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RSSフィード [15] 帰ってきた。黄泉の国から三語たちが帰ってきた。
   
日時: 2011/02/26 22:57
名前: 片桐 ID:myohGuA6

今日は普通に、粛々と一時間三語です。
お題は「歪んだ」「認識」「忍耐」です。
あと任意お題として「初対面」があります。
毎度のことですが、とにかく楽しめる形で参加していただければ幸い。
締め切りは今から一時間後の0時ジャスト。
多少の時間オーヴァーはご愛嬌ということで。
では、みんなガンバ。

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まとめきれませんでした ( No.6 )
   
日時: 2011/02/27 00:36
名前: HAL ID:4U6gvmdc
参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/

「あなたが連れていってはくれないの」
 感情のない声音だった。およそ子どもというものが、これほど温度のない言葉を発することができるなんて、信じたくないような温度の声だった。
 あやかは黒のダッフルコートを着て、前をきっちり留めている。ファーのついた子ども用の手袋は、とても上等そうに見えた。その唇から漏れる息が、これほど寒いというのに、ちっとも白くにごらなくて、そのことになぜだかぞっとした。あやかの黒々とした瞳が、無表情に見上げてくる。そこから目をそらしてしまうこともできずに、ぼくは言葉を探して探して、唇を舐めた。
「みたでしょう。あの父親の態度」
 あくまで淡々と、あやかはいう。たしかにぼくはみた。この子に、まだ年端もいかない自分の娘に対して、まるでかみ合わない言葉を延々といいつのる、いっけん風采のいいような四十男を。
 回転の速い、九歳にしてまるで大人のような口をきくこの天才少女が、父親に向かって笑いかけながら、さりげなく話題を振る。それは気候と自然現象の話であったり、テレビで流れた経済のニュースに対する意見であったりする。それに対して、父親という男は、まともな返事を返さない。まるきり無視して口をきかないというのではない。話がかみあわないのだ。
 まるであやかが普通の九歳の子、そのあたりにいる平均的な子どもと同じような思考の持ち主だと、頭からそう信じ込んで疑わないように、男はあやかの話に対して、ちぐはぐな受け答えを返す。ふつうの子どもであればこんな言葉は出てこないだろうという、あやかの語彙や、その鋭い考察や、そういうものについては、ひとつも耳に入らなかったというように。
 あやかは忍耐強く、違う話題を見つけては父親に話しかける。あるいは父親のとんちんかんな答えに、もっともらしく相槌をうって、わざとらしく感心してさえみせる。そうねお父さん。そのとおりだわ。けれどそのあからさまにひややかな態度に、父親は気づきもしないで、にこにこと愛想よく、話を続けるのだ。まるで幼児に話しかけるように、丁寧に噛み砕かれたことばで。
 その父親とふたりきりで、あやかは暮らしている。この子の母親の所在を、ぼくは知らない。わかるのは、ずっと前からあの家には一緒に暮らしていないということだけだ。あの広い、きれいに片付けられた家の中で、あやかは父親とふたりきり、会話にならない会話をずっと続けてきたのだ。それもきっと、何年もの間。
「そういうわけにもいかないだろう」
 その一言目から、ぼくの声は言い訳の色を帯びていた。あやかの表情はかわらない。
「現実にきみはまだ九歳の子どもだし、ぼくはきみの肉親ではなくて、そしてきみには血縁上の、そして戸籍上の父親がいる。きみに暴力をふるうわけでもなく、犯罪を犯して服役中でもない、安定した収入のある父親が。この状況で、ぼくがきみを連れていけるようには、この国のしくみはできていない」
 あやかは答えず、左の唇を吊り上げるようにして、冷たく笑う。
 その歪んだ口の端をみた瞬間、細かな痺れがうなじから背中へと伝った。それと感じるより先に、足が動いている。認識の隙間にもぐりこむ、組み込まれた本能の小声の指令に従って、手が伸びる。触れたい、という感情。あるいは命令。脳髄の奥深いどこかから発せられた微弱な電流。
 抱きしめても、あやかは身じろぎひとつしない。冷えた表情と反するように、子どもらしく高い体温が、コート越しに伝わってくる。
「そんな表情をするもんじゃない」
 空疎な言葉は空気に触れると同時に、酸化して安っぽい臭いを放ちはじめる。あやかが笑う息が、首筋に触れる。ざわりと鳥肌がたつのが自分でわかる。あやかはいま、それを見ているだろうか。いつものように、黒々とした目をぱっちりと開いて。
 あやかの小さな体を離した。近所の人間にでも見られたら、即座に通報されかねない。親族でもない大人の男が、小さな女の子を抱きしめることがゆるされるような社会ではないのだ。
「きみのお父さんは、きみのことが……」
 いいかけて、ぼくはその続きを飲み込んだ。だけどあやかは、さらりと後をひきとった。
「怖いんでしょうね。こんなかよわい女の子ひとり」
 冗談のつもりだったのだろう。あやかはくすりと笑って、それから、興味をなくしたように、ぼくからすっと瞳をそらした。
「だったら」
 きみが子どもらしい子どもであるかのように、父親の前で演技をしたら、それで万事解決じゃないのかと。そういいかけて、ぼくは言葉を飲み込んだ。それは大人の理屈で、いくら子どもらしくない口をきくからといって、子どもに押し付けていい論理ではないような気がした。
 何度か口をひらきかけて、閉じる。飲み込んだ言葉が白い息にかわって、虚しく空気に溶けていく。

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 あああだめだまとまらなかったけど力尽きた。中途半端なところでごめんなさい……orz

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