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RSSフィード [47] 一時間SANGOOOOOO、てきな。
   
日時: 2011/11/20 23:13
名前: 弥田 ID:hwurIi6k

『鉛筆』 『雪女』『スクール水着』です。1時までです。
ねばーねばーだーい! の精神を忘れずにきばっちゃってください><

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Re: 一時間SANGOOOOOO、てきな。 ( No.4 )
   
日時: 2011/11/21 01:03
名前: 深江 ID:D9vFFlfM

   ムスコよ

 ところでぼくは雪女の一族として生まれたんだが、おかげでずいぶんと困っている。乳房もなければ女陰もなく、ほとほと困っている。だったら雪男なのかといえば、それはまた種族が違う。あいつらはどちらかといえば毛深いが、ぼくは女の子でも通じるほどの白い肌で、産毛は透明な金色で風にわずかに揺れるばかりだ。
 いつもようにネズミの散歩につきあって、夜中の住宅街をこそこそと歩いている。
 とっくに真冬でときどき雪もちらつくような季節にあって、うちのネズミはまったく夏場と変わらない。はげちょろげた灰色の毛皮をまとっているだけで、それでいて震えるようなこともなく、ほこらしげな足取りでアスファルトを蹴りつけている。回転は早いが、コンパスの短さで、ぼくがのんびり歩いても問題はない。
 そのぼくはといえば、あっさりと薄いロングTシャツとデニム。なにしろ雪女の男だから雪が降ろうが、空っ風が吹きすさぼうがさっぱり寒さを感じない。もっと薄着でもかまわないのだが、いくら深夜とはいってもご近所の目がどこで光っているかわからないので、このような格好になっている。
 それでも自分から好んで身につけているのは、この黄色とオレンジのボーダーになっているキャップだ。いっそ、このキャップだけで、あとは裸で歩き回りたい。
 街灯の下で、ネズミがフンをした。
 ほぼ十五分おきにするので、散歩の間に三回ほど脱糞する。
 ちなみに散歩をさせていると、まるでぼくかぼくの家族が飼い主のようだが、それは間違いだ。ネズミはペットではない。自由に我が家を出入りしているし、エサを与えているわけでもない。ちょっとした顔見知りよりも、関係は薄いような気がする。そもそもこいつに名づけてもいない。誰もがネズミとしか呼ばない。
 なぜか深夜に訪れては、リードを前歯でひっかけてぼくのところにやってくる。催促されるから、しかたがない。
 だいたいぼくは、なんだっけ、主体性? そういうものがない。自分が何者なのかもさっぱりわからないのだから、それも仕方ないと思う。
 ぐるりとうちの近所を廻る。もう午前二時を回っているから、さすがに住宅地は静かなものだ。冷え冷えとした空気が心地よい。思い切り深呼吸しても、並の人間のように呼気が白くならないのはつまらないけど。
 玄関前まで来たところで、ネズミが立ち止まる。最後にもう一回というわけ。
 下腹部が見えない手に押されているようにへこんだりふくらんだりを繰り返し、にゅるりと後ろ足のさらに後ろにフンが出る。
 今回はダイナミックマイクが出てきた。
 その前が鉛筆四本、さらにその前がスクール水着(2-4 田端庸子)。
 いつも思うのだけど、このネズミはほんとうのネズミなんだろうか。フンといっても、肛門からあり得ないものばかりが、そのままの姿で出てくる。
 ぼくの部屋はこいつのこうした習性のおかげですっかりガラクタ置き場のようになっている。フンなのかモノなのか判断しきれず、トイレに流せばいいのかゴミステーションに持ち込めばいいのかわからないので、そのままだ。
 部屋に戻ると、ネズミはいつものように礼をすることもなく、またどこかへ行ってしまう。一度どこから出入りしているのか後を追いかけたが、見失った。それからネズミの行方を探るのはやめた。
 今夜はスクール水着が手に入ったので、ネズミの肛門から出てきた姿見の前で、ネズミの肛門から出てきたスク水を着てみる。鉛筆があるのだから、これをスケッチしてみよう。
 スケッチブックだって、もちろんネズミの肛門由来だ。
 ただし、腰かける椅子はぼくが自分で買ったもの。さすがにこんなものまでネズミの肛門由来では気分が悪い。でも、スクール水着を着たぼくはなかなかのもので、そこは気分が良くなった。
 薄暗い、暖房もつけない部屋の中で、闇にぼうっと浮かんでいる紺色のスクール水着と白いぼくの肌。モノトーンで陰影をつけるには悪くない。うん、悪くないよ。
 へくちん。
 ふいにくしゃみが出て、ぼくはびっくりした。でもそれは寒さから来るものじゃなく、単に水着から立ち上る蒸発したネズミの腸液によるものだった。
 なんとなく、ぼくはそのとき怒ったんだろう。なにに? 自分にかな。
 気がついたら鉛筆をへしおっていた。ようやくこの物体はフンともモノとも知れない状態からゴミに変わった。レッツゴミステーション。
 市の指定する半透明のゴミ袋に入れることもせず、ぼくはそのまま玄関を出て、徒歩二十三歩のゴミステーションにかつて鉛筆だったものを投げ込んだ。
 戻ってくると、ぼくの立てる物音で起きたのだろう、父さんが灯りのついた玄関で仁王立ちしていた。
 てっきり怒られるかと思ったけど、スクール水着姿のぼくは抱きしめられたよ。
「母さんみたいに、おまえまで行っちまうのかと思った……」
 だってさ。
 雪女でも雪男でもないぼくにどこに行けというのか。このバカオヤジの目に浮かぶ涙をひと吹きで凍らせて、何も言わずに自分の部屋に戻った。

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