Re: あけましておめでとうございます。一時間小説♪ ( No.3 ) |
- 日時: 2012/01/03 03:06
- 名前: 片桐秀和 ID:I7jRb6M2
設定は、ヒロインが魔王で、幼馴染の勇者とイチャイチャする。かつハッピーエンド。
はあ、と一息吐いて、わたしの憂いが白く凍った。 寒い、寒い夜の中にいる。雪がはらはらと地面に舞い降り、とたん、消える。 風はないはずなのに、時折聞こえる森の梢はいったい何によるものだろう。得体の知れぬ獣が闊歩しているのだろうか。とはいえ、わたしに怯えはない。夜はわたしの愛する時間、わたしが総べるものらが意気揚々と世界に踊る時間なのだ。人が凍えるほどに、怯えるほどに、わたしたちは力を得る。そのはずだ。そのはずなのだ。しかし。 はあ、と今一度ため息をつく。それは白く凍る。すぐに消えるはずの白い息にわたしは眼をやる。そして、それが当たり前のように消えると、得も知れぬ感情に心を震わせるのだ。わたしのうちに秘めた思いさえ、こうして霧散してしまえば良いのに、と。 一人の若者に恋をしていると知ったのは果たしていつだろう。それはもしかすると、その恋が許されざるものだと知ったときなのかもしれない。失って、叶わぬとしって、初めて自分の本当の気持ちに気付くなどと、馬鹿らしいことだと嘲笑っていた。それでも、いざそれが自分の身に降りかかってしまえば、不器用に、惨めに、足掻き苦しむよりないのだろうか。 彼の名はタクル。 たわいない幼馴染の、餌でしかない人間の、もっとも憎ましいわれら眷属にあだなす存在。あるいは、彼はわたしを幼馴染とは思っていないのかもしれない。いや、思っているはずがないのだろう。彼はその昔、あくまで奴隷の一人としてわたしの身の回りの世話を任されていたのだ。
城を出て、いったいどれほどの時が過ぎ、どれほどの道程を歩いたことか。 目指す先は、ルールハイル。人間たちがわれら眷属を滅ぼさんと打ち立てた前線基地のある場所だ。そこに今わたしは向かう。人が魔族と呼ぶわれら眷属の女王であるわたしが。 遠くにほのかな光が見えた時、ふたつの感情がわたしのうちを交差した。 ようやく会える、かの人に。これで終わる、わたしすべてが。 わたしは死に、わが眷属は絶え果てるだろう。とまらぬ足が、その未来が変えがたいものだと教えていた。それはもういい。もういいのだ。散々迷い、散々己を責め、それでも押し留められぬ思いと悟ったから、わたしはここにいる。わたしは、知りたい。ただ彼が、わたしの思いをどのように受け止めてくれるか、それだけを知りたい。 わたしはルールハイルの砦を目がけて駆ける。息はあれ、胸は痛むが、それでも思いがわたしの足を止めようとはしなかった。 「タクル! タクル!」 今や人間たちの英雄であり、勇者としてまつりあげられていると聞く彼の、いや、わたしが最も愛する存在の名を叫び、わたしは駆けた。 「誰だ!」 門番がわたしに誰何するが、面倒なので必殺魔法で倒した。 「む? なんの騒ぎだ?」 早速人が駆けつけて来たが、これも面倒なので、滅却魔法で消去した。 「わー、魔王が来たぞー」 わたしの正体を悟った誰かがいたので、こいつも残虐魔法で葬った。 「え? え?」 訳がわかっていない人物がいたが、つい条件反射で暗黒魔法を唱え、焼き払った。 こんなやつらは関係ない。タクル、タクルはどこにいるの? わたしは砦の中を阿鼻叫喚の渦に巻き込みながら、ひた進んだ。 そしてついにわたしは砦の最上階の部屋で彼に出会ったのだ。 「わー、来たな魔王めー」 タクルが怯えながらわたしに剣を向ける。 「タクル、ようやく会えた。タクル。うち、アンタに惚れてもたんや」 「な、なにー」 「ホンマや、ホンマやねん。うち、ずっと自分を誤魔化してたんやけど、今ならはっきり言える。うち、アンタにぞっこんや」 タクルは驚きつつも逡巡し、そして重い口を開いた。 「じゃ、じゃあ友達からで」 「それって、それって前向きに考えてくれてると思ってええの?」 「ま、まあ、デートでもしてみて、そこで気が合ったら付き合ったらいいんちゃうかな」 「ホンマか。うれしいなあ」 「じゃあ土曜日にでも、どっか行こか」 「うん、絶対やで。約束やから。ウソついたら必殺滅却暗黒残虐魔法やからねー」 「ほ、ほんやま。約束や」 「子供は何人が良いかなー。ふふふ」 「気が早いってそれは」 「あー、早く土曜日にならんかなー」
という夢を見た。初夢だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー まあ、こうなるかw。
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