Re: 一体何人が書き上げられるのかとか、そんなこともういいじゃないですか、的30分三語 ( No.1 ) |
- 日時: 2011/01/30 23:59
- 名前: 端崎 ID:FNKTjk56
メランコリックスというのがかりかりに焼き上げられたほの甘いお菓子の名前で、それは椎名林檎の大好物だってこと、みんな知ってる。そんなの常識。しらないでいるのは悠平ばかりだ。 いつも歩けば口ずさむ、昭和の歌謡がお気に入りで、はやりの歌の切れ端もしらないで。背が高いのに痩せていて、それなのにご飯はたくさん食べる。親子丼つくってあげたときはどんぶりに二杯をぺろりとたいらげた。おいしいよといって、それから夏だったから、開けてた窓から外へ出て、ずうっとうえの空をみた。 「星座はわかる?」とわたしがきくと、 「あんまりよくは、しらないな」といって、いつも潤んだように黒い瞳で空をみあげた。 「みえないな」 「部屋の電気が、ついているから」 わたしが部屋の電気を消すと、おとがいをあげている悠平の傍らへよりかかって、それからわたしはなにかいおうとする。 「北極星はね、ポラリスというの」 ポラリス、と悠平の声がわたしの肩の辺りにこぼれてきて、とてもくすぐったい。
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でぃえんびえんふー ( No.2 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:12
- 名前: 弥田 ID:62PFV7lE
ぼくが缶詰を開けているあいだ、キミはがこんつ、がこんつ、と音をたてながら林檎にかぶりついていた。缶切りはゆっくりと丸い蓋を切り取っていき、完璧に近かった円はぎざぎざと美しく欠けていく。ふちは獣の牙にも似て、いまにもぼくの指へと噛みついてきそうだ。 「でぃえんびえんふー」 とキミは言った。取り落とした林檎は床に叩きつけられ、果汁が散って舞った。腐ったような甘い匂いがふんわり香った。同じ匂いを口からまき散らしながら、キミは声高に宣言する。 「私は彼女を絞殺しました。それから、彼女を小さくコマ切りにし、そのようにして私の肉を私の部屋に運び入れました。調理し、食べました。オーブンで焼いた彼女の小さなお尻の、なんて甘美で柔らかだったことでしょうか。彼女の全部を食べるのに9日間要しました。私が望むなら彼女をレイプできましたが、それは行いませんでした。彼女は処女のまま天に召されたのです」 いちど言葉をとめ、ふむ、とうなずいたキミは、もう一度同じ言葉を反復する。 「私が望むなら彼女をレイプできましたが、それは行いませんでした。彼女は処女のまま天に召されたのです」 それから床の林檎を拾って、再びがこんつ、囓りつくと、嬉しげに言った。 「私が望むなら、か。うん、なかなかいいね。とてもいい。私が望むなら。あはは」 がこんつ。 「でぃえんびえんふー」 缶切りが一周し、蓋が開いた。中には少女のヴァギナが、開きかけの花のごとく、ひっそりと咲いている。ぽっかりと穴が空いていて、暗闇は宇宙のごとく。中からは腐ったような甘い匂いが、ふんわりと、ふんわりと、漂ってくる。 「なんだい、その、でぃえんびえんふー、というのは」 ぼくが聞けば、キミは宙を見据えながら、ぎこちない口調で説明してくれる。 「ふらんす」 「フランスの街なのかい?」 「ちがう。べとなむ」 「……ベトナムの街なのかい?」 「大まかにいえば」 「なるほど」 窓をあければ、夜。外はさっぱりと晴れていて、冷たい月光と、星座の幾何学紋様とが、遠い世界の太陽を笑っている。あはは、あはは、と笑っている。 がこんつ。 ふんわり。 あはは。 がこんつ。 ふんわり。 あはは。 「メランコリック、オシロスコープ、セルロース。これら三つの違い、あなたはわかるかな?」 声がして、気がつけばキミが横に立っている。耳元でささやかれる。声は腐ったように甘い匂いで、耳からぼくの頭蓋へと侵入し、のうずいをここちよく浸す。 「でぃえんびえんふーは革命の街だ。非力な生命の、暴力への反抗の叫びだ。そこにはなにひとつ意味がなく、だからこそ唯一のごとく尊い」 キミはぼくの頬に唇をおしつけ、その柔らかい感触は心臓のとろける体温にも近い。 下腹があつくなっていく。ぼくが笑い、キミが笑った。 「でぃえんびえんふー」 「でぃえんびえんふー」 がこんつ。 ふんわり。 あはは。 つまりはそういう夜だった。
--- でぃえんびえんふー、と言いたかった。それだけです。 あととちゅうのセリフ、引用元明記しておきます。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A5
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林檎座 ( No.3 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:02
- 名前: 水樹 ID:NBNFrFa2
お題は、「メランコリック」「星座」「林檎」です。任意は「マラソン」「脱落」「朝三暮四」「山田さん」です。
はて、林檎座はどこだろう? 首を傾げては、山田さんは望遠鏡を通して星々を見る、夜空を広く眺める。隣で毛布に包まっている彼女は、穏やかな寝顔で、しんとした寒空、静寂に溶け込む寝息を立てている。彼女に聞こうと思った星座、林檎座は二人の愛の証しでもあった。二人の出会いのアイテムでもあった。
「私、果物の中で特に林檎が大好きなの、それはもう、一日何個食べても飽きないの。あの色形、シャリシャリとした歯ごたえが堪らなく素敵だわ、ねえ、だから、こんなにも林檎を買っているんだから、一個とは言わず、二十個ぐらい負けてよね」 見ず知らずの女性に胸倉を掴まれ無理を言われている、山田さんはこの女性の勢いに圧倒されていた。 このままだと、今日一日のバイト代も彼女に持っていかれそうだった。 どうしようかと悩んでいると。 「お嬢さん、じゃあ、こうしよう。一日一時間でもいい、あなたが店を手伝ってくれるなら、バイト代として、売れ残った林檎をいくらでもあげようじゃないか」 店長が助け舟を出してくれた。 彼女は山田さんよりも二つ年上の社会人、忙しいのか週に二日店を手伝う。 仕事そっちの気で、林檎をうっとりと眺める日もあった。我に返っては、それはもう、一生懸命に後片付けを行う。彼女の様子が可愛らしいなと、山田さんは心惹かれていた。 「ねえ、明日の夜、暇でしょ、私に付き合ってね」 「え? あ、はい」 唐突に言われ、二つ返事で山田さんは街で一番高いマンションの屋上に連れて来られた。 「色んな星座がある中で、林檎座もきっとあるに決まってるわ、私の為に探してね。温かいアップルティーと、林檎のタルトも作ってきたから、尚且つ、私も祈ってるから、きっと見つかるに違いないわ」 疲れているのか、望遠鏡を渡すと、彼女は毛布に包まり、すぐに眠りに落ちた。 はて、どうしたものだろう、ヒントも何もなく、当てもなく夜空をくまなく探す山田さん。 「アップルが無い世界なんて、そんな世界ありえない…… グゥグゥ…」 きっとどこかに林檎座はあるだろう、彼女の寝顔を微笑ましく見ながら、懐かしさを感じさせる、メランコリックな温かさ、山田さんは当てもなく、彷徨うように林檎座を探す。
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ヘルクレス座を仰いで ( No.4 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:26
- 名前: 紅月 セイル ID:XR4/pfeA
- 参照: http://hosibosinohazama.blog55.fc2.com/
七月の夜。 澄んでもいない空に淡く浮かぶヘルクレス座があった。それほど明るい星はないが全天で五番目に大きいとされるその姿は雄大で、私のメランコリックな心でもそう感じずにはいられないほどだった。 記憶の箱を漁りそっとヘルクレス座の記憶をひもといた。 ヘルクレスとはギリシャ神話においての英雄ヘラクレスにちなむ名だ。ネメアーの獅子、レルネーのヒュドラ、ケリュネイアの鹿、エリュマントスの猪、アウゲイアスの家畜小屋、ステュムパリュデスの鳥、クレタの牡牛、ディオメデスの人喰い馬、アマゾンの女王の腰帯、ゲーリュオーンの牛、ヘスペリデスの黄金の林檎、地獄の番犬ケルベロスの12にも及ぶ功業をあげ、その後も幾多の冒険を遂げた彼を、人々は英雄と呼び称えたという。その物語は誰をも魅了し、こうして星座の名前にもなっている。 だらだらと日々を過ごし、壁に当たれば逃げる私とは大違いだ、と夜の空に呟いてみる。 ヘラクレスのようにどんな困難でも諦めない強い心があればこうして自堕落に過ごす人生など無かったのかもしれないと心のどこかで思った。
内容がないようだ(ぁ
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メランコリックな林檎 ( No.5 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:52
- 名前: 山田さん ID:2IUr6lrA
夜空を見上げると、真っ赤な林檎がぽっかりと浮かんでいた。 そいつはお月さまよりも大きく、メランコリックに輝いていた。 不吉だ。 不吉だ。 とてつもなく不吉だ。 なんてたってメランコリックな輝き。 鬱病患者が増えた。 不眠症患者が増えた 自殺者が増えた。 すべてこのメランコリックな輝きのせいだ。
「じゃ、皮むいちゃえばいいんじゃね?」 「いっそのことすりおろしちまいなよ!」 「林檎飴にしてペロペロやろうぜ!」
ああだこうだとのたまう人々。 それをあざ笑うかのようにメランコリックに輝き続ける夜の真っ赤な林檎。 「♪わたしはまっかなりんごですぅ~ おくにはぁさぁむいきたのくにぃ~」 歌まで披露しはじめやがった。
「♪いい加減にしろよぉ~」 とおおぐま座が怒った。 「♪わたしはまっかなりんごですぅ~」 負けじと林檎。 「♪調子の乗るんじゃないわよにゃん~」 とやまねこ座が叫んだ。 「♪おくにはぁさぁむいきたのくにぃ~」 負けじと林檎。 「♪林檎なんて……♪林檎なんて……♪林檎なんて……」 プレアデス星団の大合唱が始まった。 「♪り~んごばたけのおじさんにぃ~」 負けじと林檎。 「♪ちょっきんちょっきんちょっきんなぁ~」 意味不明のかに座。 「♪は~こにつめられきしゃぽっぽぉ~」 負けじと林檎。
真っ赤な林檎と真っ白な星座連合軍との紅白歌合戦の始まりである。
たまらないのは地上の人々。 夜空はメランコリック。 夜空はノイジー。 赤勝て白勝て。 視聴率はどうした! 裏番組はどうなった! 格闘技か! 笑ってはいけないスパイか! 猪木ボンバイエェェェェェェ!
そんな折も折。 天の川が氾濫を始めた。 ここ最近の異常気象、特にラニーニャ現象によるダークマターの温度上昇を原因とする長雨の影響によるものらしい。 ザザザー。 ザボーン。 ザザザー。 ザボーン。
林檎は天の川の氾濫に負けた。 星座連合軍の目前で天の川にズブズブズブと沈んでいく林檎。 哀れ林檎よ、林檎よ哀れ。 こんな林檎に誰がした……。
「クラムボンはわらったよ」 「クラムボンはかぷかぷわらったよ」 「クラムボンは立ちあがってわらったよ」 「クラムボンはかぷかぷわらったよ」
蟹の子供らの間にゆっくりと落ちてくる林檎。 メランコリックな輝きそのままに。
「クラムボンは死んだよ」 「クラムボンは殺されたよ」 「クラムボンは死んでしまったよ」 「殺されたよ」 「そんならなぜ殺された」 なぜってメランコリックだからさ。
メランコリックな林檎は美味しそうな匂いを漂わせながら沈んできます。 「どうだ。林檎だよ。よく熟している。いい匂だろう」 「おいしそうだねお父さん」 「待て待て、もう三日ばかり待つとね、こいつは下へ沈んで来る。それからひとりでにおいしいお酒ができるから。さあ、もう帰って寝よう。おいで」
ということでやっと誰かの役にたった林檎でした。 めでたしめでたし。
*後半は「宮沢賢治 やまなし」の引用になってしまいました……ごめんなさい。 *誤字脱字と最初の一行目だけ、ちょこっと手を加えてしまいました……ごめんなさい。
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片目 ( No.6 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:09
- 名前: 片桐 ID:3VouuYiU
『今夜の片目は良い』 それは昔、祖父が私に言った言葉だ。寒い冬に夜道をともに歩き、ふと見上げた空に、祖父は呟いていた。 九州の田舎の夜道は恐ろしく冷え、恐ろしく星が見えたことを覚えている。幼い私は星座もろくにしらず、ただ無数の光の粒が瞬く光景に圧倒されていた。 祖父は寡黙な人で、孫の私は祖父が何を考えているか分からないことが多く、二人の時間を好んでいたとは言い難い。 夕暮れ時に近くの商店まで二人で買い物に出かけることになったとき、私は上手く理由をつけて逃げようとしていた。 『ほら、おじいちゃんと一緒に買い物してきなさい。お菓子買ってもいいから』 そんな母の言葉に乗っていざ一緒に家を出はしたが、案の定どちらからも会話を広げようとすることはなく、ひとことふたことどちらかが言っても、すぐに冷えた体を擦る真似などして、沈黙から頭を逸らした。 商店で林檎や酒、私の菓子を買って外にでると、すでに夜が広がっていた。 『夜になったね』 私がそう呟くと、祖父は、そうだな、とだけ返す。 二人してまた沈黙の中を歩いていた時、祖父は言った。 『今夜の片目は良い』 それを初めて聞いたとき、祖父の目の調子が良いという意味だと思った。そう思って祖父の方を向くと、祖父は夜空を見上げている。どうも話が見えずにしばらく歩いていたが、私はどうも腑に落ちず、祖父に問うた。 『じいちゃん、片目が良いって?』 『ああ、片目のお月さんが綺麗なもんじゃと思うてな』 『月が片目?』 『じいちゃんのばあちゃんがよく言ってたんじゃ。お月さんは昔ふたつあった。両の目で光ってたんじゃって』 『もうひとつはどうなったの?』 『さあな、聴いた気もするが、忘れてもうた。思い出したら教えてやるわ』 それだけ言って私と祖父はまた歩き続け、数分もして玄関にたどり着いた。
月を見上げている。仕事の帰り道、堤防を歩きながら、今日は満月だと気づいた。 今ではもう一方の月がどうなったのかは知りようもない。それでも私は月を見るたび、祖父のことを思い出す。少しばかりメランコリックになっている証拠かもしれない。 意味もなくポケットからライターを取り出し、もう一方の片目があっただろう場所を炙ってみなどした。
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空腹の魔法 ( No.7 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:20
- 名前: 千坂葵 ID:GbdoOcmc
滴る水は、水晶。水晶が飾られた林檎は、ガーネット。 それは、銀貨一枚の果物が、宝石と等号で結ばれていた瞬間でした。 シャリッ。不釣り合いな星と星の繋ぎ目を、その美しさを、一口だけ、派手にかじりついてみると。 そこから溢れ出したのは、人の血ではなく、ただの私の物思い、でした。
“人は中身だ。”と、私の口の中の異物が唱えます。 その言葉は、私が口癖のように、日頃ぼやいているものでした。 “内面の美しさが、外見の美しさを呼び覚ますのです。それだけは覚えていてください” 整形外科に来る女性に、医者である私が必ず言う言葉。 ――――だったはずなのに。一体どうしたことでしょう。誰よりもその言葉の意味を、自負していたはずなのに。 その瞬間、所詮私は、外見の美に囚われていた人間であることを悟りました。
小説に必要なもの→起承転結 三語に必要なもの→無茶ぶりをやりきるドM精神
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Re: 一体何人が書き上げられるのかとか、そんなこともういいじゃないですか、的30分三 ( No.9 ) |
- 日時: 2011/01/31 00:31
- 名前: みーたん ID:zoBajCSY
ふたつのこえ
「人間という生物は予想を超える文明を作り上げたな」 「なに、我々と同じ道を歩んでいるだけのこと。なにも驚くことではない」 闇を除く、すべての存在が無の空間からふたつの声が聞こえる。 「そう言いつつお前も驚いていたじゃないか。なんだったか……」 「ちきゅうを破壊したときか?」 「そうだよ、よくおぼえているな」 「ありゃ人間に驚いたんじゃない。林檎とやらの旨さに驚いただけだ」 「嘘を言え」 「言ってやったが?」 少しの沈黙。次第に、その闇が薄くなる。夜明けよろしく光がさす。 「そういや星座ってのは人間発だよな」 「ああそうだ。我々がせっせと作り上げたちきゅうを繋げて名前を付けるとか何とか……」 「お前がメランコリックになるのもわかる。ありゃ詰まらない」 「……やり直すぞ」 ふたつのうちのひとつが驚嘆の声をあげる。 「やるったらやるんだ。さ、手を貸せ」 そう言って、少し経ったあと、散らばったちきゅうがぽつぽつを消えていった。それと同時に声が笑い変わり、闇へと去る。 いつしか闇が消え、光が満ち溢れた――。
* * 携帯だから投稿に手間取ってしまった。すみません。 15minで執筆です。おかげで内容が何のこっちゃかわからんことにw
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