久しぶりにやります。一時間三語。お題は「蚊帳」「夏への扉」「白湯」です。以上のみっつを作品に盛り込んで、三語小説を書いてください。締め切りは今晩12時。早く仕上がっても、ちょっとやそっと遅くなってもかまいません。楽しく書いてください。投稿はこのスレッドに返信する形でお願いします。では、スタート。
鬱屈とした梅雨が明け、夏の青い空が広がった。 強い日差し。鳴き始めた蝉の声も聞こえ、まさに夏の扉が開かれた感じだ。本格的な夏の前に体調を崩してしまったキリトは苦い粉薬を口にし、渋い顔をしてちょうどよく冷めた白湯を一気に煽り立てた。 とたんにむせて、激しく咳き込む。 熱はとりあえず下がった。しかし、体中にできた水疱が痛々しく、潰れた痕とその周囲の皮膚が赤く腫れ上がって痛痒さと怠さが残っている。 吊られた蚊帳の中にいる彼は倦怠感に悩まされながら、そっと目を閉じる。 開け放たれた窓から入ってくる風が心地よく、表からアイスクリームを売り歩く掛け声が聞こえやがて遠ざかっていった。 せわしく鳴き騒ぐ蝉の声。窓辺の風鈴が涼しげな音を立てているのを聞きながら、彼はまどろみ、深い眠りに落ちていった。 そして夢を見る。 青いどこまでも青く深い空より、はるか下の地上を見ている。 その向こうには群青色の海が見え、はるか彼方に別の世界が広がっていた。 彼はそこを旅する。 賑わう市場。活気に満ちた砂漠のオアシス。 異国の情景を次々と目の当たりにし、珍しいものなども見た。 楽しい。 その先はどうなっているのだろう。 彼はまた飛び立つ。そして元の場所に戻ったとき彼は目覚めた。 夢と知るとなんだか少しだけ残念だったが、気分は爽やかだった。
チャットにも参加せず、いきなりの飛び入りですいません。 ちらっとチャット覗いたら三語やってたので、なんとなぁく書いちゃってすいません。 こんなどうでもいいものになってしまいましたすいません。 あやまってばかりですいません。 タイトル:光速の果てに「夏の扉」と書かれた入り口を通り抜けるとそこは蚊帳の中だった。 蚊帳の中には壮大なプラネタリウムが広がっており、天の川からザブザブと牛乳がこぼれているのだった。 そんなミルクの流れにのって大桃が「どんぶらこぉ~♪ どんぶらこぉ~♪」と歌いながら流れてきた。 岸辺で逢引していた織姫どんは「あら、大桃よ大桃。どうしましょ!」と彦星どんに問いかけた。 彦星どんは「歌い流れる大桃よりも、あたしゃあなたのモモがいい」と最近習い始めた都都逸にのせてそう答えると、織姫どんの太ももを「どんぶらこぉ~♪ どんぶらこぉ~♪」と歌いながら撫ではじめたので、織姫どんも「天の岸辺の牛乳よりも、あたしゃあなたのミルクがいい」と○○を○○して○○……以下自主規制。 完全に無視された……桃。 誰にも相手にされない……桃。 せっかく「どんぶらこぉ~♪ どんぶらこぉ~♪」と歌まで歌ったのに……腿……違った……桃。 桃はそのまま天の川を流れてゆき、土星の手前までくると真っ黒に腐ってしまった。 それを見ていためいちゃん。「うははぁぁぁ! まっくろくろすけぇ!」 それを見ていたミック・ジャガー。「ぺいんと・いっと・ぶらっく!」 それを見ていたえーちゃん。「黒く塗れ! 直訳じゃねぇか!」 さて黒くなっても桃は桃。 誰も割ってくれなかったので、仕方なく自分から割って出ることにした。「おぎゃ!」 出てきたのは黒い桃太郎。 まさにソウル……マイケル・ジャクソンの生まれ変わり!「いや、違うぜよ。マイケルどんはある時から黒人であることをやめちまったじゃねえか」 と哀しい顔をしつつも満月をバックにムーン・ウォークで後退し始めるソウル桃太郎。 目の前でかっこいいムーン・ウォークを決められてしまった満月どん。 すべての住民がソウル桃太郎に釘づけ。 だれも満月どんを見てくれない。「誰も見ていなければ月など存在しないのです」とタゴールどんに陰口を叩かれ、満月どんはそのまま消え失せてしまいました。「神さまだってサイコロ遊びをするのよぉ~!」これが満月どんの最後の言葉でした。 さて満月どんが消え失せたプラネタリウム。 満月どんの抜けた穴にはすっぽりと冷凍睡眠装置。 そんな冷凍睡眠装置の中でぐっすりと眠っているのは猫のぴーたーどん。「ふんにゃぁ~」と大きなあくびをすると、するると「夏の扉」を通り抜けて過去へ。 ほぅほぅ、どうやらこの蚊帳は光速で移動しているらしいぞ。 どうりで空間が猫の目のように太くなったり細くなったりしたわけだ。 ムーン・ウォークをしながらこの世のあり方を垣間見たソウル桃太郎。 ふと天の川の岸辺をみると逢引中の彦星どんと織姫どんがなにやらもめている模様。「なによ、あんた。光速で果てちゃうのね!」とおかんむりの織姫どん。「だって○○を○○して○○されたら誰だって光速の果てだよぉ」と申し訳なさそうな彦星どん。 織姫どんは濃厚ミルクを期待していたのに、光速の果てに発射されたのは稀薄な白湯だったそうな。 めでたしめでたし。
古い蚊帳をみつけた。 納戸を片付けているときだった。古いといっても、使っていたところを覚えている。それはわたしが物心ついたときには、まだ現役だったのだ。 すぐ裏手が山になっているこの家では、蚊にせよほかの虫にせよ、家の中で姿を見ない日はない。わけても夏の夜には。いつの間にか、蚊帳を使うことがなくなって、蚊取り線香も姿を消した。かわりに電気式の、味気のない虫除けが幅を利かせている。 広げてみれば、蚊帳にはいくつも穴があいてしまっていた。これではもう、使い物にならないだろう。 猫が鳴いている。振り返ると、ミケが尻尾をくねらせて、部屋に入ってきたところだった。蚊帳の穴は、彼女が犯人なのかもしれなかった。 にゃあ。納戸に飛び込んだミケは、止める間もなく、中にはいっていたガラクタを蹴落とした。古い蚊遣り豚が、畳に転がる。あわてて拾ったが、皹が入ったようすはなかった。 ふっと、記憶が戻ってくる。 夏の、蒸し暑い夜だ。 蚊帳を吊るし、布団に入っていた。ふだんは寝つきのよかったわたしは、その日に限って、なぜだか寝付けずにいた。この蚊遣り豚から、蚊取り線香の煙がたなびくのを、いつまでも目で追っていた。 隣で祖母が、寝るそぶりもみせず、背を丸めている。なにか湯のみにはいった飲みもの、たぶん白湯を、音を立てて啜っている。そうして切れ切れに、低い声で、何か歌っている。単調な音階の、子守唄のようなものを。 それが、自分のために歌われているわけではないことが、幼いわたしにはわかっていた。祖母が歌って聞かせていたのは……いたのは……。 思い出せない。 にゃあ、とミケが鳴く。 その声に呼ばれるようにして、今年はじめての夕立が来た。梅雨のそれとは明らかに違う大粒の雨が、ぼたぼたと降りしきって、いっせいに青臭いにおいが立ち上る。 埃がたつからと、クーラーを切って開け放していた戸口から、雨にうたれる庭木が見える。閉めるために立ち上がって、ついでに顔を出して空を仰ぐ。降りのわりには、空は明るい。すぐにやむだろう。 そういえばこの猫は、昔からよくこんなふうに、天気の変わり目や、異変を知らせることがあった。発情期が来たというふうでもないのに、異常な声を上げて一晩じゅう唸っていたかと思えば、翌日の朝、母が高熱を出して倒れた。 そうだ。いつかの夏の夜にも、そうだった。 今夜は妙に悲しげな声で鳴くといって、祖母も母も、心配していた。普段はわたしか、そうでなければ母と一緒に眠ることの多かったミケは、その日に限って、一晩中、祖母の隣を離れなかった。祖母も、まるで幼い子どもにそうするように、ミケの背中をなでながら、子守唄を歌っていた。そうだ。あれはこの猫だったのだ。 その翌日の昼、炎天下のなか祖母は倒れ、そのまま戻らぬ人になった。 いまのいままで、そんなことがあったのも忘れていた。思わずまじまじと見下ろすと、人間くさく目を細めて、ミケは喉を鳴らした。顎を撫でろ、と甘えたそぶりで要求する姿は、いつもと少しも変わらない。 そう。ちっとも変わらないのだった。 いつからこの家で飼っているのか、あらためて訊いたことはないが、祖母が倒れたとき、すでにミケは成猫だった。 もうじき祖母の十七回忌がくる。 にゃあ、と促されて、我にかえった。雨音はもう聞こえない。 立ち上がり、建て付けの悪い戸を開けた。眩しい光がさし、眼を細める。まるでミケに命じられて、夏への扉を開けたかのような錯覚を覚えて、あまりにメルヘンチックな発想ではないかと、自分で苦笑する。 庭に出て行ったミケは、庭石を踏んで歩きながら、上機嫌に尻尾を揺らしている。立ち止まり、空をじっと見あげて、にゃあ、と一声鳴いた。
去年、祖母が亡くなった。 夏休み、特にお盆が近づくと僕たち三人は誰が言い出すでもなく、いつも互いに連絡を取り合っていた。何がそのきっかけになるのかは分からない。きっと夏の持つ何か特別な雰囲気が、僕たちそれぞれの中に何か沸き立つような懐かしい気持ちを生じさせて、お互いのことを思い出させたのだろう。当時から僕たちは互いに離れた場所で暮らしていたけれど、夏が近づくと思い出したかのように電話やメールで連絡を取り合った。やり取りは「久しぶり」だとか、「元気にしてる?」などの簡単な挨拶から始まり、互いの近況などについて話題が及び、それらが一段落した後に、本題に入る。電話なりメールなりで、夏に僕たちが連絡を取り合うときには、初めからその目的はすでに相手に伝わっている。簡単な挨拶や互いの近況を伝え合いながら、僕たちはいつその話題が来るのかとうずうずと心待ちにしている。 話題が尽きた時のちょっとした沈黙のなかで、こらえきれなくなった一方がおもむろに口を開く。 今年は島に帰れそうかと尋ねる。 いまさらながら不思議なことは、その島は僕たちの故郷というわけではないのに、なぜ僕たちは帰るという言葉を使っていたのかということだ。きっとそれは、一年に一度、都会で生まれ育った僕たち三人が、祖母の住む静かな田舎の島で再会するという年中行事を繰り返すうちに、知らず知らずのうちにそこが自分たちの故郷のように感じていたということから来た事なのだろう。 僕たち三人の祖母と、僕たちの親に当たる祖母の三人の子供たちは、東京から南東の小さな島で生まれた。僕たち従兄弟は毎年夏になると再会し、一年に一度の何日かを、その島で過ごしていた。 僕たちは夜の港で再会し、夜の海を船で祖母の住む島へと向かう。風のない静かな海の上を行くこともあれば、ビールをたらふく飲まなければ寝付けないほどの波の中を行くこともあった。しかし、いつからか、船の中で互いの子供時代の話題で盛り上がりながら僕たちはふらふらになるまでビールを飲むことになったので、船さえ出港できる波ならば僕たちには何の関係もなかった。 夜の海を酩酊状態で運ばれ、日の昇る少し前に港からバスで祖母の家に向かう。祖母の家に着くとそこには祖母と僕らのための朝食が待っている。これがまた、食べきれないほどのすごい量で、僕たちは二日酔い気味の胃袋にカツを入れて一生懸命それを平らげる。祖母の料理は上手なのだが、二日酔いを抜きにしても僕たちの食べる量を把握できていない。祖母は僕たちに何度ももっと食べるかと聞き、なにか他に食べるものはないかとせわしなく台所と食卓を行き来する。彼女が口にするのは少量の米と、野菜と、白湯くらいだ。ご飯を残すと彼女が残念がるだろうと思い僕たち三人はひいひい言いながらそれらを平らげる。 朝の六時ごろにようやく朝食を終えた後に、僕たちは海に散歩に行く。祖母は三人分の布団を準備していて、船で疲れただろうから少し横になれというが、僕たちはそれを丁寧に断る。少しでも体を動かして、おなかをすかせておかないといけないという理由からだ。散歩が終わり、九時ごろになると祖母はもう昼食の支度を始めている。そしてまたその量が僕たちの限界を超えている。まだおなかは空いていないよという僕たちの意見と胃の消化能力は完全に蚊帳の外におかれている。そしてまたそれらを胃に押し込み、海へと散歩に向かう。それを夕食まで何度も繰り返す。それが僕たちの夏の過ごし方だった。 海に向かうと僕たちはただぼんやりと海を眺める。煙草に火をつけたり、少しくらいは口を開くが、そのほかはたいてい何もしない。ただぼんやりと海を眺める。 小学生くらいまでの子供の頃は僕たちは水着一枚で祖母の家から海に行くと必ず、水面から三メートルほどの高さのいい具合に切り立った岩場から海に飛び込んで遊んだ。何が面白かったのかは分からないけれど、当時の僕たちの一番の楽しみだった。ただひたすら、順番に何度も何度もそれを繰り返した。 でもいつからだろう? 僕たちはその遊びをやめてしまった。中学生くらいからだろうか。 最後に三人で海を眺めた時、僕はそれがいつからなのかを必死で思い出そうとしていた。結局、分からなかった。 今、そんな風な懐かしい思い出と共にこの文章を書いている。 多分、今年は僕たちは連絡を取り合わない。 お互いに社会人として忙しい生活を送るようになったことと、祖母が亡くなってしまったことで、僕たち三人は島に帰る理由を無くしてしまった。 きっと祖母が永い眠りについたのと同時に、毎年僕たちの心を揺らしていた何かも眠りについてしまったのだ。僕たちに懐かしさと共に子供時代の思い出へと招いた夏の扉が開かれることはもうない。僕たちは大人になり、海に飛び込むことをやめる。 水に飛び込むその瞬間、僕たちは息を止めていたが、水中眼鏡の下の目はしっかりと開かれていた。一体何が見えたのだろう? 今となってはもうきっと分からないはずだ。 もちろん一人で島に帰ることはできる。だけど、それは多分三人でいたときのものとは全く違ったものになるのだろう。むしろ、寂しさを感じさせるものになるかもしれない。三人で帰るということが重要なのだ。 当然で仕方のないことなのだけれど、帰れない事も、思い出せないことも、少し残念だ。 だけどいつか、僕たち三人が子供を持つことがあったら。僕が二人に連絡を付け、少なくて六人、多ければその倍くらいだろうか、それぞれの子供たちと共に再会したいと思っている。 夏の夜の風に浸りながら、そんな日が来ればいいなと思っている。 すいません遅刻しました。すいません。
冬だった。寒かった。 僕は六畳一間の、板張りの部屋で暖房もつけずにうつぶせになり、冬眠したいと願いながら、打ちひしがれていた。腹痛に襲われる、原因不明の腹痛。僕は寒気と腹痛の両方に怯え、そして怒(いか)っていた。 板張りの冷たい床の上で、死にかけた芋虫のようにうずくまる。そして意識が奇怪なことに自然といく。それは冬の間、蠅はどうしているのだろうという事だった。夏にはあれほど飛び交っていた蠅、台所に放置した肉の腐乱したものに、黒々しくコロニーのように密集していた蠅。僕はそれをおもしろがって、ライターのオイルをかけて火を放ち、コロニーを焼き滅ぼすというカタストロフにカタルシスを感じた。もしこれが、と僕は思った。もしこれが蠅ではなく、霊魂をもつ人間の集団だとしたら、僕は勃起し、そして射精をしていたかもしれない。そう思ったことを、冬のいまになって不思議と思い起こす。 下痢を漏らした。限界まで我慢していた、しかしトイレに駆け込む事はしなかった下痢を漏らした。漏らすと同時に、射精に似たエクスタシーを感じた。蠅がいたら、いまが冬ではなく夏であったら、蠅は僕の肛門周辺に黒々しく群がっていただろう。そう思うと寂しかった。 僕はズボンの内部に盛大に漏らした下痢をそのままに立ち上がり、台所へ行き、ヤカンに火をかけた。暗鬱な雲がたれ込めて薄暗い部屋の内部で、青白い炎が灯る。僕はその炎をじっと眺め、やがて飽きた頃に火を消した。ヤカンの中の湯を茶碗に注ぐ。口に含むとまだ生温く、白湯のようだった。生暖かい湯は、僕の内臓を癒した。気のせいか腹痛が徐々に遠くなっていく気がした。 しかし、寒気は相変わらず酷く、意識が朦朧としていた。それでも暖房はつけなかった。なぜならこの部屋の暖房は壊れているからだ。僕は意識が遠のくにつれて、不思議なナルシシズムに襲われ、滑稽にもフランダースの犬における、ラストの少年と同化しつつあった。とはいっても僕が見たいのはルーベンスの絵ではなかった。僕が見たいのは、青い空を背景とした雄大な積乱雲と、腐肉に群がる蠅だった。そして全身を覆うような熱気、つまり夏だった。 このまま死ぬのかな、と僕は朦朧とした意識の中で思った。僕はいままで何をしてきただろう、そういった問いが僕を襲った。人に誇れるようなことは何もしなかった。神にもなれず、さりとて悪魔ともなれず、中庸の人生だった。むしろ死にたいと思った。 不意に僕の肛門に蠅が集まってきた。彼らは僕の下痢に群がった。冬なのに蠅が。朦朧とした意識が生み出した幻覚だろうか。 やがて蠅の群れは僕の眼前に、黒々しい輪を作った。その向こうには夏が広がっていた。暑い夏。ねこみみスイッチ風に言えば、ナツいアツだろうか。黒々しい蠅が、天使のように見えた。 僕は夏への扉へ入ろうと身を起こした。夏の扉の向こうには、布団があり、それを蚊帳がとり囲んでいた。 しかし、僕は入ろうと歩を踏み出した瞬間、ここへ入ることはそのまま死を意味することを悟った。僕は夏の扉から後ろへ下がった。そして蠅に向かって、もう少し生きてみるよと呟いた。
うだるような熱帯夜に白湯を飲んでいた。当たり前のように汗が額に背中にと滲み出し、ハンドタオルで何度となく拭う。腹を下しているから、冷たい水を飲むわけにもいかないが、脱水気味の身体に水分をいれないわけにもいかない。我慢して白湯を一口一口と飲み下していき、ふらつく足で寝室に向かった。 夏風邪でもひいたのか、ここ数日体調が良くない。今日は仕事を早退して、床につく羽目になっていた。 シャツを着替えて寝室に戻り、部屋の明かりを消して布団をかぶっていると、今最も聞きたくない羽音が聞こえた。歳喰うほど蚊の羽音は、耳が拾える周波数の関係から、聞こえなくなっていくらしいが、はたして幸いというべきか今の私には、近く遠くまた近くとあの耳障りな羽音が聞こえてくる。「よりにもよってこんな時に」 声にならない声で呟いてしまう。体調不良のこの夜に、追い討ちをかけて蚊が紛れ込んでくるとは。蚊帳でもあれば拡げて難を逃れたいが、あいにくそんな古風なものは持ち合わせていない。起きて退治するべきか、無視を決め込むべきか。仮に一箇所なりと刺されたところで、虫刺され薬を塗ればすぐにかゆみなど退くだろう、そう思ってしばらく様子を見ていたが、耳に蚊が当たる感触がしたときに、おもわず「うぎゃ」と叫んでいた。「くそ、成敗してくれる!」 息巻いて立ち上がり、明かりをつける。案の定だ。やつの姿がない。耳をすませても、あれほどかましかった羽音が聞こえてこない。どこかの隙間から出て行ったのかと思い込むようにして、また明かりを消して布団をかぶった。 聞こえる。やはりいる。ええい、刺すなら刺すでことをすまして早くどこかへ行け。そう思って布団から手足を出してみるが、まるでこちらの意志が理解できているように、蚊は近づかず、いなくなったのかと布団をかぶりなおすと、耳元に例の羽音が聞こえる。 私は頭をかきむしって立ち上がると、居間に殺虫スプレーを取りにいった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ……むー、ちょっと無理ですね、これでは。 エアコン効いてる寝室から出ると、ものすごく暑くて、それが夏への扉――なんて感じにして強引に仕上げようと思ったけど、さすがに無理矢理すぎるので、今回は失敗例としてあげておきます。 また今度リベンジします。
マルメガネさん 夏の情景とキリト君の見た夢を綺麗で詩的な文章で描かれていますね。空を飛ぶ夢、僕もたまに見ます。現実感がないんだけど楽しい夢だったような気がして、あれを文章にできたらいいなと思います。苦い粉薬やアイスクリーム売りに、舞台が現在より少し前のものなのかなと感じました。お上手だなと思いました。投稿一番手のこの作品を見て、僕の中の即興三語のハードルが上がりってしまいました。遅刻してすいません。 山田さん 蚊帳の中にある天の川。頭上を覆う夜空の縮図のような蚊帳ですね。発想が素敵です。元の「夏への扉」のネタをさりげなく潜ませるのも素敵です。 とかなんとか言いましたが、この作品は小難しいこと考えずにノリで読むべし、ですね。コメディタッチの素敵なノリです。見習いたいです。あと、遅刻してすいません。 最後に、僕はエッチなのはいけないと思います!(すいません、嘘です。ちょっとくらいならいいかなー、って思ってます。ホントです。ごめんなさい) HALさん これも多分元ネタの猫を出してらっしゃいますね。僕が適当に出したお題なのに山田さんと共にすごいです。猫、特に長生きをした猫って不思議な力を持つって言いますよね。そういう不思議さも込められた、素敵な作品だと思いました。猫可愛くて不思議な生き物ですよね。好きです。 昼野さん 一般的に言われる汚いものを書いてるはずなのに、文章からはその汚らしさを感じさせない不思議な作品ですね。ううむ。なぜだろう、不思議です。 破滅願望を持つ主人公の内面が丁寧に描かれているからでしょうか。ううむ。汚くない理由を知りたいです。 片桐さん あはは、夏の夜の蚊はうっとうしいですよね。僕も経験あります。あのうっとうしさとそれに悩まされる主人公がとてもリアルに描かれていますね。この作品はイライラした主人公の動きが目に浮かぶようにとても上手に書かれていると思いました。漫画みたいに動きのある主人公。真似したいです。 あと、夏への扉、全然強引じゃない気がします。 今回は主催していただいてありがとうございました。とても楽しかったです。 二号 自分の祖母を思い出しながら、なんだか話の流れがすっと浮かんでほとんど迷わず描けました。ただちょっと全体的に早足ですね。あと遊びがない。ううむ。 あと、祖母が死んだことは冒頭じゃなくて、「多分、今年は僕たちは連絡を取り合わない。」の前に入れるのがスマートだったなと思いました。冒頭にはかわりに何か別の文章を入れられたらなと思いました。くそー、もう遅いですね。 皆さんの作品とてもおいしくいただきました。ご馳走様です。また、時間が合えばやりたいですね。楽しい一時間でした、どうもありがとうございました。
>マルメガネさん 文章の流れが良くて、気持ちよく追っていけました。ピリリとする山場もあればなお良かったように思いますが、これはこれで良い小品だったかな。僕がオキさんを知っているからか、体調悪いときのオキさんは、本当にこんな風に空想の旅にでているんじゃないかなとも思えました。>山田さん 楽しい作品でした。バカだなあ、といい意味で笑ってしまいました。連想ゲームのように、頭に浮かんだイメージを次々並べていった感じなのでしょうか。脈絡がないようでいて、それでも心地よい調子があって、僕はこの作品、割と好きです。飛び入りといわず、ちょっと顔出してくれても良かったのにw。>HALさん なんというか、HALさんらしい、三語の手本のような作品だったなと思いました。一ページでしっかりとまとめられているとでもいうかな。しっとりした話だと思いましたが、さらにしっとり感を増すことができたなら、三語という枠に収まらない凄い作品になってくれそうです。>二号さん 段落を細かく分けることで途切れ途切れ感が出ているようにも思ったのですが、全体としてとても上手くまとまった作品だと思いました。祖母が料理を作りすぎて往生するなってエピソードが効果をあげてますね。また、蚊帳の外という「蚊帳」の使い方も、すごく自然でよかったです。もう少しじっくり書くとさらに完成度が増す作品でしょうが、そういった作品はまた一般板で読めることを期待して。>昼野さん あ、良い。なんか久しぶりに昼野さんの作品から「あの」感覚を呼び起こされた気がしています。つまりは、以前の作品群を読んでいたときに感じていたグロテスクな中に潜む切なさとでもいう感覚です。イメージも豊かで、想像力を掻き立てられましたし、今回の中では一番好きな作品です。ぼ、僕も金髪にしようかな、なんて思ったのでしたw。>自作 これではなあ・・・、といった感じ。また頑張ります。