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RSSフィード [18] 山場を越えた道行は収束にむかい。とかいいつつ、三語。
   
日時: 2011/03/07 22:19
名前: 片桐秀和 ID:atKaeYS2

今回のお題。
「綿毛」「紅い」「境界線」
まあ、だいたい一時間後が投稿しめきりです。
なんとか完結を目指しましょう。

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たんぽぽになった少女 ( No.5 )
   
日時: 2011/03/08 11:24
名前: 紅月 セイル ID:Gd.ndMDU
参照: http://hosibosinohazama.blog55.fc2.com/

 黄昏時の風に吹かれてたんぽぽの綿毛が一つ、また一つと飛んでいく。風の吹くまま、何にもとらわれずただ自由に。
 ふわふわふわふわただよって、空と大地の境界線を描いてゆく。
 そんなたんぽぽの綿毛達が無性に、羨ましい。
 この部屋から出ることが出来ないからだろうか。
 今のわたしには、世界に飛び立つたんぽぽの綿毛にさえも憧憬の念を抱かずにいられなかった。
 心の奥底からの羨望、渇望。
 これはきっと普通に過ごしていれば、絶対に気付けなかったもの。
 ――広い世界に出て、ただ世界の中を歩きたい。
 ああ、何気ない日常(もの)というのは、失ってから恋しくなるのか。
 開いた病室の窓から、黄昏時の風が流れ込んでくる。
 紅い空にただよう綿毛が一つ、わたしのところにやってきた。
 わたしはそれを両手で受け止め、そっと優しく抱いた。

  ○

 その夜、わたしは夢を見た。
 わたしは、空と大地の間をただようたんぽぽの綿毛だった。
 心地よい風に乗って、ふわふわふわふわ。
 どこに向かうかもわからず、ふわふわふわふわ。
 太陽が昇って、沈んで、月が昇って、沈んで。
 ある日わたしは、ひび割れたアスファルトに落ちて、芽吹いた。
 わずかな隙間から降り注ぐ太陽の日差しと雨粒を受けて、わたしはどんどん成長した。
 やがて春を迎え、大きな黄色い花を咲かせた。
 誰の目にもとまらない、どこにでも咲いているたくさんのたんぽぽの一つになった。
 太陽の日差しを受けて花を開き、月の光を浴びて眠る日々を過ごした。
 そうして、黄色い花はいつしか枯れ、わたしもまた真っ白な綿毛を付けた。
 幾百の綿毛たちが、わたしと同じように風に乗って飛んでいく。幾百の綿毛たちが空に向かって並んで飛んでいく。
 親たんぽぽであるわたしはそれをただただじっと見上げる。
 連なり空へと向かう綿毛たちが天国へと上る真っ白な階段みたいに思えた。

  ○

 ある病室で一人の少女が息を引き取った。
 彼女は14歳で病に倒れ、18歳という若さで亡くなった。
 生前は外に出ることも叶わない体だったため、窓から外の景色を眺めることが彼女の日課だったという。
 彼女の最後は、穏やかな死に顔で眠るようだった。


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大それたタイトルをつけてる割には内容は薄いですね……。

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