Re: あけましておめでとうございます。一時間小説♪ ( No.1 ) |
- 日時: 2012/01/03 03:02
- 名前: 水樹 ID:L8.PAKaU
私の設定は、IQ300の天才外科医が主人公。先端恐怖症でメスが握れない。なんだかんだで南米へ。片桐様を感動させる。です。片桐様からの設定です。
IQ300の人間は普段何を考えているのだろう。 考えるのに疲れた彼は海辺で神と対話していた。照りつける日差し、日に焼けた神は彼に微笑む。
どんな難病、奇病でも彼は救い出せる方法を瞬時に見つける。人の命をいくらでも伸ばせる。それが宿命と受け止めていたが、唯一の弱み、メスが握れない事だった。先端恐怖症、尖っている物が全て恐ろしい、見るのも触るのも身体が拒絶反応をおこし、吐き気を催す。 包丁、鉛筆、画鋲、生活に困難を与える物は全て排除するまでだった。 技術が自分に追いついてこない苛立ちもあった。全ての手術をこなせる機械も頭にあるが先の未来だった。脳意外ならどの部位も再生できると頭に思い浮かべる。人の記憶を機械にダウンロードと言う発想もあった。 全ては先の未来。天才外科医はさじを投げた。いや、メスを捨てた。彼は学会に全てを置いて南米に立った。さんさんと照りつける太陽が眩しいビーチ。陽気な人々に心の安らぎを求めて。 砂浜で子供達と遊ぶ神。神が子供達を翻弄する中、老人の神は彼にパスを出した。かつてサッカーの神と言われていた人からへのパス。 じっとボールを見ている彼に神は言った。 「ヘイ、ボーイ、ボールがそこにあるなら蹴るしかないだろう、前に蹴らなくちゃはじまらないぜ」 立ちあがり、大人げなくも彼は渾身の一蹴を放った。ワオ! と空高く舞い上がるボールを皆が見上げる。 どうだ? 振っきれただろう? と白い歯で神は微笑む。
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困り笑いの午後 ( No.2 ) |
- 日時: 2012/01/03 03:01
- 名前: ねじ ID:4qT52.r6
61歳の社長と秘書との純愛?
社長の年齢を知っているのは、会社では私ぐらいではないだろうか。 ほんの少しの白髪が寧ろ銀糸のようで華やかな黒髪はつやつやとしていて、はりはなくともなめらかな頬にはしみ一つない。趣味と仕立てのよい服に包まれた背筋はいつでもぴんと伸びて、声は耳にここちよい低さを保っている。どれだけ多めに見積もっても五十五より上には見えないこの人が、実は還暦をすでに迎えた六十一歳だとは、にわかには信じがたい。 「ハンバーグステーキ。ライスセットで、食後にコーヒーをお願いします」 見た目だけではなく、この歳とも思えないほどよく食べる。この人から胃腸の不具合について、というよりも、健康に関する愚痴というものをほとんど聞いたことがない。二十八の私の同期のほうが、よっぽど病気だの腰痛だの胃もたれだのの話で盛り上がっている。秘書である私は社長が健康診断以外で病院に行くことがないのは知っているので、健康なのは確かだけれどそれだけではないだろう。好む話題によって、人間は作られている。 「同じものを」 昼から少し重いなと思ったけれど、考えるのも面倒なので同じものにする。 「本当にすみませんね。休日なのに」 いつもと同じ穏やかな口調。本当は何を考えているのか気になるようになったのは、いつからだっただろう。 「いえ。予定もありませんでしたし」 今日は仕事ではなく、完全なプライベートの用事だった。来月に生まれる予定のお孫さんのお祝いを選ぶのに付き合ってほしいということだった。本当なら誘われた時点で断るか、これも仕事と割り切って受け入れるか、そのどちらかなのだろう。だというのに、気に入りの服を着て、いつもよりも髪型にも気を使って待ち合わせ場所に行ってしまう私は、一体なんなのだろう。 運ばれてきたハンバーグに楽しそうに笑い、手をそろえる社長に合わせて、私もいただきます、と言う。ぱちぱちと撥ねる油にちょっと辟易しかけていたのに、こんなことで気分が上ってしまうなんて、やっぱりちょっとどうかしている。
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Re: あけましておめでとうございます。一時間小説♪ ( No.3 ) |
- 日時: 2012/01/03 03:06
- 名前: 片桐秀和 ID:I7jRb6M2
設定は、ヒロインが魔王で、幼馴染の勇者とイチャイチャする。かつハッピーエンド。
はあ、と一息吐いて、わたしの憂いが白く凍った。 寒い、寒い夜の中にいる。雪がはらはらと地面に舞い降り、とたん、消える。 風はないはずなのに、時折聞こえる森の梢はいったい何によるものだろう。得体の知れぬ獣が闊歩しているのだろうか。とはいえ、わたしに怯えはない。夜はわたしの愛する時間、わたしが総べるものらが意気揚々と世界に踊る時間なのだ。人が凍えるほどに、怯えるほどに、わたしたちは力を得る。そのはずだ。そのはずなのだ。しかし。 はあ、と今一度ため息をつく。それは白く凍る。すぐに消えるはずの白い息にわたしは眼をやる。そして、それが当たり前のように消えると、得も知れぬ感情に心を震わせるのだ。わたしのうちに秘めた思いさえ、こうして霧散してしまえば良いのに、と。 一人の若者に恋をしていると知ったのは果たしていつだろう。それはもしかすると、その恋が許されざるものだと知ったときなのかもしれない。失って、叶わぬとしって、初めて自分の本当の気持ちに気付くなどと、馬鹿らしいことだと嘲笑っていた。それでも、いざそれが自分の身に降りかかってしまえば、不器用に、惨めに、足掻き苦しむよりないのだろうか。 彼の名はタクル。 たわいない幼馴染の、餌でしかない人間の、もっとも憎ましいわれら眷属にあだなす存在。あるいは、彼はわたしを幼馴染とは思っていないのかもしれない。いや、思っているはずがないのだろう。彼はその昔、あくまで奴隷の一人としてわたしの身の回りの世話を任されていたのだ。
城を出て、いったいどれほどの時が過ぎ、どれほどの道程を歩いたことか。 目指す先は、ルールハイル。人間たちがわれら眷属を滅ぼさんと打ち立てた前線基地のある場所だ。そこに今わたしは向かう。人が魔族と呼ぶわれら眷属の女王であるわたしが。 遠くにほのかな光が見えた時、ふたつの感情がわたしのうちを交差した。 ようやく会える、かの人に。これで終わる、わたしすべてが。 わたしは死に、わが眷属は絶え果てるだろう。とまらぬ足が、その未来が変えがたいものだと教えていた。それはもういい。もういいのだ。散々迷い、散々己を責め、それでも押し留められぬ思いと悟ったから、わたしはここにいる。わたしは、知りたい。ただ彼が、わたしの思いをどのように受け止めてくれるか、それだけを知りたい。 わたしはルールハイルの砦を目がけて駆ける。息はあれ、胸は痛むが、それでも思いがわたしの足を止めようとはしなかった。 「タクル! タクル!」 今や人間たちの英雄であり、勇者としてまつりあげられていると聞く彼の、いや、わたしが最も愛する存在の名を叫び、わたしは駆けた。 「誰だ!」 門番がわたしに誰何するが、面倒なので必殺魔法で倒した。 「む? なんの騒ぎだ?」 早速人が駆けつけて来たが、これも面倒なので、滅却魔法で消去した。 「わー、魔王が来たぞー」 わたしの正体を悟った誰かがいたので、こいつも残虐魔法で葬った。 「え? え?」 訳がわかっていない人物がいたが、つい条件反射で暗黒魔法を唱え、焼き払った。 こんなやつらは関係ない。タクル、タクルはどこにいるの? わたしは砦の中を阿鼻叫喚の渦に巻き込みながら、ひた進んだ。 そしてついにわたしは砦の最上階の部屋で彼に出会ったのだ。 「わー、来たな魔王めー」 タクルが怯えながらわたしに剣を向ける。 「タクル、ようやく会えた。タクル。うち、アンタに惚れてもたんや」 「な、なにー」 「ホンマや、ホンマやねん。うち、ずっと自分を誤魔化してたんやけど、今ならはっきり言える。うち、アンタにぞっこんや」 タクルは驚きつつも逡巡し、そして重い口を開いた。 「じゃ、じゃあ友達からで」 「それって、それって前向きに考えてくれてると思ってええの?」 「ま、まあ、デートでもしてみて、そこで気が合ったら付き合ったらいいんちゃうかな」 「ホンマか。うれしいなあ」 「じゃあ土曜日にでも、どっか行こか」 「うん、絶対やで。約束やから。ウソついたら必殺滅却暗黒残虐魔法やからねー」 「ほ、ほんやま。約束や」 「子供は何人が良いかなー。ふふふ」 「気が早いってそれは」 「あー、早く土曜日にならんかなー」
という夢を見た。初夢だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー まあ、こうなるかw。
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Re: あけましておめでとうございます。一時間小説♪ ( No.4 ) |
- 日時: 2012/01/03 03:07
- 名前: 天祐 ID:mCpxFJks
40代女性と高校生
ソステヌート
天気がいい日は公園に行くことにしている。学校の練習場にこもっていてもいい音は手に入れられないからだ。幸い自分の通う学校のの前には小さな公園があった。僕は天気がいい日はたいていそこで時間を過ごしていた。 高校の部活は退屈だった。小学生のころに親に勧められて始めたトランペット。でも、通っていた小学校にはブラスバンドもなく、中学校ではピアノの腕を買われて合唱部へと半分強制的に入部させられたからトランペットで合奏をしたことがなかった。僕の演奏を聴いてくれるのはレッスンをしてくれている音楽教室の先生と、その音楽教室の発表会で聴衆として来ているわずかな関係者だけだった。 高校に入学して初めて吹奏楽部に入部した。やっとみんなと合奏ができると期待に胸を膨らませていたが、そんな気持ちは入部して数時間で消え去ってしまった。もともと演奏のレベルは期待していなかったのだが、それは想像以上にひどかった。 四十名の部員のうち初心者が二十五名。半分以上が小学生以下の技術しかない。そんな吹奏楽部がまともに合奏なんてできるわけがなかった。だから僕は今、公園にいる。 外で楽器を吹くのは気持ちがよかった。へたくそな部員に囲まれて雑音にしか聞こえないような楽器の音の中を耐えるなんて僕には想像できなかった。僕が知っている音楽は一セントの狂いもないハーモニーが折り重なる繊細で色彩豊かな世界だった。どぶの底の澱のようなそれは僕は音楽とは思っていなかったし、その中に身を置くなんてとても耐えられなかった。 公園ではいつもコンチェルトを練習していた。特にバロックが好きだった。今も目の前の譜面台にはコレリ作曲のソナタが置いてある。Aの音から始まる物悲しげな第一楽章がお気に入りだった。この曲を表現できるほど自分が人生経験豊かだとは思っていなかったが、それらしく演奏できているだろうなという手ごたえを感じながら、僕は楽器を鳴らしていた。 この公園はいつも人は少なかった。ときおり駅への近道をするために早足で通り過ぎていく人がいるくらいだった。だからこそ、気兼ねなく楽器を演奏することができていたのだが、その日は少し違っていた。 いつもどおり悲しげなビブラートと余韻を残して一楽章を終えて譜面をめくろうとしたとき、僕はふと視線を感じた。顔をあげるとそこには女性が一人、犬を抱えて立っていた。きっと物珍しさから少し立ち止まって聞いているのだろうと思った僕は、あまり意識せずに二楽章の演奏を始めた。僕はすぐに演奏に没頭した。たんたんと譜面を読みこなし、四楽章、つまり最終楽章になって初めてその女性がまだそこにいることに気が付いた。 いつも僕が演奏を聴かせるのは僕が知っているごくわずかな人だ。僕を知らない誰かに聞いてもらったことなどなかった。その気持ちが僕を妙に社交的にさせた。僕は楽器を下して女性に尋ねた。
「あの、何か」
マダム。その言葉がぴったり当てはまる清楚な女性だった。女の人の年齢は推定しにくいがきっと四〇代前半だろうと僕は思った。僕の言葉にはっとしたように女性は一歩僕に近づいて言った。
「いいわあ」
少しかすれた憂いを含んだような深い声だった。僕は自分の鼓動が一瞬跳ねたのを感じた。
「いい、ですか?」
とまどいを隠さずに僕は尋ねた。女性はさらに一歩僕に近づいてくる。
「ええ、とっても歌ってる。きちんとフレーズを歌えてる。ほんとにいいわあ」
女性の黒髪がふわっと風に揺れた。甘ったるい香りが鼻腔をくすぐる。大人の女性の香りだった。
「でもね。あなた高校生でしょ。そんなにさびしい音を奏でていてはだめ。悟るのはもう少しあとにしなさい。あなたの音は孤独すぎるわ」
自分は孤独だ。初対面の人にそう指摘されて僕はそうかもしれないなと思った。大人の女性とはこうも正確に人を見ることができるのだと妙に感心していた。これが彼女との出会いだ。 ママさんコーラスの指導をしているという彼女と僕は親しくなった。といってもやましいことがあったわけではない。公園で演奏を聞かせ、感想をもらう。それだけのことだった。僕は部活の練習に参加するようになった。さみしいと言われた音をなんとか明るくするために。部活のレベルはわずかずつだったが上向いているようだった。
「だいぶ社交的になってきたわね。あなたの音」
彼女がそう言ってくれたのは出会ってから半年が過ぎたころのことだった。
「ありがとうございます。麗子さんのおかげです」
彼女は独身だった。離婚歴があるわけでもなく、子供もいない。本当に孤独だったのは実は彼女のほうだった。僕はその麗子と名乗った女性についてじつは何も知らないのかもしれない。それでも自分の本質を一目で見抜いた彼女に最初から魅かれていた。彼女もきっと僕の気持ちに気づいているはずだった。
「あなたのセンスがいいのよ。あとは経験があればもっと音に深みと余裕が生まれはずよ」
経験。それが何を意味するのか僕には漠然とわかっていた。いや、わかったつもりになっているだけかもしれない。だから、胸がざわついた。
「あの経験ってなんですか?」
彼女は笑った。それはひどく妖艶な笑みに見えた。
「だめよ、期待しては。私はあなたが好きだけど、私から得られるのは寂しさだけ。あなたにはまだ必要のないことよ」
僕は彼女に手を差し出した。僕が欲しかったのは物悲しさだったから。数瞬の躊躇の後に握り返された彼女の手はひどく冷たかった。
ー 了 ー
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