Re: 寒いなんて言い飽きた! なミニイベント ( No.2 ) |
- 日時: 2014/12/18 22:07
- 名前: マルメガネ ID:j72Wobks
盂蘭盆会
祖母の新盆を迎えたその日はかなり暑かったように思う。 強烈な西日の熱気が籠り、クーラーさえも効かない仏間に親類縁者が集まっていて、生前の祖母の話を繰り返しながら、僧侶の到着を待つ。 そのうちやって来た僧侶が仏前に座り、盂蘭盆会の供養が始まった。 朗々と唱え上げられる読経と念仏の声。叩かれるリンの音色。立ち込める香の匂い。 慣れない正座と暑さと人いきれで、読経が終わり、念仏が終わったあとは立つ気力さえもないほどぐったりし、疲れ果ててしまった私は、六畳ばかりの仏間に身を投げ出し横になった。 「あんた、大丈夫かね?」 心配した母が覗き込んで言う。 「ちょいと疲れただけじゃ」 私はそう答えておいた。 そのそばで、従兄弟の子が素っ裸で風呂から出てくると、ただでさえ暑い仏間を走り回り、バスタオルを持った従兄弟が追い回している。 「おっさん。ごめん」 従兄弟が追い回していた子をバスタオルで包み、謝ってきた。 「ええで」 私はそう言って目をつむった。 夕べには地区の盂蘭盆会の供養があり、それに参加する。 別の僧侶が経を唱え、御詠歌が歌われ、焼香する。 日はまだ高かったが、とりわけ暑かったためか夕立がきそうなそんな曇り空になっていて、あの強烈な西日の日差しに比べれば幾分過ごしやすくはなっていた。 合掌するたびに思うのは、生前の祖母に何かしてあげることができなかった、という後悔だけだった。ただその中で、死ぬ前に一目見られた、会うことができた。これが唯一の慰めかも知れない。 地区の盂蘭盆会供養が終わり、また熱気の籠る家に戻るのかと少しうんざりしながら戻ると、ようやくクーラーが効き始めていて、おばさん達が夜の支度を始めていた。 子供たちは仲良く遊んでいる。 「古いばぁばはどこへ行ったん?」 「仏様の国へ行きんさった」 「ふーん」 と子供の反応。 時として子供の問いに答えられない私がいる。 「ばぁちゃんね。あんたが良うしてくれる、って喜んでおったよ」 叔母がそう言った。 たいしてそんなことはしていない、と思っただけにそれは意外な言葉だった。それは祖母がなかなか伝えられなかったことだったのだろう、と思う。
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