林檎座 ( No.3 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:02
- 名前: 水樹 ID:NBNFrFa2
お題は、「メランコリック」「星座」「林檎」です。任意は「マラソン」「脱落」「朝三暮四」「山田さん」です。
はて、林檎座はどこだろう? 首を傾げては、山田さんは望遠鏡を通して星々を見る、夜空を広く眺める。隣で毛布に包まっている彼女は、穏やかな寝顔で、しんとした寒空、静寂に溶け込む寝息を立てている。彼女に聞こうと思った星座、林檎座は二人の愛の証しでもあった。二人の出会いのアイテムでもあった。
「私、果物の中で特に林檎が大好きなの、それはもう、一日何個食べても飽きないの。あの色形、シャリシャリとした歯ごたえが堪らなく素敵だわ、ねえ、だから、こんなにも林檎を買っているんだから、一個とは言わず、二十個ぐらい負けてよね」 見ず知らずの女性に胸倉を掴まれ無理を言われている、山田さんはこの女性の勢いに圧倒されていた。 このままだと、今日一日のバイト代も彼女に持っていかれそうだった。 どうしようかと悩んでいると。 「お嬢さん、じゃあ、こうしよう。一日一時間でもいい、あなたが店を手伝ってくれるなら、バイト代として、売れ残った林檎をいくらでもあげようじゃないか」 店長が助け舟を出してくれた。 彼女は山田さんよりも二つ年上の社会人、忙しいのか週に二日店を手伝う。 仕事そっちの気で、林檎をうっとりと眺める日もあった。我に返っては、それはもう、一生懸命に後片付けを行う。彼女の様子が可愛らしいなと、山田さんは心惹かれていた。 「ねえ、明日の夜、暇でしょ、私に付き合ってね」 「え? あ、はい」 唐突に言われ、二つ返事で山田さんは街で一番高いマンションの屋上に連れて来られた。 「色んな星座がある中で、林檎座もきっとあるに決まってるわ、私の為に探してね。温かいアップルティーと、林檎のタルトも作ってきたから、尚且つ、私も祈ってるから、きっと見つかるに違いないわ」 疲れているのか、望遠鏡を渡すと、彼女は毛布に包まり、すぐに眠りに落ちた。 はて、どうしたものだろう、ヒントも何もなく、当てもなく夜空をくまなく探す山田さん。 「アップルが無い世界なんて、そんな世界ありえない…… グゥグゥ…」 きっとどこかに林檎座はあるだろう、彼女の寝顔を微笑ましく見ながら、懐かしさを感じさせる、メランコリックな温かさ、山田さんは当てもなく、彷徨うように林檎座を探す。
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