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RSSフィード [6] 即興三語小説 ―第89回― 三語というお年玉はいるかい?
   
日時: 2011/01/01 22:46
名前: RYO ID:C8VnIlOE

新年明けましておめでとうございます。今年も三語をよろしくお願いします。
 今回はお年玉?ということで、縛りがありません。
 ドシドシ投稿をお待ちしてます。
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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲必須お題:「慟哭」「再会」「明日、仕事なんだ」
▲縛り:なし
▲任意お題:「置いてけぼり」「ヒットエンドラン」「能面」


▲投稿締切:1/9(日)23:59まで
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週土曜日の22時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

--------------------------------------------------------------------------------
 三語はいつでも飛び入り歓迎です。常連の方々も、初めましての方も、お気軽にご参加くださいませ!
 それでは今週も、楽しい執筆ライフを!

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Re: 即興三語小説 ―第89回― 三語というお年玉はいるかい? ( No.1 )
   
日時: 2011/01/03 10:05
名前: 沙里子 ID:UGp.7PIU

 風邪をひいた。
 朝の七時、鳴り響く目覚ましを止めようと起き上がった瞬間に気づいた。
 関節が軋むし、喉も腫れている。瞼は目やにで開かないし、体全体が重くてだるかった。手足の先に鉄球を仕込まれている感じ。
 睫毛の先にまでこびりついた脂を爪でこすって落とし、水を求めて布団から這い出した。立ち上がると眩暈がした。頭の奥ががんがんと痛み、体の核が熱い。
 何とか台所に辿りつき、冷蔵庫を開けてミネラルウォーターのペットボトルを掴んだ。ついでに製氷機の氷をひとつ口の中に入れる。
 幸い今日は、大学の講義を入れていなかった。汗に濡れたシャツを脱ぎ、ぶ厚いパーカーを着こんで再び布団に潜る。
 目を閉じると、温かな闇に包まれる。けれど意識が落ちる気配はなかった。
 仕方がないので、風邪を引いた原因を考えることにした。
 昨日は朝の十時に起きて、そのまま大学へ行った。昼食を挟んで講義をふたつ受け、それから校内清掃のバイト。帰りに丸善に寄って正月用の餅を買った。
 大したことしてないじゃん、私。どこで風邪なんか拾ってきたんだろう。
 うつらうつらとしながら窓の外に目をやる。白く煙った空気の向こうに並んだ木立と、曇り空が見えた。

 風邪をひいたときは決まって変な夢を見る。子どもの頃もそうだった。
 気がつくと野原に立っていた。空はピンク色で、草は群青に染まっている。流れる川の色はオレンジだった。
 意味が分からない、と首を傾げながら歩いていくと、小さな人影がいた。ちっちゃい私だった。
 不機嫌そうに歪んだ眉と濁った瞳。髪は油でてかてかと光っている。十歳くらいだろうか。
「あんたいくつ?」
 ふいに訊かれ、驚いた私はうろたえながら「にっ、二十一」と答えた。
 ちっちゃい私はなぜか不服そうに私をじろじろと眺め回し、そして忌々しそうにそっぽを向いた。我ながらむかつくガキだ。
 むかつくついでに右手で頬をつねってみた。けれどいくら強くつねっても目が覚めない。
「ああ、それ迷信だよ。じっと待ってなきゃ」
 ちっちゃい私が言うので、仕方なく私はその場に腰を降ろした。毒々しいカラーリングの世界が目に痛い。
 ちっちゃい私は黄色いレインコートを着て赤い長靴を履いていた。実に子どもらしい派手さだ。
「なあ、でっかいあたしも風邪引いてるのか?」
 赤い長靴が目の前で揺れる。つるんとした感触のゴム製。
 百均で充分だという母に泣きながら頼み込み、デパートの雑貨屋で買ってもらったやつだ、きっと。
「風邪……うん、風邪引いてる。あんたも?」
 ちっちゃい私はまっすぐ頷いた。
「インフルエンザ。昨日、学級閉鎖になって喜んでたらあたしもかかってた」
 うわードンマイ、と言うと、ちっちゃい私はふて腐れたようにうつむいた。
「でっかいあたしって今何してるの?」
「大学行って時々バイトもしてる。そうだ、明日、仕事なんだ」
「じゃあ今日中に風邪治るといいね」
 ぽつぽつとした会話の後、しばらく沈黙が続いた。
 やがてちっちゃい私が口を開いた。
「あーもうそろそろ起きる気配がする」
 どぱ、と音がして、ちっちゃい私が傘を開いた。くるくると回しながら言う。
「ママが仕事から帰ってきたっぽい。じゃあばいばい、でっかいあたし。さっさと彼氏作れよ」
 次の瞬間、開いた傘だけ残してちっちゃい私はいなくなった。と同時に私も目が覚めた。
染みのある天井が目に入る。外はもう薄暗くなっていた。試しに起き上がってみると、さっきより大分楽になっていた。
 変な夢だった。しかもやけに鮮明に覚えている。
 私がちっちゃい私だったとき、夜中に熱を出して泣いた記憶があるのをふいに思い出した。
 もしかして、あの毒々しい色をした野原が怖かったんじゃないだろうか。おまけに自分そっくりの女もいる。
 負けず嫌いなところは今と変わってないな、と私は笑ってみた。少し涙が出た。
 そういや最後に泣いたのはいつだっただろうか。覚えていない。
 少なくとも大人になってから泣いたことはない。慟哭する必要がなくなったのだ、恐怖や悲しみを自分の中に閉じ込めておけるようになったから。
 溜めた涙を流す機会もないから、だんだん体の調子が悪くなる。風邪を引く。夢を見て、また元気になる。これを「風邪と夢スパイラル」と名づけよう。ぼんやりとした頭で考えた。とても眠いのだ。
 先ほどの夢の輪郭は既にぼやけている。会話の内容もよく思い出せない。
 けれど、もしまた風邪をひいていつかの私と再会したときは、迷わず私から声をかけてあげようと思う。
 ついに眠気に負け、私は目を瞑った。今度はきっと、夢を見ない。


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新TCでは初参加になります、沙里子です。一時間で1850字程度。
皆様も風邪には充分お気をつけ下さい。

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