、それを思うとちょっとだけ時間が狂いそうになる。 そんなとき、一番大きい百年時計の青柳さんの笑い声を聞くとホッとし、修正できる。これからも青柳さんとアンナさんの売れ残りは鉄板間違いなし。 なぜ蓋が付いているのかよくわからないが、私は閉じられるその日を夢見る。ああ、眠ることなんてなかった。その日まで、まだまだ死ねないと言い変えよう。私達は、秒針が止まるその時まで、小さな声で会話する。
カエリタイ 青ちゃんが僕を捨てたのはついこの間のことで、僕にはこれが本当にあったことだとはまだ信じられない。 だって僕らが出会ったころ、彼女はいつでも僕を見て、微笑んで、時には撫でてくれていたんだ。彼女はあんなにも僕のことを好きだったのに。「時間よ戻れ、時間よ、止まれ」「もう止まってんじゃんねえ」 がらくたの上から腕時計が言った。 だから、俺らこんなところにいるのさ。いぶし銀の腕時計は一人ごちた。 僕の荒れ果てた心は一瞬、奇妙に澄んだ。 もう会えない、もう会ってはいけない。だけど会いたい。 僕はこれから死に損ないの爺にどうにかされてしまうのだから、一目、一目だけでも。 ああ、足があれば走っていくのに。 こんなところで分解されて、僕は、僕は……まだ死ねないんだ!「で、どうすればいいですかねえ」 薄暗い時計店にて、店主である初老の男が、若い女性につぶやいた。「ねえ。青柳さん。これ、いわく付きなんですかね」「いや、そんなことは」 青柳と呼ばれた女性は店主の持つ懐中時計を震えながら見下ろした。 修理に出してていたその懐中時計からは、二本のひょろりと細い足が生えている。 それは無言のまま、彼女に向かおうと店主の手のひらの上で、ばたばたと不気味にうごめいていた。 店主と女性は神妙な面持ちで言う。「捨てましょう」完飛び入りです。
僕は懐中時計を地面に叩き付けて、バラバラになったそれに放尿をした。メタリックな懐中時計はさらに尿できらきらと光った。「おい、馬鹿野郎」 と声がかかった。振り向くとそこには青柳がいた。思い出したくないが、こいつとは中学生の頃、好奇心で何度かアナルセックスをした。いまでは「馬鹿野郎」とか「この野郎」とかを、ふつうに言い合う、ふつうの仲だ。お互いに27歳のニートであった。「何してんだ馬鹿野郎」と青柳。「みればわかるだろこの野郎」と僕。「どうでもいいか馬鹿野郎」「そんなことより酒でも飲もうぜこの野郎」 そうして僕たちは酒場へ行った。焼き鳥が一本80円のところだった。あまり客はいなかった。「最近どうだ馬鹿野郎」 と青柳は言った。「死にたいぜこの野郎」 僕はそう答えた。「まだまだ死ねないぜ馬鹿野郎」「そうともこの野郎」 そう僕は答えた。 複雑な事も、青柳と会話することで、解消され、救われると思った。こいつを大切にしようとつくづく思う。
垂れた青柳の枝が障子に影になって映り、ゆらゆらと揺らめく。 午後の日差しは既に夏の様相をみせ、日もまだ高く懐中時計で時刻を見ると、思いのほか時が経っていることを知らされる。 孫たちが帰ったあとの大きな農家の家は静まり返り、ひとしおの寂しさもやってくる。しかし、家の軒下では燕が子育てに勤しみ、親鳥と雛鳥の声がする。 まだまだ死ねない、とその老人は懐中時計の蓋を閉じて思う。「おじいさん。燕のヒナが大口開けて、待っとる」 老妻が「青柳」という名の煎茶を入れながら言った。「知っとる。あとどれくらい見られるかのう」 老人が茶をすすり、呟くように言った。
卯月 燐太郎様長編小説の出だしですよね。Aの過去などを深く掘り下げてと、真相を期待してしまう内容でした。Azu様ループ物、怖いですよね。形にできて羨ましく思います。Zooey様青柳、やはりこれがネックですよね。私と同じ気持ちかなと思ったりしました。しん様見事ですね。オチも素敵です。素晴らしいですと感動してしまいました。御馳走様です。葉月あや様不気味ですけど面白味がありますね。切り捨て方も素敵です。昼野様前後の前が気になりますが、知ったら後悔してしまいそうな手腕が窺えます。マルメガネ様雛と孫、老人の心情が短いながらも上手いなと。
近所に湖がある。汽水湖である。 さっさといってしまえば浜名湖である。 この浜名湖でバガガイを食った。むかしから潮干狩りの客を誘致しているところで、本来の目当てはむろんのことアサリである。ところが今となって憶えているのはただただバカガイのことだけで、その外のことはなにひとつとして鮮明でない。もう十四、五年も前だ。頃日のことではない。 つい先日、さる短篇を読みかえしていてそのことを思いだした。ややこしい連想のうちにまろび出てきたのであるから、煩雑と退屈をさけて詳らかには書かない。要するにありがちな郷愁である。 バカガイのこと、というのは二、三の光景について。 浜は貝掘りの行楽客でごったがえしていた。 そのなかに混じってクマデをつかっていると、私のすぐ傍で「そんなもん捨てろ捨てろ」という声がする。 ふいとそちらをみると三〇いかぬ男が息子らしい小さい児にむかって笑っている。笑いながら顎で「捨てろ」のしぐさを繰りかえしている。 子どもの手には掌からあふれんばかりのおおぶりなバカガイが握られている。 父親がなおも顔に笑顔を浮かべていると、子どもの方も嬉しそうな顔になって、近くの海面へおもいきりそのバカガイを叩きつけた。飛沫が口のなかへ撥ねかえってきたらしく、異様に興奮したふうでけたたましく笑った。 それからまた、場所をもう少し移して掘っていると、子どもが十数人も連れだってやってきた。なにか遠足のようなものとみえて、引率の大人が三、四人ほど、舟を曳きながら随行していた。うち一人が、ポロシャツの胸ポケットから懐中時計を取りだして時間をみていた。それがずいぶん偉そうな態度にみえ、また水辺に持ってくるなんて迂闊な、という気がした。迂闊な、とおもい、なんだか気の毒のようにも感じた。 十数人の子どものうちの一人が、これまたいやにでかいバカガイを見つけて得意になっていたのだが、懐中時計の男とはべつの大人の屈強そうなのにそれを見せびらかすと、男は「貸してみ」と子どもから貝を受けとり、「寿司屋じゃこれを青柳っちゅうだに」 得意げに言って、曳いてきていた舟のへりに叩きつけた。 卵の殻が砕けるようにして中身を覘かせたそれを海水でざぶざぶと洗うと「舌べろのところを食べるだよ」とつけ加えながら子どもに突っかえした。子どもはそれを食い入るようにしてみていた。 それをみていた私も、つられてバカガイを獲って、食った。 彼らの舟をつかうわけにもいかず、水際まで戻って石蓴まみれの岩にぶつけた。海水で滌いだ。 それからたしかに食ったのだ。 ――ところが味を憶えていない。 青柳の握りを食えば思いだすか。そうともおもわれない。けだし、感傷のせいである。なんでもないような記憶が、肝心なところを憶えていないせいでかえって気にかかる。たまらなく忘れがたい出来事であるような気にさせる。思いだしたくて仕方がないのに、思いだしてしまえばそれっきりこんな記憶はどうでもよくなって、消えてしまうにちがいない。 もちろん、ほんとうは消えたってかまわないのである。いまはそれがなんとなく惜しい気がするというだけだ。ふとした瞬間、舌にその記憶がよみがえる。それで満足してしまう。いいじゃないか。ふいとそういうときが訪れるかもしれない。望むところだ。まだまだ死ねない。
感想をば・霙さんとある老人の日常ストーリーの一部分という感じですかね。ストーリー性がないですね。個人的には、三つの言葉を使用しつつただ文章描写するのではなく、ストーリーがほしいです。懐中時計は思うこちらもストーリーの一部分というかんじで、ストーリー性がないですね。ただこちらのほうが、何かを期待してしまいます。なにか少し肉付けすると、ストーリーになりそう。・卯月 燐太郎さん死刑執行纏まっていていいですね。最後少し謎めかしながらも、それが答えだとにおわす終わり方もいい感じです。描写について、自分もうまくないですし、時間制限も一応あるのでチェックミスなのでしょうけど一箇所だけ気になったので書きます。夏にもなると葉が青くなり青柳が風にゆらゆらと揺れて『葉が青くなり青柳が』 青がかぶっているので『葉が色づき青柳が』くらいのほうがいいかな?見直すと自分のものもミスだらけなので、いえたものではないのですが。・Azuさんドリーム・タイム・デット・トラベルこちらも纏まっていていいですね。世にも奇妙な物語 みたいでよかったです。・zooeyさん時間について、老いについてですかね。ストーリー性がないですね。個人的には、三つの言葉を使用しつつただ文章描写するのではなく、ストーリーがほしいです。・葉月あやさんカエリタイコミカルですね。短いからこそ、いい感じに面白いのですが、ちょっとわかりにくかったです。状況を説明する文章がもう少しだけほしいかもしれません。・昼野さんストーリーの一部分という感じですかね。ストーリー性がないですね。個人的には、三つの言葉を使用しつつただ文章描写するのではなく、ストーリーがほしいです。・マルメガネさんストーリーの一部分という感じですかね。ストーリー性がないですね。個人的には、三つの言葉を使用しつつただ文章描写するのではなく、ストーリーがほしいです。・はさんもう一つ何かアクセントがあれば、すっきりすると思います。死んだ肉親にすすめられたり、あこがれていた異性にすすめられて、思い出すなどであると、綺麗にはまるのですが、ただの郷愁だと、個人的に少し足りないです。総評個人的には「小説」と「文章」をわけるのはストーリー性だとおもっていますので上記のような感想になりました。ストーリーの一部分を抜き取ったような描写だと読んでいても私はあまり良いと思えません。そこらへんのイメージが違う方には申し訳ありません。みなさん「青柳」でとくに苦戦されたようですね。個人的感想でありました。
「三語」感想9人分」霙様「とある老人の日常」読みました。近未来の物語で「尊厳死」に近い物が描かれていますね。SSなので、ABのようなユーモアが描かれるのでしょうか。A>老人の額から補助灯が照らすと、老人は起動し体を起こす。<B>懐中時計を口の中にしまい<C>老人は既に止まっていた。どんな夢を見たのだろう。または過去の回想。苦痛のないその表情は安らかともいえる。繰り返しロッキングチェアーに揺らされると、腕は垂れていた。<Cは、よく、出来ていました。この時点でオチに気が付きませんでした。>まだ、まだ死ねないのか…… 機械化した体の自分を呪う。長生きしてねと老人に勧めた家族にも恨みが込み上げてくる。<これは、「尊厳死」とかを考えると、よくわかります。また老人は「味気ないオイルの残りを流し込むと」と言うことで、体をスムーズに動かすためにオイルが必要なのですね。いかにも、家族は老人を長生きさせたいようですが、自分たちはどこかに出かけ、老人には「留守番」を頼んでいる。>ロッキングチェアー型充電器に座り、一人揺られる。<この締めが近未来型を思わせます。短いのに、よく描きました。――――――――――――――――――――●霙様への返信 (私の作品「死刑執行」)>>長編小説の出だしですよね。Aの過去などを深く掘り下げてと、真相を期待してしまう内容でした。<<●掘り下げたら、どんどん深く掘れそうですね。長編は自分の実力では無理でしょうね、短編(100枚以内)とまりと言うところです。お疲れ様でした。===========================Azu 様「ドリーム・タイム・デット・トラベル」読みました。>お題小説初めてですし、時間制限もオーバー(75分)し、内容むちゃくちゃかもしれません。<話の展開のさせ方がうまいですね。次々と、主人公が危機に陥る。そして白い光と共に脱出。また、この作品の良いところは、説明ではなくて、エピソードで描いているところです。だから、迫力があります。―――――――――――――――――――――――●問題はラスト近くのAのあとですね。A>>目が覚める。俺の部屋のベッドだ。体は健康そのもの。刺されたことが嘘のように。 刺した男はいないか目回してみるが、いなかった。 終わった。そう感じた。懐中時計は引き出しの奥深くに押し込んだ<<――――――――――――――――――――――――――●Aのあと、こうすると、ドラマはまとまると思います。主人公は危険を感じて懐中時計を質屋とかに売る。なかなかの骨董物で高く売れる。それからは平和な日々が続いていたが、テレビのバラエティ番組で「世界の変わったニュース」という特番で、殺人事件のニュースを知る。殺人事件がテレビで「再現」される。それは人が殺されるのだが、その前に犯人は別の者を殺そうとしていた。ところが、殺すその瞬間に相手は白い光とともに消えて、別の者が現れたが、すでに銃の引き金を引いていたので、間違った相手を殺した。そして犯人の実際の写真がテレビに映る。その番組を観ていて主人公は驚く。これは俺が経験したことではないか。俺は確か、この写真の男に追われていた……。しかし、その事件は50年前のことだった。自分の年齢はまだ30歳。計算は合わないが、太平洋戦争の爆撃直後の火災も経験している。どうも、不思議だが、すでにあの懐中時計は売り払って手元にないので、もう何も起こらないだろうと思っていた。●ところが、すっかり忘れたころに街を歩いていると横断歩道の方で悲鳴が上がった。主人公とは30メートルほど離れている。見ると大型トラックが信号を無視して突っ込み、歩行者を跳ねようとしていた。次の瞬間歩行者が白く光り消えたと思うと、主人公がその場にいた。主人公は亡くなるわずかな時間に「少女の呪われた時計の真相を聴く」。――――――――――――――――――――――――――こんなところで、いかがでしょうか。お疲れ様でした。========================zooey様作品読みました。時間に対する観念と言うところでしょうか。私たちは同じ時間の中を生きていますが、一〇歳の子供が感じる一年と三〇歳の大人が感じる一年とは違うのですよね。もちろん七〇歳の老人が感じる一年も違う。どう違うかと言うと、脳科学の問題だと思いますが、一〇歳の子供の脳は物を吸収するのが早いです。ところが三〇歳の大人になると、子供のころと比べると、物覚えが悪くなる。七〇歳の老人になると脳が老化しているので、ますます物覚えが悪くなる。その結果どうなるかと言うと、時間の感じ方が子供と大人、そして老人とは違ってくる。子供は一年を長く感じて老人は短く感じる。「もう、一年たったのか……」てな、感じです。―――――――――――――――――――――――御作は、そういった時間と年齢の関係を描いた作品だと思います。>>時がたっぷりあると見せかけ、奪い去った後、その残された僅かの時間を、スローモーションで進めていく気だ。<<だから、これは逆ではないですかね?年を取るほど、時間の経つのは早くなるので、早送りで時間が動いているような感じではないですかね。子供のときは時間がスローモーションでなかなか前に進まない。お疲れ様でした。=========================しん様「優しい柳」読みました。なるほどとラストまで読んで納得しました。たしかに優しい柳ですね。話の入り方から展開の仕方と柳を中心にしてドラマが見事に進みました。太くて、折れるはずのない柳の枝がなぜ折れるのか……。とうとう最後の一本も折れてしまい、柳は丸裸になりますが、それには筋の通った理由がありました。ある紳士が柳を丸ごと買い取り再生させるために努力をする。町の者が次々に柳の再生に協力してくれる。>一人の身なりの貧しい男が近づいてきます。体格が細く、頬もこけていて、満足に食事もできない立場であることがわかります。<こんな男まで柳の再生に力を貸したいという。ラストまで読んで驚きました。この作品は、構成がよく出来ています。タイトル通りの作品でした。小学校高学年の国語か道徳の本にでも掲載されるような作品でした。お疲れ様でした。=============================霙様「懐中時計は思う」読みました。小説と言うよりもエッセーという感じかな。主人公が「懐中時計」のエッセー。時計店での彼らの会話が聴こえてきそうですね。アンナさんは目立ちますね、売れ残りのお局様か(笑)。豪華な時計はそんなところでしょう。一番大きい百年時計の青柳さん。>青柳さんとアンナさんの売れ残りは鉄板間違いなし。<これが結構笑えるなぁ。ラストで主人公である懐中時計の「蓋が付いている」の話。「私は閉じられるその日を夢見る。」なるほど、たしかに、時計店ではふたは開いているでしょうね。「眠ることなんてなかった。」そりゃあ、時計が止まったのでは役目が果たせないけれどたしか時間を確認する時だけ時間がわかる時計があったような気がします。普段は止まっているのですよね。全体に温かみが伝わる作品でした。それにしても、よく観察していますね。お疲れ様でした。===========================葉月あや 様「カエリタイ」読みました。この作品はタイトルの「カエリタイ」がどんぴしゃですね。修理に出した懐中時計が捨てられたと勘違いしているのですよね。「いぶし銀の腕時計」のお兄さんが一発かましてくれるし(笑)。「ああ、足があれば走っていくのに。」で、ラストで懐中時計からは、二本のひょろりと細い足が生えている。>それは無言のまま、彼女に向かおうと店主の手のひらの上で、ばたばたと不気味にうごめいていた。 店主と女性は神妙な面持ちで言う。<>>「捨てましょう」<<なかなか、想いは伝わりませんね(笑)。●気が付いた点懐中時計の持ち主は女性なのですよね、それで修理に出されているわけですが、女性で懐中時計を持っている方は少ないと思いますので、そのあたりの説明はしておいた方が作品に奥行きが出ると思います。話はユーモアがあり、面白かったです。>>飛び入りです。<<また、「飛び入り」でご参加、お待ちしています。お疲れ様でした。============================昼野様昼野ワールド全開――――(笑)。しかしこの書き手の良いところは、作品が壊れているように見えるが、うまくバランスを取って、逆立ちしてチンチンを見せている。それにも意味があるところが、立派です。ちなみにわからない人がいるといけないので説明すると「逆立ちしてチンチンを見せている」というのは、この作品でいうところの、「A」と「主人公と青柳の会話文のやり取り」になります。主人公と青柳との友情の深さが「B」で伝わるようにオチている。HNを書かなくても、だれの作品かわかってしまう、個性の持ち主だ。A>>「おい、馬鹿野郎」 と声がかかった。振り向くとそこには青柳がいた。思い出したくないが、こいつとは中学生の頃、好奇心で何度かアナルセックスをした。いまでは「馬鹿野郎」とか「この野郎」とかを、ふつうに言い合う、ふつうの仲だ。お互いに27歳のニートであった。<<B>>複雑な事も、青柳と会話することで、解消され、救われると思った。こいつを大切にしようとつくづく思う。<<お疲れ様でした。========================マルメガネ様老夫婦の田舎での生活ぶりがうかがえますね。青柳の枝が障子に影を映して揺れていたりで初夏を思わせます。先ほどまでうるさかった孫たちの声。それが軒下での燕が子育に代わります。「まだまだ死ねない」という老人は燕のひな鳥のことを思っての発言でしょうか。老婆との会話は孫の話から「おじいさん。燕のヒナが大口開けて、待っとる」と燕のひなの話に代わる。茶とすすりながら残りの人生を数える。なかなかよか、話ですたい^^なかなかええ話でんな^^ええ話でおますがな^^お疲れ様でした。==========================「は」様、読みました。「バカガイの記憶」というタイトルにしたらよいかな。この文体は味がありますね。書いてあることは日常のから非日常の話で取り立ててどうと言うことはないのですが、人間という者は、頭の片隅にある記憶をふとしたことで思い出す時があります。この作品はそんな話です。浜名湖でバガガイを取って食うのですが、それにはいくつかの伏線が張られていて、子供がバカガイを取り、30いかぬ父親が笑いながら捨てろと言う。子供は捨てるときに湖面の飛沫が口のなかへ撥ねかえってきて、驚くがそれが笑いにつながる。こういうのって、想い出としてはごく小さなものですが、ふとしたことから思い出すことがあるのですよね。きっとこの子供は30の父親とバカガイを取ったことが想い出になることでしょう。また子供の団体を引率してきてうんぬんの話では懐中時計が出て来るので湖水に落とす可能性とかいろいろと考えさせられました。どちらにしろ、ここに出て来る大人たちはみんな優しいですね。主人公もバカガイを取って食べるのですが、味を覚えていない。>肝心なところを憶えていないせいでかえって気にかかる。<が、本当のところは、人生にとっては、大した問題ではない。ふとした瞬間、舌にその記憶がよみがえる。それで満足してしまう。いいじゃないか。ふいとそういうときが訪れるかもしれない。望むところだ。>まだまだ死ねない。<がラストに来る。これって、人生は小さな記憶の積み重ねから創られるからなのだろうか……。時間ぎりぎりに創りましたね(笑)。お疲れ様でした。===========================感想、終わり。>>私の作品の返信(しん様以降)は、後程入れます^^<<
感想の返信■しん様>>・卯月 燐太郎さん死刑執行纏まっていていいですね。最後少し謎めかしながらも、それが答えだとにおわす終わり方もいい感じです。描写について、自分もうまくないですし、時間制限も一応あるのでチェックミスなのでしょうけど一箇所だけ気になったので書きます。夏にもなると葉が青くなり青柳が風にゆらゆらと揺れて『葉が青くなり青柳が』 青がかぶっているので『葉が色づき青柳が』くらいのほうがいいかな?見直すと自分のものもミスだらけなので、いえたものではないのですが。<<―――――――――――――――――――――――>>纏まっていていいですね。最後少し謎めかしながらも、それが答えだとにおわす終わり方もいい感じです。<<作者の狙い通りに作品をお読みいただきありがとうございます。というか、オチを考えてから作品を書いたわけではありません。以前は三語だけでなく他の作品も導入部とラストを考えてから書き始めていました。近頃は導入部を書き始めてから成り行きにまかせてラストまで書くようにしています。それの方が意外な展開になるものですから。だからラスト近くになってからオチをひねり出して、作品を書きあげます。そうすると、構成上無理が生じてくることもあります。そこで、伏線を後からつじつまが合うように挿入します。>>『葉が青くなり青柳が』<<言葉がダブらないように気を付けていたのですが、これはまずいですね。ご指摘、ありがとうございました。●しんさまの作品の内容のよさには驚かされました。今後も、がんばってください。それでは、ありがとうございました。=======================5月14日19時40分■は様ご感想ありがとうございます^^>>卯月燐太郎さん 屋台のおやじさんがものすごく物腰穏やかそうです。●たしかに屋台のおやじは人生経験が豊富という感じですね。この屋台のおやじを主人公にして作品が作れそうです。--------------------●今後、他の方から「ご感想が入った場合は」、このレスに追加して返答したいと思っていますので、よろしくお願いします。
>>霙さん「とある老人の日常」 過充電には気をつけてほしいなあとか思いました。 口の中にしまい、というのがなんとも。「懐中時計は思う」 百年時計ってどんなふうなのでしょう。あっおじいさんの時計みたいな。>>卯月燐太郎さん 屋台のおやじさんがものすごく物腰穏やかそうです。>>Azuさん てんやわんや!ですね。>>zooeyさん「禿げで老いぼれの詐欺師」がカーショ、カーショ。そういう擬音もあるのかと新鮮に思いました。>>しんさん うーん。優しいのでしょうか。よくわかりませんでした。>>葉月あやさん おもしろかったです。 笑ってしまいました。 捨てましょう。>>昼野さん おもしろかったです。 やっぱり笑ってしまいました。>>マルメガネさん スマートでいいなと思います。