軍の島の休日 ( No.1 ) |
- 日時: 2013/05/13 02:44
- 名前: マルメガネ ID:3ToPkUfM
軍に徴用摂取されて民間人の立ち入りは禁じられているその孤島は、かつて流刑の島だった。 太古の昔、海底火山の噴火で噴き出した溶岩が流れ出した溶岩台地の名残ともいわれ、切り立った絶壁に囲まれた平坦な島だ。 見事な柱状節理が発達し規則正しい割れ目が走る岩場は石切場の痕跡をとどめ、流刑地だった時代を偲ばせる。 島の石材で整備された港には軍縮の風潮から経費が削減されているが、軍艦が一隻停泊している。 収容所だった施設もそのまま軍の建物になっていて物々しい。 荒ぶる神あるいは戦神とも称される軍人戦闘員がいて猛々しい。 その中に無の境地に達した仙人あるいは聖人のような美形の将官がいた。 彼は猛々しく雄々しい戦闘員を束ねる。分け隔てなく接するためか人望が厚い。 「それにしても平和だなぁ」 「そうですな」 磯釣りに出た二人の武官が退屈そうに会話をする。 赤字だの黒字だのと騒ぐ世間一般の柵はなく、非常事態が発令されない限りはまさに天国といっていいかもしれない。 さりとて、訓練をサボっているわけではない。休日なのである。 「釣れるかい?」 釣り糸を垂れている武官のもとへ、美形の将官がやってきた。 慌てて敬礼してしまうのはやはり職業柄なのだろう。 「そう構えなくてもいいぞ」 と、将官が片方に義眼が嵌った涼やかな目を細め苦笑いする。 「全く釣れないであります」 武官が答えた。 そういう日もあるさ、とばかりに将官も横で釣り糸を垂れ始めた。 「明日は石材を使った塹壕作りをするからな。以上」 ぼそりと将官が指示を出した。
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