Re: 即興三語小説 -梅雨入りですね ( No.1 ) |
- 日時: 2012/06/11 02:09
- 名前: 水樹 ID:Dumru3sw
彼女と彼氏とサラシ一反
「…被害者は鈴本一郎、五十一歳、無職、離婚し一人で生活。検視の結果、部屋の中、昨夜二十一時から二十二時半の間に、サラシ一反で臼と杵を用い餅つきをしていた所を、首を背後からコンセントで締められ殺害。第一発見者は……」
「で?」 「なんでございましょう」 タイピングを止めた彼女は彼氏を睨みつける。 「この無茶な展開をどう続ければいいのかな?」 「それはですね、そうですね、容疑者を三百人ぐらいに最初増やして、半分ずつ減らしていく」 「ほうほう」 「それと同時に被害者も増えて行く、殺害された時の格好はみんな同じだね」 「なるほど、それは面白そう」 「でしょ、でしょ」 「で? オチは? 真犯人は?」 「そうだね、明日考える。まだ一週間あるからね、もう寝ようよ」 「んだね、こんな時間だからね、寝よう寝よう」 パソコンの電源を落とし、電気を消して、布団に入る彼女と彼氏。 しばらくして、 「こう言うのはどうかなぁ?」 「何?」 「老若男女、猫も犬もハムスターも、見る物全てを切り刻む程の鋭利な視線を交差させる。空気中の成分が肌に痺れを起こす錯覚に陥る。ピリピリとした緊張感が町に張りつめる。この時ばかりは暴動前の静寂さが町を包み込む。北と南に町は二分され、分かれた町、お互い口は決して聞かない。親の敵、先祖代々の敵意を無言で相手に向ける。 サラシ一反祭り、この祭りに必ず勝つ為に、人々は命を投げ捨てる。これは大袈裟に言っているわけでもない。 そんな始まり方は?」 「ふうん、で? どんな祭り? オチは?」 「おやすみなさい」 「おやすみ」 「……あっ!」 「何?」 「明察入って無かった……」 そんな彼氏と彼女の日曜の夜。
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