Yes and No ( No.3 ) |
- 日時: 2010/12/25 17:01
- 名前: 千坂葵 ID:7qVQz0KA
右手には小さな紙袋、左手には大きな孤独。 今日だけは、全てのものに対して“No”とぶちまけてやりたい。 吐き出された白い吐息の濃度なんて、九割が「今日」という日への憎しみである。所詮僕は、その程度のつまらない男だ。
● ――さようなら。 終わりは始まりだ、なんて文章を目にしたことがある。ならば、これは二人の終わりで、そして一人の始まりとでも名付けられるのか。 数時間前、静かに叩きつけられた言葉は、序幕と終幕を兼ね備えた大事な鍵だった。しかし、主人公であるはずの僕は、扉に近付くことさえ拒絶していた。 早い話が、現実逃避である。あの人が、この紙袋と孤独を、僕から奪ってくれることを願うのを止められずにいたのだ。 気の赴くままに、商店街をふらふらしていると、電飾が点滅し始めた。太陽は落ち切っていないが、空は既に黒を飲み込み、人工物の輝きを受け入れる準備ができている。 ケーキを片手に帰宅する会社員、プレゼントを抱き締めている子供、それから寄り添って手を絡める恋人達。幸せを目の中で輝かせている人ばかりが、僕の視界を占拠する。 僕は、左手を強く握り締め、鉄砲玉のように商店街から飛び出した。勿論、本音は不発のまま。
●
走り疲れた体に酸素を取り入れてやろうとすると、酸素の代わりに大量の寂しさが、体中を巡り始めた。 ――いつだって現実が、神様からのプレゼントか。 自嘲気味に笑いながら呟いて、自分の走ってきた道を振り返る。その時僕は、自分の左手が空っぽになったことに気がついた。 僕の後ろで、僕によく似た“落日からのプレゼント”が、こちらを見つめていた。 後ろの彼に言われるがまま、僕は、右手も空っぽにしてみせた。
● 帰り道、半額の弁当を購入しようと、僕はスーパーへ向かった。 酒のつまみを探しに、お菓子売り場を横切ろうとした瞬間、あるものと目があった。 ――はいはい。買ってやるから。 幸せそうな表情をしたコアラを、僕は籠の中に入れる。そんな表情を見ても、もう何も思うことはなかった。
何、この駄作。← 初の三語、貴重な経験になりました。
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